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旅立ち・・・2

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 最初は近場の町を目指そうとおもう。
 情報が無いまま闇雲に動く無駄を永い人生で嫌と言う程、経験していたからだ。

 ただ、一番近い村か町は避けようと思う。理由は簡単だ。 私を捨てた毒親の存在だ。
 相手は私の存在すら忘れているだろうが、私は顔を覚えている。

 だから、避けるべきだ。会ってしまったら、顔面がめり込むぐらい、拳を押し付けて、再会を真っ赤なベールをぶちまけるように喜んでしまいそうだからだ。

 "千里眼"の範囲を縮小して数キロ単位で円状に村や町を探し、"地図作成マッピング"を紙に書き記していく。

 紙は以前に試練の神殿で手に入れたお宝の中にあった物だ。"無限収納"に片っ端から突っ込んでいたものを整理したら出てきた。

 古紙が大半だったが、数枚、新しい物が混じっており、ダンジョン内に生まれた宝の一つなのだろう。
 使える物なら、いくらいでも復活してくれて構わないとすら思う。

 "地図作成マッピング"で記された村等は、全部で三つ。

 1、マルタリア

 ダンジョンから半日程度の村であり、農業地帯などが多い。

 2、ジュネル

 小さな農村で、ダンジョンからは、一日程度の距離に存在する。

 3、ガレル

 大きめな町になる。ジュネルとマルタリアの東に位置する。規模が多きく、他の二つの村と違い防壁が町を囲むように作られている。

 私の記憶が正しいなら、私を捨てた毒親のいる村はマルタリアになるだろう。
 生まれてすぐの私が運ばれた時に、太陽の光が入口を照らしていたからだ。

 ただし、これはあくまでも推測だ。
 私がそう感じただけで、一夜が開けていたなら、ジュネルの可能性もある。
 だからと言って、いきなり大きな町に向かうのは危険な判断だと言える。

