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第13章 獣人の国を観光しながら生きていこう
224.事なかれ主義者は多めにモフッとされた
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井戸掘りをした後、兎人族の女性たちからは「何かあったらいつでも力になるから」と言われ、代わる代わるギュッと抱きしめられてやばかった。ハグの経験浅い人に気軽にしちゃいけないっすよ!
小さな子たちには纏わりつかれたけど、可愛かった。ただ、やっぱり痩せている事が気になる。もっと食料を置いていくべきかとも思ったけど「水問題が解決したからしばらくは大丈夫」と言われた。水だけですべて解決するのか疑問だけど、村人たちがそう言うならそうなんだろう。
キャロラインさんには、海洋国家ガレオールまでのルートになりそうな村や町の農耕民族に向けての紹介状を書いてくれた。
「ルートとかは任せてるから、最短距離で向かうか分からないよ? 神様の布教もある程度はしたいし……」
「ルートは気にしなくても大丈夫さ。同じ農耕民族だったらその手紙を見せてくれれば問題ないよ。布教に関しては私にはよく分からないけど、首都に教会を建てれば十分じゃないかい? 首都には私たちの民族以外にも他の民族もいるからねぇ」
「へー、そうなんだ」
「でも、気を付けるんだよ。首都に近づけば近づくほど強さ至上主義になっていくからね。シズトはいろいろ作る事ができるから、他の奴らに目を付けられないか心配だよ」
「そこら辺はまあ、いい感じに逃げるんで大丈夫……だといいなぁ」
帰還の指輪もあるし、背中にはクーを背負ってるから逃げられない事はないと思うんだけど……。
考え込んでいると、首に回された細い腕にギュッと力が入った。
「お兄ちゃんには、あーしが指一本触れさせないから大丈夫だよ」
「私たちの代わりに、しっかり務めを果たすのよ、クー」
「その後の事はご安心を。襲ってきた輩は私たちが責任を持って対応しますので」
「別に対応せずに逃げればいいと思うんだけどなぁ」
エルフたちには国の威信とか諸々逃げられない事情があるのかもしれないけど、争ってほしくないし。
面倒事が起こらないように、農耕民族以外の民族がいる区画には極力近づかないようにしておこう。
夕方頃に馬車の転移陣を使ってファマリーの近くに建てられた屋敷に戻ってきた。
出迎えてくれたのは日本人の血を色濃く受け継いだモニカだ。どうしても見た目が日本人っぽいからメイド服を着ているとコスプレをしているような印象を受けてしまう。
「お帰りなさいませ、シズト様。既に夕食の準備は済んでおりますが、いかがいたしましょうか」
「じゃあご飯にしようかな」
「かしこまりました。他の方々をお呼びしてきます」
「他の事をしてて忙しそうだったら別に大丈夫だからね」
「心得ております」
ぺこりと綺麗なお辞儀をしてから階段を上がっていくモニカ。
僕はそれを見送り、ジュリウスとユキを引き連れて食堂に向かった。
「お帰りなさいませ、シズト様」
「ただいま、エミリー……どうしたの?」
お辞儀をして出迎えてくれたエミリーが、盛大に眉を顰めた。綺麗に手入れされた白い尻尾がぶわっと膨らんでいる。
「いえ……少し、臭いまして……。…………随分と多くの女性と親しくなされたんですね」
「ああ、キャロロット村の人たちの事? 井戸を作ったらお礼だって言われてね」
「念のため補足させていただきますと、エミリーが考えている様な事は何もありません。兎人族の方々から抱擁された際もシズト様は固まって抱きしめ返す事はありませんでした」
「……そうですか」
エミリーが顰め面のまま僕をジトッと見てくる。尻尾はまだ逆立ったままだ。
そんな匂いするかなぁ。
クンクンと服の匂いを嗅いでみるけど、よく分からない。獣人にだけ分かる特有の匂いとかあるのだろうか。
首を傾げていると、エミリーがため息をついた後に眉間を指で解してからにっこりと微笑んだ。尻尾は未だに膨れたままだったけど、いつも通りの笑顔で近づいてきて僕の手を取って横並びになる。
モフッと逆立っている尻尾が僕の体に当たった。
「失礼しました。皆様が揃うまでもう少々時間がかかりそうです。一先ず座ってお待ちください」
エミリーに手を引かれていつもの定位置に移動する。
歩く度にエミリーの尻尾がモフモフと僕の体のいろんなところに当たるんだけど……これは当ててるんだろうか。
エミリーをチラッと見るけど、彼女は視線に気づいた様子もなく席まで案内して僕をそこに座らせた。
「それでは、お茶の準備をしますので少々お待ちください」
彼女が踵を返して離れていく。その時にモフモフッと白い尻尾が僕の首辺りに当たってくすぐったかった。
……そう言えばご飯の準備の時にたまに尻尾が当たっていたけど、ここ数日は回数が増えていたような気がする。それでエミリーの匂いが付いていたのかも……?
