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第88話 ここから狙い撃ちます
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見上げると、糸のように細い雨が傘をさしても音がしないほど静かに降ってきていた。
歓楽街の端にあるホテルは、帝都の主要道路の一つに面した敷地に建っており、多くの者が行き交っている。
傘を手にもっている者は多く見かけるものの、実際にさしている人は少ない。
脳震盪をお越し気絶してしまった黒河膳は、ホテル側へしばらく預かってもらうようにお願いをしておいた。
F美を元の世界へ送り届けた後、帝都の教会へ戻ってくる次元列車へ、黒河膳を送り届けてもらわなければならない。
黒河膳を送り届けるように記した次元列車宛ての手紙を書き、一緒にいた獣人の女の子へ教会に持っていくようお願いをした。
黒河膳のように異世界から転生してきた者が詐欺にあう事例は結構確認されており、そのほとんどは『俺は絶対成り上がる』と気張るのであるが、実際はすぐに心が折れてしまうのが現実なのだ。
メンタルの弱い者が、こちらの世界で急に打たれ強くなるわけがない。
世間知らずの者は直すぐに騙されてしまうのが世の常だ。
先の先を見据えてリスク管理をしながら行動している知能犯達に、今まで思考を停止して生きてきた者が勝てる見込みなんてないのが現実である。
帝都の道を歩き始めまもなくすると、地面から銀色の鎖がニョロリと顔を出していることに気が付いた。
魔獣・黒猫の心臓に巻いていた『隷属の鎖』だ。
死霊王を絶滅させるために魔獣を向かわせていたが、鎖だけが私の元に戻ってきたようだ。
黒猫はS級相当の実力があるものの、格が違う死霊王になすすべもなく敗北したのだろう。
問題は、接触し、死霊王へ『ロックオン』を刻み込んでくれているかだ。
魔獣・黒猫が死霊王に接触した際、『ロックオン』を刻みこむ細工をしていた。
魔獣・黒猫が敗北したにもかかわらず『ロックオン』は発動している。
S王国に現れた佐藤翔を泳がせるため、藍倫と一緒にいる死霊王が邪魔な存在になっていた。
見えないものを見る効果がる『千里眼』を持っている死霊王を仕留めるためには、『ロックオン』を刻みこみ『転移』を利用し撃ち抜かなければならないのだ。
魔獣・黒猫は上手くやってくれたようだ。
骸骨を狩る趣味はないが、これも成り行き。
帝都から死霊王を狙い撃たせてもらいます。
帝都を東西に横断する大通りを馬車が駆け抜けている
歩道を歩く人達が、ポツポツとではあるが雨が降っているため、いくぶんか急いで歩いているように見える。
湿ったにおいがし、都会独特の騒音が聞こえてくる。
ただでさえ目立つ鬼可愛い聖女が、こんな街中で矢をブッ放してしまったら、さすがに驚かれてしまうだろう。
ここは、周りに気が付かれない速さで、アンデッド王を狙撃させて頂きます。
脳内処理速度のリミッターを外すと、横を走り抜けようとしている馬車が少しずつ停止へ向かいスローになっていく。
世界から騒音が消え、雨が静止し、まわりの人達の瞳から生気が消えている。
世界が無機質なものへ変貌していた。
運命の弓をスナイパーモードで召喚して、運命の矢をリロードする。
身体がやたらと重く感じる。
というか動く事が出来ない。
時が止まった世界の中で、空気が壁になっているのだ。
信仰心により限界まで武装強化を開始する。
全身に刻まれた信仰心が輝き始めると身体に自由が戻り始めていく。
時間の壁を突き破った瞬間である。
黒河膳に放った一閃は、無意識で行ったもの。
今更ながらに考えると、あの時の精神状態は相当に追い込まれていたのかもしれない。
白銀に輝く全長3m以上ある運命の弓が姿を現した。
リロードした運命の矢に聖属性をエンチャントし、『転移』を発動する。
正面に『転移の魔法陣』が浮かび上がってきた。
死霊王。あなたを狙い撃とうとする私の姿がスキル『千里眼』で見えていますか。
S王国までの距離は約500km。
『転移』された矢は0秒であなたに撃ち抜くことでしょう。
つまり回避不可能な訳ですよ。
これでGOODBYE_FOREVERです。
聖属性をエンチャントした運命の矢を限界まで引き絞っていった。
落ちてくる雨が、静止した世界の中でナイフのように硬化しており、私の体を切り刻んでいく。
死ぬほどの怪我ではないのでこれくらいは問題ない。
ギリギリと引き絞っていた弓のエネルギーが臨界点に達した。
死霊王を狙い撃たせてもらいます。
――――――――――SHOOT
手応えが無い。
撃ち放った矢が『転移』し、『ロックオン』した死霊王をゼロ秒で撃ち抜いたはず。
一体何が起こってしまったのかしら。
今更ながらではあるが、GOODBYE_FOREVERとか言ってしまっていた自身が恥ずかしく思う。
時が静止した時間の中での出来事だから、誰にも見られていないよな。
気が付くと消えていた音が戻り始めていく。
緊張が解かれ、脳内処理速度が戻り始めているようだ。
道を歩く人達の瞳に、活力が戻り始めている。
ナイフのようになっていた雨により傷ついていた体が再生していた。
死霊王の狙撃に失敗してしまった。
それは聖女・藍倫に佐藤翔を確保され、更生されてしまうと言う事。
その前に死霊王を始末しなければならないわけであるが、もうこれは私自身がS王国へ出向き直接手を下すしかないだろう。
S王国までは直線距離で約500km。
