上 下
315 / 653
第13章 獣人の国を観光しながら生きていこう

212.事なかれ主義者は男の奴隷について考える

しおりを挟む
 神様たちにお呼ばれされたんだけど、ウェルズブラに建てられた教会の事じゃなかった。
 建物の形がヘンテコでも「無いよりはマシ」という感じらしい。
 また、複数の事を司る事はよくある事らしい。
 まあ、前世の神様も何とかと何とかの神様、的な感じだったしそういうものなのかも。
 一つの事を複数人で分担する事もあるらしいけど、詳しくは聞けなかった。
 プロス様が「そんな事よりも審査して!」と両手で僕の右手を掴むと、体全体を使って引っ張ったから。
 引っ張られて連れて行かれた先にあったのは雪だるまだった。どうやらこれを審査しろという事らしい。
 除雪雪だるまよりも巨大な物もあるけど、残りの二つは普通くらいの大きさだ。
 フワッと浮いて大きな雪だるまの上に行ってしまったプロス様の声が頭上からする。

「エイッて入れてギューッてしながら作ったんだよ! おっきいでしょー! シズトの雪だるまよりも大きいよ!」

 プロス様が自作の雪だるまの上で誇らしげに胸を張っている……気がする。
 ぶっちゃけ見えない。
 首を上に向けるのもしんどいわこれ。

「お、オイラは頑張って転がしたんだなー。の、乗せるのが大変だったんだなー」

 ファマ様は、雪だるまを作るのにどれだけ苦労をしたのか説明してくる。
 雪だるま……雪だるまかこれ?
 何というか、おにぎりみたいな形の雪の塊が積まれている。
 そりゃこれに乗っけるの大変でしょ。奇跡的なバランス感覚で三角形の雪の塊が上に乗っている。
 転がすのも大変だったんじゃないだろうか。

「えっとね、真ん丸に頑張ってしたんだよ……? ちょっとずつ、ちょっとずつ頑張ったんだよ……?」

 エント様は、エヘヘと可愛らしく笑いながら、彼女と同じくらいの大きさの雪だるまを見せてくれた。
 指を差しながらここら辺を「ごしごし擦ったんだよ……?」と説明してくれる。

「エント様の勝ち」
「えーーー、なんでなんでなんで!! プロスの大きいでしょー!!!」
「ちょ、プロス様上から雪落とさないで!」
「な、納得できないんだなー!」
「いや、ファマ様の普通に見た目で違う感じがするから……」
「プロスのはちゃんと丸いよ! それに大きい!!」
「大きければいいという訳ではなくてですね。プロス様転がして作らなかったんですよね? だったらちゃんと転がして作ったエント様の勝ちです。後、形が綺麗」

 ほんとに真ん丸だもん。
 これは文句のつけようもなく一位ですわ。

「でもまあ、装飾がされてないのが残念なポイントですけど」
「装飾……?」
「そ、それをしたらオイラの勝ちなんだな!? お、教えるんだなー」
「抜け駆けずるーい! プロスにも教えてー!」
「ぐえっ!!!」

 プロス様……流石に上から降ってきたら、下敷きになった僕死ぬっすよ?
 あ、でも肉体は別の所にあるから死ぬ事はないのか……?
 分からん。



 僕に加護をくれた三柱に雪だるまの装飾について軽く話をしたら、彼女たちは満足したのか現実世界に戻してくれた。
 パチッと目を覚めると、ジューンさんが僕の頬に手を当てて顔を見つめていた。
 腰まで伸びたゆるく波打っている金色の髪に、優しい眼差しのエルフの女性で、僕の婚約者だ。
 ユグドラシルの代理人として箔を付けるために婚約をしたんだけど、エルフらしくない体型の彼女は、今日は黒っぽい長いズボンに白色のセーターを着ていた。とても大きな胸が強調されているからついそちらに視線が言っちゃうのは仕方ない事だと思うのです。
 帰還の指輪を左手の薬指につけたジューンさんは、その左手で僕の顔をぺたぺたと触り始める。

「あらぁ、起きましたぁ」
「だから大丈夫だって言っただろ」
「でもぉ、反応が全くなかったですよぉ」
「シズトくん、時々そうなるの。神様とお話をしてるって言ってたわ。今回もそうだったの?」

