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第4話 男はみんなクソだな

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眼下に酒場の屋根が見えるシンボルタワーの上から遠くを一望すると、1000万人以上の者が暮らす帝都の街並みが広がっていた。
遠くに見える港の向こうに続いている水平線の空に、朱色が混じり始めている。
後1時間もすると、帝都の建物は朝日に照らされて、人の姿が少しずつ増えてくるだろう。
まだ暗い道路のところどころでは酔っ払い達が寝ている姿が小さな点のサイズに見え、顔までは視認は出来ない。
魔術士達が強撃しようとしてくると予測し、待ち伏せを開始して8時間が経過したころ、閉店しようとしている酒場へ女が駆け込む姿を確認した。
明確に顔までは視認出来ないが美人賢者アメリアで間違いない。
魔術士ゾロアが不意打ちを仕掛けるために、美人賢者へ閉店前の酒場の様子を確認するように指示したものと推測される。
肝心の魔術士については姿が視認出来ない。
ここからスキル『ロックオン』を発動させて狙撃するつもりであったが、対策を練ってきていたか。
なかなかに用心深い。
だが、こちらもこの展開は想定していた。
ここからの狙撃は諦めて、勇者と強斥候には魔術士をあぶり出してもらい、至近距離から仕留めさせてもらいましょう。
生粋の暗殺者が持つスキル『隠密』『暗視』『壁歩』を獲得している私を、魔術士には見つけることができない。
つまり対象を視認することが発動条件となる『アビスカーズ』を魔術士は使用できないのだ。
つまり魔術士の敗北は確定事項であり、私が神託を遂行することは約束されている。

眼下では、スキル『索敵』を獲得している強斥侯が魔術士を発見したようで、潜んでいた爆乳剣士が姿を現していた。
勇者と強斥候については、勝てる見込みがない。
『アビスカーズ』の効果によりステータスを下げられてしまうからだ。
そう。勇者達が戦闘を開始する前に、私が爆乳剣士を無力化しなければならない。

シンボルタワーの頂上から歓楽街の石畳が敷かれた道路へ音もなく着地をし、勇者がいる方向へ跳躍を開始した。
帝都の空に流れる風はひんやりとしている中、再び高く跳躍をすると、軒を連ねている建物の屋根が足下に見える。
そして建物と建物の隙間。
爆乳剣士の姿を視認した。
勇者達と接触する寸前の状態だ。
それでは、上空から爆乳剣士を狙い撃たせてもらいます。
――――――――――運命の弓をスナイパーモードで召喚し、スキル『ブラインド』を運命の矢へシンクロさせ、『ブラインドアロー』をリロードする。
そしてスキル『ロックオン』を発動。

帝都の街の時間が止まっているように見える。
腰の剣を引こうとしている爆乳剣士は、私に『ロックオン』されている事には気がついていない。
ギリギリと引き絞っていた弓が臨界点に達していた。
狙い撃たせてもらいます。
――――――――――SHOOT

爆乳剣士の真上から、音速で走るブラインドアローの着弾を確認した。
着弾と同時にブラインドアローは消滅させるようにしており、痛みは注射針で刺された程度の痛みですむようにしている。
実際に爆乳剣士も、痛みが走った場所を一瞬気にする様子を見せたが、その後は痛い素振りは見せていない。
だが、ブラインドの効果は受けて頂きます。
爆乳剣士は一定時間『盲目状態』が続くため、戦力外になってもらったのだ。

爆乳剣士が戦力外になったタイミングで、強斥侯が魔術士を発見し接触をしたようだ。
やはり人狼少女も連れてきていたか。
人狼少女の身体能力は高く、近接戦における戦闘力は魔術士より遥かに使えるのだろうが、幼女を戦力として使うのはいかがなものだろう。
それでは人狼少女も無力化します。
跳躍から建物の屋根に着地をしたタイミングで、引き絞っていた弓を解放させた。
――――――――――SHOOT

人狼少女へブラインドアローの着弾を確認した。
爆乳剣士と人狼少女が無力化された事実を目の当たりにして動揺してしまった魔術士は、目を凝らして暗殺者を見つけようとしているようだが、『隠密』効果がかかっている私の姿は見つける事は出来ない。
やはり『アビスカーズ』は敵の姿を視認しなければ発動出来ないようだ。
打つ手なしになってしまった魔術士は、私へ姿を現すように叫び始めた。


