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第2章 露天商をさせて生きていこう

20.事なかれ主義者とホムラの密談

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 安眠カバーの思わぬ弊害……というか、融通の利かなさを確認した朝。
 今日もラオさんが合い鍵を使って、ホムラと一緒に入ってきた。
 僕と一緒にアレが起きてたら困るし、今度チェーンみたいなのつけよう……あ、閃いた!

「また変な事思いついてる顔だな」
「マスター、おはようございます。お着換えの時間です」

 変なのじゃないよ、プライバシーを守るためにとっても重要な――ホムラ、ちょっと待って、着替えは一人でできるから!

「マスター、丸まっていると服が脱がせ辛いです」
「めっちゃ力強い!」
「そりゃ魔法生物はそういうもんだろ」

 え、そうなの?
 ていうか、ホムラ待って! ほんとに待って、待て、待て!

「お着換えを――」
「自分で着替えるから出て行って!」
「……わかりました」

 なんだかホムラがしょんぼりしたように見える。無表情だったけど。
 とぼとぼと音が出そうな雰囲気で、ホムラが外に出ていくのをラオさんと一緒に見送った。
 ……ラオさん、その顔何なの。

「ラオさんも出て行ってよ」
「早く着替えて出て来いよ」

 とりあえずグズグズしていたらまた入ってきそうだし、ラオさんが出ていったらすぐに着替える。
 漫画を読んで、毎日朝起こしに来る幼馴染欲しいなぁ、なんて思ってたけどちょっと大変かも。
 着替えが終わって廊下に出ると、二人が待っていて一緒に朝食に向かう。
 ちょうど僕がドーラさんの泊っている部屋を通るタイミングでドーラさんが出てきた。

「おはよう、シズト」
「おはよう、ドーラさん」

 軽く挨拶を済ませると、僕の後をガチャガチャ音を立てながらついてきた。
 また今日も朝早くからどこかに出かけるのかな、なんて思ってたら僕たちの座ったテーブルを一緒に囲んでいる。
 ラオさんがなんかドーラさんを怪しげに見ている。
 今にもちょっかいかけそうだ。

「なんでお前も一緒に座ってんだよ」
「早く品物を見るため。一緒に行けば合理的」
「朝食はお食べになるんですか?」
「いらない」
「わかりました。必要なら言ってくださいね?」
「ルンさんルンさん、僕、おかわり要らないです」
「たくさん食べないと大きくなれないんですよ?」
「前にしか大きくならないんです」

 今日もホムラと別行動だから台車係がいないんですよ。
 とか、抵抗も虚しくわんこポトフ状態だった。
 ちょっとしばらく動けないから、とホムラを見送り、それについていったドーラさんもついでに見送った。
 ラオさん、見てないで助けて。



 夜になって、ホムラが僕の部屋にCランクの魔石を二個持ってやってきた。
 中へ入れて、扉を閉める。
 昼の間に鉄で作っておいた『どこでも鍵かけ鉄板』を扉の隙間に差し込んでおく。
 なんかよくわかんないけど、魔法の力で扉が開かなくするものらしい。
 鍵くらいの大きさなのでとってもコンパクト。
 これは売らないで普段使いにする予定。

「さて、それではホムンクルス作成検討会をしようと思います!」
「わかりました、マスター」
「前はなんか勝手にホムラができてたからびっくりしたんだよねー」
「そうなんですね、マスター」
「だから魔石の魔力を使ってできるのは変えずに、他の魔力の刺激を受けたら作られ始めるようにしようかな、って」
「素晴らしいお考えです、マスター」
「あとは前のイメージのままだとホムラそっくりになっちゃうから、ちょっと見た目を変えてみようと思うんだよね。いつでもどこでも作れるホムンクルスだから、インスタントホムンクルス、って名前にしようかな」
「素敵なお名前ですね、マスター」

 ……よくよく考えたけど、ホムラって基本的に従順だからこういう時、賛同しかしないのでは?
 ちょっとそこら辺のイメージも変えよう。
 今は人手は必要ないし、コツコツとインスタントホムンクルスを作って、ストックしとこうかな。
 それにしても、ホムラって感情がないことを除いたら見た目的にはほぼほぼ人間だし、リアルなロボットなイメージだ。
 もうちょっと感情表現ある子を作ろうかな。
 あ、でもそうなるとなんか命を作ってるみたいで、神を冒涜するみたいな感じになるんかな。
 クローン作れるけど人間でやったらまずいよね、的なやつ。
 ……作らないほうがいいのでは?
 ロボットみたいと考えてたけど、魔法生物、って呼ばれてるし――。

「早く作りましょう、マスター」

 ホムラが急かしてくる。仲間が欲しいのかな。
 本にも魔法生物の作り方載ってたし、難しいことを考えるのをやめてとりあえず作ったら――気づいたらベットで横になっていた。

「うわ!」

 ホムラがすぐそばで僕の顔をじっと見ていてめちゃくちゃびっくりした。
 ホムラは無表情でこちらを見ている。
 しばらくするとガタガタと扉が音を立てた。

「おい、なんか開かなかったけど、大丈夫か?」
「大丈夫だから壊さないでもらえるかな!?」

 一瞬、静かになったかと思ったら扉が室内を吹っ飛んでいき、ラオさんが部屋に入ってきた。
 どうすればプライバシー守れるかな、とライルさんに怒られながら考えていたら閃いた。
 ……また壊されそうだよなぁ。
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