上 下
53 / 653
第3章 居候して生きていこう

38.事なかれ主義者はリクエストを受ける。

しおりを挟む
 結局一つずつ魔道具を説明するのに時間を使うのがもったいないと思ったので、マイルーム予定の部屋でノエルに生活をしてもらう事にした。
 あの部屋の机の引き出しはアイテムバッグにつながっているので、アイテムバッグ内にある魔道具は好きなように見ていいと伝えてある。
 ある程度防衛体制が整ったら僕の部屋になる予定の部屋なので綺麗に使うようにはきつく注意しておいた。
 それから一週間、ノエルはご飯を作るとき以外は部屋にこもって作業をしている。
 最初の三日間は徹夜で魔道具を弄っていたらしいので、四日目からはホムラにノエルの寝かしつけの仕事をお願いした。僕で慣れてるでしょ。
 ご飯を食べる時に見る顔色が最近はとてもいいので今後も続けるようにお願いしておいた。
 なんかノエルが青い顔して震えてるんだけど、どうしたんだろう?

「な、何でもないっす! あ、調理場の片づけをしないといけなかったっす!」

 そう言って慌てて外に出ていったのは、ホムラの視線から逃れるためじゃないよね?

「ホムラ、なんかしてないよね?」
「言われた通り寝かしつけをしているだけです、マスター」

 とか何とかそんな感じのやり取りをして朝ごはんを食べ終わると、ホムラはいつものようにマーケットにノエルと僕がそれぞれ作った魔道具を売りに行く。空いた時間で冒険者ギルドに浮遊台車の納品も頼んである。
 それにドーラさんがついていって、僕の作った魔道具だけ買って戻ってきて、それぞれがのんびり過ごすのがいつもの日課だったけど、今日は少し違った。

「作ってほしいものがある」

 そういうドーラさんは眠たそうな目だったけど、いつものボーっとした感じではなく真剣な表情だった。
 浮遊台車を作っている作業を止めて、ドーラさんの話を聴く。

「加護の発動を阻害する物が欲しい」
「加護を使えなくする物って事だよね?」
「そう」

 んー、できそう。
 何に使うのかは聞いたら厄介事に巻き込まれそうな気がするので何も聞かずにとりあえず物を作る事にした。
 鉄を【加工】して、手枷を作ってそこに【付与】をする。
 これでどうですかね、ドーラさん。

「……見た目を変えてほしい」
「どんなのがいいの?」
「アクセサリーとかでいい。つけてる人がすぐに取り外せる物の方がいい」
「んー、じゃあ指輪にしようか見た目ってちょっと凝った方がいい?」
「なんでもいい」

 加護を持った悪い人を拘束するためにいるのかな、って思ったけどそうでもないみたい。
 見た目のご希望とかはなかったから、とりあえず鉄のリングを指のサイズで作る。
 ……そういえば使う人の指のサイズ知らないわ。自動調節機能でもつけようか。
 本人が魔力を流している間は加護が使えなくなる魔法を【付与】して完成。
 魔力を流している間は加護無しになるから、『加護無しの指輪』とでも名付けようか。
 魔石を使ったタイプにすれば強制的に加護無しにできるんだけど、そういう物はご希望じゃないみたいだしね。
 使い方を教えると、ドーラさんは自分で身につけ、椅子を持ち上げたり机を移動させたりして確認をすると満足してもらえたみたいだ。
 家主さんで話が魔道具店の常連さんだからご要望はお聞きして、ご機嫌取りはしとかないとね。
 お風呂とかマイルームとかめっちゃ魔改造しちゃったし、掃除も頑張ったし、たい肥も今作成中だし追い出されたくない。
 宿とかだと勝手にある物を改造するのはよくないだろうから、この屋敷を自由にさせてもらえるのはありがたいんだよね。
 だから、これからもご要望があれば言ってほしいな。作るかどうかは僕が決めるけど。
 そんな事を思っていたら、今度は美味しい紅茶が簡単に入れられる魔道具が欲しいと言われた。

「美味しい紅茶ってどんな味?」
「ついてきて」

 と、いう事で全身鎧を身にまとっていないドーラさんと、お高そうな雰囲気のお店で紅茶を飲んでいます。
 周りがすごい身なりいい人ばっかなんだけど浮いてないっすか?
 緊張で紅茶の味とか分かんないんだけど、どうすればいいっすか?
 ドーラさんの方を見ると、眠たそうな目で陽に当たっている。窓際の席を希望していたし、日向ぼっこでもしたかったのかな。
 陽に当たって輝いている金色の髪はサラサラで、ちょっと触って見たいな、って思っているのは秘密だ。
 眠たそうな青い瞳が紅茶の入った器からこちらに移ると、ちょっとドキッとするくらい綺麗だった。顔がすごく整っているのも駄目だ。肌も白くて直視するともう駄目駄目だ。
 っていうか、女の人と二人で紅茶飲むのってなんかデートみたいなんですけど?
 そう考えちゃったらもう駄目過ぎだ。余計緊張してきて味わかんないやっばい!

「作れそう?」
「ちょっと……緊張しすぎて味わかんないや」
「そう。時間はたくさんある」

 拷問ですかね?
 そんな事を思いながら味が分かるようになるまでひたすら紅茶を飲み続けた。
 あ、なんか作れそう。と思った頃には太陽がかなり傾いていて、ドーラさんはとっても眠たそうな目でこちらを見ていた。
 なんかすみません。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜

KeyBow
ファンタジー
 主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。  そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。  転生した先は侯爵家の子息。  妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。  女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。  ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。  理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。  メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。  しかしそう簡単な話ではない。  女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。  2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・  多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。  しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。  信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。  いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。  孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。  また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。  果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。

亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません! いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。 突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。 里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。 そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。 三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。 だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。 とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。 いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。 町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。 落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。 そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。 すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。 ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。 姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。 そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった…… これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。 ※ざまぁまで時間かかります。 ファンタジー部門ランキング一位 HOTランキング 一位 総合ランキング一位 ありがとうございます!

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

こちらの世界でも図太く生きていきます

柚子ライム
ファンタジー
銀座を歩いていたら異世界に!? 若返って異世界デビュー。 がんばって生きていこうと思います。 のんびり更新になる予定。 気長にお付き合いいただけると幸いです。 ★加筆修正中★ なろう様にも掲載しています。

処理中です...