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暴れなさい・・・1
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重装歩兵大隊が梟の地上部隊と交戦を開始した直後、上空もまた動き出す。
梟の長とその精鋭達に対して、ラクネが動いた。
ルーズは、後にラクネの動きを「まるで、空を蹴り破るのではないか」そう感じずにはいられない程、激しい爆音と共に雲が弾けたと語る。
ラクネは、空中を高速で駆け出すと、真っ直ぐに梟の長を目掛けて突き進む。
「チッ! デタラメな動きをしやがって、奴を止めろッ!」
梟の長が叫ぶと同時に前に出る精鋭達、そんな彼等をラクネはまるで濡れた紙に拳を振り抜くように、意図も容易く粉砕していく。
「ぎゃあああ!」
「ぐあぁぁ!」
精鋭達が一瞬で吹き飛ばされる姿に、梟の長は、今までに無い恐怖を感じていた。
「ふざけんなよ……何人居たと思ってんだ、あんな化け物の相手なんて、聞いてねぇぞ」
自分達の長の言葉に、梟の面々に動揺が走る。
冷静にして、沈着、全てを先読みして、相手を容易く葬る事を喜びとする性格の持ち主が梟の長であった。
しかし、今回は状況が違っていた。
地上部隊の投入と同時に起こった甚大な被害、更に先手を取った筈の魔法攻撃で終わらせる筈がダメージを与えられず、今正に、信頼する精鋭達が軽々と肉片にされている事実、全てが予想に反しつまったくの真逆になっていた。
そして、今正に、自身の目の前に迫る最悪は、拳を握っている。
梟の長が目にした世界は、余りにゆっくりなコマ送りのような世界だっただろう、人が最後に見る世界、走馬灯と言えるだろう。
「吹き飛べ、愚か者がァァァッ!」
「あ、あ、くぁ……アンタのボスに話がある!」
咄嗟の梟の長の情けない叫び声が、ラクネの拳が僅かに減速させた。
ラクネの脳内で一瞬だが、判断を鈍らせたと言える。
主である私に話があると言われた瞬間、ラクネの中で以前の戦闘が思い浮かんでいた。
相手を潰した結果、大切な情報や手に入れられる筈だった物を失っている事実がラクネの拳を減速させたのだ。
その結果、梟の長はその一瞬で防衛魔法を展開する事で、本来ならば絶命を回避することに成功していた。
「はぁ、はぁ……アンタのボスに、話をさせてくれ……頼む、なんでも話す」
梟の長が声を放った瞬間、梟の面々に動揺が走る。
「何を言っているのですか! サザル公国を裏切るのですか!」
「長、考え直しをッ!」
「うるさいッ! 黙れ、既に我々は敗北した事実が分からぬのか?」
そんな会話を行う梟達、ラクネは即座に念話を主である私に飛ばそうとしていた。
ラクネに向けて地上の重装歩兵大隊の居た位置から私は声を上がる。
「何をしてるのかしら、私に話があるなら、聞かなくもないけど」
「な、御館様」と、ラクネは戦闘中でありながら、その場に膝を着くような仕草をすると頭をたれる。
「ラクネ、構わないわ。私も見てて話があったから、丁度いいわ」
そう語ると私は、天高く飛び上がり、即座にラクネの影に移動して、真横に姿を現す。
「さぁ、話を聞いてあげる……何を教えてくれるのかしら?」
「こ、これは、御会い出来て光栄に存じます、私は、名すら与えられぬ存在、梟の長と呼ばれる者に御座います」
梟の長は、挨拶を口にする。
ずっと見ていたのだから、分かっていたが、この男は手の平を簡単に返すような男とは思えない……簡単に言えば、公国という存在に狂った者だと私は感じている。
「私は、パンドラ。この子達の主人であり、家族の長みたいな存在よ」
