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第19章 自衛しながら生きていこう
389.事なかれ主義者はしてもらった
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ディアーヌさんの補足付きのランチェッタさんのお話によると、どうやら隣国の王子からの縁談の話は前々からあった事らしい。
ただそれは女王であるランチェッタさんが却下し続けていたらしい。
「今はだいぶ規模が縮小してしまっている公爵派が焚きつけたんでしょうね。相手は第二王子だけど、わたくしの事は正妻としてではなく、側室として隣国に来いって言っているわ。そうなったら王であり続ける事は無理だろうし、公爵家の者から次代の王を出そうと画策しているんだと思うわ。仮に今回の話を断ったら、船の護衛をしなくなるだけじゃなくって、はるか昔のように船が襲われる可能性も出てくるわ。そうなったら公爵派は糾弾するでしょうね」
なるほど、どっちに転んでも公爵派としては良いという事か。
「裏で繋がっているんでしょうから、公爵家の庇護を受けている商人は今まで通り交易できるでしょうし、経済的に力をどんどんつけていく事も出来るでしょうね」
ランチェッタさんが眉間に皺を寄せながらため息を吐いた。
静かに話を聞いていたレヴィさんに視線を向けると、彼女はこくりと頷いた。
「まあ、概ね女王派じゃない者たちの狙いはそこだと思うのですけれど、海の問題とか流通の問題とかはシズトが本気を出せばどうとでもなると思うのですわ」
「どうとでもならないよ!?」
「転移門や転移陣があるのですわ。その利便性は既にガレオールの王家直轄地に転移門を設置して確認済みですわ?」
「……そうね。あれをそれぞれの街に設置してもらえるだけで不満はある程度抑えられるんじゃないかしら?」
「国内だけにとどまらず、国外とも繋げたら大きな経済効果がある事はクレストラ大陸で既に実証実験済みですわ。当然、ある程度約束事を取り決める必要があるのですけれど、経済的な事で文句は言えなくなるんじゃないかと思うのですわ」
「でも、今まで船で交易していた人が困るんじゃない? それに、船を出すのは商人だけじゃなくて漁師もでしょう?」
「漁師に関してはあまり心配しなくても大丈夫ですよ。魚人族の者が大多数を占めていますから、関係が悪化したら向こうから捕らないぞ、って言ってくるでしょうし。商人に関しても、補填をすればある程度理解は得られるでしょう。商人たちから嫌われるほど、魚人族は足元を見てきましたからね」
僕の質問に答えてくれたのは、おかわりの紅茶を淹れてくれたディアーヌさんだった。
彼女からティーカップを受け取って、一口飲んでいると、レヴィさんがディアーヌさんに問いかけた。
「食生活が大きく変わってしまうとストレスが大きいかもしれないですけれど、そこは大丈夫なのですわ?」
「未知数ですね。お金儲けが大好きな国民性ですから、税を下げるなどするのも一つの手でしょう。まあ、どれもこれも仮定の話だから実際はどうなるか分からないのですけれどね」
ディアーヌさんが肩をすくめてそういうと、レヴィさんも「それもそうですわね」と頷いた。
「大事なのはランチェッタ女王陛下が魚人族の王子を選ぶのか、それともシズトを選ぶのかですわね。地位や影響力で考えたらシズトの圧勝ですけれど、今までの関係性を維持したいなら魚人族の王子との結婚も選択肢の一つですわね」
「影響力は何となくわかるけど、地位って? 僕は平民なんだけど?」
「平民ですけれど、一国の王女の夫であり、二か国の王ですわ。ああ、もう一か国増えるかもしれないですわね?」
「………?」
「代理人を立てているけれど、それはあくまで代理人。何もしてなくてもエルフの国の王はシズトなのですわ。フソーも人が集まればそうなると思うのですわ。ああ、それとドラゴニアの王から下賜された土地は自治を認められているから独立を宣言すれば独立国にもなれるのですわ~」
「………そっすか」
まあ、確かにニホン連合には世界樹の使徒として顔を出してるもんな。
全部丸投げしていてお飾りだとしても世界樹の使徒という事は王様みたいなもんか。
……ドラゴニアの方は貴族として扱われると思っていたら独立国とか言われてびっくりしたけど、税を納めろとか言われてないからそういう事だったのかも? てっきり身内だし転移者だからまあ、と言った感じで見逃がしてもらってるのかと思った。
「それで、ランチェッタ女王陛下のお考えはどうなのですわ? 結婚したいのは、どっちなのですわ?」
「シズト殿に決まっているわ。関わった回数は少ないし、まだレヴィア殿下たちと同じくらいシズト殿を慕っているとは言えないけれど、それは少しずつ育んでいくものだと思っているわ。だからこそ、文通やお茶会をさせてもらっているんだから」
レヴィさんの問いに対する答えは迷う様子もなく即答だった。まっすぐにレヴィさんを見つめていて、レヴィさんも真っすぐに見つめ返している。
心の奥底までしっかりと見定めるかのようなその目つきは、実際に心の中を加護を使って意図的に覗いているのだろう。
しばらく見つめ合っていたレヴィさんだったけど、満足した様子で一度大きく頷いた。
「で、あれば後はシズトの気持ち次第ですわね」
「何が?」
「今回は婚約程度じゃ抑えきれないと思うのですわ。シズトもランチェッタ女王陛下に求婚するか、求婚を受け入れるのですわ~」
「……それって、どうしても必要?」
「必要なのですわ~」
