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計画された舞台・・・3

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 魔剣が崩れ去った瞬間、デルノバが発狂する。
 余程の価値だったのか、粉を掴もうと必死に手を伸ばして、もがいている姿は哀れにする感じられる。

「そんなに大切なら、貴方が取りに行けばいいのよ、次は手放さないようにね、サヨナラ、領主さん」

 私の最後の言葉を聞き、慌てるデルノバ、しかし、この状況から逃げられる訳がないのだ。

 デルノバの影から、複数の腕が伸び、デルノバの体を四方から掴み、影の中へと引きづり混んで行く。

「やめろォォ、誰か助けろ! 金なら払う、今すぐ、コイツを何とかしろ、痛い、顔が……割れる、一人では死なんぞ! 」

 鋭い視線がロルを含む使用人達に向けられる。

 しかし、誰も動かない、動けないのだろう、人は目の前に助けを求める相手がいても、自分の命が天秤に掛かれば、直ぐに動ける訳ないのだから。

 そんな最中、ロルだけは、前に踏み出そうとする。
 しかし、その体を幼い使用人達が足や、体にしがみつき、全力で止める。

 西瓜スイカが落下して割れた時の様な鈍い音が、地下にゆっくりと鳴り響く。

 ロルは、私の視線に気づくと黙ったまま、他の使用人達を自身の背後に移動させる。

「執事さん、逃げなかったのね? 今も、チャンスはあったのにさ」

 一歩、後ろに下がるロル。

「あの老婆の忠告……心していた……」

「覚悟は出来てるのね」

「覚悟ですか、我々には既に、生きる時間は僅かとなりました……デルノバは、我々を道連れにするでしょう」

 力無く、ロルは溜め息を吐くように語る。

「よく理解できないわね。なんで道連れに出来るのかしら?」

「簡単な話です。我々には、呪術が掛けられております。半日もすれば、内側から腐り始めます」

 デルノバは、自身が死んだ際に使用人達も、苦しんで死ぬように呪術を掛けていた。

 使用人すら信じれず、一番近い存在に命を奪われないようにと考える器の小ささから、生まれた恐怖と絶望だけを与える為だけの呪いである。っと、ロルは小さく笑いながら語った。

「死を前に笑えるのね? 貴方も面白い人見たいね」

「御冗談を、面白いなどと、初めて言われましたよ……不思議なものですね」

「貴方、死ぬには勿体ないのよね……だから、提案よ。私の部下になりなさい、助けてあげるわ」

「我々を助けられると、そう言うのか……」

「えぇ、私なら助けられるわ、ついでに言えば、呪いとは違うわよ」

 私の言葉に驚いくロル、しかし、答えは悩むまでもなく明らかであった。

 軽く他の使用人達と話を済ませると、ロルは頭を深々と下げる。

「不束者ですが、我々一同、宜しくお願い致します」

 話が終わり、直ぐに、ロルを眷属化する事に決める。

 ロルには、単純に"毒耐性" と "耐性リンク"と言う新しいスキルを作り出し、与える事になる。
 それにより、ロル本人に他の使用人達を眷属とさせ、毒耐性を全員にリンクさせる事が出来る。

 私自らが、"耐性リンク"を使わない理由は、リンク先が、眷属の更に眷属まで、全てが対象になり、一瞬で、魔力を大量に吸われてしまうからだ。

 ロル達は、明日の昼が過ぎるまで、恐怖と睨めっこになるだろうが、後悔はしないだろう。

 私の出来る事はやってあげたのだから、無能で卑劣な元主人より、マシな筈だ。

 生きる為の選択をする、その瞬間、魂が震え、心臓が血液を逆流させる様な感覚に襲われるだろう。
 全身に寒気が走り、生き残った瞬間に全身から体液が流れ出す様な快感すら感じる、それが生き残った瞬間に私が感じてきた感覚だ。

 明日の彼等にその感覚が訪れる用に願うわ。

 それに、使える駒は大切にしないと、それが本当の仲間になれるなら、願ったり叶ったりだわ。

『ご主人様~ みんな、綺麗に平らげたよ~一欠片も残してないし、みんな、いい子だから、全部食べたよ』

『ホーネット、お疲れ様。こっちも上手くいったわ』

 高台を任せたホーネットも、上手く平らげたみたい、一欠片も残してないみたいだわ。

『ラクネ、クイーンそっちはどう?』

『おぉ、御館様! 此方も先程、策略通りに撤退しました』

『ですね。主様の指示にしたがって、ケストア軍の生存者は一人だけになってるです』

『分かったわ、お疲れ様。あとは上手くやるから、先に戻ってて頂戴』

 ケストア軍との戦闘もアッサリと決着がついて、クイーンとラクネは予定通りに動いつてるみたい。

 私はそのまま、ロル達を連れて、スラムに向かう。

 デュバルの元へ向かう最中、私は擬人化を発動させる。

 老婆でない姿の私に驚いていたが、直ぐに納得した様に私の後ろに続いて歩く。

 デュバル邸に到着して直ぐ、キャロに私達は客間に案内される。

 私は静かに、デュバルが戻るのを待つのだった。
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