上 下
76 / 118

好きな世界・・・2

しおりを挟む
 私の作り出したガレル攻防戦の翌日、キングと部下のゴブリン達を擬人化させ、私はガレルの町から遠くない平原に立っていた。

 その際にアルケを同行させ、距離を確りと確かめてから説明を開始する。

 ゴブリン達にも段取りを確りと説明して各箇所に配置する。

「私達が今から作るのは城壁と言って構わないわ、内部には砲台を装備させ、更に必要な通路を大きめに確保するのよ」

「そんな巨大な防壁だと、町まで距離があり過ぎますよ?」

「構わないわ、防壁からガレルまでの間に、市場や他の施設を作る事にしてるのよ。上手く行けば良し、いかなくてもそれ程の問題にはならないわ」

 私の考える防壁は、ガレルの町、全てを多い更に、領地を無理矢理広げるものであり、反感は必然となるだろうが、それはモンスター襲来の一件で何とかなる。

 ならなければ、他の町や村が、可哀想な目に会うだけなのだ。
 ただし、そんな事はしたくないので、確りと領地の譲渡じょうとをして貰う。

 ケストア王国の領地は、汚職や高い税金等、問題は山積みなのだから、ネタには事欠かない。

 全てがケストア王国のせいではないだろうが、結果的に飼い慣らせない者が多く居る事実が、ケストア王国の甘さを物語っている。

 そんな事を考えながら、私はゴブリン達の為、指示を図面に起こしながら説明を確りとしていく。

「パンドラ様、本気なんですか? こんな事したら、なんかあった時に、不味くないですか」

 アルケが心配そうに、私を見つめ質問する。

「いいのよ、それに派手な方が、大きな獲物が釣れるわ」

「釣るって、川の主を狙った主釣りじゃないんですから、目立ちすぎると危ないですよ」

「はいはい、心配は分かったわ。さあ、作業開始よ!」

 ガレルの町に必要な物、それは防御力であると住民に知らしめたガレル攻防戦、その為、外壁の強化に不信感や、否定的な意見は殆ど存在しない。

 私とアルケは、二人で巨大なブロックを作り出していき、それを次々にゴブリン達が複数人で並べていく。

 上段については、アルケのゴーレムが積み重ねていき、通常よりも早く外壁が積まれていく。
 時間の掛かる作業だったが、ゴーレムと職人ゴブリン達の活躍は素晴らしく私の考える何倍も早く作業が進んでいくのが目に見えて理解できる。

