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1000回の転生・・・2

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 私の新しい生活はとても苦難の連続ばかりだった。

 先ず、この世界が私のいた世界でない事をわからされる事実が明らかになる。

 聞き取れても、私の言葉が此方の世界で通じない!

 正確に言うなら、聞き取りは、私が分かるように変換されるが、発する言葉は変換されない。

 私が聞く事が出来ても、相手に伝わらない訳の分からない言葉で返すしかない。

 何より悲しかった事は、名前がわからない事にあった。
 私の知る発音ではなかったからだ、つまり私の名前であろう発音がしたら何を言っているのか考えて行動する事が日常になっていく。

 そこから、私の訴えも動作で必死に伝え、何とかやり取りが可能になっていった。

 私の生まれた家は、スラムの一角にある小さなボロ屋だった。
 最初はびっくりしたけど、暖かい母と、父に愛された生活が始まる。

 なんとか、私が5歳になった頃、父の仕事について行く事になる。
 父は、少しだが計算ができる為、飯屋で働かせて貰えていた。

 スラムに住むものが、飯屋などで働けるのは稀な事で、父は運がよかったと言える。

 そんな私を連れて仕事場にたち寄った日、売上が合わないようで、店主が頭を抱えていた。
 その日の売上げと食材の仕入れ値などが、合わないようだ。

 私は何気なく、売上等を覗き見る。
 足し算の単純な間違いだと分かると指で違う部分を指さし、正しい数字を書き記す。

 皆がびっくりするのもわかる! でも、元貴族の私からすれば、計算なんか余裕なのよね。

 それからは、厄介な計算なんかは父が家に持ち帰り、私が計算するなんて日が度々あったわ。

 それと言って不自由のない生活、他人から見たら貧乏にみえるだろうが、気持ちが暖かければ関係ないと改めて感じる。

 そんな日々に私は、忘れていたのだ、あのクソ貴族達の存在を・・・

 時は流れ、私は明日で、めでたく10歳になる。

 いよいよ、10歳まで生き延びたんだと、喜びもあったが、加護が消えるのだから、不安も多い。

 明日の為に早く寝ないと、明日はみんなが、お祝いしてくれるんだもの。

 でも、私は祝われる事はなかった……朝すら迎えられなかったからだ。

 その日の夜中、月が真上に移動した瞬間、私は家に強盗が押し入り、私を含め、両親も殺された。

 ごめんなさい……ごめんなさい……私が二人の子供なんかに産まれてしまったから、ごめんなさい……

 魂だけの存在になったのに溢れる涙、止まらなく流れる涙はいつまでも流れ続けるのだった。

 どれほど泣いただろう、時間の流れが感じない光の世界で私は次の転生を待つことになった。

 そんな私の前に、裁きの神テミスが突然姿を表す。

『やぁ、泣いてるね?』

 不意の言葉に怒りを感じる。

「当たり前じゃない! 理不尽に殺されて、家族まで、酷すぎるじゃない」

 私の言葉に首を傾げる裁きの神テミス。

『でも、それはお主が、あの者達に行った行為と何が違うのかのぉ? いきなり現れ、切り捨てる? 妾には同じに見えるがのぉ?』

 何も言い返せなかった。理由は違う、でも、結果だけ見れば同じなのだから……

『これくらいで、折れてくれるなよ? まだ、999回の出会いと別れが待っておるのだからのぉ……』

 その言葉に、再度、恐怖を感じる。
 残りの別れと出会い……私は不安と絶望を感じながらも、心に決める。

「わかっているわ。それでも、私は突き進むんだから」

『ふふふ、実に図太い、さっきまで、枯葉のように見えておったが、実に図太い……楽しみに見守らせてもらうぞ。でわ!さらばじゃ』

 不気味な笑みを浮かべて、裁きの神テミスが姿を消すと、私の足元から身体に向かって砂が吹き上がる。

 こうして、名前すら分からないまま、私の1度目の転生は終わりを迎え、新たな世界に転生する事になったのである。

 次の世界は、太陽が存在せず、月が太陽の代わりに輝く暗闇と砂の世界だった。 

 そして、その世界の神が私に授けた祝福ギフトは、私が望んでいたものだった。

 "自動翻訳"である。

 全ての世界のどんな種族を問わず、言葉が分かり、更に此方の言葉も通じる。
 最初の世界での辛さが蘇る。

 名前知りたかったな、お父さん、お母さん、ごめん。

 私の2度目の転生は、影を操るトカゲを思わせるような顔に人型の身体をした種族であった。

 彼等は、竜人で、私はこの種族のメスとして転生したらしい。 
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