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コボルト使いとゴブリンの王・・・1

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 エルピスから、私達が進軍を開始したと同時に小国ベルクでは、先行偵察と情報収集をしていたキングとセイナ、ガマ爺とジャバが別々に行動を開始する。 

 キングとセイナの二名は戦場となる国境付近の町や村から残った村人達を集める任務を与えてある。
 コボルト使いが周辺の村にも現れる可能性もあるので、注意するように伝えてある。

 ガマ爺とジャバは小国ベルクに潜入後、直ぐにレジスタンスや解放軍といった、今のベルク王国に反旗を翻し戦う者達を探し出す任務を任せている。

 戦闘が始まれば、敵は内地に下がり、守りを固める事だろう……
 そうなれば、更なる被害と無意味な犠牲が出るのは容易に想像がつく。

 エルピスからベルクまでは普通に進行すれば五日程度は掛かる。
 更に、正直言ってしまえば、影に皆を入れて私が移動すれば一日で済む話なのだが、それは今回しない。
 今回は、急ぎ過ぎれば無理矢理兵士とされた民衆達が盾ではなく、一般兵と並べられてしまう可能性があるからだ。

 出陣して早々に私は念話をキングとセイナに向けて飛ばす。

『私だ。其方はどうかしら?』
『よう、嬢ちゃん、こっちは何とか村人達の説得に成功してる』
『そう、問題はないのかしら?』
『問題か、幾つかの村を巡ったが、大きな村になる度に話を聞かない奴が増えてるな』
『話を聞かないか、ベルト兵の動きはどうかしら』
『そいつも厄介でな……』

 キングの話の内容は大きな街等には、見張りの兵士が既に送られており、住民達は外出制限に加え、会話すら制限されている。
 各村や町にも兵士が僅かながら駐屯しており、説得するタイミングは確実に少なくなっている。

『そうなのね、出来る限り犠牲は減らしたいのだけど』
『珍しく優しいじゃねぇか? まぁ今回の国境の街【リーデル】は、既に住民を強制的に追い出してるみたいだがな』
『随分と荒っぽいやり方ね?』
『荒っぽいか、良く言うぜ、国一つ奪い取ったのによ、まぁ、領民の財産まで奪う内容に領主は激怒してな』

 リーデルの領主は、自身の財を渡す代わりに領民達の財産に手を出さないように願い出ていた。
 そんな領主は、金に目が眩んだ兵により命を奪われる事になる。
 領主の死は領民達を絶望させた。全てを捨てる覚悟を与えたと言えるだろう。

 国境の街リーデルから逃げた領民達はベルト国内にちりじりに逃げる事となった。

『まぁ、早い話が、リーデルから逃げた連中はオレ達の話を聞いてくれてる。他の奴らはオレ等を敵だと認識してるな、どうするよ?』
『どうするも何も無いわ、助け舟を断る奴等まで面倒見れないわよ』
『優しいと思ったら、やっぱりおっかないな嬢ちゃん』
『優しいって部分だけ貰っとくわ。リーデルから逃げた領民だけでもいいわ、ゲートからエルピスに送って』
『いいのか? 色々説明が面倒なんだが?』
『大丈夫よ、レイコが上手く説明するわ』

 レイコには前もって分身体をゲートの前に待機させている。
 仮に従えな者がいた場合は、ゲートからお帰り頂く事になる。その際、命の保証はないのが残念な話だけどね。

『わかった、また連絡する。うわっ!』
 突如、念話にキングの慌てた声が響く。

『キング、どうしたの!』
『パンドラ様、今、キングさんは攻撃されてます。例のコボルト使いみたいですね?』

 セイナの説明が終わり、念話が終了する。

 キング達、大丈夫かしら、まぁ大丈夫だと思うんだけど。

「パンドラ様、大丈夫ですか? 何かあったのですか?」
 ミーナが心配そうに問い掛ける。

「問題ないわ、少し衝突があったみたいどけど、私の仲間は強いから」
 そう言い、私は空を見上げる。

 ──キング達の潜伏する村──

「てめぇ等だろ? 俺達の戦利品を奪いやがったゴミ野郎がッ!」

 大量のコボルトを従えた男が叫びながらキングに襲い掛かる。

「行けっ! コボルトども、女は生け捕り、大男の方は手足を切り刻んで女が嬲られる様を見せつけてやるよッ!」

「落ち着け、スカッド! あの男も使えるスキル持ちかも知れんだろ!」
「うるせぇ! 指図する暇があったら、てめぇも手伝えや! ルマント、話はとりあえず、女を捕まえてからだ!」

 スカッドの声にコボルト達がキング目掛けて走り出す。

「あははッ! まだまだ、増えるからよ! 簡単に死ぬなよオッサン!」
 嘲笑うように叫ぶとスカッドの指に嵌められた指輪が次々に輝き出す。
 コボルトが一つの指輪から八体召喚されると黒く変色していく。

 その光景にキングが口を開く。

「どうやら、指輪一つあたり、八体が限界らしいな? こんなコボルト程度、何十体いても、オレ一人で十分なんだよ!」

 キングは容赦なくコボルト達に向けて、戦斧を振り抜く。
 数体のコボルトがキングの剛腕から繰り出される巨大な戦斧の刃に叩き切られて行く。

「あぁ? クソが! ならありったけの犬共で地獄に叩き込んでやるよ!」
 上着の内側を見せるように開くスカッド、そこには、数十個のリングがあり、戦力が途切れていない事実を見せつける。

 次々と召喚されるコボルト達、しかし、それをキングは容赦なく切り伏せていく。

「おい、ルマント! 狂獣化のスキルをコボルトに掛けろ!」
「ヒヒヒ、そういう事か、行くぞ!」

 ルマントにスカッドが指示を出した瞬間、指に嵌めていた指輪を全て地面に投げる。

「悪足掻きか? リングが無いとコボルトも操れないように見えるが?」

「ああ、確かにな、だが、狂獣化したコボルト共は最初に攻撃した相手が死ねまで襲い続けるんだよ! バカがぁ!」

 更に指輪を装着するスカッド。

「どんどん行くぞッ! クソ脳筋野郎ッ!」

 キングに向かって走り出すコボルト達、そんなコボルトにルマントが次々に狂獣化のスキルを発動していく。

 死を微塵も恐れないコボルト達の攻撃は凄まじく、キングに次々に襲い掛かる。

「確かに厄介だな! だがな、数の勝負なら負ける気しねぇんだよ!」

 戦斧を円状に振り抜き、襲い掛かるコボルトを吹き飛ばすキング。
 しかし、再度襲い掛かるコボルト達、更に追加で召喚されるコボルトアーチャー達が弓を構える。

「来い! ゴブリンガードナー!」とキングが声を上げた瞬間、キングの周りを五体の大盾を装備した大柄なゴブリン達が囲むように姿を現す。
 襲い掛かったコボルト達を大盾で吹き飛ばし、放たれた矢を盾で弾いて見せる。

「そいつが奥の手かよ、だがな、奥の手はこっちにもあるんだよ! 来い! コボルトキング! コボルトチャンピオン! 」

 三メートルはあろう、巨大なコボルトが二体姿を現すとスカッドがニヤリと笑い出す。

「さぁ、皆殺しにしてやんよ! アハハ!」





 
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