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第6章 亡者の巣窟を探索して生きていこう

88.事なかれ主義者は採掘がしたかった

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 本を読んで過ごした翌日、僕たちは亡者の巣窟の探索を再開していた。以前作っておいた転移陣を利用して三十一階層への階段近くに転移する。

「魔物のランクは下がるが、毒ガスとかやべぇから気を付けて進むぞ」
「スケルトン系が出るんだっけ?」
「ええ、そうね。魔石を壊せば再生しなくなるんだけど、時々硬いものが混ざってるから油断しちゃだめよ?」
「魔石を壊すと利益ない」
「魔石を手に入れるためには、魔石以外の部分を粉々にすればいいんだっけ?」
「私にお任せください、マスター。」

 メイスを持ってやる気満々のホムラ。軽く素振りをしてるだけなのにブンブン音がやばい。
 素振りをやめさせて三十一階層に降り立つと、そこは坑道だった。
 ラオさんとルウさんは少し頭を下げないといけないくらい天井が低い。長い武器を振り回す事も大変そうだ。
 この階層の罠は毒ガスが噴出したり、天井が崩れて分断されたりするらしい。ガスの対応策は魔道具で何とかなる。落盤は……最悪帰還の指輪で帰ろう、って事になった。
 鉄を採掘するためにツルハシを作って担いで歩いていると、ヘルメットをかぶっている事もあって鉱夫になった気分だ。
 知識もないまま適当に掘って大丈夫なのか心配だったけど、昨日調べた限り冒険者たちが小遣い稼ぎで適当に掘ってもダンジョンだからか問題が起きた事はなかった。
 まあ、ここまで来れる冒険者だからこそ何も問題が起きてなかったのかもしれないから油断はしちゃだめだけど。
 自動探知地図を使って魔物の位置が分かるので探索は順調に進み、時々出てくるスケルトン系の魔物はホムラが丁寧に粉々にしていく。何度か魔石も粉々にしてしまったけど。
 採掘ポイントに着いたらドーラさんが僕からツルハシ取り上げて、それを使って採掘をし始めた。

「鉄……鉄……鉄……」
「ミスリルないね」
「そんな簡単に見つかるようなもんじゃねぇよ。どんどん奥に行くほど見つかりやすくなって、フロアボスの階層が一番出るんだよ」
「じゃあこんな所でのんびりしてないで早く行く?」

 最短距離だと全然金属を見かけなかったので脇道にそれて採掘をしてたんだけど、ミスリルが欲しいならもっと奥に行ってもいいかも。まあ、僕はとりあえず鉄が欲しいからいいんだけどさ。ミスリルもいい素材だとは思うんだけど、ついでで取れたらラッキー程度にしか考えてないし。

「まずは鉄を一定量確保するんだろ? だったらこの階層の方がいいからここでいいだろ」
「そうねー。次の階層からどんどん鉄以外が出る事も増えてくるものね」
「シズト、壊れた」
「あ、はいはい。【加工】っと」
「ありがと」
「今日はもうこの階層を一通り見て回って採掘をするだけにしとこーぜ」
「そうだね、そうしとこっか」

 そうと決まればアイテムバッグからツルハシを取り出したんだけど、すぐに取り上げられてしまった。取り上げたラオさんがツルハシを自分が背負っていたアイテムバッグに入れる。

「………」
「………」

 スッと取り出したツルハシが今度はルウさんにサッと取り上げられた。ルウさんがニコニコしながらアイテムバッグにツルハシをしまった。ルウさんともしばらく無言で見つめ合ってたんだけど、ルウさんが一言。

「ポーターのお仕事に専念しましょう、ね?」



 結局、採掘をさせてもらえなかった。僕のパーティーメンバーが過保護すぎる件について。
 採掘をしている時に罠が発動しやすいらしい。ドーラさんが何度か毒ガスを浴びたり、落盤に巻き込まれかけてルウさんがすごい速さで引き戻したりといろいろあった。基本的に採掘はパーティーの全員ではしないのが普通らしい。
 魔物はEランクのスケルトンしかまだ遭遇していないようだ。ホムラが丁寧にメイスで骨を砕いていって、僕が魔石だけになった物を拾い集めていく。
 わらわら近づいてきてくれたおかげでたくさん手に入った。魔道具の燃料ではしばらく困らなさそうだ。

「ミスリルあった」
「……銀とかじゃなくて?」
「魔銀とも呼ばれる。魔力の伝導率がいい。魔力を流すと輝きを増す」

 ドーラさんが試しに持っていた銀の様な輝きを持つそれに青白い魔力を纏わせると、白銀の輝きが増す。
 ミスリルはほんの少ししか手に入らなかったが、鉄は結構な量が手に入った。採掘して手に入った鉄鉱石をそのまま【加工】して鉄のインゴットと残りの不純物に分けておいた。
 三十階層の転移陣まで戻ってその日の探索は終了。外に出るともうすぐ日が暮れる時間帯だった。
 館に戻ると即行でお風呂に入り、念入りに体を洗う。洗うって言うか、洗われてるんだけど。
 セシリアさんに補助をしてもらいながらレヴィさんが髪の毛を洗ってくれるんだけど、王女様がそういう事していいんですか?

「いいのですわ!」

 自信満々に即答するレヴィさん。体を洗うために魔道具を外し、ワンピースの様な湯浴み着を着ている。
 同じくワンピースの様な湯浴み着を着たセシリアさんを鏡越しに見ると、彼女は肩をすくめた。

「勇者様……ではないですけど、異世界から来た方なのでまあいいでしょう。国王陛下も望まれてますし」
「シズトはお世話されてればいいのですわー」

 んー、どんどん外堀を埋められて行ってる感。
 王女様だからとか、勇者様だからとかそういうの関係なく結婚相手を決めるのは難しいんだろうけど、何とも言えない気持ちになる。
 そんな僕の気持ちを知る由もなく、レヴィさんはニコニコしながら「問題ないのですわ~」等と言いながら、たどたどしい手つきで僕の体を洗っていった。
 問題しかない気がするんだけどなぁ……。

「そんな事より、シズトにお話があったのですわ! お父様から明日、領主の館に来てほしいと連絡があったのですわ。何か大事な話があるらしいですわ?」

 さりげなく前も洗おうとしてきたセシリアさんを止めて、何の用だろう? と首を傾げて考えるけど、分からなかった。

「行けば分かるのですわ!」
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