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第21章 魔道具を作りながら生きていこう
427.事なかれ主義者は発言には気を付けたい
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元都市国家フソーの旧市街地の中に、迎賓館があった。そこはしっかりとした作りだったからか、それともただ運が良かったのかは分からないけど戦火に巻き込まれる事もなく健在だった。
馬車から降りてレヴィさんと一緒に案内されるがまま建物の中を歩いていると、目的の部屋へと辿り着いた。
「あ、忘れてたのですわ」
レヴィさんがいそいそと魔道具『加護無しの指輪』を指から外して、紐を指輪の穴に通すと首から下げる。
それから僕を見上げて「シズトは大丈夫ですわ?」と聞いてきたので頷いておく。
準備に関しては大丈夫だ。緊張の方はやばいけど。
案内をしてくれたエルフたちが両開きの扉を開けてくれたので、レヴィさんに合わせてゆっくりと中に入る。
室内にいた人の視線がギュッと集まってやばい。
とりあえず笑って自己紹介をしたけど、当然だけど皆僕の事は知っていたようだ。
レヴィさんに促されて空いていた席に腰かけると、隣はギュスタン様だった。
僕と同じくらい緊張しているのか、額の汗をしきりに拭いている。
「畑はどうですか?」
「畑……ああ、おかげさまで一気に耕す事ができました。魔道具で作ったたい肥を与えてみてるんですけど、雑草がたくさん生えるのでちょっと大変です」
「へー、そうなんですねぇ」
「シズト様が管理している畑はやはり魔道具で対応しているんですか?」
「草刈り用の魔道具はありますけど、雑草を抜くのはないですね。ドライアドと町の子たち……じゃなくて奴隷の子たちにお願いしてるんです」
「………ドライアド」
「指示しなくても草は抜いてくれるんですけど、勝手に変なの植えちゃうのが玉に瑕ですけどね」
「………なるほど」
「シズト、緊張をほぐすために話をするのは良いのですけれど、他の方々も混ぜるのですわ」
「え? あ! あー……」
僕とギュスタン様の話を聞いていた面々は表情には出ていないけど、呆れているのかもしれない。
ギュスタン様もドバっと出た汗を再びせっせと拭き始めたけど、僕も脇の汗がやばい。
どう話題を振るべきか考えたけど思いつかなかったので、僕の隣に腰かけていたレヴィさんにそっと顔を近づける。
「何話せばいいの?」
「特に言いたい事がなければ私が話すのですわ?」
「お願いします」
「任せるのですわ!」
フンスッとやる気満々なレヴィさんに任せて、僕は置物と化そうか。それともギュスタン様と話の続きをしようか……あ、はい。大人しくしてればいいんすね。
レヴィさんが満足そうに頷いたので、僕は目の前に出されたお茶菓子を食べながらのんびりと話を聞く。
今回の集まりの目的は、新しく加盟した国々の代表者との顔合わせがメインらしい。交渉事があればレヴィさんに任せるつもりだけど、顔合わせ程度なら僕も発言しても問題は起きないかもしれない。
レヴィさんが話を進めていたけど、まずはレスティナさんが一人ずつ紹介する、という事で視線を見た事がない人たちに向けた。
「事前に順番を決めた通りに挨拶をお願いします。まずは、クロトーネの女王、ジュリア・ディ・クロトーネ様」
名前を呼ばれて立ち上がったのは、見たまんま魔女! という感じの人だった。王冠を被ってないから女王様とは思わなかったけど。
「ジュリア・ディ・クロトーネよ。気軽にジュリアと呼んでくれたら嬉しいわ。私の国の魔法学校は有名でね、他国からも留学生が来てるのよ? 興味があったらいつでも言って頂戴。案内させていただくわ」
なるほど、向こうの大陸でいうとドタウィッチみたいなものか。
座ったまま話をしていたジュリア様の視線が僕からレスティナ様へと移った。
「それでは次の方――」
「儂だな」
