71 / 118
自分に出来る事・・・3
しおりを挟む
ガレルの町の状況を把握しながら、デュバルの元へ向かう。
私はデュバル邸に辿り着くと、スラムには似つかわしくない立派な造りの扉を叩く。
トン、トン……
「急用で来たわ」
屋敷内から、足音が此方に向かってやってくる。
「はい、どのようなご要件でしょうか」
「今すぐ扉を開けなさい……ぶち割っちゃうわよ?」
「え、あの……」
「3……2……」
「その声は、分かりました! お待ちください!」
残りカウント、一秒で慌ててメイドのキャロが扉を開く。
私は本気で扉をぶち破るつもりで、拳を構えていたわ。
次の瞬間、私の拳を構える姿を見てなのか、私の存在に対してなのか分からないけど、キャロが表情を凍りつかせていたわ。
「久しぶりね、キャロ。私に会えたのに、表情が浮かないわね、私の訪問はお気に召さなかったかしら?」
キャロが凄まじい勢いで、首を左右に振る。
「ぞんな事ありません!」
あ、噛んだ……相変わらず、焦らせるとこの世界の人は面白いのよね。
私の訪問が直ぐにデュバル邸の主に知らされると、デュバルは直ぐに部屋を用意して、私達と話す為に全ての仕事を中断する。
テーブルに私が腰掛け、その背後にクイーン達、四人が横並びに立ったまま、待機する。
キャロが不安そうに、テーブルに私とデュバルの紅茶が注がれたカップを震えた手で置く。
デュバルはそんな中、私の正面に腰掛けると深く深呼吸をしてから、私に挨拶を口にする。
「久しぶりですな、パンドラ殿、あの事件以来ですかな」
緊張した面持ちで軽く会釈をするデュバル。
「ええ、久しぶりね。事件から数日だけど、表の方はあまり、上手く進んでないみたいじゃない」
「流石のご慧眼ですな、今のガレルは、本来の機能を失ったままにされているのです」
「私がやり過ぎたのもあるわね」
「いえ、本来ならば、冒険者ギルドに代わるギルドが出来て然るべきなのですが、その許可が領主からおりないのです」
デュバルは、領主宛に、新たなギルド発足を願う嘆願書を既に送っていたが、返事は"許可出来ない"という物であり、それ以降は、話すら聞いて貰えない状況になっているらしい。
私はその話を聞いて、悪い表情を浮かべる。
「デュバル、アンタ、ガレルの領主とギルドマスターに成りなさい! いいわね、私にいい考えがあるわ」
デュバルが驚きを露にするも、口を閉ざしたまま、話を聞く体勢を維持している。
「あら、理解が早いじゃない。助かるわ、デュバル。もう一度言うわよ。アナタはガレルの領主 兼 ギルドマスターに成りなさい! いいわね」
「その話は分かりましたが、今の状況や、身分では、それは叶いません」
力無く肩を落とすデュバル。
「ちょっと、勝手に凹んでるんじゃないわよ! 私に考えがあるわ。どの国も世界も、英雄は人気者になれる存在なのよ」
私の考えを伝えた瞬間、デュバルはテーブルに両手を勢いよく置き、その勢いで立ち上がる。
「なんて事を考えてるんだッ! そんな事したら、犠牲が出る、ただの犠牲じゃない! 死人が出るレベルの話じゃないか!」
怒りを露にするデュバル、そんなデュバルに対して私の後方から複数の 殺意が向けられる。
私は"待て"と言わんばかりに、片手をあげ、クイーン達に動かないように指示を出す。
「落ち着きなさいよ。話は最後まで聞きなさい。戦うのはこちら側だけよ。あちら側には、なにもさせないわ」
私の一方的な展開になると言う話の内容と、逆らえない現実がデュバルに選択を迫る。
「私からすれば、どちらでも構わないわ。ただ貴方が動かないなら、私達でやりたいようにやるだけよ。
これは、交渉じゃないわ……私に従うか従わないかの選択を求めてるの」
その言葉にデュバルの心が折れた事は言うまでもない。
私の指示に従うと決めたデュバルに日時と場所を伝える。
デュバルには一晩で、忠実な部下達を集めて貰い、日暮れに作戦場所に移動して貰う事になる。
