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第21章 魔道具を作りながら生きていこう

420.事なかれ主義者は休ませたい

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 朝ご飯を食べた後、ドライアドたちに見られながらクレストラ大陸へと転移した。
 出迎えてくれたのは、日本人っぽい黄色い肌の小柄なドライアドたちと、鎧武者のような恰好をしたホムンクルスだった。
 彼の名前はムサシ。世界樹フソーの見張り役として作った新たなホムンクルスだ。
 万が一の事も考えて、少しでも強いホムンクルスを作ろうと、ホムラに言われるがままSランクの魔石に付与したけど、まだ彼の実力は知らない。多分強いと思う。
 ラオさんたちよりも大きいけれど、ライデンのように横にも大きい訳じゃない。
 がっしりと鍛え上げられ引き締まった体に甲冑を身に纏っているから威圧感はすごいけどね。

「久しぶりでござるなぁ、主殿」
「久しぶり、ムサシ。こっちはどんな感じ?」
「そうでござるなぁ。変わった事と言えば、異大陸の国であるガレオールと繋がった事を契機に、ここよりも北にある国々が漏れなく転移門を欲した事ぐらいでござるな」
「ヤマトの方は?」
「なーんもちょっかいかけてこないでござるよ。拙者、猛者が攻めて来るやもしれぬ、と思って待っており申したが、飛んでくるのは鳥ばかりでござるよ。北側の国十三ヵ国が同盟を結んで国境線で睨みを利かせているからでしょうなぁ」
「なるほど」
「それはそうと、後ろの方々に拙者の事を紹介して頂いてもよいでござるか? ドライアドたちも落ち着かないみたいでござるし」
「あー、そうだね。周りの事はまた後でゆっくり聞かせてね」
「分かったでござる」

 久しぶりに会ったムサシとのんびり話をしている間に、後ろで一緒に転移してきた皆がドライアドたちに囲まれていた。
 よくこっちに来る面々は流石に覚えたみたいだけど、初めてこっちに来た人たちを警戒しているようだ。
 ムサシに説明するついでに、ドライアドたちにも紹介しないと、と慌てて皆の紹介をすると、ドライアドたちの険しかった表情が和らいだ。
 散り散りに去っていくドライアドたちを見送り、僕たちも一先ず屋敷の中に入る。しれっと数人のドライアドたちも入ってこようとしたけど、ムサシが丁重に扱って外に出していた。

「モニカ達の部屋はどうするのですわ?」
「んー……とりあえず、周りの町のどこかに寝泊まりする?」
「警備の視点で考えると、可能であれば一つの場所に集まっていて欲しいです」
「まあ、そうだよね」

 ジュリウスの言う通り、守る相手は固まっていた方が良い。
 ただ残念な事に、一人で使うには広いこの建物も、この大所帯で寝泊まりすると考えると手狭だった。
 今までも寝室ではなさそうな所に寝具を置いていたし。

「情勢次第ですけれど、旧市街地の宿屋を貸し切って泊まるのもありかもしれないのですわ」
「なるほど? 街の様子を確認できるし一石二鳥かな」
「高級旅館として有名だった場所があったはずです。そちらにご宿泊されてはいかがでしょうか」
「確か大部屋もあったのですわ! 早速確認してくるのですわ~」

 レヴィさんが勢い良く部屋から出て行った。その後を追って、セシリアさんとドーラさんが出て行く。
 ホムラとユキは建物の増築、もしくは建築をするための業者を探しに行くそうだ。

「揉め事起こさないようにね」
「心得ております、マスター」
「向こうが何もしてこなければ問題ないわ、ご主人様」
「何かされてもできれば逃げの一手でお願いしたいなぁ」

 とは言っても、逃げられない状況や逃げてはいけない場合もあると知っている。
 大事にならない程度に対応してほしいなぁ。

「アタシらもついて行って見張っとくから心配すんな」
「と言っても、お姉ちゃんたちでもホムラちゃんたちを止めるのはちょっと無理かもしれないんだけどね……とにかく、頑張るわ」

 冒険者として武装したラオさんとルウさんがホムラとユキのお目付け役をしてくれるようだ。

「パメラたちは何するデスか?」
「こっちでも夜の警備するじゃん?」
「んー……ここで寝泊まりするなら別にいらないんだけど、宿に泊まるならお願いするかも? でも、どうせ泊まるなら観光気分を皆で楽しみたいし……。ジュリウス、アダマンタイトの残量は?」
「補充されておりますから、建物がある区画を囲うくらいは造作もないかと」
「同盟国に新規参入した国々に、転移門と交換でアダマンタイトを集めておいたでござるよ。身体強化をフルで使えば扱えなくもない重量級の武器は手に入らなんだが、大きな像や、防具などは扱い難いという事でどの国も一定量は出してくれたでござる。ただ、追加で魔道具を求められた時は、アダマンタイト製の何かではなく、貨幣で支払う所が殆どだったから、潤沢にって程ではないでござる」
「今回は例外だけど、アダマンタイトなんて使う事そうそうないから程々でいいよ」

 ただ持ってるだけだったら宝の持ち腐れだしね。

「どちらにせよ、アダマンタイトで囲っちゃうから夜の警備はなしでいいよ」
「じゃあ思いっきり遊ぶデス!」
「私はどうしましょうか」

 エミリーがおずおずと尋ねてきた。アイテムバッグの中に非常食用の備蓄はあるとはいえ、温かいご飯は食べたい。

「ご飯は作って欲しいけど、それ以外は自由で。……人手が足りなかったら手伝うけど?」
「レヴィア様について来た近衛騎士や、ジュリウスの部下たちの分も作るとなると私一人では足りませんが……」
「外の面々は各々準備させますから不要です」
「では、私一人で十分です」
「よろしくね。モニカもやる事ないだろうし、のんびり過ごしてていいよ」
「……分かりました」

 元奴隷の彼女たちはずっと働き詰めだし、たまには休憩も大事だよね。
 まあ、一部の人間は無理してでも時間を作って趣味に没頭している訳なんだけど……。
 ついて来た……というよりも引っ張ってきたノエルに視線を向けると、魔道具をじっくりと観察していた。
 こっちについて来る条件として、こっちにいる間はノルマはなし、という事になったから置いてあった椅子に座ってからはずっと魔道具に夢中だ。

「一人既に自由行動に移ってるけど……とりあえず、宿に泊まるのかこっちに泊まるのか決まるまでは自由行動で」

 僕がそう言うと、各々返事をしてばらばらに行動し始めた。
 パメラは窓から飛び出して行ったし、モニカは「間取りを確認してきます」と言って部屋から出て行った。
 エミリーも厨房を見たい、という事でモニカについて行き、シンシーラも万が一に備えて間取りを覚えるために後を追った。
 部屋に残ったのは僕とジュリウス、それからノエルだった。

「僕もとりあえず世界樹のお世話でもしようかな。ノエルはここにいる?」
「そっすね」
「そう。じゃあ、窓から覗き込んでるドライアドたちに気を付けてね。何もしてこないと思うけど、気づいたら近くにいる事もあるし、ぶつかって泣かせちゃだめだよ」
「分かったっす」

 視線を魔道具から全く外す事なく答えるノエルを置いて、僕も部屋を後にするのだった。
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