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みんなで夕食
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「はははっ、そりゃあ誰だって最初はそんなもんだろ」
いつもの晩飯の席で、親父が大笑いしながらそんなことを言う。
話しの内容は、本日の白峰のぶっ飛んだお声がけについてだ。
「いや親父、笑い事じゃないからな。教えるこっちの立場にもなってくれよ」
「教える立場の人間だからこそ、そこは翔太の教え方次第で変わってくるってことだろ」
「そうそう、まあ翔太に人を教育する力があるとは思わんへんけど」
「確かにね。たまにおかしな日本語を使って説明してくるし」
「いやちょっと待て。なぜお前らまでダメ出しをしてくるッ!?」
親父に便乗して何故か俺の教育方法について悪口を言ってくる女子二人。というより白峰のやつ、我が家で晩飯食うことに馴染みすぎだろオイ。
俺はそんなことを思うと左隣で平然とした態度で箸を進めている相手をジト目で睨みつける。
初めてコイツと一緒にこの家で飯を食うことになって以来、「働く者はみな一緒に飯を食う」という親父が謎の名言を言い出したせいで、白峰がバイトの時はこうやって一緒に晩ご飯を食べることになってしまったのだ。
「あと翔太、このブリの照り焼き味めっちゃ濃いから。あんた醤油の分量ぜったい間違えたやろ」
「いやいやちゃんと計って入れたからな! ってか今日は俺が晩飯作ったんだからなにも茜まで一緒に食う必要ないだろ」
俺はプリプリとした口調でそう反論するとブリを思いっきり頬張る。
「別にいいやんか。あんたら二人にしたら何しでかすかわからんし」
「どういう意味だよそれ」
何やらじーっと疑いの目を向けてくる相手に今度はつい呆れた表情を浮かべてしまう。何をしでかすかわからないとしたらそれは間違いなく白峰の方だろう。
明日はお客さんに変なこと言わないように俺がしっかりと見張っておかないとな、と教育者として改めてそんなことを思っていたら、今度は親父の声が聞こえてきた。
「そういや翔太も最初の頃は接客がめちゃくちゃだったなぁ。お客さんにお声がけするのもいつも緊張し過ぎてカタコトで喋ってたぐらいだったし」
いつの間に用意したのか、缶ビール片手に息子の黒歴史を笑いながら話し始めた親父。そんな話しを聞いて、「へぇ」と白峰が横から冷めた視線を寄越してくるではないか。
「おおい、やめろっ! だいたい親父が白峰のことを誘ったんだから接客のことは親父が教えたらいいだろ! なんで俺がいつも教えなきゃいけないんだよ」
俺は話題を変えることも含めて、親父に対してそんな文句を言い放つ。
スタッフが増えた為かここ最近親父は店をあけることが多く、そのしわ寄せとして俺が毎日のように白峰の面倒を見ることになってしまっているのだ。
そんな息子からのクレームなど一切気にする様子もなく、親父は「ぷはっ」と美味しそうに缶ビールを飲み切ると再び言う。
「わかってないなお前は。人に教える立場になってこそ初めて気づくことが沢山あるんだよ」
「いや酒飲みながらそんな真面目なことを語られてもな……」
説得力がないんですけど? と眉根を寄せていたら、親父が言葉を続ける。
「じゃあ聞くが、翔太から見て白峰ちゃんはどんな子だ?」
「え?」
突然そんなことを聞かれてしまい、俺はつい言葉に詰まってしまった。
白峰がどんな子かっていきなり聞かれても……。
戸惑う表情を浮かべながらチラリと左隣を見てみれば、何やら訝しむような目で俺のことを睨んでくる白峰。
無表情で無感情。人目を惹くぐらい美少女のくせに孤独を好む性格で、間違った接し方をするといきなりビンタを繰り出してくる恐れがあり。……って、そんなことぐらいしかわかんないんですけど?