「改めまして、パンドラ様、我が部下を含め、梟は、降伏致します」
梟の長の言葉にざわめきが走る最中、私は幾つかの方向に視線を走らせ、くすくす、笑う。
「降伏? 本気で言ってるのかしら、この状況で?」
視線を向けた幾つかの方向に対して、私は手を開き、指先に魔力を収縮させ五発のビー玉サイズの魔力弾を即座に作り出し、撃ち放つ。
一瞬で五名の梟の団員を撃ち抜くと梟の長の額から汗が流れ落ちる。
「貴様は話し合いだの、降伏と言いながら、部下達に面白い事をさせているわね……魔力が飛ばされてるみたいだし、景色を相手に映し出す魔法かしら?」
「すべて、御見通しですか、本当に厄介な奴だな……我々は敗北しても、目的は敵の情報を本国に伝える事が目的だからな」
「私の名前と姿がそんなに重要なのかしら?」
「重要なのは、お前の魔力、我等が公国は魔力さえ把握が出来れば、全てを焼き尽くす事が可能なのだからな」
「そう……でも、残念だわ、貴方の期待する攻撃は私には届かない筈よ」
「そんなはずがあるかよ。お前の最後を見れないのは残念だが、我が祖国に敗北など無い!」
「ふふっ、今頃、貴方達の母船は、ホーネットと戦ってる頃かしら、まぁ、貴方には関係ないわよね」
「な、どう言う事だ!」と、叫びながら、梟の長が私に向かって攻撃をしようとした瞬間、クイーンが即座に姿を現し、ラクネと共に、梟の長を玉砕する。
クイーンは、苛立ちのままに、口を開く。
「これ以上、主様に失礼を許す訳にはいかないですよ、まったく」
申し訳なさそうに私を見つめるラクネ、その姿を見て、私はニッコリと微笑む。
「ラクネ、アナタは間違ってないわ、本当に必要な情報があった場合、アナタの取った行動が正解になる、とりあえず気にするんじゃないわよ」
「あ、はい……御館様、ありがとうございます……」
ラクネは凄く損な性格なのかも知れないわね。
真っ直ぐな分、間違いに対して凄い責任を感じてしまう、本当に仕方ない子ね。
「さて」っと、私は軽く2人に言うと、即座に《拡声魔法》を発動させ、地上、上空その場に居る全てに対して声をあげる。
「よく聞かなさいッ! 重装歩兵大隊、梟の地上部隊は一人も逃がす事は許さないわ!」
「うぉぉぉーーーッ!」と、待機していた重装歩兵大隊が即座に動き出し、梟の地上部隊は応戦する者、逃げ出していく者、既に長を失い、全ての連携が失われていた。
「上空の梟さん達も、一人残らず、借りなさい。ラクネに任せるわ、いいわね。
クイーン、ホーネットのサポートに向かってくれるかしら、後から見に行くつもりだら、よろしくね」
「は、御意、御命令有難き幸せ」
「畏まりましたです。ホーネットのサポートを行いますです。」
クイーンとラクネが即座に動き出すと、私はルーズとクーリに対して視線を向ける。
「ルーズ、早く勝負の決着をつけなさい……私が見ててあげるわ、敗者の処分も決めないとだし、互いに全力でぶつかりなさい」
私の言葉に、ルーズが頷き、クーリもまた、覚悟を決め、互いに得物を握る。
そこからは、呆気ない物だった。
ルーズは私に全力でやるようにと伝えられた事から、ビッグホーンランスに全ての力を込め、クーリはその一撃を回避を捨てた最強の一撃にて迎え打ってみせた。
結果は、ルーズの勝利となり、クーリの部下達は、涙を流しながらも、覚悟を決め、クーリの傍に集まっている。
私はその結果に、拍手を打ち鳴らした。
「素晴らしい一戦だったわ、ルーズ。貴方の部下として、ソイツらは任せるわ」
「はい、有難き御言葉に感謝いたします!」