 だからこそ、一番、無難なジュネルに向かうのが今出せる正解だと思う。

「よし、決めたわ。なら先ずは皆でジュネルに向かうわよ!」

「「「おおぅぅ」」」

「ちょっと待て!」
「待たんかいッ!」

 私とクイーン達が盛り上がる最中、キツイ口調で、話を止める怖い顔が二つ、更に無言で頭を抱えるジャバの姿まであった。

 二人とは、キングとガマ爺だ。
 呆れたように冷たいし視線、何をやらかしたのかと、私は質問するべきか、自分で見つけるべきか悩むが時間が惜しい。

「なによ、私はなんかしちゃったの?」

 恐る恐る質問する。質問に呆れるように、再度、二人が首を左右に振る。

「嬢ちゃんよ、マスターなら、もう少し世界の仕組みを考えないとな」

「キング、どげん言うても、世間知らずはかわらん、儂らが教えんかったんが、悪い、(話を)噛み砕いちゃり」

「ふむ。いいか、普通の旅人は少数で動くものなんだ。大人数で動けば、要らぬ警戒を招く。そうなれば、知りたい事もわからんだろ?」

「そう言うことじゃい!」

 早い話が、全員を引き連れて移動しようとしたこと事態が問題だと言われた。

 そこから、同行メンバーを決める事になる。

 メンバーは、私を含めて、四人だ。

 私以外のメンバーは、キング、ジャバ、クイーンに決定した。

 ガマ爺は、"巨大化"と同時に手に入れた"最小化"を使い、私の頭の上で日向ぼっこしつつ昼寝するらしいわ。

 このメンバーのコンセプトは、旅の親子と護衛よ。

 ジャバは、擬人化で美しい女性になっているし、私とクイーンも擬人化で仲良し姉妹に見える筈だわ。
 キングは護衛の傭兵そのままだし、完璧だろう。

 他のメンバーは、ダンジョンコアの中にあるダンジョンで待機になったわ。必要なら召喚もできるから問題はない。

 第一歩で、つまずいたけど、これで大丈夫ね。
 カモフラージュの鞄を肩にかけて、クイーンはピクニック気分みたいで、楽しそうだわ。

 目的地のジュネルまでは、平坦な道だ。森なども近くにあるが、私達が歩いているのは、見通しのよい川横にあるのどかな道だ。

 ジャバは、周囲を警戒してるみたいだ。この辺りのモンスターは、千里眼で確認してあるが、弱い部類のウルフや一角うさぎ等で強敵になりそうなモンスターは見当たらない。

 キングはそれを理解しているのか、警戒はしていないみたい。でもかなり威圧的な雰囲気を出しているのがわかる。

 そんな私達に視線を向けてくる者達がいるみたい。
 懐かしい敵が獲物に向ける視線を私は感じていた。

 するとキングが私に静かに語り掛ける。

「気づかないフリをしろ、相手から情報が手に入るかも知れんからな」

 静かに頷くと、私はジャバとクイーンに念話を送る。

 二人は軽く頷く、そこから私達は、少し広い川辺を見つけると休憩しつつ、相手の出方を待つ事にする。

 相手からしたら、見通しはいいし、逃げ場も塞ぎやすい、襲うなら絶好の場所だ。

 案の定、餌に食いつくように姿を現したのは、人間ヒューマンの男達だった。
 手に入るナイフや剣などの得物を持ち、髪型が性格の悪さを物語って悲しい事になっている。

 男達は盗賊だろう。人数は12名程度で、危機感を感じる相手はいない。

 正直、盗賊は助かるわ。情報は蛇の道にこそ集まる、盗賊なら、それなりの情報ルートがあるだろうから、どれにしようかしら?

「おい、お前ら! 金と身ぐるみ、あとを置いてきな! 女は生け捕りだ。男は殺せ!」

 話をする余裕すらくれないみたいね。まったく、困ったものだわ。

 でも、生け捕り相手は決まったわね。

「一ついいかしら? これは殺し合いなのかな?」

 私の質問が面白いジョークに聞こえたのか、盗賊達が顔を見合わせ笑いだす。

「あはは、そうさ。楽しい殺し合いだよ、まぁ一方的な暴力だな、分かったら大人しくしてな」

 よし、最初に喋った奴を盗賊Aとして、今喋ってたのを盗賊Bとしましょう。

『皆、最初のやつが盗賊A、そいつは生け捕り、次に盗賊Bにはキツイ現実を教えてあげて、他の奴らは、まぁ任せるわ』

 念話にて指示を伝えると、私はニッコリ微笑む。

「なら、始めましょう、アナタ達の大好きな殺し合いを……」

 その瞬間、キングが戦斧を片手に瞬足で駆け出していく。
 ゴブリンロードになり、随時、ゴブリンキング時に"身体強化"発動状態と変わらない程の脚力で敵に向かっていく。

 豪快な戦斧の一撃が、今し方、馬鹿笑いを浮かべていた盗賊Bの頭部から地面までを貫き、粉塵と血飛沫が舞い散る。

「脆すぎるな、力加減が難しいとは、ロードとは、流石だな」

「No・2の、フルさんが一撃なんて……」
「囲め! 囲め!」

 自身の力に驚くように呟くキングを6人の盗賊が囲む。

 そんなキングを取り囲んだ6人も、キングが放つ、目で追えない程の速度で繰り出される横一振りの一撃に倒れ込む。

 一瞬で7人の仲間を失った盗賊Aが仲間を連れて逃げようと駆け出していく。

 逃がすわけない!

 ジャバが先回りして、盗賊A以外を次々に丸飲みにしていく。

「うわぁぁぁ! カシラ助け……ぎゃああああ」

「化け物、うわぁぁぁ……」

「魔物なんて、聞いてねぇ、た、助け、うわぁぁぁ」

「ま、待って、待っ、すまない、マリア……」

『姫、四名は戦闘不能になりました。少し食べ残しがありますので、持ち帰ります……』

 え、待って、ちょ……流石に人は食べないわよ!

 そして、クイーンから盗賊Aを生け捕りにしたと言う報告が届く。

 外の世界はダンジョンより、危なっかしいわね。 さて、今からは話し合いだわ。

 
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