小雪が行く！

第三章 小雪、戦う

運営権限発動！

　現状を一度、短時間で整理する。
何かしらの型、あびせ蹴り、掌底……

　正直、先程声高らかに勝利宣言をしたが、何の拳法かわからない以上、かなり厳しいのは間違い無い。

(まあわかったところでって話しだけど……どこまでできるかわからないけど、相手の技を見れるだけ見てみましょうか)

　そうして、私は再度エンシェントドラゴンの方へ駆け寄る。

するとエンシェントドラゴンは後ろへ大きく飛び退いたかと思うと、そのまま身体を捻り、また強靭な尾をこちらへ振るってきたので、私は刃で尻尾を傷つけていくように、滑らせるようにしながら尾を跳び避ける。

(かっっ……た！尻尾硬すぎ！本物の刀ならこれで刃が全部とんじゃうじゃないの！)

　一応カウンターのつもりで与えた攻撃なので、エンシェントドラゴンも何かしらのアクションがあればある程度私も安堵したのだけれど、薄く線傷が入っているかどうか程度の傷しか入らなかった事もあり、敵さんやっこさんはぴんぴんしているので、カウンターをお見舞いした私の方が精神的負荷を感じていた。

　これ、どうしよう。

そう私は考えていると、エンシェントドラゴンは更に私へ追い討ちをかけるべく、こちらへ激しい地鳴りを伴って駆け寄ってきた。

その時、微かに聞こえた音に、私は気づく。

(……っ！金属音！金属音がたしかに聞こえた！)

　エンシェントドラゴンからのけたぐり、正拳、足払いのような回し蹴りをかろうじて交わしつつ、聞こえた音を頼りに、かぐやちゃんと孫の話を思い出す。

"斬鉄"を持っている人が～ーー


「……！わかった！そういうことね！」


叫ぶようにして、私は理解を言葉にした。
そして、私はミリィちゃんの方を見て、まだ白色の小さなドラゴンにハチャメチャに舐められている様子に少し驚きながらも見やる。

「ミリィちゃん！ブーストお願い！！」


「ひゃぁ！ん、えっ？」

「ブーストオオオオオ！！」

「ひゃい！？わ、わかりましたぁぁ！！」

　攻撃を避ける事に精一杯になりすぎて、かなり圧をかけるように叫んでしまった。

ブースト、これはかぐやちゃんに今回のクエストに限り、運営デバッグチームが使える全能力最大化チートを使えるようにする合言葉だ。

ただ、発動までに30秒かかること、効果時間はこのエリアだと何故か10分しか使えない事もあり、ギリギリまで温存していた。

デバッグチームが次々と負けた理由は、純粋に何かしらの妨害もしくはエラーが原因と、かぐやちゃんに聞いていたので、とりあえず相手の動きを見てから使おうとした。

　私の予想が正しければーー

「小雪さん！30秒です！」

　ミリィちゃんの声と同時に、私の身体を光の粒が覆い、それと同時にエンシェントドラゴンが不可避の尾を叩きつけてきた。

　激しい地鳴りを割いて叫ぶのは、エンシェントドラゴンだった。

「小雪さん！小雪さん！！」

「大丈夫よ！」

　咄嗟に私は斬鉄を使い、事実上不可能であるステータスの限界値を持って尻尾を切り落とした。

予想通り尻尾が切り落とせたので、一息つく。

相手に私の攻撃でダメージを与えられる方法をついに見つけられたのだ。

これでーー

「……形勢逆転、かしらね？」

　私の言葉に反応するかのように、痛みで叫びのたうち回っていたエンシェントドラゴンはこちらを悪魔のような形相でギロリと睨み、巨体を起こしてこちらへ対峙した。

さて、

「ここからどうしましょうか」

　明らかに本気になったエンシェントドラゴンをみて、冷や汗を流しながら私はつぶやいた。