上 下
334 / 653
第13章 獣人の国を観光しながら生きていこう

225.事なかれ主義者は視線が気になる

しおりを挟む
 キャロロット村の外に水が湧く魔道具を作ってから二週間が経った。
 作った翌日にはクーを乗せた馬車がキャロロット村を発って、二週間の間にいくつかの村や町を通った。
 どのくらいの広さまでは村で、どこからが町というかは分からないけど、村だろうが町だろうが水問題は大なり小なりあるようだった。
 最初に訪れた牛人族の村カウコーンでは、キャロロット村のキャロラインさんから貰ったお手紙を見せたら少しは信用して貰えたようで、問題なく村の外に水が湧く魔道具を作ったり、ファマ様の加護を使って野菜を育てたりする事ができた。
 のんびりした村長さんがとても喜んで、他の村に向けた紹介状を追加で書いてくれた。

「紹介状はあればあるだけ信用されますから、持っていて損はないですよ。農耕民族にしか効力がないですし、むしろ逆効果になる事もあるから間違っても違う民族の人に渡してはダメですからね」
「ジュリウス、ジュリーニさんに渡しておいて」
「かしこまりました。不要だとは思いますが、もう一度釘も差しておきます」

 牛人族の村人たちからの熱い抱擁は流石にお断りしておいた。
 だって、抱きしめられたら彼女たちのご立派な物が顔に当たりそうだったから。
 そういうのはラオさんとルウさんで間に合ってますので。
 その次に訪れた馬人族が集まっている所は町と言えるくらい大きかった。中央に近づくにつれて他の種族が混じるようになってくるらしいけど、馬人族の町アップホースは馬人族しかいないらしい。
 ただ、馬人族の中でも体格の差があって、小柄な女性は大柄な女性にペコペコしていた。他の民族よりも少ないだけで、『弱い者を力で従えてもいい』という部分はあるらしい。国の中央に行けば行くほど、様々な種族が集まっているからそういう面が強くなってくるんだとか。
 あまり長居せず、サクッと魔道具を作ってさっさと帰った。
 帰った後にクーたちが丁重に扱われたらしい。
 その後もいくつか複数の種族が一緒に生活している町を通ったけど、面倒事に巻き込まれたくないのでサクサクと魔道具作りとファマ様の加護のお披露目会をし続けて、紹介状が大量に集まった。
 もう最近では、手紙を見せるだけで丁重に扱ってもらえるようになったらしい。



 獣人の国アクスファースにある村や町に訪問しない日は、世界樹のお世話をしながら魔道具作りをせっせとした。
 ドラゴニア貴族からの依頼されたダイエット系の魔道具や、ドワーフの国の王から発注された除雪雪だるまや快適コートを作ったり、個人的に思いついた物を何となく作ってみてノエルと一緒に実験してみたり、ドライアドやアンジェラと一緒に遊んだりして過ごしていたんだけど、とうとうアクスファースの首都についたらしい。
 朝ご飯の席でジュリウスから報告を受けたけど、ちょっと気になる事がある。

「予定より早くない? 休まず進み続けているとかないよね?」
「魔道具化された馬車と魔物の血を引いている馬が特殊なのもありますし、なにより精霊魔法を使って進んでいる事が大きいです。お伝えした予定はあくまで普通の馬車と馬で、魔法を使わずに進んだ場合の目安ですので」
「ふーん……休みは?」
「ほどほどに取ってはいるのではないでしょうか。それよりも、農耕民族の首長である方がシズト様にお会いしたいと言っておりますが、いかがいたしましょうか」
「神様たちの教会の事もあるから会うけど……変な事にならないといいなぁ」
「私もついて行くのだから大丈夫なのですわ。シズトに危害を加えようとする意志を感じた瞬間に転移して逃げるのですわ!」

 今日のお世話係であるレヴィさんは鼻息が荒く、やる気満々だ。
 空のように青いドレスは、腕や肩の部分が透けている。レースというやつだろうか。
 アクスファースの首都はドラゴニアよりも少し気温が高いらしい。だから少しでも涼しいものを、という事らしいんだけど目のやり場に困る。……ネグリジェよりかはましだけど。
 僕は真っ白なスーツを着ている。ズボンの裾から金色の蔦が足に絡みつくかのような感じで刺繍されたユグドラシルの正装だ。
 食事中に汚しても全く問題ないように魔道具化は済ませてある。魔力を流せば汚れも消えて新品同然になり、なおかつ周囲の気温を過ごしやすい温度に調節してくれる優れ物だ。
 魔石を入れる場所をわざわざ後付けするのは申し訳ないので、魔石を使わないタイプにした。
 暑いのは嫌だからずっと魔力は流しっぱなしにするつもりだけど、その状態でも国王に相当する人があってくれるのか、ちょっと不安だ。



 結論、問題なかった!
 大きな宮殿のような建物に問題なく入る事ができたし、首長の所まですぐに案内もしてくれた。

「どうやら紹介状の影響みたいですわ」
「まあ、二桁は行かないけど、通った村や町は一通り布教活動したからなぁ」

 案内の人の後をついてレヴィさんと一緒に歩く。ジュリウスは僕たちの後ろをついて来ていた。振り向くとにっこりと僕たちを見守っている。
 けど、前を見るとなんか周囲の人たちの視線が気になるんだよね。僕を見て、隣のレヴィさんを見て、そこから急に後ろを見てから視線を逸らして仕事に戻っていく。
 もう一度振り返るとニコニコしながら僕の方を見ているだけだった。

「……変な事はしてないよね?」
「はい。仰せの通りに、問題が起きないよう過ごしております」
「ならいいけど。……喧嘩を売られても?」
「買わずに逃げます」

 ……まあ、分かっているようだからいいか。
 その後、首長さんの待っている所に着くまで特にトラブルなく進む事ができた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜

KeyBow
ファンタジー
 主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。  そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。  転生した先は侯爵家の子息。  妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。  女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。  ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。  理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。  メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。  しかしそう簡単な話ではない。  女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。  2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・  多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。  しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。  信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。  いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。  孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。  また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。  果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。

亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません! いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。 突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。 里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。 そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。 三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。 だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。 とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。 いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。 町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。 落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。 そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。 すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。 ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。 姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。 そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった…… これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。 ※ざまぁまで時間かかります。 ファンタジー部門ランキング一位 HOTランキング 一位 総合ランキング一位 ありがとうございます!

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

こちらの世界でも図太く生きていきます

柚子ライム
ファンタジー
銀座を歩いていたら異世界に!? 若返って異世界デビュー。 がんばって生きていこうと思います。 のんびり更新になる予定。 気長にお付き合いいただけると幸いです。 ★加筆修正中★ なろう様にも掲載しています。

処理中です...