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宣戦布告・ガレルの街・・・2

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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 ~ケストア王国・会議室~

 私はリンクを飛ばした虫を通して、静かに会議の内容を聞いていた。

「陛下! 今回のガレルの行いは、明らかな反逆の意思だ! 今摘み取らねば、次々に調子にのった馬鹿共が同調しますぞ」

「しかし、バロ・ネトラ司令、些か、強引ではないかね?」

「陛下、ネトラ司令も、落ち着いてくださいませ。今、ネトラ司令の御子息が使者として、ガレルの意思を知ろうと動いております」

「うむ、大臣の言う通りだな。世も少し、落ち着かねばなるまい。ネトラ司令、今は待たぬか?」

「……わかりました。ですが、直ぐに軍が動ける様にだけは準備をさせて頂きます」

「うむ、それで構わん。しかし、ガレルなどと言う、小さな町に何が起きているのか、魔物の襲来と突然の巨大な壁、本来ならば有り得ない事ばかりか……」

 話の内容から、軍が動くのは、マリオ・ネトラが帰還してからになるだろう。

 既に早馬が飛ばされていれば、数日中に軍が動く可能性があるだろう。

 私はある程度の話を聞いた後、虫とのリンクを切り、意識をガレルの街に戻す。

 ケストア王国ってば、かなり大変な事になってるみたいね。


 ここからはデュバルにも、確りと動いてもらう。
 最初に格代表達を集めた話し合いの場が即座に設けられる。

 簡単に言えば、宣戦布告されて戦争になる事実の報告と既に此方についた者に対して王国に帰る場所は残されてない事実を伝えさせる。

 ただし、デュバルの言葉を信頼出来ず、逃げたいと願う者に対しては止めること無く、永住資格を返還する事で食料等を持たせて旅立たせる手筈になっている。

 ガレルに渋渋残った者達と、王国と戦う覚悟で残った者達の二種類になり、やる気のある者達は兵士として訓練に力を入れる。

 私も戦う為の用意を開始する。
 防壁の入口と言える部分は3門あり、陸からの門が2つ、巨大水路で運河として使っている水門が1つとなる。

 正面側の門に対して、守りをキング指揮の部隊、もう1つの門に関しては、ガスト、ロアル、クロミの3名の格部隊に防衛を任せる。

 最後の水路には、私と護衛のクイーン達3人とガマ爺が同行する。

 相手からしたら、水路が一番のハズレかもしれないわね。

 今回のケストア王国との戦闘は、内戦扱いになるだろう。
 私達の守護するガレルに対して戦力を回し過ぎれば、形として同盟を結んでいる国々から背後を叩かれる恐れすらあるのだ。

 ケストア王国は、大国であり強大だ。
 しかし、それは過去からの流れであり、実際は支配しきれない程に巨大化した風船のようになっていると言える。

 新しい流れが渦を作り出そうとしている。

 既に王国側からは、不穏に動き出す者の存在も確認できている。

 陰謀と策略、欲望と権力が混ざり合った瞬間、巨大化した風船は弾けるだろう、そなの時、ケストア王国はどうなるのか、予想通りなのか、予想の斜めを行くのか、ケストア王の決断が楽しみだわ。

 そこから、二週間足らずで、ケストア王国からの大部隊がガレルに向けて進軍する。

 互いに戦闘を覚悟して動いていただろう、しかし、そこには力ある者の奢りが存在している。

 ケストア王国軍、10万の戦力が向けられる。
 10万と言う戦力は、ケストア王国側から見た全勢力からすれば、失っても惜しくない戦力と言える。
 だが、この10万の戦力には、既に陰謀と策略が含まれている。

 ケストア王国進軍の際に、私は再度、虫とリンクしていた。

 今回の進軍に用いられた部隊は、ケストア王国の本隊から選ばれた精鋭であり、逆を言えば、ケストア王国内部の部隊から大きく戦力を回した結果となる。

 私はガレルに作った洋館の自室で、複雑な表情を浮かべる他なかった。

 夜の闇に浮かぶ月を見つめながら、小さく呟く。

「本当に世知辛いわね……」

 そんな姿を心配そうに見つめるクイーン。

「クイーンたら、そんな顔しないでよ、大丈夫よ」

「はいです、ご主人様、そろそろ、御時間です」

 クイーンの言葉に私は頷き、部屋を後にする。

 向かった先は、各村や町の代表と村や町の戦闘を指揮する者達が集まる会議室だ。
 そこには既に、デュバルも席に着いている。

 私が会議室に入ると視線が向けられる。

「デュバル、遅くなったわ。皆も集まってるわね」

 私の言葉にデュバルが頷き、その様子に皆が軽くざわめく。

 デュバルが口を開く。

「皆に伝えねばならない。ガレルの管理を任されているのは、私だが、私はパンドラ殿の下についている存在だ」

 そう語ると、デュバルは私に用意された第二位の席に自身が移動し、私を領主の席に座るように頭をさげる。

「なんだって!」
「デュバル様が、あの少女の部下だと?」
「我々をからかってるのか!」

 予想していた範囲のざわめきに、私は"威圧"を込めて口を開く。

「黙りなさい……いいわね」

 圧倒的な威圧がその場に広がり、勢いよく口を開いていた者達の口が塞がる。

 そんな中に一人だけ、私に意見を口にする男がいた。

「分かったから、威圧を消してくれ。オヤジは、心臓が弱いんだ。頼む」

 私にそう伝えた男、見た目は完全にチンピラかマフィアといった姿にみえる。

 オールバックの黒髪に細身の長身であり、スーツ姿がまさに裏社会の人間だとわかりやすい自己紹介になっている。

「勝手な発言で済まない。オレは、ジランゴのノリスファミリーのノリスジュニア、此方は、ドン・ノリスです」

 本当にマフィアだわね?

 クイーンが私に耳打ちをする

「ジランゴの町を支配してた親子で、町民を守る為に荒々しい手段も厭わない存在ですね」

 ジランゴの町民を守る為に、ガレルからの領地譲渡を嫌々受け入れた町の1つね。

「自己紹介ありがとうね。改めて、私はパンドラよ。今から話すのは現実の話しよ、よく聞いて」

 ケストア王国からの大部隊がガレルに迫っている事実を伝え、各町や村の住民のガレルの内部への避難状況等が話し合われる。

 話し合い事態は問題なく進み、多くの代表達もガレルに避難して貰う事が決まる。

 防壁が破られる事は考え難いが、被害がゼロなど有り得ないからだ。

 私の下についた者達を私は絶対に守る。
 敵に同情も優しさもいらないわ。

 会議室での話が終わり、私はクイーン達に対して念話を放つ。

『明日には、ケストア王国軍が見えてくるわ。敵は潰すわよ。ダンジョン内部とは違うわ。死ぬことは許さないわよ』

 そして、朝日がガレルの街を照らす。

 各防壁を担当する者達が覚悟を決め、王国軍、10万を前に勇ましく立ち上がる。

 ケストア王国側から、ラッパと太鼓の音が鳴り響き、それと同時に騎馬隊の地面を砕かんばかりの地響きと騎士達の鎧が擦れる金属音が鳴り響く。

 正面からのシンプルな突撃か、嫌いじゃないわね。

 正面を守るキングは、そんな騎士達を前にニヤついていた。
 キングからしたら、まともな戦いは久々であり、今回は自由行動という、オマケ付きなのだから、笑みにも頷ける。

 キング指揮の防衛部隊

 対

 ケストア王国軍の騎士団

 両者が正面から激突する。
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