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第12章 ドワーフの国を観光しながら生きていこう
208.事なかれ主義者は注目された
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除雪雪だるまは、量産した翌日に納品した。
全部で二十体。横一列に並ばせているけど、装飾を何もしていないのでちょっと物足りない。
ただ、たくさんを作る事を最優先で取り組んだから仕方ない。
二十体も作ったのに、ウェルズブラには小さな町がたくさんあるから、すべての街道を網羅するためにはまだまだ足りないらしい。
とりあえずミスリルやオリハルコンなどの希少金属が採れる鉱脈がある大きな街と、アダマンタイトの武具が極稀に手に入る事があるダンジョン都市までの街道で使われるんだとか。
「これを機に小さな町を統合してもいいんじゃないかしら? 途中の休憩所としての側面しかない所は不要だと思うわ」
「細かい事はお前に任せるわい」
納品された除雪雪だるまを一目見に来たドゥイージ陛下とドロラータ様が、除雪雪だるまを見上げながらなんか言っている。
……何も聞かなかった事にしよう。
「分かったわ。ここで考える事じゃないから、戻ったら考える事にするわ」
「うむ、頼んだぞ」
二人の会話が終わったようだ。
ドゥイージ陛下とドロラータ様がこちらを見る。
屋外だが、ドゥイージ陛下は前会った時と服装が変わってない。寒くないのだろうか。
ドロラータ様はレヴィさんと同じくらい着込んでいて着膨れしている。子どもっぽさがより増した感じがするのは気のせいだろうか。
「お待たせして申し訳ないのう、シズト様。除雪雪だるまと言ったか……見事な代物じゃ。今後、民衆は儂が何も言わずとも移動の際に魔道具の利便性を知り、魔道具の神エント様に感謝を捧げるであろう」
「エント様の教会を建設する許可を与えるわ。土地は良い場所を見繕わせていただくわ」
エント様は付与を司る神様だった気がするけど、訂正した方が良いんだろうか。
ただ複数の事を司ってる神様はいるし、別にいいのかな。
……今度神様たちに聞きに行くか。
ただ、聞きに行くなら他の二柱の教会についてもお願いをしないと文句を言われるだろうな。
「ありがとうございます。他の二柱の教会は?」
「加工の神プロス様の教会は、儂自ら一等地を用意させる事を誓おう」
「生育の神ファマ様の教会は洞窟畑の近くに作ってもらおうかね。男たちは興味ないだろうし、農業をしている女たちは豊作を願って祈るかもしれない」
「ありがとうございます」
お礼を言いつつも、頭は下げないように気を付ける。
ついついペコペコしがちだけど、今は国の代表としてドゥイージ陛下の前にいるのだから気を付けるようにセシリアさんに言われた。
頭を下げるだけで事が上手く運ぶのであれば、何度でも頭を下げればいいと思うけど……。
話をしていると、鎧を着たドワーフたちがせっせとアダマンタイトの武具を城門から運び出してきた。
ドゥイージ陛下に加護の力をお披露目する事になったのだが、他のドワーフに見せて納得してもらうためにと野外でする事になった。
話ではアダマンタイトを加工した事は伝わっていたらしいが、実際にその目で見てみたいらしい。
ドワーフたちが集まっていて、周りをぐるりと囲んでいる。
城壁の上にもたくさんのドワーフたちが見下ろしているようだ。
たくさんのドワーフたちが見に来ているようだが、このくらいの注目は許容範囲だ。揉め事にさえならなければ。
ただ、もしもの時のために周囲は護衛で固めている。
ジュリウスやラオさん、ルウさんだけではなくホムラとユキもいる。
「こちらの準備は整ったぞ? お主はどうじゃ?」
「いつでもできますよ」
クーに少しの間しがみ付いてもらって、両手を自由にするだけで準備は完了だ。
加工したい物に直接触れないと【加工】ができないのはちょっと不便。使っている間に遠距離でもできるようになったら楽なんだけど。
護衛の皆と一緒に、集められたアダマンタイトの近くに行く。
「……そう言えば、何を作ればいいですか? あ、簡単な物でお願いします」
構造をしっかり把握できていないものは、見た目しか整えられないんすよ。
これでも夜寝る前の練習は続けているんだけど、やっぱりイメージの問題なんだと思う。
「形を変える様子さえ見ることができれば、それでいいからのぅ……」
立派な赤髭を撫でながらしばし考えるドゥイージ陛下。
視線があちこちに動いていたが、ふとした時に止まった。
ごつくて太い指でそれを指差す。
「アレなんかどうじゃ?」
「……まあ、いいですけど」
指を差す先の物の形は簡単にイメージできる。
「【加工】、【加工】、【加工】――」
アダマンタイトの武具やよく分からない像に触れて形を変える度にどよめきが起こる。そのどよめきはどんどん大きくなっていっているような気がする。
用意されたアダマンタイト製の物を一つの球体にすると、僕の背丈くらいの大きさになった。
それを半分に分けて、中に空洞がある直径二メートルほどの球体を二つ作る。
持ち上げる力はないけど、加工中であれば自由に動かせるので、小さい方を上に持ち上げてくっつけると完成だ。
興奮した様子のドワーフたちの野太い声が雪原に響く。
…………これ、流石にゴーレム化したら危ないだろうからしたくないんだけど、どうするつもりなんだろう?
