8 / 23
第二章 小雪、食べる
外へ
しおりを挟む
しばらくカグヤちゃんとたかしちゃんとの話に花を咲かせていると、先程カードを持って来てくれたエルフの少年が扉へのノックと同時に、返答を聞かず部屋へ入る。少し足早にカグヤちゃんの元へと寄ると、彼女へ耳打ちし、一歩下がった。
「お話の途中で申し訳ありません、少し仕事が入って来ましたので、そろそろお暇させていただきます」
「仕事ってなんですか?」
カグヤちゃんの言葉にたかしちゃんはそう質問すると、カグヤちゃんは、
「プロジェクト"アイ"の件よ」
と言い残し、部屋を出た。たかしちゃんも合点がついたようで、あー、了解です。と一言漏らし、続けて部屋を出ようかと私にそう言った。
部屋を出てすぐの通路で、エルフの少年と目が合う。彼は私と目が合うと、一礼し、そそくさとその場を離れ、スタッフルームと思われる部屋の扉を開け、中に入ってしまった。
「ねえ、たかしちゃん」
「んー?」
先を歩くたかしちゃんに声をかける。
「さっきから思ってたんだけど、エルフの子って、みんなAIなの?」
私の問いに、少し苦笑いを浮かべ、答えにくそうにたかしちゃんは口を開く。
「んー……まあ、間違ってはいないよ」
そう私に言うと、近付いていった両扉を、入った時とは正反対に優しくかちゃりと開き、扉の外へ私達は出た。喧騒が再び私達を包む。あまり言いたく無いことなんだろうと思って、あえて追及は控えた。
「さぁて、おばあちゃん。これで登録が終わったし、行動するとしますか!……とと、そういえば初期給付金渡して無かったね」
ちょっと待ってとたかしちゃん。VRフォンを起動し、誰かに電話をかけ、何かやりとりをした後、わかりましたと言って電話を切った。
「んとね、運営権限ちょっと使うから、もう一回だけ中に入ろっか」
「あらま、そんな大それたことするの?」
「カグヤちゃんからのお達しだしね。それに、今回限りだよ」
上司に対してちゃん付けとは何事かと思ったけど、アバターネームなら別に良いのかしら?と思ったので、口には出さない。
また私達はスタッフルームの二枚扉の中へ入ると、たかしちゃんはどこから出したのかわからない麻布袋を私に手渡してきたので、それを受け取る。中には銀色のコインが30枚入っていた。
「これは?」
「それが初期給付金の3000ゴルドだよ」
ちなみにと言って、貨幣価値も教えてくれた。銅貨と銀貨と金貨の三種類あり、銅貨百枚で銀貨一枚分の価値となり、銀貨百枚で金貨一枚の価値となるらしい。11111ゴルドなら、金貨一枚、銀貨十一枚、銅貨十一枚の支払いとなるようだ。
日本人は一万円と百円と一円だと思えばいいから楽だなと思ったのと同時に、海外の人は換算する事ってできるのかな?と思ったが、その考えは徒労だと気付き、考えをやめる。
「はい、これで準備完了。これからはおばあちゃんもギルドメンバーの一員だ!」
そう笑顔で親指を立てて見せるたかしちゃん。
「いよいよなのねぇ、ドキドキしてきたわぁ」
「じゃあそろそろ出ようか。外に出るならこの部屋を出て真っ直ぐ、クエスト受付に行くのなら、この部屋を出て右に行くと、エリア26からエリア27が受付になってるから。あ、そうそう、おばあちゃんもこれから転移床が使えるから、どこにいても転移床を使えば受付にひとっ飛びできるからね」
転移床、そうだ。さっき気になっていたソレが使えるようになったのか。
「転移床を体験したいけど……まずは外が見たいわね」
「なら……っと、電話だ。ちょっとごめんね」
そう言って、たかしちゃんはVRフォンを操作し、何も無い空間に話しかけ始めた。へぇ、さっきは全く気にしてなかったから気付かなかったけど、電話中、通話相手の発言が他の人には何を言ってるのかわからない工夫されてるのね、と感心。
