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第19章 自衛しながら生きていこう

390.事なかれ主義者は念のため拡張した

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「真っ赤になってて可愛かったのですわ~。魔道具で記録して、みんなに見せたかったのですわ~」
「絶対やめてね?」

 その場の流れのままランチェッタさんからプロポーズされてオッケーをしたんだけど、レヴィさんがずっと弄ってくる。
 周囲に味方はいないようなので、そそくさと目的地へと向かっているんだけど、後ろでは新たに加わったお嫁さんと皆が楽しそうに話をしているのが聞こえてくる。

「時間のある時に会議に参加するのですわ。そこでシズトの他のお嫁さんを紹介するのですわ~」
「分かったわ。……どんな格好がいいのかしら?」
「別に堅苦しくなくていいのですわ。ただ、夜に行う事が多いから寝間着姿の人が多いのですわ」
「ランチェッタ様、私たちも寝間着で参加しますか?」
「向こうに泊まるのであればそれもありかもしれないけれど、王城に戻るだろうからそうするわけにはいかないでしょ? 街の中はまだいいとしても、王城に着いたら自室まで寝間着で歩く事になるのよ?」
「馬車の中で着替えてはいかがでしょうか」
「面倒だわ」

 薄々そうなるかな、と思っていたけどディアーヌさんとも結婚する事になった。
 レヴィさんの時もセシリアさんがセットでついて来たけど、そういうものなのだろうか、等と現実逃避をしていても後ろで話をしている人たちは会話を止める気がないようだ。

「情報共有と言っていたけど、会議では何を話しているの?」
「主にシズトの話をするのですわ。どんな食べ物を食べてどんな反応だったかとか、誰と会ってどういう様子だったかとか。あとは夜の営みとかですわね」
「それはぜひともご教授して頂きたいわね」

 そういう話は日が暮れてからしてほしいなぁ。
 周囲にほとんど人がいないからって油断しすぎじゃないかな。
 そんな事を思いつつ先頭を歩いているジュリウスについて行くと、目的地の『実験農場』と呼ばれている場所に辿り着いた。

「人間さんこんにちは~」
「誰が来たの~?」
「いっぱいいるのー」
「でもみんな知ってる人なのー」
「じゃあ仕事に戻るの~」

 わらわらと集まってきたドライアドは僕の後ろからついて来た人たちをじろじろと見た後、満足したのか畑に戻っていった。
 問題なく植物のお世話をしているようで何よりだ。
 光合成……というかひなたぼっこ? をしているドライアドたちを踏んづけてしまわないように、足元に気を付けながら転移陣へと向かう。
 転移陣の近くで、転移陣の一部分をお尻に敷いてボーッと日向ぼっこをしていたドライアドに声をかけて転移陣を組み立ててもらった。
 その間にジュリウスがアイテムバッグから取り出した複数の高ランク魔石を台座に設置していた。
 向こうの準備は既に終わっていたようで、魔石を台座にセットすると、すぐに転移陣が淡く輝き始めた。

「まだまだ色々話したい事があるのですけれど、とりあえず数日後戻って来た時の夜にでも話すのですわ」
「分かったわ。それまでに急ぎの仕事やら結婚に関する諸々の準備は進めておくわ」
「何かトラブルが起きたら、共有のアイテムバッグの中に手紙を入れて知らせて欲しいのですわ。同じ人を伴侶にした者同士ですし、加護を使った事情聴取でもなんでも、出来る限り協力するのですわ!」
「ありがとう。あまり迷惑かけないように頑張るけれど、どうしようもなくなる前に言うようにするわ」
「私が確認しておきますのでご安心ください。放っておくとすぐに無理をしてしまうのでしっかりと見張っておきます」
「貴女に見張られなくても大丈夫よ。……それじゃあ、シズト殿。気を付けて行ってきなさい。次会える時を楽しみに待っているわ」
「ランチェッタさんも元気でね。それじゃあ、行ってきます」

 全員が転移陣に乗れるほどの大きさの魔法陣の上でランチェッタさんに別れの挨拶を済ませると、転移陣の輝きが増した。
 そうして、眩しいほど輝いたかと思えば、次の瞬間には景色が変わっていた。
 先程まではこじんまりとした開けたスペースに畑がある程度だったが、今目の前には雲の上にまで伸びている巨大な木があった。
 見上げてみると、まだ巨大なフクロウは固まったままだった。その隣にいたお菊ちゃんは……何をしているのかよく分からないけど、たぶん日向ぼっこをしているのだろう。こちらに気付いた様子もない。

「レヴィ様。夕食の準備がありますから私は厨房におりますが、くれぐれも勝手な行動はしないようにしてくださいね。シズト様、レヴィ様の手を握っておいてください」
「あ、はい」

 口を開けて一緒に上を見上げていたレヴィさんの手と、僕の手を取って握らせたセシリアさんは満足そうに頷くと建物へと向かって行った。
 僕じゃ抑えきれないと思うんだけどなぁ、とレヴィさんを見ると、レヴィさんは繋がれた僕の手を見てにぎにぎして見たり指の先で手のひらをくすぐろうとしたりしている。
 左手の薬指にはブラックダイヤモンドの指輪を嵌めているけど、中指にも『加護無しの指輪』という魔道具を付けていた。
 近衛兵や世界樹の番人たちは野営の準備をし始めていて、その様子をドライアドたちが物珍しそうに見ている。……いや、邪魔してるな、あれ。彼らのための家も早めに作ってあげた方が良いかもしれない。
 僕の護衛としてついて来たラオさんやルウさんは近くで何やら話をしていて、レヴィさんの護衛のドーラさんはボーッと森の方を見ていた。
 ホムラとユキは何をしているのかと視線を向ければ、ドライアドたちに囲まれてジロジロと観察されているのに、気にした様子もなく、こっちに残っていたライデンと話をしていた。
 僕が視線を向けた時には情報共有がある程度終わっていたのか、ホムラが僕に近寄ってくる。
 それにつられてドライアドたちもやってきたけど、ホムラとはつかず離れずの距離を保っていた。

「大きな問題は特になかったようです、マスター」
「それはよかった。ヤマトが何かしてくるかなぁ、って思ったけど、アダマンタイトで入って来れないようにして正解だったね」
「ヤマトは攻めてきていたそうですよ、マスター」
「………せめてきた?」
「はい、マスター。シュウイチと名乗る者が現われてから、アダマンタイトと知らずに両断しようと魔法を放って森に被害が出ているそうです。アダマンタイトには傷一つついていないようですが、格子状にしたため、すり抜けた魔法が木々を両断したり燃えたりしてしまっているそうです」
「………なるほど」
「いかがなさいますか、マスター」
「どうしようねぇ……」

 とりあえず、地面を掘って入って来れないように、もう少し土の中のアダマンタイトを伸ばしておこうかな。
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