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第21章 魔道具を作りながら生きていこう

幕間の物語205.お嫁さんたちは詳しく聞きたい

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 シズトと結婚した者たちは、夜な夜な屋敷の二階にある談話室に集まって話をしていた。
 それは他愛もない話であったり、シズトの事だったり様々だったが、今はガレオールの女王であるランチェッタ・ディ・ガレオールが話をしていた。
 腕を組んでいるせいで、小柄な体格に不釣り合いなほど大きく育った胸が強調されているが、それを凝視するような者はここにはいなかった。

「アトランティアから使者が来て、正式に謝罪されたわ。大方の予想通り、暴走した王子にすべての責任を負わせるようね」

 灰色の髪の上にいつも乗せている豪華な王冠はなく、今は可愛らしいナイトキャップを被っている。
 報告用にまとめられた紙を眺めていた面々の内、一番最初に口を開いたのはシズトの第一夫人であるレヴィア・フォン・ドラゴニアだ。
 金色の縦巻きロールを指で弄りながら彼女は視線をランチェッタへと向けた。

「ガレオール側としてはどうするのですわ?」
「どうもしないわ。無駄に争った所で、どっちにとっても不毛な事だし。ただ、だからといって今更船を使った交易を再開もしないわ。無駄にお金がかかるし、なにより転移門の便利さを知ってしまった商人たちが、今更危険と隣り合わせの海の旅を選ぶとは到底思えないし」
「月に一回程度とはいえ、一瞬でクレストラ大陸に行けてしまうから当然ですわね」
「ええ。向こうとしては交易船団の護衛を再開したいようだったけど、どうしようもないからそっちで新規の取引相手を探すように伝えておいたわ。これで一段落着いたし、シズトは明日にでもクレストラ大陸に行ってしまうのかしら?」
「そうですわね。他の国々もちょっかいをかけて来ないみたいですし、明日には出発すると思うのですわ」
「今回は誰がついて行くのかしら?」

 尋ねられたレヴィアは、視線を動かして、静かに話を聞いていた赤髪の姉妹に目を向けた。
 大柄な体格に真っ赤に燃える炎のような赤い目と髪が特徴的なその二人は、Bランク冒険者のラオとルウだ。今はシズト専属として働いている。
 二人とも暑がりという事もあり、薄い布地のタンクトップを着ていた。
 胸元が大きく開いていて、大きな胸が谷間を作っているが、それを見ている者はやはりいない。

「とりあえずアタシとルウは確定だな」
「シズトくんをしっかりと守るわ!」
「ジュリウスが行けないような場所は任せたのですわ。私も他の国と交渉するかもしれないからついて行くのですわ」
「私はぁ、こちらに残ろうと思いますぅ」

 レヴィアに続いて発言をしたのはエルフのジューンだ。
 腰まで伸ばした緩く波打った金色の髪や、優しい眼差しの緑色の瞳、それから細長く尖った耳はエルフの特徴と一致するのだが、細身の者が多いエルフの中で、彼女はエルフらしからぬ体型をしていた。
 レヴィアやランチェッタほどではないが大きく膨らんだ胸部と臀部は、エルフの正装を着るとよりはっきりと分かってしまう。
 体型についてコンプレックスを抱いていた当初は正装を着る事に抵抗を感じていた彼女だったが、エルフの価値観が全てじゃないと理解した彼女は、正装を着ても何も感じなくなっていた。

「何かあった時にエルフに指示を出すのをお願いするのですわ! ドーラは私の護衛としてついて来るのですわ」
「……ん」

 若干返答に間があったのは、自分の胸に視線を向けて何やら触れていたドーラだ。
 妾腹から生まれた彼女は、現ドラン公爵の腹違いの妹にあたる。そのため、ドラゴニア王家とも血縁で、その特徴が色濃く出ていた。
 金色の髪は動きやすさを重視するために短く切り揃えられていて、レヴィアと同じく青い瞳はいつも眠たそうな印象御与えるジト目だ。
 貴族の中でも数少ない複数の加護持ちでもある。

「私たち元奴隷はこちらでお留守番ですね」
「つまらないデース!」
「しょうがないじゃん」

 没落貴族の娘だったモニカに対して、翼人のパメラは文句を言ったが、狼人族のシンシーラは窘めた。
 バサバサと黒い翼も使って抗議を止めないパメラを見て、レヴィアは首を傾げた。

「別について来てもいいのですわ?」
「ほんとデスか!?」
「私たちだけ良い思いするのは良くないと思うのですわ」
「こっちの護衛はどうするじゃん?」
「あってないようなものだから別にいいような気もするけどな。エルフは昼夜問わず目を光らせてるし」
「ドライアドやフェンリルもいるのですわ」

 ラオの発言に続いて付け加えるように言うと「まあ、フェンリルがいるような場所に忍び込もうとする奴はそうそういないと思うじゃん……」とシンシーラが呟いた。
 実際、夜の警備の際に侵入者が入ってくるのは稀だった。
 時々どこかから転移してくる者たちもいたが、フェンリルに吹っ飛ばされ、ドライアドたちにぐるぐる巻きにされ、翌日には世界樹の枝に吊るされている。

「そうですね。二人は行ってしまっても問題ないと思います。私はドランの屋敷で来客対応がありますから難しいですが」
「そこもエルフに頼めば何とでもなると思うのですわ~。ジュリウスにいえば貴族の対応ができる者を派遣してくれると思うのですわ!」
「リリアーヌちゃんに話をしてみてもいいかもしれませんねぇ。トネリコでも何かお役に立ちたいっていう人はいますからぁ」
「ですが……」
「向こうではビッグマーケットの影響で貴族との交渉も増えているのですわ。私とジューンだけでは手が足りない時に手伝ってほしいのですわ!」
「……分かりました」
「本館に住んでいる人は全員向こうに行ってしまってもいいかもしれないですわね……ホムラとユキも行くのですわ?」
「当然です」

 話を振られたホムラは、無表情のままこくりと頷いた。
 その隣にだらけた姿勢で座って気だるそうに話を聞いていたユキもゆっくりと頷く。

「魔道具店の様子も気になるから行くしかないさね」
「今日の当番のエミリーちゃんにはぁ、明日の朝に聞いてみますねぇ」
「お願いするのですわ。そういう訳だから、セシリアには準備をお願いするのですわ」
「すでに準備は終えております」
「流石なのですわ~」

 明日の予定が決まればその後は今日のシズトの行動などの共有に話が移った。
 それまで空気と化して魔道具をじっくりと観察していたノエルは、お姫様抱っこの件について追及されたのだが、魔道具に夢中だったのかホムラに頭を鷲掴みにされるまで何も反応する事はなかった。
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