全部で二十体。横一列に並ばせているけど、装飾を何もしていないのでちょっと物足りない。
ただ、たくさんを作る事を最優先で取り組んだから仕方ない。
二十体も作ったのに、ウェルズブラには小さな町がたくさんあるから、すべての街道を網羅するためにはまだまだ足りないらしい。
とりあえずミスリルやオリハルコンなどの希少金属が採れる鉱脈がある大きな街と、アダマンタイトの武具が極稀に手に入る事があるダンジョン都市までの街道で使われるんだとか。
「これを機に小さな町を統合してもいいんじゃないかしら? 途中の休憩所としての側面しかない所は不要だと思うわ」
「細かい事はお前に任せるわい」
納品された除雪雪だるまを一目見に来たドゥイージ陛下とドロラータ様が、除雪雪だるまを見上げながらなんか言っている。
……何も聞かなかった事にしよう。
「分かったわ。ここで考える事じゃないから、戻ったら考える事にするわ」
「うむ、頼んだぞ」
二人の会話が終わったようだ。
ドゥイージ陛下とドロラータ様がこちらを見る。
屋外だが、ドゥイージ陛下は前会った時と服装が変わってない。寒くないのだろうか。
ドロラータ様はレヴィさんと同じくらい着込んでいて着膨れしている。子どもっぽさがより増した感じがするのは気のせいだろうか。
「お待たせして申し訳ないのう、シズト様。除雪雪だるまと言ったか……見事な代物じゃ。今後、民衆は儂が何も言わずとも移動の際に魔道具の利便性を知り、魔道具の神エント様に感謝を捧げるであろう」
「エント様の教会を建設する許可を与えるわ。土地は良い場所を見繕わせていただくわ」
エント様は付与を司る神様だった気がするけど、訂正した方が良いんだろうか。
ただ複数の事を司ってる神様はいるし、別にいいのかな。
……今度神様たちに聞きに行くか。
ただ、聞きに行くなら他の二柱の教会についてもお願いをしないと文句を言われるだろうな。
「ありがとうございます。他の二柱の教会は?」
「加工の神プロス様の教会は、儂自ら一等地を用意させる事を誓おう」
「生育の神ファマ様の教会は洞窟畑の近くに作ってもらおうかね。男たちは興味ないだろうし、農業をしている女たちは豊作を願って祈るかもしれない」
「ありがとうございます」
お礼を言いつつも、頭は下げないように気を付ける。
ついついペコペコしがちだけど、今は国の代表としてドゥイージ陛下の前にいるのだから気を付けるようにセシリアさんに言われた。
頭を下げるだけで事が上手く運ぶのであれば、何度でも頭を下げればいいと思うけど……。
話をしていると、鎧を着たドワーフたちがせっせとアダマンタイトの武具を城門から運び出してきた。
ドゥイージ陛下に加護の力をお披露目する事になったのだが、他のドワーフに見せて納得してもらうためにと野外でする事になった。
話ではアダマンタイトを加工した事は伝わっていたらしいが、実際にその目で見てみたいらしい。
ドワーフたちが集まっていて、周りをぐるりと囲んでいる。
城壁の上にもたくさんのドワーフたちが見下ろしているようだ。
たくさんのドワーフたちが見に来ているようだが、このくらいの注目は許容範囲だ。揉め事にさえならなければ。
ただ、もしもの時のために周囲は護衛で固めている。
ジュリウスやラオさん、ルウさんだけではなくホムラとユキもいる。
「こちらの準備は整ったぞ? お主はどうじゃ?」
「いつでもできますよ」
クーに少しの間しがみ付いてもらって、両手を自由にするだけで準備は完了だ。
加工したい物に直接触れないと【加工】ができないのはちょっと不便。使っている間に遠距離でもできるようになったら楽なんだけど。
護衛の皆と一緒に、集められたアダマンタイトの近くに行く。
「……そう言えば、何を作ればいいですか? あ、簡単な物でお願いします」
構造をしっかり把握できていないものは、見た目しか整えられないんすよ。
これでも夜寝る前の練習は続けているんだけど、やっぱりイメージの問題なんだと思う。
「形を変える様子さえ見ることができれば、それでいいからのぅ……」
立派な赤髭を撫でながらしばし考えるドゥイージ陛下。
視線があちこちに動いていたが、ふとした時に止まった。
ごつくて太い指でそれを指差す。
「アレなんかどうじゃ?」
「……まあ、いいですけど」
指を差す先の物の形は簡単にイメージできる。
「【加工】、【加工】、【加工】――」
アダマンタイトの武具やよく分からない像に触れて形を変える度にどよめきが起こる。そのどよめきはどんどん大きくなっていっているような気がする。
用意されたアダマンタイト製の物を一つの球体にすると、僕の背丈くらいの大きさになった。
それを半分に分けて、中に空洞がある直径二メートルほどの球体を二つ作る。
持ち上げる力はないけど、加工中であれば自由に動かせるので、小さい方を上に持ち上げてくっつけると完成だ。
興奮した様子のドワーフたちの野太い声が雪原に響く。
…………これ、流石にゴーレム化したら危ないだろうからしたくないんだけど、どうするつもりなんだろう?
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