音速の速さで移動しても約25分かかる。
創意工夫のない手段となるが、馬型の機械人形にて、これからS王国へ向かう事にしましょう。
歓楽街の端にあるホテルは、帝都の主要道路の一つに面した敷地に建っており、多くの者が行き交っている。
傘を手にもっている者は多く見かけるものの、実際にさしている人は少ない。
脳震盪をお越し気絶してしまった黒河膳は、ホテル側へしばらく預かってもらうようにお願いをしておいた。
F美を元の世界へ送り届けた後、帝都の教会へ戻ってくる次元列車へ、黒河膳を送り届けてもらわなければならない。
黒河膳を送り届けるように記した次元列車宛ての手紙を書き、一緒にいた獣人の女の子へ教会に持っていくようお願いをした。
黒河膳のように異世界から転生してきた者が詐欺にあう事例は結構確認されており、そのほとんどは『俺は絶対成り上がる』と気張るのであるが、実際はすぐに心が折れてしまうのが現実なのだ。
メンタルの弱い者が、こちらの世界で急に打たれ強くなるわけがない。
世間知らずの者は直すぐに騙されてしまうのが世の常だ。
先の先を見据えてリスク管理をしながら行動している知能犯達に、今まで思考を停止して生きてきた者が勝てる見込みなんてないのが現実である。
帝都の道を歩き始めまもなくすると、地面から銀色の鎖がニョロリと顔を出していることに気が付いた。
魔獣・黒猫の心臓に巻いていた『隷属の鎖』だ。
死霊王を絶滅させるために魔獣を向かわせていたが、鎖だけが私の元に戻ってきたようだ。
黒猫はS級相当の実力があるものの、格が違う死霊王になすすべもなく敗北したのだろう。
問題は、接触し、死霊王へ『ロックオン』を刻み込んでくれているかだ。
魔獣・黒猫が死霊王に接触した際、『ロックオン』を刻みこむ細工をしていた。
魔獣・黒猫が敗北したにもかかわらず『ロックオン』は発動している。
S王国に現れた佐藤翔を泳がせるため、藍倫と一緒にいる死霊王が邪魔な存在になっていた。
見えないものを見る効果がる『千里眼』を持っている死霊王を仕留めるためには、『ロックオン』を刻みこみ『転移』を利用し撃ち抜かなければならないのだ。
魔獣・黒猫は上手くやってくれたようだ。
骸骨を狩る趣味はないが、これも成り行き。
帝都から死霊王を狙い撃たせてもらいます。
帝都を東西に横断する大通りを馬車が駆け抜けている
歩道を歩く人達が、ポツポツとではあるが雨が降っているため、いくぶんか急いで歩いているように見える。
湿ったにおいがし、都会独特の騒音が聞こえてくる。
ただでさえ目立つ鬼可愛い聖女が、こんな街中で矢をブッ放してしまったら、さすがに驚かれてしまうだろう。
ここは、周りに気が付かれない速さで、アンデッド王を狙撃させて頂きます。
脳内処理速度のリミッターを外すと、横を走り抜けようとしている馬車が少しずつ停止へ向かいスローになっていく。
世界から騒音が消え、雨が静止し、まわりの人達の瞳から生気が消えている。
世界が無機質なものへ変貌していた。
運命の弓をスナイパーモードで召喚して、運命の矢をリロードする。
身体がやたらと重く感じる。
というか動く事が出来ない。
時が止まった世界の中で、空気が壁になっているのだ。
信仰心により限界まで武装強化を開始する。
全身に刻まれた信仰心が輝き始めると身体に自由が戻り始めていく。
時間の壁を突き破った瞬間である。
黒河膳に放った一閃は、無意識で行ったもの。
今更ながらに考えると、あの時の精神状態は相当に追い込まれていたのかもしれない。
白銀に輝く全長3m以上ある運命の弓が姿を現した。
リロードした運命の矢に聖属性をエンチャントし、『転移』を発動する。
正面に『転移の魔法陣』が浮かび上がってきた。
死霊王。あなたを狙い撃とうとする私の姿がスキル『千里眼』で見えていますか。
S王国までの距離は約500km。
『転移』された矢は0秒であなたに撃ち抜くことでしょう。
つまり回避不可能な訳ですよ。
これでGOODBYE_FOREVERです。
聖属性をエンチャントした運命の矢を限界まで引き絞っていった。
落ちてくる雨が、静止した世界の中でナイフのように硬化しており、私の体を切り刻んでいく。
死ぬほどの怪我ではないのでこれくらいは問題ない。
ギリギリと引き絞っていた弓のエネルギーが臨界点に達した。
死霊王を狙い撃たせてもらいます。
――――――――――SHOOT
手応えが無い。
撃ち放った矢が『転移』し、『ロックオン』した死霊王をゼロ秒で撃ち抜いたはず。
一体何が起こってしまったのかしら。
今更ながらではあるが、GOODBYE_FOREVERとか言ってしまっていた自身が恥ずかしく思う。
時が静止した時間の中での出来事だから、誰にも見られていないよな。
気が付くと消えていた音が戻り始めていく。
緊張が解かれ、脳内処理速度が戻り始めているようだ。
道を歩く人達の瞳に、活力が戻り始めている。
ナイフのようになっていた雨により傷ついていた体が再生していた。
死霊王の狙撃に失敗してしまった。
それは聖女・藍倫に佐藤翔を確保され、更生されてしまうと言う事。
その前に死霊王を始末しなければならないわけであるが、もうこれは私自身がS王国へ出向き直接手を下すしかないだろう。
S王国までは直線距離で約500km。
音速の速さで移動しても約25分かかる。
創意工夫のない手段となるが、馬型の機械人形にて、これからS王国へ向かう事にしましょう。
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