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自分に出来る事・・・3

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 ガレルの町の状況を把握しながら、デュバルの元へ向かう。

 私はデュバル邸に辿り着くと、スラムには似つかわしくない立派な造りの扉を叩く。

 トン、トン……

「急用で来たわ」

 屋敷内から、足音が此方に向かってやってくる。

「はい、どのようなご要件でしょうか」

「今すぐ扉を開けなさい……ぶち割っちゃうわよ?」

「え、あの……」

「3……2……」

「その声は、分かりました! お待ちください!」

 残りカウント、一秒で慌ててメイドのキャロが扉を開く。

 私は本気で扉をぶち破るつもりで、拳を構えていたわ。

 次の瞬間、私の拳を構える姿を見てなのか、私の存在に対してなのか分からないけど、キャロが表情を凍りつかせていたわ。

「久しぶりね、キャロ。私に会えたのに、表情が浮かないわね、私の訪問はお気に召さなかったかしら?」

 キャロが凄まじい勢いで、首を左右に振る。

「ぞんな事ありません!」

 あ、噛んだ……相変わらず、焦らせるとこの世界の人は面白いのよね。

 私の訪問が直ぐにデュバル邸の主に知らされると、デュバルは直ぐに部屋を用意して、私達と話す為に全ての仕事を中断する。

 テーブルに私が腰掛け、その背後にクイーン達、四人が横並びに立ったまま、待機する。

 キャロが不安そうに、テーブルに私とデュバルの紅茶が注がれたカップを震えた手で置く。

 デュバルはそんな中、私の正面に腰掛けると深く深呼吸をしてから、私に挨拶を口にする。

「久しぶりですな、パンドラ殿、あの事件以来ですかな」

 緊張した面持ちで軽く会釈をするデュバル。

「ええ、久しぶりね。事件から数日だけど、表の方はあまり、上手く進んでないみたいじゃない」

「流石のご慧眼ごけいがんですな、今のガレルは、本来の機能を失ったままにされているのです」

「私がやり過ぎたのもあるわね」

「いえ、本来ならば、冒険者ギルドに代わるギルドが出来て然るべきなのですが、その許可が領主からおりないのです」

 デュバルは、領主宛に、新たなギルド発足を願う嘆願書を既に送っていたが、返事は"許可出来ない"という物であり、それ以降は、話すら聞いて貰えない状況になっているらしい。

 私はその話を聞いて、悪い表情を浮かべる。

「デュバル、アンタ、ガレルの領主とギルドマスターに成りなさい! いいわね、私にいい考えがあるわ」

 デュバルが驚きを露にするも、口を閉ざしたまま、話を聞く体勢を維持している。

「あら、理解が早いじゃない。助かるわ、デュバル。もう一度言うわよ。アナタはガレルの領主 兼 ギルドマスターに成りなさい! いいわね」

「その話は分かりましたが、今の状況や、身分では、それは叶いません」

 力無く肩を落とすデュバル。

「ちょっと、勝手に凹んでるんじゃないわよ! 私に考えがあるわ。どの国も世界も、英雄は人気者になれる存在なのよ」

 私の考えを伝えた瞬間、デュバルはテーブルに両手を勢いよく置き、その勢いで立ち上がる。

「なんて事を考えてるんだッ! そんな事したら、犠牲が出る、ただの犠牲じゃない! 死人が出るレベルの話じゃないか!」

 怒りを露にするデュバル、そんなデュバルに対して私の後方から複数の 殺意が向けられる。

 私は"待て"と言わんばかりに、片手をあげ、クイーン達に動かないように指示を出す。

「落ち着きなさいよ。話は最後まで聞きなさい。戦うのはこちら側だけよ。あちら側には、なにもさせないわ」

 私の一方的な展開になると言う話の内容と、逆らえない現実がデュバルに選択を迫る。

「私からすれば、どちらでも構わないわ。ただ貴方が動かないなら、私達でやりたいようにやるだけよ。
 これは、交渉じゃないわ……私に従うか従わないかの選択を求めてるの」

 その言葉にデュバルの心が折れた事は言うまでもない。
 私の指示に従うと決めたデュバルに日時と場所を伝える。

 デュバルには一晩で、忠実な部下達を集めて貰い、日暮れに作戦場所に移動して貰う事になる。

 その間に私は、私のやるべき仕事を速やかに行う。

 自分に出来る事は自分でやる。
 私にしか出来ないなら、私が即座に出向くのみだ。

 明日の日暮れまでに領主と話をしないと、それによって、犠牲者の人数が変わって来るわね。

 「それじゃ、私は野暮用を片付けるか決める為に、行ってくるわね。あと、デュバル? 裏切らない事をオススメするわ。
 私は構わないけど、私以外は許してくれないはずだからさ」

 私は軽く微笑む。

「十分に理解しております、先程は失礼致しました」

 私に頭を深々下げるデュバルの姿を見て、殺気を放っていた面々が、静かに殺気を抑えていく。

 私はテーブルに置かれた冷めた紅茶に軽く口を付ける。

 紅茶を飲もうとした瞬間、キャロが慌てたように声をかけてくる。

「あ、冷めてしまっていますので、新しい物を直ぐにお入れ致します」

 そのまま、一口、紅茶を飲む私を見て、キャロが青ざめる。

「あら、冷めても美味しいじゃない。私、実は猫舌なのよ。だから、冷めても美味しい紅茶は大好きよ」

 デュバルがポカンっと、口を開いたまま、安心したように再度、肩の力を抜く。

「さて、皆、行くわよ。私にしか出来ない仕事の時間だわ。
 キャロ、は、ちゃんと入れ直して貰った物も飲ませて貰うわ」

 デュバルに対して私は軽く笑みを浮かべると直ぐに移動を開始する。

 向かう先はガレルの町を任されている領主の元だ。

 領主の名前はデルノバ。

 貴族としては三流クラスの少し上程度の存在だわ。

 ただ、この世界の貴族達は、私の知る貴族達と少し違う。

 簡単に言えば、貴族の階級は軍隊に似ていて、星印の数で決められている。

 因みにガレルの町の領主は【銅の三ツ星】クラスらしい。

 これが村の領主なら、【無色の三ツ星】となり、逆に街なら【金の三ツ星】と領主クラスは街、町、村、等で三ツ星の階級が分かれている。

 領主以外の貴族も、住んである場所により、色と星の数が変化する。



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