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戦場のケストア・・・2
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私の前で、王座に座る弱き王の質問に私は軽く微笑み、返答する。
口を開こうとした瞬間、兵士達は、緊張からだろうか、槍が小刻みに軽く震えているのが理解出来る。
「私が望むのはこの大陸よ……国に興味は無いわ」
大陸と言う言葉に、大柄な兵士が一人、怒りを露にして、槍を手に駆け出す、無論、槍の矛先は私だ。
「ふざけるなよッ! 我等がケストアのあるこの大陸を自身の物にしようなど、冗談でも笑えぬわッ! ハアッ!」
激しい槍術が私の心臓や額目掛けて、放たれ、躱されていく。
ニメートルはあるであろう巨大な兵士は、槍術に相当の自信があったのだろう。
だが、私からすれば、お遊び程度にしか感じない。
兵士の槍を片手で軽く払い除け、軽く飛び上がり、そのまま、もう片方の手で兵士の額を掴む。
その反動を利用して、兵士の後頭部を床に叩きつけて、動きを完全に潰す。
私の手よりデカい頭部の為、全てを掴む事は叶わないが、既に後頭部を打ったことにより、脳震盪を起こして動かない。
更に影で全身を拘束して身動きを制限しているので、目覚めても動くことは出来ないだろう。
わざわざ、わざとらしく戦った理由それは、女性だからと、ふざけた答えを口にさせない為の軽いショーみたいなものだ。
しかし、本当に救えないなぁ……助けてやろうと考えたのに……
「これがお前達の答えか? 私とも敵対すると、そういう答えで良いのだな……」
王は、今の状況に言葉を発せず、暗い表情を下に向けて微かに歯を食いしばる様な様子が見て取れる。
他の兵士達は、私を直視せずに下を向いている。
単純に、私が玉砕した大男は、彼等より強い存在であり、そんな者を倒した私に刃を向ける事を拒絶しているのだろう。
答えを待たずにその場から、立ち去ろうと私は考えていた。
国が無くなろうが、私には正直関係ないのだから、私が守るガレルの街は絶対に安全だと自負しているし、いざとなれば、敵は喰らい尽くせばいいだけなのだから。
私が軽く挨拶をしようとした瞬間、外が一気に騒がしくなり、制止する兵士の声とそれに対して、必死に抵抗する声が入り交じる。
そして、三つある扉の一つが激しい勢いで開け放たれ、王の前に一人の若者と複数の兵士が姿を現す。
その若者は私の存在に気づくと王ではなく、私に対して深く頭をさげたのだ。
「パンドラ殿、此度の結果は申し訳ない、我が主であったマリオ・ネトラより、話は聞いております!」
深い謝罪と、罪悪感を語る若者、それは以前、ガレルに使者であるマリオ・ネトラと訪れ、死にかけていたアレク・ドリアーノだったわ。
「無事に目覚めてたのね? よかったわ」
「お陰様で、腕も無事です。更に言えば、痛めていた肩や傷も回復して、以前よりも良い状態と言えます」
「それは何よりだわ。話は今終わったから、あとは其方で頑張ってね」
私がそう語った瞬間、アレクが再度、頭を下げる。
「どうか、今一度、今、一度だけ、我が国に謝罪の機会を頂きたいッ!」
私にそう語り、次にアレクは、王に視線を向ける。
「国王陛下、今を確りと見つめて下さいッ! 今、決断せねば、全てが灰と成りましょう」
アレクの言葉に大臣の1人が声をあげる。
「アレクッ! 貴様、一兵士の分際で何を語るか! 陛下ッ! 聞いては成りませぬぞ。
あの者も、バロ・ネトラの配下やも知れませぬ!」
大臣の言葉に他の者達が賛同し始め、私とアレク、配下の部下達を睨みつける。
本当に救えないわね。
「アレク、アナタとは少し話があるわ。
生き残るつもりなら、私の手を取りなさい……選択は任せるわ」
私は手を前に出す。
アレクは悩まずに私の手を掴む。
その瞬間、アレクとその部下達を私の影に吸い込んで見せる。
「それでは、失礼します。もう御会いする事もないでしょう」
私が姿を透明にすると同時に、凄まじい足音が近づき、王の前にバロ・ネトラとその部下達が姿を現す。
そこからは、呆気ないものだったわ。
大臣達は命乞いを始め、王は何も出来ず、結果はその場に居た兵士を含め、全滅となった。
この瞬間、ケストアと言う国がこの世界から消滅したのだから……
私の影の中から全てを見ていたアレクの悲しみと無念さがひしひしと伝わる。
とりあえずは、後始末だけはしないとね。
勝利と王座に喜ぶバロ・ネトラの前に私は姿を現す。
「一瞬の勝利を味わった感想はどう……
良かったら聞かせて貰えるかしら?」
「何者だ? 王の傍にお前の様な者は居なかったはずだが」
「初対面ですから、私はパンドラ……ガレルの守り神と呼ばれてる存在と、言えば分かるかしら?」
名を名乗った瞬間、私に対して、バロ・ネトラの兵士が取り囲む様に移動する。
「そうか、貴様が……だが、一人で何が出来る? 見たとこる、兵士は見えないが?」
バロ・ネトラの言葉に私は笑みを浮かべる。
「アナタは私に勝てると考えてるのかしら?」
「ガハハハッ! コイツは面白い、お前ら、そいつを捉えろ、手足を削いで、ガレルの馬鹿どもに見せてやれ」
