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第18章 ニホン観光をしながら生きていこう

340.事なかれ主義者は会いたくない

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 カガワの国主である香川真琴様と対談して数日が経った。
 クーを乗せた馬車はカガワの国境を越えて、次の国の首都を目指して順調に進んでいるという事だったけど、移動中だったのでニホン観光はしていない。
 その間は暇だったので、世界樹のお世話や魔道具作りの合間にリーヴィアたちと遊んだ。
 少し前に叱って以来、リーヴィアの悪戯はなかったのでそのご褒美……ではないか。単純に僕が遊びたかっただけだ。
 パメラは相変わらず悪戯というかお菓子をつまみ食いしてはエミリーに叱られているけど、いつの間にか遊びに加わっている。
 オセロや五目並べではパメラには勝てた。
 リーヴィアやアンジェラにも最初は勝てたんだけど、今ではもう勝てない。………子どもの成長って早いね。
 チェスや将棋もパメラには勝てるけど……………うん。
 ボードゲームだけではなく、自作のトランプを使ってポーカーもした。
 パメラが「お小遣いを賭けるデス!」と騒いでいたけど、お金ではなくおやつを賭けるだけで我慢してもらった。
 文句を言うかと思ったけど、ニコニコしながらポーカーに参加していた。賭け事であれば何でもいいらしい。
 ……ただ、ここ数日パメラはおやつを食べていない。
 運要素の強い遊びは割と勝てる事が分かったからそういう遊びを広めていこうと思ったんだけど……ギャンブルで奴隷落ちした翼人がいるからやめておいた方が良いかなぁ。
 そんな事を考えながら朝ご飯を食べ終えて緑茶を啜っていると、モニカが手紙を差し出してきた。

「ニホン連合の国々から都市国家トネリコへ向けて親書が届いたようです」

 手紙を入れている真っ白な封筒はどれも縦長で、表には達筆な字で『世界樹の使徒様へ』と日本語で書かれていた。
 すごく面倒臭そうな予感がするけど、見ないわけにも行かない。
 モニカから封筒を受け取って、一応裏を確認すると『コウチ』『トクシマ』『エヒメ』の三か国から届いた手紙だったようだ。
 ………とりあえず読むか。

「………」
「用件は何だったのですわ?」

 それぞれをササッと目を通したのを見計らって、レヴィさんが話しかけてきた。
 今日は特に誰かと会う約束がないのだろう。彼女は農作業用の服を着ている。朝も土いじりをしてから席に着いたのだろうけど、作業服を魔道具化しておいたおかげで汚れ一つない。

「祖先の故郷について話を聞きたいって。示し合わせたかのように同じ文章なのウケるね」
「カガワに潜ませていた間諜がシズトとカガワ陛下が対談したのを報告したんでしょうね。今後、ニホン連合の国々からの手紙が届くのではないでしょうか」

 レヴィさんの後ろに控えていたセシリアさんが他人事のように言うけど、マジで遠慮したい。
 せっかく何事もなくただの世間話程度で終わらせたのに、また何度も繰り返すの嫌だなぁ。

「嫌だったら断ればいいのですわ」
「断ったら面倒な事にならない?」
「用件が用件ですし、カガワの国主から話を聞くように、と返事を書いておけばいいと思うのですわ」
「そういうもんかなぁ」
「そういうものですわ。向こうも断られる可能性が高いと思いつつ、会ってもらえれば儲けもの程度にしか思ってないと思うのですわ。それにこの程度で不満を感じているとしたら、明様達への不満はすさまじい事になっていると思うのですわ。実際に国に訪れているのに国主からの誘いを断って横断したらしいですし」
「それ言ったら僕も馬車を通してもらっているんだけど……」
「馬車が通っているだけでシズトはトネリコの世話にかかりきりで乗っていないと思われているのですわ。実際乗っているのはクーですし、嘘はついていないのですわ。ランチェッタ様からも根回しはしてもらっていて、もしかしたらシズトが観光をするために転移陣を使って訪れるかもしれないと伝えているから、その点についてシズトは気にしなくていいのですわ」

 なるほど。
 知らない内にランチェッタ様にもご助力いただいていたのか。
 今日のお手紙にはそのお礼も書いておこうかな。
 レヴィさんは紅茶を一口飲むと話を続けた。

「それに、カガワ陛下ともお会いして話をした時に他国への情報共有のお願いはしておいたのですわ。陛下としても、こちらに恩を売れるのと、他国よりも一歩先を行く事ができるからと了承して貰えたのですわ」
「………なるほど? でも、了承してもらったのに手紙が届いてるんだけど……」
「まだ香川陛下が居城にお戻りになってないのだと思うのですわ。国に帰ってから他のニホン連合に加盟している国々に向けての手紙を書くと仰っていたのですわ。シズトが会いたいと思うのならその旨の返事を書けばいいと思うのですけれど、会いたくないと思うのならとりあえず故郷の話は香川陛下にすべて話したからそちらから聞いてくれとでも書いておけばいいと思うのですわ」

 レヴィさんは言いたい事を言い終わると席を立った。
 きっと農作業をしに行くのだろう。
 僕もメロンを食べ終えたら世界樹の世話をしに行くか。
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