 ラオさんとルウさんは慣れた様子で特に気にしてないけど、いきなり全く動かなくなったらビックリするよね。
 ……傍目から見て魂? 精神? がない時ってどう見られてるんだろう?
 神様と話をしている時は、代わりに体を動かす魔道具を作った方が良いのかな。

「……またなんか考え始めてんぞコイツ」
「んー……視線が上に向いたらそうなのかしら? 魔力の流れはよく分からないわ」
「私たちエルフはぁそういうの長けているのでぇ、魔力の流れでぇ感情を読み取られないように躾けられますねぇ」

 ……僕も覚えた方が良いのかも。
 ジュリウスさんにお願いしたら教えてくれるかなぁなんて考えながら立ち上がる。
 祠へのお祈りを済ませたので、ファマリアへと向かう。
 今日は町の様子を確認しながらお昼ご飯は食べ歩きをしよう。
 世界樹の素材がユグドラシルの方で流通し始めたから、人通りは少し前ほどじゃないけど、奴隷がどんどん増えているから賑やからしい。
 奴隷たちにお小遣いを上げているので、その奴隷に向けた商売をしている人たちもいるんだとか。
 ファマリーの根元にあった祠から、綺麗に耕されて植物が無作為に育っている中を歩きながらファマリアへと向かう。
 町には数分で着いたけど、今日も奴隷の少女たちが道を闊歩している。
 奴隷仲間以外が珍しいのか、それとも男だからか、すごい見てくる。やっぱり男が少なすぎて目立ってるのかな。

「男の奴隷も増やしたら目立たなくなるかなぁ」
「お姉ちゃん、そういう問題じゃないと思うわー」
「そうですねぇ」
「だな」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜

KeyBow
ファンタジー
 主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。  そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。  転生した先は侯爵家の子息。  妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。  女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。  ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。  理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。  メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。  しかしそう簡単な話ではない。  女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。  2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・  多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。  しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。  信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。  いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。  孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。  また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。  果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。

亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません! いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。 突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。 里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。 そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。 三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。 だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。 とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。 いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。 町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。 落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。 そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。 すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。 ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。 姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。 そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった…… これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。 ※ざまぁまで時間かかります。 ファンタジー部門ランキング一位 HOTランキング 一位 総合ランキング一位 ありがとうございます!

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

仲良しな天然双子は、王族に転生しても仲良しで最強です♪

桐生桜月姫
ファンタジー
 愛良と晶は仲良しで有名な双子だった。  いつも一緒で、いつも同じ行動をしていた。  好き好みもとても似ていて、常に仲良しだった。  そして、一緒に事故で亡くなった。  そんな2人は転生して目が覚めても、またしても双子でしかも王族だった!?  アイリスとアキレスそれが転生後の双子の名前だ。  相変わらずそっくりで仲良しなハイエルフと人間族とのハーフの双子は異世界知識を使って楽しくチートする!! 「わたしたち、」「ぼくたち、」 「「転生しても〜超仲良し!!」」  最強な天然双子は今日もとっても仲良しです!!

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

無属性魔法って地味ですか? 「派手さがない」と見捨てられた少年は最果ての領地で自由に暮らす

鈴木竜一
ファンタジー
《本作のコミカライズ企画が進行中! 詳細はもうしばらくお待ちください!》  社畜リーマンの俺は、歩道橋から転げ落ちて意識を失い、気がつくとアインレット家の末っ子でロイスという少年に転生していた。アルヴァロ王国魔法兵団の幹部を務めてきた名門アインレット家――だが、それも過去の栄光。今は爵位剥奪寸前まで落ちぶれてしまっていた。そんなアインレット家だが、兄が炎属性の、姉が水属性の優れた魔法使いになれる資質を持っていることが発覚し、両親は大喜び。これで再興できると喜ぶのだが、末っ子の俺は無属性魔法という地味で見栄えのしない属性であると診断されてしまい、その結果、父は政略結婚を画策し、俺の人生を自身の野望のために利用しようと目論む。  このまま利用され続けてたまるか、と思う俺は父のあてがった婚約者と信頼関係を築き、さらにそれまで見向きもしなかった自分の持つ無属性魔法を極め、父を言いくるめて辺境の地を領主として任命してもらうことに。そして、大陸の片隅にある辺境領地で、俺は万能な無属性魔法の力を駆使し、気ままな領地運営に挑む。――意気投合した、可愛い婚約者と一緒に。

処理中です...