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第11章 旅の準備をしながら生きていこう
181.事なかれ主義者は聞いてみた
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都市国家トネリコの使者との話し合いを軽ーく終えて帰る途中。
禁足地まで続く道をきょろきょろしながら歩いていたらジューンさんが手を繋いできた。
「昔ぃ、きょろきょろしながら歩いてた子が迷子になっちゃった事があったんですぅ」
「流石に森の中まで来たら迷子にならないと思うんだけど」
「森の中は街よりもっとはぐれやすいんですよぉ」
「いや、これだけ大所帯ではぐれる事ないと思う」
周囲をドライアドたちが好き勝手動き回っているのを見てそう思うけど、ジューンさんは手を離す気はないようだ。
果物の食べ過ぎでお腹が膨れてきたが、ドライアドたちはそんな僕の様子に気づいた様子もなく、果物を拾ってきては渡してくるので、その都度アイテムバッグの中に入れていく。
時間停止機能とかないから、中で腐らせないように気を付けないと。
ジューンさんの柔らかい手の感触にドキドキしながら森の中を歩いていたら、周りの子よりもちょっと大きなドライアドの青バラちゃんがトコトコとやってきた。
「人間さーん、こんにちは~」
「こんにちはー」
「ちわちわ~」
ちっちゃなドライアドもさらに増えた。両手には果物やなんか草みたいなのをたくさん抱えている。
ちょっと待って、果物これ以上要らないんだけど。
ただ受け取らないとドライアドたちはしょんぼりとする。
ちっちゃな子がしょんぼりしていると罪悪感やばいから受け取るしかない。
せっせと片手でアイテムバッグに果物を入れていると、ジュリウスさんが代わりにドライアドたちから果物を集め始めた。
あちらへお願いしまーす。
「あ、青バラちゃん。ちょっと聞きたい事があるからこっち来て」
「人間さん、なにー?」
トコトコと近づいてきた青バラちゃんは、ジューンさんと僕の手を見て、それから僕の空いている手を握ってきた。
「だいぶ前にさ、精霊の道? を通ってファマリーからユグドラシルやドランにいったじゃん?」
「ほんの少し前だよー」
「いや、感覚の違いはそこまで重要じゃないから。その精霊の道で、トネリコまで行ける?」
「トネリコ~?」
「世界樹トネリコ」
「知らなーい」
「知らないの?」
「知らないよー。ねー」
「ね~」
周りのドライアドたちも彼女に同意している。
どういう事だろう、と首を傾げていると青バラちゃんも真似をして首を傾げた。ちっちゃなドライアドたちも首を傾げる。
「私たち、人間さんの馬車に乗って、たま~にお散歩してるのー。あっちの方とこっちの方とそっちの方ー。ずっとず~っと昔、緑が続いていた時に、人間さんが住んでる場所に行った事もあったみたいだよー。だからそれぞれの場所への道はあるけど、それ以外の場所は知らないの」
基本的に人間は『人間さん』だから分かりづらいけど、ドラゴニアにも道が繋がっていた理由が分かった。不毛の大地がなかった頃っていつの話なんだろう。
疑問は増えたけど、今は世界樹の事だけに集中しよう。
「他の世界樹の周りにドライアドはいないの?」
「いると思うけど、同種じゃないからお話した事ないの。道は同種がいる所にしか繋げられないの」
同じドライアドでも同種じゃないの謎。ここの子たちは色とりどりの花を咲かせてるけど皆同種なんだよね。
違いが分かんないけど、アメリカ系とアジア系じゃ全然違うとかそんな感じ?
そうだとしたらちょっと当てが外れたなー。
道があるかもって思ったんだけど、そう簡単にはいかないかー。
じゃあ、次の当てに相談しに行こう。
ユグドラシルの根元の転移陣を使ってファマリアに移動すると、いつも丸くなっているフェンリルを見上げる。
ジューンさんがちょっと緊張しているのか、繋いでいる手が汗ばんでいるが、ギュッと握ってきて離そうとしない。
「ねえ、起きてる?」
『……起きておる』
「ちょっと頼みたい事があるんだけど、人目に付かない時間帯にドライアド運んでくれない?」
フェンリルにくっついて不毛の大地を越えてファマリーまでドライアドたちは来たと言っていたので、今回もそれをお願いしようとしたんだけど、フェンリルは丸まったままだった。
『断る』
「なんでさ」
『我は今、満ち足りておる。他に必要な物などない。故に、貴様の願いを聞き入れる必要もない』
「ここに住まわせてあげてるじゃん」
『周りの魔物は定期的に一掃しているであろう?』
「それはレヴィさんと契約したからでしょ」
『この木の警護もしておる』
まあ、そうだけどさ。番犬になってね、って軽く考えてお願いしたの反省だわ。
っていうか、人目に付かないように移動し続けても全く誰にも気づかれないのは不可能なんだとか。
高ランクの冒険者はフェンリルの気配や魔力で気づいて大騒ぎになる可能性もあるらしい。
静かに控えていたジュリウスさんが教えてくれた。
「人に迷惑をかけるんだったらダメだよね。じゃあやっぱり自分で何とかするしかないか。でも、ユグドラシルとファマリーのお世話があるしなぁ」
馬車かなんかに転移陣を付与して日帰り旅でもするか。
他の国を見てみたいと思い始めてた所だし、ちょうどいいや。
そのためにはいろいろ準備しなきゃな。