そっか、必要なのか……。
チラッとランチェッタさんを見ると、彼女はまっすぐに僕を見ていた。
…………ちょっと心の準備ができてないから僕からは無理っす。
ただそれは女王であるランチェッタさんが却下し続けていたらしい。
「今はだいぶ規模が縮小してしまっている公爵派が焚きつけたんでしょうね。相手は第二王子だけど、わたくしの事は正妻としてではなく、側室として隣国に来いって言っているわ。そうなったら王であり続ける事は無理だろうし、公爵家の者から次代の王を出そうと画策しているんだと思うわ。仮に今回の話を断ったら、船の護衛をしなくなるだけじゃなくって、はるか昔のように船が襲われる可能性も出てくるわ。そうなったら公爵派は糾弾するでしょうね」
なるほど、どっちに転んでも公爵派としては良いという事か。
「裏で繋がっているんでしょうから、公爵家の庇護を受けている商人は今まで通り交易できるでしょうし、経済的に力をどんどんつけていく事も出来るでしょうね」
ランチェッタさんが眉間に皺を寄せながらため息を吐いた。
静かに話を聞いていたレヴィさんに視線を向けると、彼女はこくりと頷いた。
「まあ、概ね女王派じゃない者たちの狙いはそこだと思うのですけれど、海の問題とか流通の問題とかはシズトが本気を出せばどうとでもなると思うのですわ」
「どうとでもならないよ!?」
「転移門や転移陣があるのですわ。その利便性は既にガレオールの王家直轄地に転移門を設置して確認済みですわ?」
「……そうね。あれをそれぞれの街に設置してもらえるだけで不満はある程度抑えられるんじゃないかしら?」
「国内だけにとどまらず、国外とも繋げたら大きな経済効果がある事はクレストラ大陸で既に実証実験済みですわ。当然、ある程度約束事を取り決める必要があるのですけれど、経済的な事で文句は言えなくなるんじゃないかと思うのですわ」
「でも、今まで船で交易していた人が困るんじゃない? それに、船を出すのは商人だけじゃなくて漁師もでしょう?」
「漁師に関してはあまり心配しなくても大丈夫ですよ。魚人族の者が大多数を占めていますから、関係が悪化したら向こうから捕らないぞ、って言ってくるでしょうし。商人に関しても、補填をすればある程度理解は得られるでしょう。商人たちから嫌われるほど、魚人族は足元を見てきましたからね」
僕の質問に答えてくれたのは、おかわりの紅茶を淹れてくれたディアーヌさんだった。
彼女からティーカップを受け取って、一口飲んでいると、レヴィさんがディアーヌさんに問いかけた。
「食生活が大きく変わってしまうとストレスが大きいかもしれないですけれど、そこは大丈夫なのですわ?」
「未知数ですね。お金儲けが大好きな国民性ですから、税を下げるなどするのも一つの手でしょう。まあ、どれもこれも仮定の話だから実際はどうなるか分からないのですけれどね」
ディアーヌさんが肩をすくめてそういうと、レヴィさんも「それもそうですわね」と頷いた。
「大事なのはランチェッタ女王陛下が魚人族の王子を選ぶのか、それともシズトを選ぶのかですわね。地位や影響力で考えたらシズトの圧勝ですけれど、今までの関係性を維持したいなら魚人族の王子との結婚も選択肢の一つですわね」
「影響力は何となくわかるけど、地位って? 僕は平民なんだけど?」
「平民ですけれど、一国の王女の夫であり、二か国の王ですわ。ああ、もう一か国増えるかもしれないですわね?」
「………?」
「代理人を立てているけれど、それはあくまで代理人。何もしてなくてもエルフの国の王はシズトなのですわ。フソーも人が集まればそうなると思うのですわ。ああ、それとドラゴニアの王から下賜された土地は自治を認められているから独立を宣言すれば独立国にもなれるのですわ~」
「………そっすか」
まあ、確かにニホン連合には世界樹の使徒として顔を出してるもんな。
全部丸投げしていてお飾りだとしても世界樹の使徒という事は王様みたいなもんか。
……ドラゴニアの方は貴族として扱われると思っていたら独立国とか言われてびっくりしたけど、税を納めろとか言われてないからそういう事だったのかも? てっきり身内だし転移者だからまあ、と言った感じで見逃がしてもらってるのかと思った。
「それで、ランチェッタ女王陛下のお考えはどうなのですわ? 結婚したいのは、どっちなのですわ?」
「シズト殿に決まっているわ。関わった回数は少ないし、まだレヴィア殿下たちと同じくらいシズト殿を慕っているとは言えないけれど、それは少しずつ育んでいくものだと思っているわ。だからこそ、文通やお茶会をさせてもらっているんだから」
レヴィさんの問いに対する答えは迷う様子もなく即答だった。まっすぐにレヴィさんを見つめていて、レヴィさんも真っすぐに見つめ返している。
心の奥底までしっかりと見定めるかのようなその目つきは、実際に心の中を加護を使って意図的に覗いているのだろう。
しばらく見つめ合っていたレヴィさんだったけど、満足した様子で一度大きく頷いた。
「で、あれば後はシズトの気持ち次第ですわね」
「何が?」
「今回は婚約程度じゃ抑えきれないと思うのですわ。シズトもランチェッタ女王陛下に求婚するか、求婚を受け入れるのですわ~」
「……それって、どうしても必要?」
「必要なのですわ~」
そっか、必要なのか……。
チラッとランチェッタさんを見ると、彼女はまっすぐに僕を見ていた。
…………ちょっと心の準備ができてないから僕からは無理っす。
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