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第19章 自衛しながら生きていこう
377.事なかれ主義者はだいぶ慣れてきた
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明と姫花は、どうやら真剣にファマリアに移住を検討しているようだ。
ただ一つ問題があるとすれば、この町が他の町と比べるとちょっと特殊な事だろうか。
「……一般人の受け入れって今どうなってるの?」
「店を持ちたい商人や技術職人、それからギルドには建物を貸し出しているのですわ。それ以外はまだ受け入れてないですわね」
「冒険者を引退した人たちはどういう扱いなの?」
「あの人たちもファマリアの正式な住人ではないのですわ。宿舎や好きな宿屋に泊まっているはずですわ。本当の意味で住人と言えるのは奴隷の子たちだけですわね」
お茶菓子を食べながらレヴィさんに町の事を聞いていると、紅茶を飲みながら僕たちの話を聞いていた明が首を傾げた。
中世的な顔立ちの彼がその仕草をすると女子たちから「可愛い!」とか何とか言われてたっけ。
冒険をしていても筋肉はついている様子もないし、中性的な顔立ちのままだ。
「……何か失礼な事を考えているような気がするのですが」
「キノセイダヨ」
「まあいいです。町の半数以上が奴隷でしたけど、あれは誰の奴隷なんですか? 奴隷には手を出すな、としか言われてないのですが、主人らしき人物はどこにもいませんでしたけど」
「たぶん僕かな……だよね?」
「そうですわね」
あんまり関わる事がないから実感が湧かないけど、一応僕の奴隷という事らしい。
奴隷関係はホムラやユキに任せっきりなので、契約上の主人は僕じゃないけど、奴隷たちに「シズト様のいう事は何よりも最優先事項である」とか、研修所で僕が主人である事が教育されているんだとか。
屋敷で働いている子や、ガレオールにある別荘みたいな所の管理を任せている子等、僕から仕事をお願いした子には契約を変更して僕が直接主人となっている。
それが一種のステータスにもなっているようで、仕事を任せてもらえるように勉強を頑張っているんだとか。
ジュリウスもそうだけど、奴隷になる事が目標ってのはちょっと分かんないよね。
……ジュリウスはもう奴隷じゃないけど。
ちょっとした書類の中に奴隷契約の書類が紛れ込んでいる時もあるからまだ諦めてないようだけど、再契約をするつもりはない。
「女子どもが多いようでしたが……もしかしてそういう……」
「たくさん奥さんがいるのにまだ足りないわけ?」
「いや、違うからね? 陽太と一緒にしないでくれる!?」
「どういう意味だコラ!!」
「分かるぜ、といった感じで何度も頷いてたじゃん! 全然違うから! 魔道具とか世界樹の素材とか売ってるとお金がどんどんたまる一方だから買ってるだけだから!」
「町づくりのためですわね。一度も性奴隷として奴隷を活用した事はなかったのですわ。結婚の前から奴隷は買っていて、そういう目的で売られた子も中にはいましたけれど、シズトは一度も夜伽には呼んでなかったのですわ。エミリーなんかは毎日尻尾の手入れを欠かさずにしていたのに、いつも呼ばれず可哀想でしたわ」
「エミリーって誰だ?」
「シズトの配偶者の一人ですわ。元奴隷ですわ」
「やっぱりそういう目的で買ってたんじゃないんですか?」
「いや、成り行きというかなんというか……何でそうなってたんだろうね? 本人たちの自由意思に任せたらこうなっちゃったというか……」
「……エンジェリアに来なくてよかったですね。押しかけてくる人たちを断れずに陽太のように毎日夜な夜なする事になりそうです」
結婚する前はそういう誘いは毎日断っていたような気もするけど、今の現状を考えると断り切れない可能性もあったと思う。
ほんと、神様から加護を貰った時に陽太たちを追いかけなくてよかったわ。
その後もしばらくの間、お互いのこれまでの事を話した。
僕は結婚相手について話をした。この場にいない人については口頭だけの説明だけど。
トネリコで明と姫花には人数を伝えていたから反応は薄かったけど、陽太には知らされていなかったようでめちゃくちゃ羨ましがられた。
陽太たちからは冒険をしてきた様子を聞いた。
