上 下
65 / 118

黒い砂漠・・・3

しおりを挟む
 砂漠に見つかった地下への階段、不思議な話だが、不思議じゃない話。
 ダンジョンとは、各階層が、階段や通路などで繋がってはいるが、文字通り繋がっているだけでしかない。

 上下の階層との距離や高さ等は、階層と階層の間には関係なくなる。とは言え全てのダンジョンがそうとも言えないのがこの世界の不思議な処だ。

 ダンジョンコアの最初のにより異なるからだ。

 最初は知らなかった事だが、各ダンジョンには、ダンジョンコアの最初の設定が存在している。
 ダンジョンコアの設定は最初にした者すらいじる事は出来ない。

 設定に関しては、階層をリアルにするか、亜空間にするか、朝、昼、晩と時間の流れを作るか否かと言ったような細かい内容も設定できる。

 設定を更に細かく行えば、春夏秋冬をダンジョン内部に再現すら出来るのだから、ダンジョンコアの力は凄いとしか言えない。

 因みに私に渡されたダンジョン【毒王の庭・ポイズンガーデン】は、各階層が亜空間扱いであり、惑星を消滅させる程の魔力をぶち込んでも、他の階層には影響はない。
 まあ、その場合はその階層から繋がりが遮断されて、ただの亜空間になるから、魔力を放った者は出ることは叶わなくなるだろう。

 今まさに、三層に現れた地下への階段も無限に下まで下ることができる。

 私が色々と考える姿を不安そうに見つめるセイナ。

「あの、私、余計な事言ってしまいましたでしょうか」

「え、あ、ごめんなさいね。砂漠の事もあるけど、地下をどう調べるか考えてたのよね」

「なら、キング様を呼ばれますか?」

「そうね、念話よりも、その方がいいわね。なら、キングを呼んできて頂戴」

「はい。直ぐに呼んできますね」

 嬉しそうに駆けていくセイナ。

 それから直ぐに、キングとセイナが戻ってくる。

「どうしたんだ? 嬢ちゃん、なんか問題か?」

 キングは、呼ばれた理由を聞いていないのだろう、首を軽く傾げているのがわかる。

「わるいわね、キング。それがね、あのヤバい鬼が出てきた穴があるじゃない?」

「ああ、あの穴か? 埋める為の話か?」

「違うのよ、穴の地下を調べようと思ってね」

 私の言葉に、軽く悩むような仕草をするキング。

「わざわざ、穴をしらべるのか? 変わった奴だな」

「違うのよ、人工的な階段があるらしいのよね」

「人工的? 俺には分からない話だな、ガマ爺さんに聞いたら分かるんじゃねぇか?」

「ガマ爺か、確かになんか知ってるかも知れないわね」

「なら、先ずは砂漠を早く潰すぞ。嬢ちゃんが止まってる間も皆、しっかり動いてるからな」

 両手を組み、軽く笑ってから持ち場に戻っていく。

 私は話を一旦切り上げると、キング達と最初の目的通り、黒い砂漠を先に片付ける事に力を入れる。

 半日程を掛けて、黒い砂漠は一粒の砂を残す事無く、綺麗な砂にする事に成功する。

 作業が終了すると、流石に全員ヘトヘトになっていた。

 地下への調査を明日にする事を決め、砂漠の快適化をゴリ押しする為、私は皆に休憩するように指示を出して作業に入る。

 快適化の為に必要な物は、やはりオアシスだろう。
 まあ、オアシスを作ると言うよりは、先ずは水が必要になる。

 水源はセーレの住処でもある巨大湖と試練の神殿内部の水路から引っ張り、繋いで水路を作ろうと考えている。

 私は砂漠に水路用の窪みを生み出すと砂に水が全て吸われないように、水路用にブロックを作り出し、敷き詰めていく。

 自然な水路のようにしたかったが、残念ながら贅沢は言えないので、先ずは形から作る事にする。

 簡単に言っては見たが、かなりの重労働だわ。
 まあ、休憩中の皆にバレないように巨大湖側から作業に入る。

 湖側の見た目を壊さないように、地中に魔力を流し込み、水を通す為の水路を地中に作り出していく。

 目に見えない場所の為、久々に"地図作成マッピング"を利用してしっかりと水路のサイズや方角を合わせていく。

 建築の知識は無いけど、私なりに頑張ったわ。

 湖からある程度の距離が取れたら、水を一旦貯める為の貯水池を作り出していく。

 小さいと無意味になるのである程度のサイズを用意して、見た目重視で美しい貯水池が完成する。

 そこから、最初の水路より細くした水路を砂漠に向けて伸ばしていく。

 この際、ブロックの隙間も確りと埋めていく。
 そうしないと砂漠に水が吸われてしまうと、意味がないからだ。

 この作業が本当に大変だったわ、液体は簡単に漏れ出すじゃない? だから、作ったその場から確りと確かめて進めて行く。

 数時間が過ぎようとしている時、砂漠の方が騒がしい事に気づく。

「パンドラ様ーーー!」

「主様、どこですかー! 直ぐに見つけますですよーーー!」

「ご主人様~ヤダよ~ご主人様~何処!」

 明らかに私を探してるわね……あ、なんも言ってなかったわね……やっちゃったなぁ。

 私は無言でバレないように作業を開始して、仕込も時間を忘れてたわ……

「あはは、皆ごめんなさいね」

 私は皆に謝りながら、皆の元に戻る。

 その後で私はクイーン、ジャバ達に凄く叱られる結果になったわ。

 頑張ったのに、悲しい結果になったわ。

 その後は皆と砂漠にゴブリン軍団が臨時のテントを作ってくれたわ。

 なので、"異世界料理人"を発動させて、大量の食材を生み出し、砂漠でバーベキュー大会を行う。

 久々に行う夜のバーベキュー、網も確り作り出してあるし、ブロックでバーベキュー台もバッチリだわ。

 夜空に照らされながら、煙をあげるバーベキュー、最高ね。
 ついでに、飲み物も色々用意して見たわ。

 最高に頑張った御褒美ならやっぱりこれくらいは必要よね。

 砂漠の夜は賑やかに過ぎていく。笑顔や歌が聞こえ、皆が踊り出す。

 素敵な気持ちで終わりを迎える。

 この日、私のダンジョンから呪われた砂漠が無くなったのだ。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

処理中です...