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旅立ち・・・3
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盗賊Aを生け捕りにしたクイーンが私の前に戻る。
「主様、逃げ出したゴミを連れてきたです。余りに情けない逃げ足で、逆にびっくりです」
逃げ足に自信があったのだろうが、盗賊Aの足は、擦り切れだらけで、更にクイーンのアシッド系の攻撃をくらったのだろう、足の裏には酷い爛れが出来ており、今すぐ走る事は困難だろう。
「さて、アンタが頭なんでしょ?」
私の質問に対して威勢よく盗賊Aが怒鳴り声混じりに声をあげる。
「うぅぅぅ、こんな事して、タダで済むと思うなよ! 化け物どもが!」
わかりやすいんだよな、なんとも悪党って感じだよね。
「タダで済むかとかは、アンタ次第だよ。質問に答えて、満足したら解放してあげるから」
出来る限り、冷静な笑みを浮かべる。
「何が、知りたいんだよ! 早く言ってみやがれ!」
威勢のいい怒鳴り声をあげる盗賊Aにクイーンが背後から、頭を掴み、地面に叩きつける。
「グハッ! いでぇ、クソが! 離せ」
「口の聞き方を知らないゴミがッ! 先ずは躾からしないといけないですね。片耳からです」
私が止める前に、盗賊Aの片耳がクイーンに握られる。
「ぎゃああああ! うわぁぁぁ!」
見るも無惨な光景、盗賊Aはそれこら、態度を改める。これ以上の苦痛を味わいたくないという、素直な反応だろう。
私からの質問は単純なモノで、外の世界の常識だ。
金の単位、世界の戦力図、王国などがどれ程存在しているのか、周囲で一番厄介な戦力は何か。
金の単位
リコ ※1リコ=1円
世界の戦力図
レイザ帝国
天霊教国
サザル公国
ケストア王国
ザグル多種族連合
五つの大国が存在し、更に小国が幾つも存在するらしい。
私達がいるのは、ケストア王国とサザル公国の存在する大陸だった。軍事力は上から、三番目と四番目の大国が大陸を二分している。
この二国の存在する、ネスト大陸を中心に、東、西、南、北、に四つの大陸が存在する、五大国家のバランスはネスト大陸に存在する二国のどちらかが滅ばない限りは、保たれるだろう。
東の大陸は、人間の住めない猛毒の大地となっている。
ネスト大陸を船で西に渡った先には、人間の近づかない魔大陸と言われる亜人種族が集まり出来た、ザグル多種族連合が存在する。
南には、氷の大陸の支配者とされる、レイザ帝国が存在する。
北は、天霊教国が支配する天霊教の宗教国家となっている。信徒には争わぬようにと教えながら、邪教徒には、死を与えよ、と教える恐ろしい国だ。
五大陸に五つの大国家があるなんて、怖い世界だ。少しのきっかけで、爆発する爆弾みたいな世界だと感じずにはいられない。
この時点で、一番、厄介な存在は私達のいるネスト大陸の二大国家になる。
もっと詳しく言えば、今いるのは、ケストア王国の支配地域で、最初に目的地の一つにあげたガレルには、冒険者ギルドが存在している。
他の二つの村はギルドから派遣された冒険者が守りを固めている事実も知ることが出来た。
村に冒険者が配備されている理由は魔物の発生により農作物の回収や、農民の命が脅かされないようにする為だ。
盗賊Aから得られる情報は簡単な範囲で聞き出せた。問題は死体をどうするかだ、セオリーなら、冒険者ギルドに等となるだろう。しかし、それは人間に限るなのだ。
盗賊A達は私達をモンスターや亜人ではなく、魔物と口にしていた、その点からしても、亜人種や、獣人等は余り良い印象を持っていない可能性が高い。
まぁ、あんなやられ方したら、仕方ないか?