レスティナ様が名前を呼ぶ前に立ち上がったのはずんぐりむっくりとした体型のドワーフの男性だった。さっきから僕をじろじろと見ていたんだけど、この人もアダマンタイト狙いだろうか。
「儂の名はユルゲン。ルツハイムで一番の職人であり王でもある。アダマンタイトの加工をする事が目標だったんじゃが先を越されてしまったな。じゃが、まだ加護を使わずに加工をする方法は確立されておらんから、引き続きそれを探求しようと考えておる。よって、これ以上アダマンタイトは出さん!」
「あ、はい」
「支払いはアダマンタイト以外にも受け付けているのですわ。交渉は私が担当をしているのですわ。また後で話すのですわ」
「うむ」
満足気に座ったユルゲン様を呆れた様子で見ていたレスティナ様だったけど、僕の視線に気づいて表情を取り繕った。
「……では、次はアルソットの女王、ナーディア・ディ・アルソット様」
「ん」
呼ばれて立ち上がったのは別館で働いているダーリアと同じ種族の女性だった。
尖った耳が特徴的だけど、エルフと違って肌が黒いダークエルフだ。体型も出るとこは出ていて、引っ込むところは引っ込んでいる。
「砂漠の民の女王、ナーディア。よろしく」
「……もうよろしいのですか?」
「ん」
ドーラさんを彷彿とさせる喋り方だけど、表情は豊かだった。単純に口下手なだけなのかもしれない。
「そうですか。では、ハイランズの王、ダニエル・ハイランズ様」
「ああ」
のそっと立ち上がったのは獣人の男性だった。熊のような耳と大柄な体格からたぶん熊人族だと思う。
髪は真っ白だけど、耳は黒いからパンダかもしれない。その場合は……熊猫人族???
「ダニエル・ハイランズだ。クレストラ大陸唯一の獣人の国を統治している。一部の勇者様は獣人を好むと聞くがシズト様は……?」
「まあ、嫌いではないです……」
魅力的だよね、モフモフの尻尾も猫耳も。
「であれば我が国に来た際にはきれいどころを集めて歓待しよう」
「あ、そういうのは間に合ってますので大丈夫です。美味しいご飯とか、見どころの場所とか教えてもらえると嬉しいです」
「む? そうか。分かった、調べさせておこう」
セーフ! 危なかった。発言に気を付けないと。これ以上は増やさないって決めてるし。
まだまだ知らない人もいるし、気を引き締めて行こう。
馬車から降りてレヴィさんと一緒に案内されるがまま建物の中を歩いていると、目的の部屋へと辿り着いた。
「あ、忘れてたのですわ」
レヴィさんがいそいそと魔道具『加護無しの指輪』を指から外して、紐を指輪の穴に通すと首から下げる。
それから僕を見上げて「シズトは大丈夫ですわ?」と聞いてきたので頷いておく。
準備に関しては大丈夫だ。緊張の方はやばいけど。
案内をしてくれたエルフたちが両開きの扉を開けてくれたので、レヴィさんに合わせてゆっくりと中に入る。
室内にいた人の視線がギュッと集まってやばい。
とりあえず笑って自己紹介をしたけど、当然だけど皆僕の事は知っていたようだ。
レヴィさんに促されて空いていた席に腰かけると、隣はギュスタン様だった。
僕と同じくらい緊張しているのか、額の汗をしきりに拭いている。
「畑はどうですか?」
「畑……ああ、おかげさまで一気に耕す事ができました。魔道具で作ったたい肥を与えてみてるんですけど、雑草がたくさん生えるのでちょっと大変です」
「へー、そうなんですねぇ」
「シズト様が管理している畑はやはり魔道具で対応しているんですか?」
「草刈り用の魔道具はありますけど、雑草を抜くのはないですね。ドライアドと町の子たち……じゃなくて奴隷の子たちにお願いしてるんです」
「………ドライアド」
「指示しなくても草は抜いてくれるんですけど、勝手に変なの植えちゃうのが玉に瑕ですけどね」
「………なるほど」
「シズト、緊張をほぐすために話をするのは良いのですけれど、他の方々も混ぜるのですわ」
「え? あ! あー……」
僕とギュスタン様の話を聞いていた面々は表情には出ていないけど、呆れているのかもしれない。
ギュスタン様もドバっと出た汗を再びせっせと拭き始めたけど、僕も脇の汗がやばい。