「えぇ、さて、ホーネット達が待ってるから、行くわ。あと、城の掃除もお願いね。ルーズ任せたわよ」
私は面倒を全て、ルーズ達に押し付けて、ホーネット達と合流する。
梟の長とその精鋭達に対して、ラクネが動いた。
ルーズは、後にラクネの動きを「まるで、空を蹴り破るのではないか」そう感じずにはいられない程、激しい爆音と共に雲が弾けたと語る。
ラクネは、空中を高速で駆け出すと、真っ直ぐに梟の長を目掛けて突き進む。
「チッ! デタラメな動きをしやがって、奴を止めろッ!」
梟の長が叫ぶと同時に前に出る精鋭達、そんな彼等をラクネはまるで濡れた紙に拳を振り抜くように、意図も容易く粉砕していく。
「ぎゃあああ!」
「ぐあぁぁ!」
精鋭達が一瞬で吹き飛ばされる姿に、梟の長は、今までに無い恐怖を感じていた。
「ふざけんなよ……何人居たと思ってんだ、あんな化け物の相手なんて、聞いてねぇぞ」
自分達の長の言葉に、梟の面々に動揺が走る。
冷静にして、沈着、全てを先読みして、相手を容易く葬る事を喜びとする性格の持ち主が梟の長であった。
しかし、今回は状況が違っていた。
地上部隊の投入と同時に起こった甚大な被害、更に先手を取った筈の魔法攻撃で終わらせる筈がダメージを与えられず、今正に、信頼する精鋭達が軽々と肉片にされている事実、全てが予想に反しつまったくの真逆になっていた。
そして、今正に、自身の目の前に迫る最悪は、拳を握っている。
梟の長が目にした世界は、余りにゆっくりなコマ送りのような世界だっただろう、人が最後に見る世界、走馬灯と言えるだろう。
「吹き飛べ、愚か者がァァァッ!」
「あ、あ、くぁ……アンタのボスに話がある!」
咄嗟の梟の長の情けない叫び声が、ラクネの拳が僅かに減速させた。
ラクネの脳内で一瞬だが、判断を鈍らせたと言える。
主である私に話があると言われた瞬間、ラクネの中で以前の戦闘が思い浮かんでいた。
相手を潰した結果、大切な情報や手に入れられる筈だった物を失っている事実がラクネの拳を減速させたのだ。
その結果、梟の長はその一瞬で防衛魔法を展開する事で、本来ならば絶命を回避することに成功していた。
「はぁ、はぁ……アンタのボスに、話をさせてくれ……頼む、なんでも話す」
梟の長が声を放った瞬間、梟の面々に動揺が走る。
「何を言っているのですか! サザル公国を裏切るのですか!」
「長、考え直しをッ!」
「うるさいッ! 黙れ、既に我々は敗北した事実が分からぬのか?」
そんな会話を行う梟達、ラクネは即座に念話を主である私に飛ばそうとしていた。
ラクネに向けて地上の重装歩兵大隊の居た位置から私は声を上がる。
「何をしてるのかしら、私に話があるなら、聞かなくもないけど」
「な、御館様」と、ラクネは戦闘中でありながら、その場に膝を着くような仕草をすると頭をたれる。
「ラクネ、構わないわ。私も見てて話があったから、丁度いいわ」
そう語ると私は、天高く飛び上がり、即座にラクネの影に移動して、真横に姿を現す。
「さぁ、話を聞いてあげる……何を教えてくれるのかしら?」
「こ、これは、御会い出来て光栄に存じます、私は、名すら与えられぬ存在、梟の長と呼ばれる者に御座います」
梟の長は、挨拶を口にする。
ずっと見ていたのだから、分かっていたが、この男は手の平を簡単に返すような男とは思えない……簡単に言えば、公国という存在に狂った者だと私は感じている。
「私は、パンドラ。この子達の主人であり、家族の長みたいな存在よ」
「改めまして、パンドラ様、我が部下を含め、梟は、降伏致します」
梟の長の言葉にざわめきが走る最中、私は幾つかの方向に視線を走らせ、くすくす、笑う。