その間に私は、私のやるべき仕事を速やかに行う。
自分に出来る事は自分でやる。
私にしか出来ないなら、私が即座に出向くのみだ。
明日の日暮れまでに領主と話をしないと、それによって、犠牲者の人数が変わって来るわね。
「それじゃ、私は野暮用を片付けるか決める為に、行ってくるわね。あと、デュバル? 裏切らない事をオススメするわ。
私は構わないけど、私以外は許してくれないはずだからさ」
私は軽く微笑む。
「十分に理解しております、先程は失礼致しました」
私に頭を深々下げるデュバルの姿を見て、殺気を放っていた面々が、静かに殺気を抑えていく。
私はテーブルに置かれた冷めた紅茶に軽く口を付ける。
紅茶を飲もうとした瞬間、キャロが慌てたように声をかけてくる。
「あ、冷めてしまっていますので、新しい物を直ぐにお入れ致します」
そのまま、一口、紅茶を飲む私を見て、キャロが青ざめる。
「あら、冷めても美味しいじゃない。私、実は猫舌なのよ。だから、冷めても美味しい紅茶は大好きよ」
デュバルがポカンっと、口を開いたまま、安心したように再度、肩の力を抜く。
「さて、皆、行くわよ。私にしか出来ない仕事の時間だわ。
キャロ、次は、ちゃんと入れ直して貰った物も飲ませて貰うわ」
デュバルに対して私は軽く笑みを浮かべると直ぐに移動を開始する。
向かう先はガレルの町を任されている領主の元だ。
領主の名前はデルノバ。
貴族としては三流クラスの少し上程度の存在だわ。
ただ、この世界の貴族達は、私の知る貴族達と少し違う。
簡単に言えば、貴族の階級は軍隊に似ていて、星印の数で決められている。
因みにガレルの町の領主は【銅の三ツ星】クラスらしい。
これが村の領主なら、【無色の三ツ星】となり、逆に街なら【金の三ツ星】と領主クラスは街、町、村、等で三ツ星の階級が分かれている。
領主以外の貴族も、住んである場所により、色と星の数が変化する。
私はデュバル邸に辿り着くと、スラムには似つかわしくない立派な造りの扉を叩く。
トン、トン……
「急用で来たわ」
屋敷内から、足音が此方に向かってやってくる。
「はい、どのようなご要件でしょうか」
「今すぐ扉を開けなさい……ぶち割っちゃうわよ?」
「え、あの……」
「3……2……」
「その声は、分かりました! お待ちください!」
残りカウント、一秒で慌ててメイドのキャロが扉を開く。
私は本気で扉をぶち破るつもりで、拳を構えていたわ。
次の瞬間、私の拳を構える姿を見てなのか、私の存在に対してなのか分からないけど、キャロが表情を凍りつかせていたわ。
「久しぶりね、キャロ。私に会えたのに、表情が浮かないわね、私の訪問はお気に召さなかったかしら?」
キャロが凄まじい勢いで、首を左右に振る。
「ぞんな事ありません!」
あ、噛んだ……相変わらず、焦らせるとこの世界の人は面白いのよね。
私の訪問が直ぐにデュバル邸の主に知らされると、デュバルは直ぐに部屋を用意して、私達と話す為に全ての仕事を中断する。
テーブルに私が腰掛け、その背後にクイーン達、四人が横並びに立ったまま、待機する。
キャロが不安そうに、テーブルに私とデュバルの紅茶が注がれたカップを震えた手で置く。
デュバルはそんな中、私の正面に腰掛けると深く深呼吸をしてから、私に挨拶を口にする。
「久しぶりですな、パンドラ殿、あの事件以来ですかな」
緊張した面持ちで軽く会釈をするデュバル。
「ええ、久しぶりね。事件から数日だけど、表の方はあまり、上手く進んでないみたいじゃない」
「流石のご慧眼ですな、今のガレルは、本来の機能を失ったままにされているのです」
「私がやり過ぎたのもあるわね」
「いえ、本来ならば、冒険者ギルドに代わるギルドが出来て然るべきなのですが、その許可が領主からおりないのです」