どう話題を振るべきか考えたけど思いつかなかったので、僕の隣に腰かけていたレヴィさんにそっと顔を近づける。
「何話せばいいの?」
「特に言いたい事がなければ私が話すのですわ?」
「お願いします」
「任せるのですわ!」
フンスッとやる気満々なレヴィさんに任せて、僕は置物と化そうか。それともギュスタン様と話の続きをしようか……あ、はい。大人しくしてればいいんすね。
レヴィさんが満足そうに頷いたので、僕は目の前に出されたお茶菓子を食べながらのんびりと話を聞く。
今回の集まりの目的は、新しく加盟した国々の代表者との顔合わせがメインらしい。交渉事があればレヴィさんに任せるつもりだけど、顔合わせ程度なら僕も発言しても問題は起きないかもしれない。
レヴィさんが話を進めていたけど、まずはレスティナさんが一人ずつ紹介する、という事で視線を見た事がない人たちに向けた。
「事前に順番を決めた通りに挨拶をお願いします。まずは、クロトーネの女王、ジュリア・ディ・クロトーネ様」
名前を呼ばれて立ち上がったのは、見たまんま魔女! という感じの人だった。王冠を被ってないから女王様とは思わなかったけど。
「ジュリア・ディ・クロトーネよ。気軽にジュリアと呼んでくれたら嬉しいわ。私の国の魔法学校は有名でね、他国からも留学生が来てるのよ? 興味があったらいつでも言って頂戴。案内させていただくわ」
なるほど、向こうの大陸でいうとドタウィッチみたいなものか。
座ったまま話をしていたジュリア様の視線が僕からレスティナ様へと移った。
「それでは次の方――」
「儂だな」
レスティナ様が名前を呼ぶ前に立ち上がったのはずんぐりむっくりとした体型のドワーフの男性だった。さっきから僕をじろじろと見ていたんだけど、この人もアダマンタイト狙いだろうか。
「儂の名はユルゲン。ルツハイムで一番の職人であり王でもある。アダマンタイトの加工をする事が目標だったんじゃが先を越されてしまったな。じゃが、まだ加護を使わずに加工をする方法は確立されておらんから、引き続きそれを探求しようと考えておる。よって、これ以上アダマンタイトは出さん!」
「あ、はい」
「支払いはアダマンタイト以外にも受け付けているのですわ。交渉は私が担当をしているのですわ。また後で話すのですわ」
「うむ」
満足気に座ったユルゲン様を呆れた様子で見ていたレスティナ様だったけど、僕の視線に気づいて表情を取り繕った。
「……では、次はアルソットの女王、ナーディア・ディ・アルソット様」
「ん」
呼ばれて立ち上がったのは別館で働いているダーリアと同じ種族の女性だった。
尖った耳が特徴的だけど、エルフと違って肌が黒いダークエルフだ。体型も出るとこは出ていて、引っ込むところは引っ込んでいる。
「砂漠の民の女王、ナーディア。よろしく」
「……もうよろしいのですか?」
「ん」
ドーラさんを彷彿とさせる喋り方だけど、表情は豊かだった。単純に口下手なだけなのかもしれない。
「そうですか。では、ハイランズの王、ダニエル・ハイランズ様」
「ああ」
のそっと立ち上がったのは獣人の男性だった。熊のような耳と大柄な体格からたぶん熊人族だと思う。
髪は真っ白だけど、耳は黒いからパンダかもしれない。その場合は……熊猫人族???
「ダニエル・ハイランズだ。クレストラ大陸唯一の獣人の国を統治している。一部の勇者様は獣人を好むと聞くがシズト様は……?」
「まあ、嫌いではないです……」
魅力的だよね、モフモフの尻尾も猫耳も。
「であれば我が国に来た際にはきれいどころを集めて歓待しよう」
「あ、そういうのは間に合ってますので大丈夫です。美味しいご飯とか、見どころの場所とか教えてもらえると嬉しいです」
「む? そうか。分かった、調べさせておこう」
セーフ! 危なかった。発言に気を付けないと。これ以上は増やさないって決めてるし。
まだまだ知らない人もいるし、気を引き締めて行こう。
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