「降伏? 本気で言ってるのかしら、この状況で?」
視線を向けた幾つかの方向に対して、私は手を開き、指先に魔力を収縮させ五発のビー玉サイズの魔力弾を即座に作り出し、撃ち放つ。
一瞬で五名の梟の団員を撃ち抜くと梟の長の額から汗が流れ落ちる。
「貴様は話し合いだの、降伏と言いながら、部下達に面白い事をさせているわね……魔力が飛ばされてるみたいだし、景色を相手に映し出す魔法かしら?」
「すべて、御見通しですか、本当に厄介な奴だな……我々は敗北しても、目的は敵の情報を本国に伝える事が目的だからな」
「私の名前と姿がそんなに重要なのかしら?」
「重要なのは、お前の魔力、我等が公国は魔力さえ把握が出来れば、全てを焼き尽くす事が可能なのだからな」
「そう……でも、残念だわ、貴方の期待する攻撃は私には届かない筈よ」
「そんなはずがあるかよ。お前の最後を見れないのは残念だが、我が祖国に敗北など無い!」
「ふふっ、今頃、貴方達の母船は、ホーネットと戦ってる頃かしら、まぁ、貴方には関係ないわよね」
「な、どう言う事だ!」と、叫びながら、梟の長が私に向かって攻撃をしようとした瞬間、クイーンが即座に姿を現し、ラクネと共に、梟の長を玉砕する。
クイーンは、苛立ちのままに、口を開く。
「これ以上、主様に失礼を許す訳にはいかないですよ、まったく」
申し訳なさそうに私を見つめるラクネ、その姿を見て、私はニッコリと微笑む。
「ラクネ、アナタは間違ってないわ、本当に必要な情報があった場合、アナタの取った行動が正解になる、とりあえず気にするんじゃないわよ」
「あ、はい……御館様、ありがとうございます……」
ラクネは凄く損な性格なのかも知れないわね。
真っ直ぐな分、間違いに対して凄い責任を感じてしまう、本当に仕方ない子ね。
「さて」っと、私は軽く2人に言うと、即座に《拡声魔法》を発動させ、地上、上空その場に居る全てに対して声をあげる。
「よく聞かなさいッ! 重装歩兵大隊、梟の地上部隊は一人も逃がす事は許さないわ!」
「うぉぉぉーーーッ!」と、待機していた重装歩兵大隊が即座に動き出し、梟の地上部隊は応戦する者、逃げ出していく者、既に長を失い、全ての連携が失われていた。
「上空の梟さん達も、一人残らず、借りなさい。ラクネに任せるわ、いいわね。
クイーン、ホーネットのサポートに向かってくれるかしら、後から見に行くつもりだら、よろしくね」
「は、御意、御命令有難き幸せ」
「畏まりましたです。ホーネットのサポートを行いますです。」
クイーンとラクネが即座に動き出すと、私はルーズとクーリに対して視線を向ける。
「ルーズ、早く勝負の決着をつけなさい……私が見ててあげるわ、敗者の処分も決めないとだし、互いに全力でぶつかりなさい」
私の言葉に、ルーズが頷き、クーリもまた、覚悟を決め、互いに得物を握る。
そこからは、呆気ない物だった。
ルーズは私に全力でやるようにと伝えられた事から、ビッグホーンランスに全ての力を込め、クーリはその一撃を回避を捨てた最強の一撃にて迎え打ってみせた。
結果は、ルーズの勝利となり、クーリの部下達は、涙を流しながらも、覚悟を決め、クーリの傍に集まっている。
私はその結果に、拍手を打ち鳴らした。
「素晴らしい一戦だったわ、ルーズ。貴方の部下として、ソイツらは任せるわ」
「はい、有難き御言葉に感謝いたします!」
「えぇ、さて、ホーネット達が待ってるから、行くわ。あと、城の掃除もお願いね。ルーズ任せたわよ」
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