ただ、シンシーラの方は身に覚えがないんだよなぁ。最近、夜は寝てるから会う機会もないし。
んー…………謎だ。
まあ謎だけど、そのおかげでキャロロット村の女性が僕の相手をせずに済んだのだからいいか。
モフッ、モフッモフッ、といつもよりも多めに尻尾が僕の体に当たる中、のんびりとお茶を飲んで皆が集まってくるまで待った。
……お茶に毛が入らないのはすごいなぁ。
小さな子たちには纏わりつかれたけど、可愛かった。ただ、やっぱり痩せている事が気になる。もっと食料を置いていくべきかとも思ったけど「水問題が解決したからしばらくは大丈夫」と言われた。水だけですべて解決するのか疑問だけど、村人たちがそう言うならそうなんだろう。
キャロラインさんには、海洋国家ガレオールまでのルートになりそうな村や町の農耕民族に向けての紹介状を書いてくれた。
「ルートとかは任せてるから、最短距離で向かうか分からないよ? 神様の布教もある程度はしたいし……」
「ルートは気にしなくても大丈夫さ。同じ農耕民族だったらその手紙を見せてくれれば問題ないよ。布教に関しては私にはよく分からないけど、首都に教会を建てれば十分じゃないかい? 首都には私たちの民族以外にも他の民族もいるからねぇ」
「へー、そうなんだ」
「でも、気を付けるんだよ。首都に近づけば近づくほど強さ至上主義になっていくからね。シズトはいろいろ作る事ができるから、他の奴らに目を付けられないか心配だよ」
「そこら辺はまあ、いい感じに逃げるんで大丈夫……だといいなぁ」
帰還の指輪もあるし、背中にはクーを背負ってるから逃げられない事はないと思うんだけど……。
考え込んでいると、首に回された細い腕にギュッと力が入った。
「お兄ちゃんには、あーしが指一本触れさせないから大丈夫だよ」
「私たちの代わりに、しっかり務めを果たすのよ、クー」
「その後の事はご安心を。襲ってきた輩は私たちが責任を持って対応しますので」
「別に対応せずに逃げればいいと思うんだけどなぁ」
エルフたちには国の威信とか諸々逃げられない事情があるのかもしれないけど、争ってほしくないし。
面倒事が起こらないように、農耕民族以外の民族がいる区画には極力近づかないようにしておこう。
夕方頃に馬車の転移陣を使ってファマリーの近くに建てられた屋敷に戻ってきた。
出迎えてくれたのは日本人の血を色濃く受け継いだモニカだ。どうしても見た目が日本人っぽいからメイド服を着ているとコスプレをしているような印象を受けてしまう。
「お帰りなさいませ、シズト様。既に夕食の準備は済んでおりますが、いかがいたしましょうか」
「じゃあご飯にしようかな」
「かしこまりました。他の方々をお呼びしてきます」
「他の事をしてて忙しそうだったら別に大丈夫だからね」
「心得ております」
ぺこりと綺麗なお辞儀をしてから階段を上がっていくモニカ。
僕はそれを見送り、ジュリウスとユキを引き連れて食堂に向かった。
「お帰りなさいませ、シズト様」
「ただいま、エミリー……どうしたの?」
お辞儀をして出迎えてくれたエミリーが、盛大に眉を顰めた。綺麗に手入れされた白い尻尾がぶわっと膨らんでいる。
「いえ……少し、臭いまして……。…………随分と多くの女性と親しくなされたんですね」
「ああ、キャロロット村の人たちの事? 井戸を作ったらお礼だって言われてね」
「念のため補足させていただきますと、エミリーが考えている様な事は何もありません。兎人族の方々から抱擁された際もシズト様は固まって抱きしめ返す事はありませんでした」
「……そうですか」
エミリーが顰め面のまま僕をジトッと見てくる。尻尾はまだ逆立ったままだ。
そんな匂いするかなぁ。
クンクンと服の匂いを嗅いでみるけど、よく分からない。獣人にだけ分かる特有の匂いとかあるのだろうか。
首を傾げていると、エミリーがため息をついた後に眉間を指で解してからにっこりと微笑んだ。尻尾は未だに膨れたままだったけど、いつも通りの笑顔で近づいてきて僕の手を取って横並びになる。
モフッと逆立っている尻尾が僕の体に当たった。
「失礼しました。皆様が揃うまでもう少々時間がかかりそうです。一先ず座ってお待ちください」
エミリーに手を引かれていつもの定位置に移動する。
歩く度にエミリーの尻尾がモフモフと僕の体のいろんなところに当たるんだけど……これは当ててるんだろうか。
エミリーをチラッと見るけど、彼女は視線に気づいた様子もなく席まで案内して僕をそこに座らせた。
「それでは、お茶の準備をしますので少々お待ちください」
彼女が踵を返して離れていく。その時にモフモフッと白い尻尾が僕の首辺りに当たってくすぐったかった。
……そう言えばご飯の準備の時にたまに尻尾が当たっていたけど、ここ数日は回数が増えていたような気がする。それでエミリーの匂いが付いていたのかも……?
ただ、シンシーラの方は身に覚えがないんだよなぁ。最近、夜は寝てるから会う機会もないし。
んー…………謎だ。
まあ謎だけど、そのおかげでキャロロット村の女性が僕の相手をせずに済んだのだからいいか。
モフッ、モフッモフッ、といつもよりも多めに尻尾が僕の体に当たる中、のんびりとお茶を飲んで皆が集まってくるまで待った。
……お茶に毛が入らないのはすごいなぁ。
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