 そんな作業をしていれば、当然、デュバルの耳にも情報が入り、私の元にやってくる。

 作業開始から、3時間程して、デュバルが私の元に到着する。

「おーい、今回はなんなんだ、何を考えてるんだ?」

「あら、おはよう。私なりに考えて、ガレルの強化ってやつね」

「何? そんな許可、ケストア王国から貰ってないぞ!」

「今は領主様なんて、正式にいないじゃない? 関係ないわ、出来た後は何とか言い訳しなさい。それより、冒険者ギルドの方を上手く進めなさい」

「はぁ……分かった、ギルドの方だが、既に元職員達は確保してある。汚職をしていたとされる者は逆にガレルを離れてくれていたよ、そのお陰で色々とスムーズに進んでいる」

「まだまだ、忙しくなるわよ。確りと頑張りなさい! 領主デュバル」

「正式な領主じゃないし、他の領主が選ばれたらとか、考えないのか?」

「考えないわ……私が選んだのは貴方だもの、他の領主様には、舞台から退場して貰う以外の道はないのよ」

 話を切り上げると早々に、外壁を作ろうとしている円の内部にある他の村や町に移動を開始する。

 私の護衛は今回、クイーンとホーネットのみとなっている。

 ラクネが居ないのは、ガレル攻防戦のご褒美に"分身"のスキルを渡しており、分身達を上手く使う為の修練をダンジョン内でしているからだ。

 そんな私の目に、まだ一部分しか積まれていないが、ある程度、目立つ壁が広がり出している。

 遠目からも確認出来る程に巨大な防壁、防壁とは守りの要であり、強さを表す手段であり、力の象徴となる。

 他の村や小さな集落からすれば、ガレルの力が形になったと言えるだろう。

 最初は心配だったが、私が離れてもトラブル等はなく、アルケとゴーレム、キングとゴブリン達が作業を続けている。

 周囲には、次々に強化された巨大ブロックが重ねられていくズドンッと言う、大砲の発射音にも似た音が鳴り響いている。

 そんな作業の音を聴きながら周囲の村に辿り着いた私は村の権利等の譲渡を申し入れる。

 当然ながら、すんなりと受け入れた村は少なく、幾つかの村が反対する。
 まあ、当然だろう。だからこそ、その村の言い分を聞き、私は納得して貰う事に全力を尽くした。

 ある村では、村1番の戦士を倒したら考えると言われ、相手が降参するまで、何度もクイーンが相手の傷を治し、戦闘を続ける。

 地獄の様な時間だろう、気絶しても、意識が吹き飛んでも、復活と再生が無限に繰り返され、鉄の様に硬く強化された拳が凄まじい速度で顔面や腹部に放たれるのだから。

「ご、ごうさんずる……ゆるじで、ぐださい」

 村1番の戦士がやられた村は、全てを放棄して、ガレルに下り、ガレルの領民となる。
 このような村と集落が複数あり、他には、税金と言いながら、私腹を肥やす馬鹿な者が支配する村も存在していた。

 その村では、悲しいけど血が流れる事になったわ。
 ただ、誰も逆らえなかった存在をアッサリと片付けた事で私は歓迎される結果となり話は承諾されるなんて、パターンもあった。

 少なからず、従わない村や集落は、そのまま放置する事にしたわ。

 幸い、防壁の外に位置する場所が殆どであり、わざわざ広げる必要が無くなったと、考えることも出来たからだ。

 ガレルの領民となった者達の村に続く道の整備についての計画や、税金に関しての取り決めなど、色々な話を数日かけて進めてく事になる。

 そんな私の元に、クロミからの念話が入ってくる。


『やほっ本体~クロミだよ。内部の調査がかなり早く終わったから、明日には戻るよ~』

『え、早過ぎない! まだ二日くらいしか経ってないじゃない』

『ド・ロアル・デス叔父様が、凄く優秀でさ、私の何倍も、奥まで調べてくれて、情報も沢山手に入れたよ』

『分かったわ。気をつけて戻りなさいよ』

『はーい、じゃあ、またに~』

 クロミとの念話が終わる。
 流石に二人とも複数の分身を操れるだけあり、凄まじい速度だと言う他ない。

 だが、この瞬間、防壁の完成が更に早まる事実を感じた。

 後日、ロアルとクロミがダンジョン内の砂漠地下から帰還する。
 情報の処理をサポートさんに任せる為、新たに意志のある分身を作り出す。

 名前は、サポと決めて、集めて来た情報の整理を担当して貰う。

「貴女の名前はサポよ。ヨロシクね」

「マスター! ありがとうございますーー」と、体が貰えて喜ぶサポ。

 最近は目立ってなかったから、良い流れに感じるわ。

 サポの助手にはセイナ、二人の護衛としてガストに身辺警護を任せる事に決めた。

 そこから、防壁完成の為、私達は急ピッチで作業を開始する。

 防壁作りに参加する私達の行動は最初こそ馬鹿げたモノに見えただろう。
 しかし、日に日に高さを増していく防壁とそれに合わせて巨大化するゴーレムを目の当たりにする住民達から、次第に笑い話としての見方が消えていく。

 ガレルから離れた平野や森であった地域が次第に姿を変えていく。
 それと同時に、危険なモンスター達の討伐が私達により実行されていく。

 ガレルの町を中心に全てが変わっていく。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした

月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。 それから程なくして―――― お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。 「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」 にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。 「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」 そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・ 頭の中を、凄まじい情報が巡った。 これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね? ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。 だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。 ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。 ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」 そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。 フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ! うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって? そんなの知らん。 設定はふわっと。

【完結】捨てられ正妃は思い出す。

なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」    そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。  人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。  正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。  人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。  再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。  デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。  確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。 ––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––  他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。  前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。  彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。  

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

女神様から同情された結果こうなった

回復師
ファンタジー
 どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

処理中です...