幼なじみと転校生ヒロイン、どちらにコーディネートされたいですか?

もちお

文字の大きさ
上 下
20 / 50

みんなで夕食

しおりを挟む
「はははっ、そりゃあ誰だって最初はそんなもんだろ」

 いつもの晩飯の席で、親父が大笑いしながらそんなことを言う。
 話しの内容は、本日の白峰のぶっ飛んだお声がけについてだ。

「いや親父、笑い事じゃないからな。教えるこっちの立場にもなってくれよ」

「教える立場の人間だからこそ、そこは翔太の教え方次第で変わってくるってことだろ」

「そうそう、まあ翔太に人を教育する力があるとは思わんへんけど」

「確かにね。たまにおかしな日本語を使って説明してくるし」

「いやちょっと待て。なぜお前らまでダメ出しをしてくるッ!?」

 親父に便乗して何故か俺の教育方法について悪口を言ってくる女子二人。というより白峰のやつ、我が家で晩飯食うことに馴染みすぎだろオイ。

 俺はそんなことを思うと左隣で平然とした態度で箸を進めている相手をジト目で睨みつける。
 初めてコイツと一緒にこの家で飯を食うことになって以来、「働く者はみな一緒に飯を食う」という親父が謎の名言を言い出したせいで、白峰がバイトの時はこうやって一緒に晩ご飯を食べることになってしまったのだ。

「あと翔太、このブリの照り焼き味めっちゃ濃いから。あんた醤油の分量ぜったい間違えたやろ」

「いやいやちゃんと計って入れたからな! ってか今日は俺が晩飯作ったんだからなにも茜まで一緒に食う必要ないだろ」

 俺はプリプリとした口調でそう反論するとブリを思いっきり頬張る。

「別にいいやんか。あんたら二人にしたら何しでかすかわからんし」

「どういう意味だよそれ」

 何やらじーっと疑いの目を向けてくる相手に今度はつい呆れた表情を浮かべてしまう。何をしでかすかわからないとしたらそれは間違いなく白峰の方だろう。

 明日はお客さんに変なこと言わないように俺がしっかりと見張っておかないとな、と教育者として改めてそんなことを思っていたら、今度は親父の声が聞こえてきた。

「そういや翔太も最初の頃は接客がめちゃくちゃだったなぁ。お客さんにお声がけするのもいつも緊張し過ぎてカタコトで喋ってたぐらいだったし」

 いつの間に用意したのか、缶ビール片手に息子の黒歴史を笑いながら話し始めた親父。そんな話しを聞いて、「へぇ」と白峰が横から冷めた視線を寄越してくるではないか。

「おおい、やめろっ! だいたい親父が白峰のことを誘ったんだから接客のことは親父が教えたらいいだろ! なんで俺がいつも教えなきゃいけないんだよ」

 俺は話題を変えることも含めて、親父に対してそんな文句を言い放つ。
 スタッフが増えた為かここ最近親父は店をあけることが多く、そのしわ寄せとして俺が毎日のように白峰の面倒を見ることになってしまっているのだ。
 そんな息子からのクレームなど一切気にする様子もなく、親父は「ぷはっ」と美味しそうに缶ビールを飲み切ると再び言う。

「わかってないなお前は。人に教える立場になってこそ初めて気づくことが沢山あるんだよ」

「いや酒飲みながらそんな真面目なことを語られてもな……」

 説得力がないんですけど? と眉根を寄せていたら、親父が言葉を続ける。

「じゃあ聞くが、翔太から見て白峰ちゃんはどんな子だ?」

「え?」

 突然そんなことを聞かれてしまい、俺はつい言葉に詰まってしまった。

 白峰がどんな子かっていきなり聞かれても……。

 戸惑う表情を浮かべながらチラリと左隣を見てみれば、何やら訝しむような目で俺のことを睨んでくる白峰。
 無表情で無感情。人目を惹くぐらい美少女のくせに孤独を好む性格で、間違った接し方をするといきなりビンタを繰り出してくる恐れがあり。……って、そんなことぐらいしかわかんないんですけど?

 なんてことを考えていた俺だったが、さすがに本人を前にして言える勇気もないのでここはどうしたものかと黙り込んでいると、親父が何故かニヤリと笑う。

「答えられないなら翔太の接客もまだまだ半人前だな」

「なんでそこで接客が関係してくるんだよ?」

 今度は自分の接客について言われてしまい、俺はついムッとした口調で尋ね返した。すると親父がすぐに言葉を返してくる。

「接客で大切なことはいかにお客さんのことを理解して相手が求めていることを提供できるかだ。そしてそれができる人間は、一緒に働いているスタッフのこともちゃんと理解できてるものだろ」

「……」

 痛いところ突かれてしまい、俺はまたも黙り込んでしまう。そんな自分の態度を見て、親父が今度は声を上げて笑った。

「教える立場の人間として、まずは翔太が白峰ちゃんのことを理解しないといけないな」

「ぐぬぬ……」

 珍しく夕食の席で正論を語ってくる親父に対して、俺は悔しげに声を漏らすことしかできなかった。
 そしてそんな親父の隣では「さすがおじさん、良いこと言うやん!」と茜が何故か勝ち誇った表情を浮かべている。いやなんでお前がドヤ顔でこっちを見てくるんだよ。

 なんだか二人におちょくられているような気がして腹立たしいところだが、けれども親父にここまで言われてしまって何もできない教育担当者だと思われてしまうのも癪だ。
 俺は諦め混じりのため息を吐き出すと、心を入れ替えて左隣を見る。

「なあ白峰、明日からは俺――」

「私はべつにあなたに理解してほしいとは思ってないわよ」

「ちょっと、この状況であなたまで拒絶しないでっ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

今日はパンティー日和♡

ピュア
ライト文芸
いろんなシュチュエーションのパンチラやパンモロが楽しめる短編集✨ おまけではパンティー評論家となった世界線の崇道鳴志(*聖女戦士ピュアレディーに登場するキャラ)による、今日のパンティーのコーナーもあるよ💕

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...