なんてことを考えていた俺だったが、さすがに本人を前にして言える勇気もないのでここはどうしたものかと黙り込んでいると、親父が何故かニヤリと笑う。
「答えられないなら翔太の接客もまだまだ半人前だな」
「なんでそこで接客が関係してくるんだよ?」
今度は自分の接客について言われてしまい、俺はついムッとした口調で尋ね返した。すると親父がすぐに言葉を返してくる。
「接客で大切なことはいかにお客さんのことを理解して相手が求めていることを提供できるかだ。そしてそれができる人間は、一緒に働いているスタッフのこともちゃんと理解できてるものだろ」
「……」
痛いところ突かれてしまい、俺はまたも黙り込んでしまう。そんな自分の態度を見て、親父が今度は声を上げて笑った。
「教える立場の人間として、まずは翔太が白峰ちゃんのことを理解しないといけないな」
「ぐぬぬ……」
珍しく夕食の席で正論を語ってくる親父に対して、俺は悔しげに声を漏らすことしかできなかった。
そしてそんな親父の隣では「さすがおじさん、良いこと言うやん!」と茜が何故か勝ち誇った表情を浮かべている。いやなんでお前がドヤ顔でこっちを見てくるんだよ。
なんだか二人におちょくられているような気がして腹立たしいところだが、けれども親父にここまで言われてしまって何もできない教育担当者だと思われてしまうのも癪だ。
俺は諦め混じりのため息を吐き出すと、心を入れ替えて左隣を見る。
「なあ白峰、明日からは俺――」
「私はべつにあなたに理解してほしいとは思ってないわよ」
「ちょっと、この状況であなたまで拒絶しないでっ!」
いつもの晩飯の席で、親父が大笑いしながらそんなことを言う。
話しの内容は、本日の白峰のぶっ飛んだお声がけについてだ。
「いや親父、笑い事じゃないからな。教えるこっちの立場にもなってくれよ」
「教える立場の人間だからこそ、そこは翔太の教え方次第で変わってくるってことだろ」
「そうそう、まあ翔太に人を教育する力があるとは思わんへんけど」
「確かにね。たまにおかしな日本語を使って説明してくるし」
「いやちょっと待て。なぜお前らまでダメ出しをしてくるッ!?」
親父に便乗して何故か俺の教育方法について悪口を言ってくる女子二人。というより白峰のやつ、我が家で晩飯食うことに馴染みすぎだろオイ。
俺はそんなことを思うと左隣で平然とした態度で箸を進めている相手をジト目で睨みつける。
初めてコイツと一緒にこの家で飯を食うことになって以来、「働く者はみな一緒に飯を食う」という親父が謎の名言を言い出したせいで、白峰がバイトの時はこうやって一緒に晩ご飯を食べることになってしまったのだ。
「あと翔太、このブリの照り焼き味めっちゃ濃いから。あんた醤油の分量ぜったい間違えたやろ」
「いやいやちゃんと計って入れたからな! ってか今日は俺が晩飯作ったんだからなにも茜まで一緒に食う必要ないだろ」
俺はプリプリとした口調でそう反論するとブリを思いっきり頬張る。
「別にいいやんか。あんたら二人にしたら何しでかすかわからんし」
「どういう意味だよそれ」
何やらじーっと疑いの目を向けてくる相手に今度はつい呆れた表情を浮かべてしまう。何をしでかすかわからないとしたらそれは間違いなく白峰の方だろう。
明日はお客さんに変なこと言わないように俺がしっかりと見張っておかないとな、と教育者として改めてそんなことを思っていたら、今度は親父の声が聞こえてきた。
「そういや翔太も最初の頃は接客がめちゃくちゃだったなぁ。お客さんにお声がけするのもいつも緊張し過ぎてカタコトで喋ってたぐらいだったし」
いつの間に用意したのか、缶ビール片手に息子の黒歴史を笑いながら話し始めた親父。そんな話しを聞いて、「へぇ」と白峰が横から冷めた視線を寄越してくるではないか。
「おおい、やめろっ! だいたい親父が白峰のことを誘ったんだから接客のことは親父が教えたらいいだろ! なんで俺がいつも教えなきゃいけないんだよ」
俺は話題を変えることも含めて、親父に対してそんな文句を言い放つ。
スタッフが増えた為かここ最近親父は店をあけることが多く、そのしわ寄せとして俺が毎日のように白峰の面倒を見ることになってしまっているのだ。
そんな息子からのクレームなど一切気にする様子もなく、親父は「ぷはっ」と美味しそうに缶ビールを飲み切ると再び言う。
「わかってないなお前は。人に教える立場になってこそ初めて気づくことが沢山あるんだよ」
「いや酒飲みながらそんな真面目なことを語られてもな……」
説得力がないんですけど? と眉根を寄せていたら、親父が言葉を続ける。
「じゃあ聞くが、翔太から見て白峰ちゃんはどんな子だ?」
「え?」
突然そんなことを聞かれてしまい、俺はつい言葉に詰まってしまった。
白峰がどんな子かっていきなり聞かれても……。
戸惑う表情を浮かべながらチラリと左隣を見てみれば、何やら訝しむような目で俺のことを睨んでくる白峰。
無表情で無感情。人目を惹くぐらい美少女のくせに孤独を好む性格で、間違った接し方をするといきなりビンタを繰り出してくる恐れがあり。……って、そんなことぐらいしかわかんないんですけど?
なんてことを考えていた俺だったが、さすがに本人を前にして言える勇気もないのでここはどうしたものかと黙り込んでいると、親父が何故かニヤリと笑う。
「答えられないなら翔太の接客もまだまだ半人前だな」
「なんでそこで接客が関係してくるんだよ?」
今度は自分の接客について言われてしまい、俺はついムッとした口調で尋ね返した。すると親父がすぐに言葉を返してくる。
「接客で大切なことはいかにお客さんのことを理解して相手が求めていることを提供できるかだ。そしてそれができる人間は、一緒に働いているスタッフのこともちゃんと理解できてるものだろ」
「……」
痛いところ突かれてしまい、俺はまたも黙り込んでしまう。そんな自分の態度を見て、親父が今度は声を上げて笑った。
「教える立場の人間として、まずは翔太が白峰ちゃんのことを理解しないといけないな」
「ぐぬぬ……」
珍しく夕食の席で正論を語ってくる親父に対して、俺は悔しげに声を漏らすことしかできなかった。
そしてそんな親父の隣では「さすがおじさん、良いこと言うやん!」と茜が何故か勝ち誇った表情を浮かべている。いやなんでお前がドヤ顔でこっちを見てくるんだよ。
なんだか二人におちょくられているような気がして腹立たしいところだが、けれども親父にここまで言われてしまって何もできない教育担当者だと思われてしまうのも癪だ。
俺は諦め混じりのため息を吐き出すと、心を入れ替えて左隣を見る。
「なあ白峰、明日からは俺――」
「私はべつにあなたに理解してほしいとは思ってないわよ」
「ちょっと、この状況であなたまで拒絶しないでっ!」
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