「姿を見せろ、卑怯だぞ。俺と一対一の勝負をしろ!」


なんて間抜けな姿なのだろう。
奴隷達の背中に隠れていた魔術士うんこが言う言葉とは思えない。
こんな間抜けな変態野郎の成り上がり劇場に、巻き込まれたかと思うと血管が切れそうになる。
更にいうと、一対一の戦いにおいても私が敗北する要素はない。


私は、うろたえながら叫んでいる魔術士の頭上3mの建物の壁を気配なく歩いていた。


スキル『壁歩』の効果を発動させていたのだ。
頭上から魔術士の姿がいい感じで丸見えである。
勇者と強斥候との約束だ。
魔術士を殺しはしない。
あれを、ちょん切るのも駄目だそうだ。
だがS級スキル『アビスカーズ』は破壊させて貰います。
『SKILL VIRUS』を運命の矢にシンクロさせて『BREAK_ARROW』をリロードし、神託に従い、女の敵である変態ロリコン野郎を排除します。
―――――――――――BREAK_SHOOT

『BREAK_SHOOT』が魔術士の芯を射抜いた手ごたえが伝わってくる。
スキル『アビスカーズ』がウイルス感染し、崩壊が始まると同時に、アルテミス神の神託が降りて来た。
魔術士討伐の完了を告げる神託である。
信仰心が『2101』に上昇した。

この世界の人間に、最も神格が高い私のスキルを破壊できる者はいない。
つまり『アビスガーズ』の崩壊は誰にも止める事が出来ないのだ。
そのスキルは7日程度で跡形もなく消えるだろう。
私を踏み台にして成り上がろうとした事を後悔して下さい。
それに、女の人権を踏みにじるハーレムなんて、私が許すはずが無い。



翌日。
まだ太陽が高い時間、酒場に現れた美人賢者から、勇者パーティーに戻りたいとの申し入れがあった。
もちろん快諾である。
お客さんがポツリポツリとしか座っていない中、勇者と強斥候が同席している状況で女同士の会話をしていると、美人賢者の口から自然なかたちで魔術士についての愚痴が出てきた。


魔術士ゾロアさんは、パーティーを抜ける1週間前に奴隷の女の子を買っていたそうです。」
「つまり先日、勇者パーティーを抜けたのは魔術士の予定通りだったわけですか。美人賢者アメリアがいたにもかかわらず、その女の子達に手を出してしまうとは、魔術士は本物のクソですね。」
「ゾロアさんは優しい人なので、なし崩し的な感じで関係を結んだようです。」
「ハーレムをつくるだけでも最低です。そして人狼少女の年齢。幼女とやるのは人間失格です。」


「はい。ゾロアさんはロリコンの最低野郎です。」


美人賢者が魔術士を罵倒する言葉を聞き、嬉しそうな様子をしている勇者と強斥候を見ると、腹がたってきた。
うむ。ここは、こいつらもうんこであることを、美人賢者へ告げ口してやろう。


美人賢者アメリアへ報告があります。」
「私に報告ですか。」
「はい。勇者と強斥候も、魔術士ゾロアのハーレムが羨ましいって言っておりました。」
「嘘だ。言ってねえ。言ってないはずだ。」
「そうっす。言ってないっす。何かの間違いっす。」


ほんと、男はみんなクソだな。


さらに後日。
魔術士はS級スキル『アビスガーズ』が完全消滅すると、正真正銘のD級冒険者相当に戻ってしまった。
S級スキル『アビスガーズ』は自身の力で手に入れた物では無かった。
勘違いをして、英雄にでもなるつもりだったのだろうか。
勇者を下に見て、美人賢者を実質ゴミ扱いし、私をお前の成り上がり劇場に巻き込みやがって、ですよ。
お前のような奴は、一生底辺を這いずり周り、その辺で文句ばかり言っていればいい。
猫耳剣士と、人狼少女は、これからは魔術士を養っていくそうだ。
アルテミス神の怒りは解けている。
私を巻き込み、成り上がろうとし、女を食い物にしようとした野望は、ぶっ潰した。
もう魔術士の事はどうでもいい。
同時に勇者ガリアンのパーティーを抜けたのであるが、何故か、それほど引き止められなかった。


「俺等、ボチボチ、やって行くわ。」
「C級クエストなら、3人でもクリア出来ると思います。」
「そのうち、三華月様に追い付くっす。」
「アルテミス神より多くの加護を貰ってる私に追いつくだなんて。うんこ達が1億年間修業したとしても不可能だと思います。」
「モノの例えだよ。」
「あははは。」
「本気で思って無いっすよ。」
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