私が考えをまとめようと、悩んでいると盗賊Aが突如、隠し持っていた種のような小さな粒を口に放り込み、ゴックンっと呑み込む。
「これだけは、やりたくなかったが……ただ死んでたまるかァァァ!」
盗賊Aの全身の筋肉が急に膨張し、肌は灰色に変化していく。先程まで動けなかった筈の足も復活し、全身が二倍ほどに巨大化する。
「なんなのよ、この世界の人間は、モンスターになれるわけ!」
その状況に、ジャバの食べ残しとして連れて来られた盗賊が怯えて頭を抱える。
「まさか、魔物化の種を持ってたなんて、俺達の村は終わりだ」
よくわからないけど、此奴からも話を聞けそうね。
「その男を逃がさないでねジャバ。あと、生かしといてね。食べちゃダメよ?」
「御意、かしこまりました」
ジャバに念を押しつつ、私は目の前の変身した盗賊Aに視線を向ける。
「もう、話は無理よね……私がやろうか?」
冗談ぽく、口にすると、キングが一歩前に出る。
「クイーンは、お嬢の護衛だ。俺がやる」
「わかったです。ゴブに譲るですよ、ただ、油断して無様にやられたりしたら、冗談でも笑えないですよ」
「任せろ、油断してもやられたりはしない、それこそ、笑えない冗談だ」
二人は笑っていた。なんだかんだで信頼関係だろうと改めて感じる。
キングは戦斧を強く握り、魔物化した盗賊Aに切り掛る。
盗賊Aは、力は格段に上がっていたが、知能が下がっているのだろう、単調な攻撃がキングに当たるはずもないのに、大振りな拳を必死に動かし続けていた。
しかし、それも数秒程度の事だ。キングは、悩むことなく、正面から突き出された拳に戦斧の刃を叩き込む。
そこからは、一方的な暴力と盗賊Aの悲惨な最後が存在していた。
「なんとも、手応えのない……ふぅ」
キングが溜息を吐くと同時に、捕まえていた盗賊が気絶する。
刺激的過ぎたのだろう、ダンジョン内の日常に慣れすぎていたが、これが普通の反応なのだと、改めて常識の難しさを感じた瞬間だった。
「主様、逃げ出したゴミを連れてきたです。余りに情けない逃げ足で、逆にびっくりです」
逃げ足に自信があったのだろうが、盗賊Aの足は、擦り切れだらけで、更にクイーンのアシッド系の攻撃をくらったのだろう、足の裏には酷い爛れが出来ており、今すぐ走る事は困難だろう。
「さて、アンタが頭なんでしょ?」
私の質問に対して威勢よく盗賊Aが怒鳴り声混じりに声をあげる。
「うぅぅぅ、こんな事して、タダで済むと思うなよ! 化け物どもが!」
わかりやすいんだよな、なんとも悪党って感じだよね。
「タダで済むかとかは、アンタ次第だよ。質問に答えて、満足したら解放してあげるから」
出来る限り、冷静な笑みを浮かべる。
「何が、知りたいんだよ! 早く言ってみやがれ!」
威勢のいい怒鳴り声をあげる盗賊Aにクイーンが背後から、頭を掴み、地面に叩きつける。
「グハッ! いでぇ、クソが! 離せ」
「口の聞き方を知らないゴミがッ! 先ずは躾からしないといけないですね。片耳からです」
私が止める前に、盗賊Aの片耳がクイーンに握られる。
「ぎゃああああ! うわぁぁぁ!」
見るも無惨な光景、盗賊Aはそれこら、態度を改める。これ以上の苦痛を味わいたくないという、素直な反応だろう。
私からの質問は単純なモノで、外の世界の常識だ。
金の単位、世界の戦力図、王国などがどれ程存在しているのか、周囲で一番厄介な戦力は何か。
金の単位
リコ ※1リコ=1円
世界の戦力図
レイザ帝国
天霊教国
サザル公国
ケストア王国
ザグル多種族連合
五つの大国が存在し、更に小国が幾つも存在するらしい。
私達がいるのは、ケストア王国とサザル公国の存在する大陸だった。軍事力は上から、三番目と四番目の大国が大陸を二分している。