いろんなところで魔物を倒したり、人助けをしたりして少しずつ評判を高めているらしい。
それから、高ランクの魔石を結婚祝いとしていくつか貰った。
お返しは特にいらないらしい。
今後も魔石を取ってきてくれるかもしれないし、今までの関係のまま関わってこようとはしてこなかったので、着かず離れずの良好な関係を築いてもいいかもしれない。
まあ、王様たちとの話し合いが無事に終わればだけど。
一通りの話が終わって明が「そろそろお暇しましょうか」と言ったので皆席を立った。三人は明日にも王都へ向かうつもりらしい。
三人と会う事になって何か要求されるんじゃないかと思ったけど、特に何事もなく終わってよかったよかった。
そんな事を考えながら、モニカに先導してもらってエントランスまで移動すると何やら外が騒がしい。
どうしたんだろう、と疑問に思いつつ扉を開けると――。
「またパメラたちの勝ちデース!」
「パメラちゃん、手加減した方が良いんじゃないかな」
「アンジェラ、聞こえるように言っちゃダメよ」
「ぐぬぬ! 練習が足りんかったか!」
「国王が幼女に負けるとは情けないなぁ!」
「だったらラグナがやってみればいいだろうが!」
「いや、俺はちょっと肩の調子が良くなくってな」
パメラを筆頭に幼女三人組と口論している中年男性がいた。
どうやらボウリングをして遊んでいたようだ。
……どうして二人がいるのかは今更だろう。時々遊びに来ているようだし。
「あら、シズト様。こんにちは。……勇者とのお話は終わったのかしら?」
淡い赤色のツインドリルがトレードマークの女性――この国の王妃様であるパールさんがすぐ近くにいた。どうやら出入り口付近から国王陛下たちを見ていたようだ。
視線を彼女の後ろに向けると、この国の第一王子であるガントさんとドランの屋敷の管理を任せている子たちが申し訳なさそうに立っていた。
ただ一つ問題があるとすれば、この町が他の町と比べるとちょっと特殊な事だろうか。
「……一般人の受け入れって今どうなってるの?」
「店を持ちたい商人や技術職人、それからギルドには建物を貸し出しているのですわ。それ以外はまだ受け入れてないですわね」
「冒険者を引退した人たちはどういう扱いなの?」
「あの人たちもファマリアの正式な住人ではないのですわ。宿舎や好きな宿屋に泊まっているはずですわ。本当の意味で住人と言えるのは奴隷の子たちだけですわね」
お茶菓子を食べながらレヴィさんに町の事を聞いていると、紅茶を飲みながら僕たちの話を聞いていた明が首を傾げた。
中世的な顔立ちの彼がその仕草をすると女子たちから「可愛い!」とか何とか言われてたっけ。
冒険をしていても筋肉はついている様子もないし、中性的な顔立ちのままだ。
「……何か失礼な事を考えているような気がするのですが」
「キノセイダヨ」
「まあいいです。町の半数以上が奴隷でしたけど、あれは誰の奴隷なんですか? 奴隷には手を出すな、としか言われてないのですが、主人らしき人物はどこにもいませんでしたけど」
「たぶん僕かな……だよね?」
「そうですわね」
あんまり関わる事がないから実感が湧かないけど、一応僕の奴隷という事らしい。
奴隷関係はホムラやユキに任せっきりなので、契約上の主人は僕じゃないけど、奴隷たちに「シズト様のいう事は何よりも最優先事項である」とか、研修所で僕が主人である事が教育されているんだとか。
屋敷で働いている子や、ガレオールにある別荘みたいな所の管理を任せている子等、僕から仕事をお願いした子には契約を変更して僕が直接主人となっている。
それが一種のステータスにもなっているようで、仕事を任せてもらえるように勉強を頑張っているんだとか。
ジュリウスもそうだけど、奴隷になる事が目標ってのはちょっと分かんないよね。
……ジュリウスはもう奴隷じゃないけど。
ちょっとした書類の中に奴隷契約の書類が紛れ込んでいる時もあるからまだ諦めてないようだけど、再契約をするつもりはない。
「女子どもが多いようでしたが……もしかしてそういう……」
「たくさん奥さんがいるのにまだ足りないわけ?」
「いや、違うからね? 陽太と一緒にしないでくれる!?」
「どういう意味だコラ!!」
「分かるぜ、といった感じで何度も頷いてたじゃん! 全然違うから! 魔道具とか世界樹の素材とか売ってるとお金がどんどんたまる一方だから買ってるだけだから!」
