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第7章 世界樹を育てつつ生きていこう
106.事なかれ主義者は戦争を終わらせたい
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たくさんの馬車がここにやってきた翌朝。
まだ外に出ていいと言われていないので、朝食を食べた後は大人しく部屋から世界樹の方を見ている。
フェンリルは相変わらず、世界樹の根元で丸まって休んでいた。
ドライアドたちはどこにも見当たらない。たくさん人が来たから姿を隠したのかもしれない。
ドライアドたちがやるはずだった魔石の入れ替え作業は、ここに残る事になったドラン兵たちが頑張ってくれている。魔石のお礼らしい。
レヴィさんはリビングにいない。夜遅くに戻ってきたからまだ寝ているのかもしれない。
ドーラさんとホムラは夜遅くても平気なのか、いつも通りだった。
「ラオさん、昨日の集団の中に知り合いがいたんでしょ? 挨拶しに行かなくていいの?」
「今はいかねぇけど、その内お礼の品くらい持って挨拶にはいくさ。ユグドラシルから出る時に少しだけ協力してもらったしな」
「そうなんだ。じゃあしっかりお礼しないとね! どんなの貰ったら喜ぶかな?」
「そうだな……珍しい物なら何でも良さそうだけどな。……そう言えば前回の護衛の時に神聖ライトに興味示してたな。ホムラ、在庫あるか?」
「あります」
「じゃあプレゼント用で一つ買い取るわ」
「かしこまりました」
「身内みたいなもんだし、たくさんお世話になってるしお金いらないよ? ホムラ、あげちゃって」
「かしこまりました、マスター」
「そういう訳にはいかねぇよ。味方だと思ったらポンポン物与えようとするのやめろ」
「えー、でも前は普通に受け取ってくれたじゃん。アイテムバッグとか、いろいろ」
「それはアタシがお前の護衛をする時にあったら便利だから受け取ったんだよ。今回はアタシの私用だから、金を払うって言ってんだ」
「不要です。アイテムバッグに入っているので、そこから取り出してください」
「ほらほら、ホムラもこう言ってることだしさぁ~」
「お前が言わせてんだろうが!」
ちょ、ラオさん!? 暴力反対!!
後ろから腕を回してヘッドロックしてきたんだけど、そんな事したらお胸がですね!
ホムラも自分の胸とラオさんの胸を見比べてないで助けて!
と、そんな事をしていたらドーラさんがぽつりと一言。
「アイテムバッグに勝手にお金を入れとけばいい。私はそうしてる」
「……まあ、それもそうだな。エリクサーの事もあるし、今後はアタシもそうするか」
「あれもプレゼンぐえ!」
「まだ言うか。あれこそプレゼントとしては高価すぎるんだよバカ!」
そんなやり取りをしていると、レヴィさんが起きてきた。
身支度をしっかりと整えた彼女は、今日はドレスを着ている。
普段は動きづらいからと着る事がないそれを着ているって事は、今日も商人たちと話し合いをするんだろうか?
そんな事をラオさんに後ろから抱き着かれている格好の状態のまま考えていると、レヴィさんが口を開いた。
「お父様から返事があったのですわ。都市国家ユグドラシルにこれから向かうのですわ!」
……面倒事な予感がする。
ガタゴトと馬車に揺られながら都市国家ユグドラシルに向かう。
隣に座って僕の太ももをさわさわしてくるレヴィさんから、どうしてこういう事になったのか聞く事になった。
急ぐ事はないが、嫌な事はさっさと終わらせよう、と時間を惜しんでこうなった。外の皆にはドーラさんが話をしてくれているはずだ。
「ユグドラシルでいろいろとあったみたいなのですわ。周辺諸国からの圧力の影響もあるかもしれないですわね。ユグドラシルから停戦の申し入れがあったのですわ。まあ、停戦も何もドラゴニアとしてはこっちに入って来ないように国境を封鎖してるだけで、争ってなんていないからどっちでもいいのですけれど」
「まあ、戦争が終わるならいいんじゃない?」
「一時的に停まるってだけですわ。終戦までにはもう少しかかると思うのですわ。シズトにもやってもらいたい事があるのですわ」
「停戦の条件に僕が関係するって言ってたよね?」
「世界樹ユグドラシルへの『生育』の使用を条件に付けてきたのですわ」
「……なるほど」
これって、罠かなぁ。向こうに着いた瞬間に捕まっちゃうとか?
でも、こうして近衛兵を引き連れて向かってるって事は何かしらの考えがあると思うけど。
「大丈夫なのですわ。罠だとしても、国境付近で待機しているアルヴィン様が率いるドラン軍も一緒についてくるから、正面から相手してやるだけなのですわ!!」
王女様がとても好戦的な件について……。
ポンポンと太ももを一定のリズムで叩いて落ち着かせようとしてくれているってのは分かるんだけどね。これも多分安心させるために誇張して言ってるだけかな。
レヴィさんはすっと僕から顔をそらして外を見る。
何かあったのかな?
