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約束・・・3

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 ジャングルエリアの敵対が皆無になった事もあり、そのまま巨大湖に戻ろうと考えていた。

 ジャバがその提案に反対を示す。

「お待ちください。姫からの話を聞けば、中央の谷にも向かわれるとのこと、ならば、このまま向かうのがよろしいかと」

「おい、新参よ。御館様に意見するとは、また地面に額を擦りつけたいのか?」

「ラクネ殿、今のワシは貴女と同等かと存じますが……再戦と行かれますか! ラクネ殿?」

 激しく火花を散らすジャバとラクネ。

 実際には、ジャバからの提案に耳を傾け検討する。

「ラクネ、落ち着いて。それより何故、今すぐに行く必要があるのか話して」

「はい、このジャバ、谷のヌシを存じておりますが、話を聞けば……姫様方はヌシを犬と勘違いされております」

 犬って、ウルフの事、ロックドックの事? どちらかの上位種がボスだと思ってはいたけど、違うのかな?

「ジャバ、ヌシはどんなモンスターなの?」

「はい、ヌシは目覚めれば、岩を操り、地面を軽々と砕き、皮膚はどんな刃すら通しませぬ。このジャバが幼き頃からヌシをしていた御方です。姿は蛙にございます」

「蛙って、あのカエル?」

「どの蛙を指しているかは、分かりませんが、姿、形は蛙に御座います」

 岩場なのに、蛙なの? 

「谷のヌシは、以前の外敵により、動けぬ体になったと言われておりますが、復活したと言う話は聞きませぬ。つまりは生きて身を潜むております」

「でも、ならさ、ヌシは無視してもいいんじゃない? 他のモンスターを倒せば済むし」

「谷の者達は、強きヌシを信じ、今は本来の力を隠しております。本来ならばこの三層は、谷のヌシの物なのです。黒い砂漠は、ヌシを封じる為の汚染の呪いなのです」

 まさかの黒い砂漠の真実ね。

「黒い砂漠に済む者達は、既に自我すらなく、復活すら出来ぬ傀儡になった者達です」

「ジャバ? 貴女はヌシを見つけたらどうしたいの?」

「はい、ヌシ殿を、姫の配下にと考えおります」

「できるの?」

「姫様の力には、ヌシ殿の力が必要になると考えております。それと同時に今のヌシ殿には、姫の力が必要なのです」

 悩まずに私へと淡々と語る姿は凛々しさすら感じる。

 ジャバの意見を無言で聞いていたクイーンが口を開く。

「ジャバ、もしそれが事実だとして、ヌシの力はどれくらいなのです? 分かりやすく言うなら、復活したヌシと私達、どっちが強い?」

「……復活したばかりのヌシ殿を相手にしたとして、同等かと」

「そうですか、つまり今のヌシなら倒せるかもしれない、復活したヌシも、私達だけで何とかできる可能性があると」

 クイーンの発言にジャバが頷く。

「主様、私もジャバの意見に賛成させて頂きたいと思います」

 クイーンの言葉で私も覚悟を決める。

「なら、このまま行くわよ。でも無理は禁止よ。基本はモンスターの討伐、ヌシは見つけたら戦闘、勝てないと思ったら引くわよ」

 四人が頷くと、すぐに岩場の谷へと向かう。

 岩場の谷は、その名の通り、立派な渓谷があり、岩肌には無数の穴があり、まるで鉱山のようにすら見えら。

 岩場の上にはロックバードが空を舞い、下を警戒しているのが分かる。

 最初の襲撃者は、ウルフの群れだったわ。

 オークよりも低級のモンスターなのだろう、言葉などは話せないみたい。

「グルルルっ! ワオーンッ!」
 群れのリーダーが雄叫びをあげると、岩肌を駆けて私達に襲い掛かる。

「御館様ッ! 我にやらせてくれ!」
「構わないわ、頼むわよ」

「仰せのままに」

 ラクネが、嬉しそうに前に出る。

 手に魔力を集中させ、拳をグッと握りしめる。巨大な魔力の塊となった拳を容赦無く真上に振り上げる。

 魔力に吹き飛ばされたウルフの群れが岩肌に叩きつけられる。岩肌をえぐる程の威力を更に数発打ち込んでいく。

「手応えのない奴らですな。御館様、終わりました」

 ニッコリ笑う笑顔とは違い、周囲にはウルフの血で真っ赤に染まり、ダンジョンにウルフ達が吸収されるまで、他のウルフ達が怯える程の光景だった。

 その後も次々とロックドックやウルフ等が襲いかかってくる。
 ラクネが暴れる度に岩肌が激しく揺れ、その瞬間はやってきた。

 ラクネの拳が岩肌に直接ぶつかった瞬間、岩肌の一部が崩壊する。

 崩壊した岩肌の先に人為的に、塞がれたような空洞が姿を現す。

 すぐに"地図作成マッピング"と、千里眼を発動させる。
 空洞かと思っていたその穴は、洞穴だった。

 地下に向けて続いているのが分かり、最下層がやけに広い造りになっているのが分かる。

「あはは……まさか、見つけちゃうなんてね。しゃあない! 行くわよ」

 私達は砕けた岩肌から現れた洞穴に降りていく。

 洞穴の中には、無数の穴から風が内部を吹き抜けている。耳をすませれば、水の流れる音が聞こえる。

 洞穴の内部、ビッグラットが姿を現す。

「ねずみか、まったくデカイわね」

「主様、しかし、変ですね。今までのモンスターを考えれば、単体で襲って来るなんて変じゃないです?」 

 そういえば、ビッグラットなんて、群れてなんぼのモンスターよね?

 そんな、ビッグラットの背後から、蛇のようなモンスターが凄まじい勢いで巻き上げられて、下の階に消えていく。

 今のなんなのよ! すごいヤバそうなのいたわよ。

 私達の下は、最下層になる。
 さっきの蛇のようなモンスターが居ると思うと、行きたくないわね。
 
 もう、ロックドックも、ウルフも、ロックバードも倒したし、帰りたいわ……はぁ。
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