この二国の存在する、ネスト大陸を中心に、東、西、南、北、に四つの大陸が存在する、五大国家のバランスはネスト大陸に存在する二国のどちらかが滅ばない限りは、保たれるだろう。
東の大陸は、人間の住めない猛毒の大地となっている。
ネスト大陸を船で西に渡った先には、人間の近づかない魔大陸と言われる亜人種族が集まり出来た、ザグル多種族連合が存在する。
南には、氷の大陸の支配者とされる、レイザ帝国が存在する。
北は、天霊教国が支配する天霊教の宗教国家となっている。信徒には争わぬようにと教えながら、邪教徒には、死を与えよ、と教える恐ろしい国だ。
五大陸に五つの大国家があるなんて、怖い世界だ。少しのきっかけで、爆発する爆弾みたいな世界だと感じずにはいられない。
この時点で、一番、厄介な存在は私達のいるネスト大陸の二大国家になる。
もっと詳しく言えば、今いるのは、ケストア王国の支配地域で、最初に目的地の一つにあげたガレルには、冒険者ギルドが存在している。
他の二つの村はギルドから派遣された冒険者が守りを固めている事実も知ることが出来た。
村に冒険者が配備されている理由は魔物の発生により農作物の回収や、農民の命が脅かされないようにする為だ。
盗賊Aから得られる情報は簡単な範囲で聞き出せた。問題は死体をどうするかだ、セオリーなら、冒険者ギルドに等となるだろう。しかし、それは人間に限るなのだ。
盗賊A達は私達をモンスターや亜人ではなく、魔物と口にしていた、その点からしても、亜人種や、獣人等は余り良い印象を持っていない可能性が高い。
まぁ、あんなやられ方したら、仕方ないか?
私が考えをまとめようと、悩んでいると盗賊Aが突如、隠し持っていた種のような小さな粒を口に放り込み、ゴックンっと呑み込む。
「これだけは、やりたくなかったが……ただ死んでたまるかァァァ!」
盗賊Aの全身の筋肉が急に膨張し、肌は灰色に変化していく。先程まで動けなかった筈の足も復活し、全身が二倍ほどに巨大化する。
「なんなのよ、この世界の人間は、モンスターになれるわけ!」
その状況に、ジャバの食べ残しとして連れて来られた盗賊が怯えて頭を抱える。
「まさか、魔物化の種を持ってたなんて、俺達の村は終わりだ」
よくわからないけど、此奴からも話を聞けそうね。
「その男を逃がさないでねジャバ。あと、生かしといてね。食べちゃダメよ?」
「御意、かしこまりました」
ジャバに念を押しつつ、私は目の前の変身した盗賊Aに視線を向ける。
「もう、話は無理よね……私がやろうか?」
冗談ぽく、口にすると、キングが一歩前に出る。
「クイーンは、お嬢の護衛だ。俺がやる」
「わかったです。ゴブに譲るですよ、ただ、油断して無様にやられたりしたら、冗談でも笑えないですよ」
「任せろ、油断してもやられたりはしない、それこそ、笑えない冗談だ」
二人は笑っていた。なんだかんだで信頼関係だろうと改めて感じる。
キングは戦斧を強く握り、魔物化した盗賊Aに切り掛る。
盗賊Aは、力は格段に上がっていたが、知能が下がっているのだろう、単調な攻撃がキングに当たるはずもないのに、大振りな拳を必死に動かし続けていた。
しかし、それも数秒程度の事だ。キングは、悩むことなく、正面から突き出された拳に戦斧の刃を叩き込む。
そこからは、一方的な暴力と盗賊Aの悲惨な最後が存在していた。
「なんとも、手応えのない……ふぅ」
キングが溜息を吐くと同時に、捕まえていた盗賊が気絶する。
刺激的過ぎたのだろう、ダンジョン内の日常に慣れすぎていたが、これが普通の反応なのだと、改めて常識の難しさを感じた瞬間だった。
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