「ハッ!」っと、複数の兵士が動き出し、私に切先を向ける。
口を開こうとした瞬間、兵士達は、緊張からだろうか、槍が小刻みに軽く震えているのが理解出来る。
「私が望むのはこの大陸よ……国に興味は無いわ」
大陸と言う言葉に、大柄な兵士が一人、怒りを露にして、槍を手に駆け出す、無論、槍の矛先は私だ。
「ふざけるなよッ! 我等がケストアのあるこの大陸を自身の物にしようなど、冗談でも笑えぬわッ! ハアッ!」
激しい槍術が私の心臓や額目掛けて、放たれ、躱されていく。
ニメートルはあるであろう巨大な兵士は、槍術に相当の自信があったのだろう。
だが、私からすれば、お遊び程度にしか感じない。
兵士の槍を片手で軽く払い除け、軽く飛び上がり、そのまま、もう片方の手で兵士の額を掴む。
その反動を利用して、兵士の後頭部を床に叩きつけて、動きを完全に潰す。
私の手よりデカい頭部の為、全てを掴む事は叶わないが、既に後頭部を打ったことにより、脳震盪を起こして動かない。
更に影で全身を拘束して身動きを制限しているので、目覚めても動くことは出来ないだろう。
わざわざ、わざとらしく戦った理由それは、女性だからと、ふざけた答えを口にさせない為の軽いショーみたいなものだ。
しかし、本当に救えないなぁ……助けてやろうと考えたのに……
「これがお前達の答えか? 私とも敵対すると、そういう答えで良いのだな……」
王は、今の状況に言葉を発せず、暗い表情を下に向けて微かに歯を食いしばる様な様子が見て取れる。
他の兵士達は、私を直視せずに下を向いている。
単純に、私が玉砕した大男は、彼等より強い存在であり、そんな者を倒した私に刃を向ける事を拒絶しているのだろう。
答えを待たずにその場から、立ち去ろうと私は考えていた。
国が無くなろうが、私には正直関係ないのだから、私が守るガレルの街は絶対に安全だと自負しているし、いざとなれば、敵は喰らい尽くせばいいだけなのだから。
私が軽く挨拶をしようとした瞬間、外が一気に騒がしくなり、制止する兵士の声とそれに対して、必死に抵抗する声が入り交じる。
そして、三つある扉の一つが激しい勢いで開け放たれ、王の前に一人の若者と複数の兵士が姿を現す。
その若者は私の存在に気づくと王ではなく、私に対して深く頭をさげたのだ。
「パンドラ殿、此度の結果は申し訳ない、我が主であったマリオ・ネトラより、話は聞いております!」
深い謝罪と、罪悪感を語る若者、それは以前、ガレルに使者であるマリオ・ネトラと訪れ、死にかけていたアレク・ドリアーノだったわ。
「無事に目覚めてたのね? よかったわ」
「お陰様で、腕も無事です。更に言えば、痛めていた肩や傷も回復して、以前よりも良い状態と言えます」
「それは何よりだわ。話は今終わったから、あとは其方で頑張ってね」
私がそう語った瞬間、アレクが再度、頭を下げる。
「どうか、今一度、今、一度だけ、我が国に謝罪の機会を頂きたいッ!」
私にそう語り、次にアレクは、王に視線を向ける。
「国王陛下、今を確りと見つめて下さいッ! 今、決断せねば、全てが灰と成りましょう」
アレクの言葉に大臣の1人が声をあげる。
「アレクッ! 貴様、一兵士の分際で何を語るか! 陛下ッ! 聞いては成りませぬぞ。
あの者も、バロ・ネトラの配下やも知れませぬ!」
大臣の言葉に他の者達が賛同し始め、私とアレク、配下の部下達を睨みつける。
本当に救えないわね。
「アレク、アナタとは少し話があるわ。
生き残るつもりなら、私の手を取りなさい……選択は任せるわ」
私は手を前に出す。
アレクは悩まずに私の手を掴む。
その瞬間、アレクとその部下達を私の影に吸い込んで見せる。
「それでは、失礼します。もう御会いする事もないでしょう」
私が姿を透明にすると同時に、凄まじい足音が近づき、王の前にバロ・ネトラとその部下達が姿を現す。
そこからは、呆気ないものだったわ。
大臣達は命乞いを始め、王は何も出来ず、結果はその場に居た兵士を含め、全滅となった。
この瞬間、ケストアと言う国がこの世界から消滅したのだから……
私の影の中から全てを見ていたアレクの悲しみと無念さがひしひしと伝わる。
とりあえずは、後始末だけはしないとね。
勝利と王座に喜ぶバロ・ネトラの前に私は姿を現す。
「一瞬の勝利を味わった感想はどう……
良かったら聞かせて貰えるかしら?」
「何者だ? 王の傍にお前の様な者は居なかったはずだが」
「初対面ですから、私はパンドラ……ガレルの守り神と呼ばれてる存在と、言えば分かるかしら?」
名を名乗った瞬間、私に対して、バロ・ネトラの兵士が取り囲む様に移動する。
「そうか、貴様が……だが、一人で何が出来る? 見たとこる、兵士は見えないが?」
バロ・ネトラの言葉に私は笑みを浮かべる。
「アナタは私に勝てると考えてるのかしら?」
「ガハハハッ! コイツは面白い、お前ら、そいつを捉えろ、手足を削いで、ガレルの馬鹿どもに見せてやれ」
「ハッ!」っと、複数の兵士が動き出し、私に切先を向ける。
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