さっさと屋敷に帰ろっと。
確認したかった事は聞き終えたので、フェンリルに別れを告げて、転移陣を使って屋敷へと帰った。
禁足地まで続く道をきょろきょろしながら歩いていたらジューンさんが手を繋いできた。
「昔ぃ、きょろきょろしながら歩いてた子が迷子になっちゃった事があったんですぅ」
「流石に森の中まで来たら迷子にならないと思うんだけど」
「森の中は街よりもっとはぐれやすいんですよぉ」
「いや、これだけ大所帯ではぐれる事ないと思う」
周囲をドライアドたちが好き勝手動き回っているのを見てそう思うけど、ジューンさんは手を離す気はないようだ。
果物の食べ過ぎでお腹が膨れてきたが、ドライアドたちはそんな僕の様子に気づいた様子もなく、果物を拾ってきては渡してくるので、その都度アイテムバッグの中に入れていく。
時間停止機能とかないから、中で腐らせないように気を付けないと。
ジューンさんの柔らかい手の感触にドキドキしながら森の中を歩いていたら、周りの子よりもちょっと大きなドライアドの青バラちゃんがトコトコとやってきた。
「人間さーん、こんにちは~」
「こんにちはー」
「ちわちわ~」
ちっちゃなドライアドもさらに増えた。両手には果物やなんか草みたいなのをたくさん抱えている。
ちょっと待って、果物これ以上要らないんだけど。
ただ受け取らないとドライアドたちはしょんぼりとする。
ちっちゃな子がしょんぼりしていると罪悪感やばいから受け取るしかない。
せっせと片手でアイテムバッグに果物を入れていると、ジュリウスさんが代わりにドライアドたちから果物を集め始めた。
あちらへお願いしまーす。
「あ、青バラちゃん。ちょっと聞きたい事があるからこっち来て」
「人間さん、なにー?」
トコトコと近づいてきた青バラちゃんは、ジューンさんと僕の手を見て、それから僕の空いている手を握ってきた。
「だいぶ前にさ、精霊の道? を通ってファマリーからユグドラシルやドランにいったじゃん?」
「ほんの少し前だよー」
「いや、感覚の違いはそこまで重要じゃないから。その精霊の道で、トネリコまで行ける?」
「トネリコ~?」
「世界樹トネリコ」
「知らなーい」
「知らないの?」
「知らないよー。ねー」
「ね~」
周りのドライアドたちも彼女に同意している。
どういう事だろう、と首を傾げていると青バラちゃんも真似をして首を傾げた。ちっちゃなドライアドたちも首を傾げる。
「私たち、人間さんの馬車に乗って、たま~にお散歩してるのー。あっちの方とこっちの方とそっちの方ー。ずっとず~っと昔、緑が続いていた時に、人間さんが住んでる場所に行った事もあったみたいだよー。だからそれぞれの場所への道はあるけど、それ以外の場所は知らないの」
基本的に人間は『人間さん』だから分かりづらいけど、ドラゴニアにも道が繋がっていた理由が分かった。不毛の大地がなかった頃っていつの話なんだろう。
疑問は増えたけど、今は世界樹の事だけに集中しよう。
「他の世界樹の周りにドライアドはいないの?」
「いると思うけど、同種じゃないからお話した事ないの。道は同種がいる所にしか繋げられないの」
同じドライアドでも同種じゃないの謎。ここの子たちは色とりどりの花を咲かせてるけど皆同種なんだよね。
違いが分かんないけど、アメリカ系とアジア系じゃ全然違うとかそんな感じ?
そうだとしたらちょっと当てが外れたなー。
道があるかもって思ったんだけど、そう簡単にはいかないかー。
じゃあ、次の当てに相談しに行こう。
ユグドラシルの根元の転移陣を使ってファマリアに移動すると、いつも丸くなっているフェンリルを見上げる。
ジューンさんがちょっと緊張しているのか、繋いでいる手が汗ばんでいるが、ギュッと握ってきて離そうとしない。
「ねえ、起きてる?」
『……起きておる』
「ちょっと頼みたい事があるんだけど、人目に付かない時間帯にドライアド運んでくれない?」
フェンリルにくっついて不毛の大地を越えてファマリーまでドライアドたちは来たと言っていたので、今回もそれをお願いしようとしたんだけど、フェンリルは丸まったままだった。
『断る』
「なんでさ」
『我は今、満ち足りておる。他に必要な物などない。故に、貴様の願いを聞き入れる必要もない』
「ここに住まわせてあげてるじゃん」
『周りの魔物は定期的に一掃しているであろう?』
「それはレヴィさんと契約したからでしょ」
『この木の警護もしておる』
まあ、そうだけどさ。番犬になってね、って軽く考えてお願いしたの反省だわ。
っていうか、人目に付かないように移動し続けても全く誰にも気づかれないのは不可能なんだとか。
高ランクの冒険者はフェンリルの気配や魔力で気づいて大騒ぎになる可能性もあるらしい。
静かに控えていたジュリウスさんが教えてくれた。
「人に迷惑をかけるんだったらダメだよね。じゃあやっぱり自分で何とかするしかないか。でも、ユグドラシルとファマリーのお世話があるしなぁ」
馬車かなんかに転移陣を付与して日帰り旅でもするか。
他の国を見てみたいと思い始めてた所だし、ちょうどいいや。
そのためにはいろいろ準備しなきゃな。
さっさと屋敷に帰ろっと。
確認したかった事は聞き終えたので、フェンリルに別れを告げて、転移陣を使って屋敷へと帰った。
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