「町づくりのためですわね。一度も性奴隷として奴隷を活用した事はなかったのですわ。結婚の前から奴隷は買っていて、そういう目的で売られた子も中にはいましたけれど、シズトは一度も夜伽には呼んでなかったのですわ。エミリーなんかは毎日尻尾の手入れを欠かさずにしていたのに、いつも呼ばれず可哀想でしたわ」
「エミリーって誰だ?」
「シズトの配偶者の一人ですわ。元奴隷ですわ」
「やっぱりそういう目的で買ってたんじゃないんですか?」
「いや、成り行きというかなんというか……何でそうなってたんだろうね? 本人たちの自由意思に任せたらこうなっちゃったというか……」
「……エンジェリアに来なくてよかったですね。押しかけてくる人たちを断れずに陽太のように毎日夜な夜なする事になりそうです」
結婚する前はそういう誘いは毎日断っていたような気もするけど、今の現状を考えると断り切れない可能性もあったと思う。
ほんと、神様から加護を貰った時に陽太たちを追いかけなくてよかったわ。
その後もしばらくの間、お互いのこれまでの事を話した。
僕は結婚相手について話をした。この場にいない人については口頭だけの説明だけど。
トネリコで明と姫花には人数を伝えていたから反応は薄かったけど、陽太には知らされていなかったようでめちゃくちゃ羨ましがられた。
陽太たちからは冒険をしてきた様子を聞いた。
いろんなところで魔物を倒したり、人助けをしたりして少しずつ評判を高めているらしい。
それから、高ランクの魔石を結婚祝いとしていくつか貰った。
お返しは特にいらないらしい。
今後も魔石を取ってきてくれるかもしれないし、今までの関係のまま関わってこようとはしてこなかったので、着かず離れずの良好な関係を築いてもいいかもしれない。
まあ、王様たちとの話し合いが無事に終わればだけど。
一通りの話が終わって明が「そろそろお暇しましょうか」と言ったので皆席を立った。三人は明日にも王都へ向かうつもりらしい。
三人と会う事になって何か要求されるんじゃないかと思ったけど、特に何事もなく終わってよかったよかった。
そんな事を考えながら、モニカに先導してもらってエントランスまで移動すると何やら外が騒がしい。
どうしたんだろう、と疑問に思いつつ扉を開けると――。
「またパメラたちの勝ちデース!」
「パメラちゃん、手加減した方が良いんじゃないかな」
「アンジェラ、聞こえるように言っちゃダメよ」
「ぐぬぬ! 練習が足りんかったか!」
「国王が幼女に負けるとは情けないなぁ!」
「だったらラグナがやってみればいいだろうが!」
「いや、俺はちょっと肩の調子が良くなくってな」
パメラを筆頭に幼女三人組と口論している中年男性がいた。
どうやらボウリングをして遊んでいたようだ。
……どうして二人がいるのかは今更だろう。時々遊びに来ているようだし。
「あら、シズト様。こんにちは。……勇者とのお話は終わったのかしら?」
淡い赤色のツインドリルがトレードマークの女性――この国の王妃様であるパールさんがすぐ近くにいた。どうやら出入り口付近から国王陛下たちを見ていたようだ。
視線を彼女の後ろに向けると、この国の第一王子であるガントさんとドランの屋敷の管理を任せている子たちが申し訳なさそうに立っていた。
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【書籍化決定しました!】
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これも多くの方が、お気に入り登録してくださったおかげです
ありがとうございます。
【あらすじ】
精霊の加護なくして魔法は使えない。
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加護なしは、周りに不幸をもたらすと言われ、家族だけでなく、使用人たちからも虐げられていた。
王子からも婚約を破棄されてしまい、これからどうしたらいいのか、友人の屋敷妖精に愚痴ったら、隣の国に知り合いがいるということで、私は夜逃げをすることにした。
まさか、屋敷妖精の一声で、精霊の信頼がなくなり、国が滅ぶことになるとは、思いもしなかった。
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