チラッと僕も外を見るけれど、特に何か問題が起きた様子はない。
「とにかく! シズトは心配する事なくユグドラシルに『生育』を使えばいいのですわ!」
「手遅れじゃないといいんだけどね」
「ドライアドたちが問題ないと言っていたのですわ。世界樹が貯め込んだ魔力がなくなったら枯れてしまうけど、今はまだたくさんあるから温存するために休眠期に入ってるだけって言ってたのですわ」
まあ、なるようにしかならんか。
僕は僕にできる事を頑張って、僕が原因で始まっちゃった戦争を止めよう。
まだ外に出ていいと言われていないので、朝食を食べた後は大人しく部屋から世界樹の方を見ている。
フェンリルは相変わらず、世界樹の根元で丸まって休んでいた。
ドライアドたちはどこにも見当たらない。たくさん人が来たから姿を隠したのかもしれない。
ドライアドたちがやるはずだった魔石の入れ替え作業は、ここに残る事になったドラン兵たちが頑張ってくれている。魔石のお礼らしい。
レヴィさんはリビングにいない。夜遅くに戻ってきたからまだ寝ているのかもしれない。
ドーラさんとホムラは夜遅くても平気なのか、いつも通りだった。
「ラオさん、昨日の集団の中に知り合いがいたんでしょ? 挨拶しに行かなくていいの?」
「今はいかねぇけど、その内お礼の品くらい持って挨拶にはいくさ。ユグドラシルから出る時に少しだけ協力してもらったしな」
「そうなんだ。じゃあしっかりお礼しないとね! どんなの貰ったら喜ぶかな?」
「そうだな……珍しい物なら何でも良さそうだけどな。……そう言えば前回の護衛の時に神聖ライトに興味示してたな。ホムラ、在庫あるか?」
「あります」
「じゃあプレゼント用で一つ買い取るわ」
「かしこまりました」
「身内みたいなもんだし、たくさんお世話になってるしお金いらないよ? ホムラ、あげちゃって」
「かしこまりました、マスター」
「そういう訳にはいかねぇよ。味方だと思ったらポンポン物与えようとするのやめろ」
「えー、でも前は普通に受け取ってくれたじゃん。アイテムバッグとか、いろいろ」
「それはアタシがお前の護衛をする時にあったら便利だから受け取ったんだよ。今回はアタシの私用だから、金を払うって言ってんだ」
「不要です。アイテムバッグに入っているので、そこから取り出してください」
「ほらほら、ホムラもこう言ってることだしさぁ~」
「お前が言わせてんだろうが!」
ちょ、ラオさん!? 暴力反対!!
後ろから腕を回してヘッドロックしてきたんだけど、そんな事したらお胸がですね!
ホムラも自分の胸とラオさんの胸を見比べてないで助けて!
と、そんな事をしていたらドーラさんがぽつりと一言。
「アイテムバッグに勝手にお金を入れとけばいい。私はそうしてる」
「……まあ、それもそうだな。エリクサーの事もあるし、今後はアタシもそうするか」
「あれもプレゼンぐえ!」
「まだ言うか。あれこそプレゼントとしては高価すぎるんだよバカ!」
そんなやり取りをしていると、レヴィさんが起きてきた。
身支度をしっかりと整えた彼女は、今日はドレスを着ている。
普段は動きづらいからと着る事がないそれを着ているって事は、今日も商人たちと話し合いをするんだろうか?
そんな事をラオさんに後ろから抱き着かれている格好の状態のまま考えていると、レヴィさんが口を開いた。
「お父様から返事があったのですわ。都市国家ユグドラシルにこれから向かうのですわ!」
……面倒事な予感がする。
ガタゴトと馬車に揺られながら都市国家ユグドラシルに向かう。
隣に座って僕の太ももをさわさわしてくるレヴィさんから、どうしてこういう事になったのか聞く事になった。
急ぐ事はないが、嫌な事はさっさと終わらせよう、と時間を惜しんでこうなった。外の皆にはドーラさんが話をしてくれているはずだ。
「ユグドラシルでいろいろとあったみたいなのですわ。周辺諸国からの圧力の影響もあるかもしれないですわね。ユグドラシルから停戦の申し入れがあったのですわ。まあ、停戦も何もドラゴニアとしてはこっちに入って来ないように国境を封鎖してるだけで、争ってなんていないからどっちでもいいのですけれど」
「まあ、戦争が終わるならいいんじゃない?」
「一時的に停まるってだけですわ。終戦までにはもう少しかかると思うのですわ。シズトにもやってもらいたい事があるのですわ」
「停戦の条件に僕が関係するって言ってたよね?」
「世界樹ユグドラシルへの『生育』の使用を条件に付けてきたのですわ」
「……なるほど」
これって、罠かなぁ。向こうに着いた瞬間に捕まっちゃうとか?
でも、こうして近衛兵を引き連れて向かってるって事は何かしらの考えがあると思うけど。
「大丈夫なのですわ。罠だとしても、国境付近で待機しているアルヴィン様が率いるドラン軍も一緒についてくるから、正面から相手してやるだけなのですわ!!」
王女様がとても好戦的な件について……。
ポンポンと太ももを一定のリズムで叩いて落ち着かせようとしてくれているってのは分かるんだけどね。これも多分安心させるために誇張して言ってるだけかな。
レヴィさんはすっと僕から顔をそらして外を見る。
何かあったのかな?
チラッと僕も外を見るけれど、特に何か問題が起きた様子はない。
「とにかく! シズトは心配する事なくユグドラシルに『生育』を使えばいいのですわ!」
「手遅れじゃないといいんだけどね」
「ドライアドたちが問題ないと言っていたのですわ。世界樹が貯め込んだ魔力がなくなったら枯れてしまうけど、今はまだたくさんあるから温存するために休眠期に入ってるだけって言ってたのですわ」
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