デュバルは、領主宛に、新たなギルド発足を願う嘆願書を既に送っていたが、返事は"許可出来ない"という物であり、それ以降は、話すら聞いて貰えない状況になっているらしい。
私はその話を聞いて、悪い表情を浮かべる。
「デュバル、アンタ、ガレルの領主とギルドマスターに成りなさい! いいわね、私にいい考えがあるわ」
デュバルが驚きを露にするも、口を閉ざしたまま、話を聞く体勢を維持している。
「あら、理解が早いじゃない。助かるわ、デュバル。もう一度言うわよ。アナタはガレルの領主 兼 ギルドマスターに成りなさい! いいわね」
「その話は分かりましたが、今の状況や、身分では、それは叶いません」
力無く肩を落とすデュバル。
「ちょっと、勝手に凹んでるんじゃないわよ! 私に考えがあるわ。どの国も世界も、英雄は人気者になれる存在なのよ」
私の考えを伝えた瞬間、デュバルはテーブルに両手を勢いよく置き、その勢いで立ち上がる。
「なんて事を考えてるんだッ! そんな事したら、犠牲が出る、ただの犠牲じゃない! 死人が出るレベルの話じゃないか!」
怒りを露にするデュバル、そんなデュバルに対して私の後方から複数の 殺意が向けられる。
私は"待て"と言わんばかりに、片手をあげ、クイーン達に動かないように指示を出す。
「落ち着きなさいよ。話は最後まで聞きなさい。戦うのはこちら側だけよ。あちら側には、なにもさせないわ」
私の一方的な展開になると言う話の内容と、逆らえない現実がデュバルに選択を迫る。
「私からすれば、どちらでも構わないわ。ただ貴方が動かないなら、私達でやりたいようにやるだけよ。
これは、交渉じゃないわ……私に従うか従わないかの選択を求めてるの」
その言葉にデュバルの心が折れた事は言うまでもない。
私の指示に従うと決めたデュバルに日時と場所を伝える。
デュバルには一晩で、忠実な部下達を集めて貰い、日暮れに作戦場所に移動して貰う事になる。
その間に私は、私のやるべき仕事を速やかに行う。
自分に出来る事は自分でやる。
私にしか出来ないなら、私が即座に出向くのみだ。
明日の日暮れまでに領主と話をしないと、それによって、犠牲者の人数が変わって来るわね。
「それじゃ、私は野暮用を片付けるか決める為に、行ってくるわね。あと、デュバル? 裏切らない事をオススメするわ。
私は構わないけど、私以外は許してくれないはずだからさ」
私は軽く微笑む。
「十分に理解しております、先程は失礼致しました」
私に頭を深々下げるデュバルの姿を見て、殺気を放っていた面々が、静かに殺気を抑えていく。
私はテーブルに置かれた冷めた紅茶に軽く口を付ける。
紅茶を飲もうとした瞬間、キャロが慌てたように声をかけてくる。
「あ、冷めてしまっていますので、新しい物を直ぐにお入れ致します」
そのまま、一口、紅茶を飲む私を見て、キャロが青ざめる。
「あら、冷めても美味しいじゃない。私、実は猫舌なのよ。だから、冷めても美味しい紅茶は大好きよ」
デュバルがポカンっと、口を開いたまま、安心したように再度、肩の力を抜く。
「さて、皆、行くわよ。私にしか出来ない仕事の時間だわ。
キャロ、次は、ちゃんと入れ直して貰った物も飲ませて貰うわ」
デュバルに対して私は軽く笑みを浮かべると直ぐに移動を開始する。
向かう先はガレルの町を任されている領主の元だ。
領主の名前はデルノバ。
貴族としては三流クラスの少し上程度の存在だわ。
ただ、この世界の貴族達は、私の知る貴族達と少し違う。
簡単に言えば、貴族の階級は軍隊に似ていて、星印の数で決められている。
因みにガレルの町の領主は【銅の三ツ星】クラスらしい。
これが村の領主なら、【無色の三ツ星】となり、逆に街なら【金の三ツ星】と領主クラスは街、町、村、等で三ツ星の階級が分かれている。
領主以外の貴族も、住んである場所により、色と星の数が変化する。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる