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絶望と希望・・・2

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 私は、少しだけ……イオルの言葉が心に残った気がする。
 この世界の人間にしては、本当に変わった男だ。

 ガレルの町に向かったクイーンへと念話を行う。

『クイーン、どうかしら? レガルの町には着きそうかしら?』

『主様、はいです。水路から移動したので無事に潜入してるです。ただ、まだ、人間達は見つかってません、申し訳ないのです』

『一時間で、到着してるなら十分よ。あともう一人調べて欲しい人間が増えたわ、名前は【バド】よ。ギルド職員らしいわ、任せられるかしら?』

『はい、了解です。ギルドに向かってみるです』

 クイーンへの念話を終わらせると、私は軽く溜め息を吐く。

 その様子にジャバが心配そうに此方を見つめる。

「姫? 大丈夫ですか、お疲れならば、一度、休まれた方が?」

「嬢ちゃんは気疲れだろうな、変に人間臭い部分が目立つからな」

 言葉はどうあれ、キングもジャバ同様に心配している。

「悪かったわね。これでも、元は人間なのよ? そんな部分もあるわよ。でも、二人とも、心配ありがとうね。私は大丈夫よ」

 私達は一度、ダンジョンに戻る。

 ダンジョンへ戻って直ぐに、ホーネットから念話が入る。

『ご主人様、ホーネットちゃんだよ。報告で~す』

『ありがとう、聞かせて貰えるかしら?』

 ホーネットからの報告は、セイナを連れて行ったガストは、森の中でセイナに言葉が通じないながらも案内をさせて、無事にマリアだった物を発見したという報告であった。

 あまりに変わり果てた姿に、セイナはその場にへたり込みながら嘔吐し、ガストは、怒りに震えながらも、縛られていたマリアだったそれを横に寝かせ、悲しみを露にした。

 落ち着いたセイナは自身の羽織っていた上半身側の布を脱ぐと、迷う事なく近寄り、優しくマリアだった物を包んでいるとホーネットは語る。

『マリアの体についた虫と、体内の虫を全て、離れさせなさい……できる?』

『できるよ~ご主人様って優しいよね? ボクはご主人様が大好きだよ~』

 ホーネットは、虫を操り、マリアだった物から、虫達が離れていく。

 それから、ガストは悩みながらも、マリアだったそれを、優しく抱きしめてから、崩れないように抱き抱えると、私達の待つダンジョンへと向かって動き出した事実をホーネットが語り、念話が終了する。

 それから、一時間程で、クイーンから念話が送られてくる。

 念話の先では、ラクネが何かをしているのであろう、複数と揉めているのか、肉を叩きつける音と同時に悲鳴と発狂したような声が聞こえる。

『随分と賑やかね? ラクネも合流してるみたいだし、上手くいってるかしら?』

『主様、ラクネを向かわせたのは、失敗です、ラクネの奴、暴れ過ぎて騒ぎになりそうです。
 まったく、それよりもですよ。調べて分かった事があるです』

 クイーンは、今のガレルの町は、冒険者ギルドの横暴から解放された町の者達により、大変な騒ぎになっており、冒険者ギルドの幹部を始めとする手下達は、次々と捕まっており、バドも治療中であるが、囚われた状況である事実を伝えてきた。

 更にスラムでも、べラムの死が明らかになり権力者争いが起きているそうだ。

 スラムの権力者争いには、べラムの後継者と呼ばれる男で、名をデュバルと言う、べラムの側近で、牢屋で私とあった男らしい。

 もう一人は、元奴隷商人のベギンと言う男で、冒険者ギルド本部破壊の際に、牢屋に居合わせた処刑待ちだった罪人であった事実が明らかになっている。

 スラムは昔からのべラム派を継ぐデュバルと、犯罪者を束ねて、スラムからガレルを支配しようと画策するベギンと部下達により、新たな抗争が起きている真っ最中だった。

『面倒臭いわね、それで、バドか、デュバルとは会えたのかしら?』

『はい、バドなる者は意識がまだ戻ってなかったですね。
 デュバルに関しては、今、横に居るです。話を聞きに来たら、ベギンの部下ですかね、襲撃されてたので』

『それで、賑やかなのね』

『はいです。今片付けました。デュバルに何か伝えるですか?』

 私はクイーンに、私が言った言葉をそのまま伝えるように伝える。

『やぁ、私はパンドラだ。今回のべラムの事は残念に思う。だから、私からべラムに贈り物をしたいと思う、勿論、貰ってくれるわよね、フフ』

「やぁ、私はパンドラだ!  今回のべラムの事は残念に思うです。だから、私からべラムに贈り物をしたいと思うです、勿論、貰ってくれるわよね、ふふ……です」

 少し違う気がするけど、まぁいいわ。

 私はクイーンを通して、デュバルに一方的にスラムの支配者になるように伝えると、他のスラムでの邪魔な存在を聞き出す。

『クイーン、ラクネ、二人でゴミ掃除よ、二人で足りないなら、他にも手助けを送ってあげるけど、必要かしら?』

 同然ながら、二人で大丈夫という返答になる。

 デュバルには、スラムを支配した後は、私の言葉に従うように伝えたわ。
 その代わり、私はスラムに敵意を向けないと言うデュバルからの条件を受け入れてあげたわ。

 命を守る為に支配される支配者か、なんか皮肉な話しね。

 この念話が終わってから、クイーンとラクネは、スラムを真っ赤に染め上げる。
 鮮やかな真っ赤なスラムは月明かりに照らされ、新たな支配者の誕生を喜ぶように二人の美しい人外は、笑みを浮かべる。

 ガレルの町については、クイーンとラクネに任せ、私はガスト達を迎える用意をしていた。

 一つの選択は火葬を、もう一つは土葬を、そして、もう一つはガストが選ぶか分からないけど、戻ってから決めてもらえばいい。

 そんな事を考えていた私の元にガストとセイナが戻ってくる。

「パンドラ様、ガスト、只今、戻りました。此度の行動は、本当に申し訳……」

「はい! それより、マリアは見つかったんでしょ、どうするかをアナタが選びなさい。いいわね」

 私があげた選択は、4つになる。

 1、埋葬、火葬、土葬などによる葬式

 2、肉体を蘇生させて、腐敗しないようにして、保存する。

 3、肉体をダンジョン内に吸収させ、モンスターとして、姿を復活させた後に配下として定着させる。

 4、アンデッドとして、復活させる。

 どれを選ぶかは、ガスト次第だが、マリアにはガストのように、魂を保つ力はない、更に時間が経ちすぎている為、生きていた頃の記憶も残らないだろう。

 ガストからすれば、絶望的な選択になるだろう。
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