するとたかしちゃんはわかりましたと電話を切り、こちらを向く。
「ごめんおばあちゃん!ちょっと仕事入ったから、一緒に行けないや!」
「んーん、仕方ないわよ、お休みなのにお仕事お疲れ様。おばあちゃん一人で楽しむから、後は大丈夫よー」
そう手首を前後に振りながら言う私。本音としては、一年ぶりにゲームとは言えど会う孫との会話を楽しみたかったけど、仕事ならば仕方ない。なにせここはたかしちゃんの職場と言っても過言では無いのだし、居るのならと声をかけられることなどあるだろう。
たかしちゃんはごめんね!と大きな声で手を顔の前で合わして言うと、扉を開け走って行ってしまった。さてと、
「美味しい物でも食べますか!」
扉を勢いよく開け、人混みを避けながら真っ直ぐ私は外へ向けて歩み始めた。まだ見ぬ世界と美味しい物への期待を胸に。
「あ、あのアイスクリーム美味そう!」
誘惑にもちょっぴり負けながら。
「お話の途中で申し訳ありません、少し仕事が入って来ましたので、そろそろお暇させていただきます」
「仕事ってなんですか?」
カグヤちゃんの言葉にたかしちゃんはそう質問すると、カグヤちゃんは、
「プロジェクト"アイ"の件よ」
と言い残し、部屋を出た。たかしちゃんも合点がついたようで、あー、了解です。と一言漏らし、続けて部屋を出ようかと私にそう言った。
部屋を出てすぐの通路で、エルフの少年と目が合う。彼は私と目が合うと、一礼し、そそくさとその場を離れ、スタッフルームと思われる部屋の扉を開け、中に入ってしまった。
「ねえ、たかしちゃん」
「んー?」
先を歩くたかしちゃんに声をかける。
「さっきから思ってたんだけど、エルフの子って、みんなAIなの?」
私の問いに、少し苦笑いを浮かべ、答えにくそうにたかしちゃんは口を開く。
「んー……まあ、間違ってはいないよ」
そう私に言うと、近付いていった両扉を、入った時とは正反対に優しくかちゃりと開き、扉の外へ私達は出た。喧騒が再び私達を包む。あまり言いたく無いことなんだろうと思って、あえて追及は控えた。
「さぁて、おばあちゃん。これで登録が終わったし、行動するとしますか!……とと、そういえば初期給付金渡して無かったね」
ちょっと待ってとたかしちゃん。VRフォンを起動し、誰かに電話をかけ、何かやりとりをした後、わかりましたと言って電話を切った。
「んとね、運営権限ちょっと使うから、もう一回だけ中に入ろっか」
「あらま、そんな大それたことするの?」
「カグヤちゃんからのお達しだしね。それに、今回限りだよ」
上司に対してちゃん付けとは何事かと思ったけど、アバターネームなら別に良いのかしら?と思ったので、口には出さない。
また私達はスタッフルームの二枚扉の中へ入ると、たかしちゃんはどこから出したのかわからない麻布袋を私に手渡してきたので、それを受け取る。中には銀色のコインが30枚入っていた。
「これは?」
「それが初期給付金の3000ゴルドだよ」
ちなみにと言って、貨幣価値も教えてくれた。銅貨と銀貨と金貨の三種類あり、銅貨百枚で銀貨一枚分の価値となり、銀貨百枚で金貨一枚の価値となるらしい。11111ゴルドなら、金貨一枚、銀貨十一枚、銅貨十一枚の支払いとなるようだ。
日本人は一万円と百円と一円だと思えばいいから楽だなと思ったのと同時に、海外の人は換算する事ってできるのかな?と思ったが、その考えは徒労だと気付き、考えをやめる。
「はい、これで準備完了。これからはおばあちゃんもギルドメンバーの一員だ!」
そう笑顔で親指を立てて見せるたかしちゃん。
「いよいよなのねぇ、ドキドキしてきたわぁ」
「じゃあそろそろ出ようか。外に出るならこの部屋を出て真っ直ぐ、クエスト受付に行くのなら、この部屋を出て右に行くと、エリア26からエリア27が受付になってるから。あ、そうそう、おばあちゃんもこれから転移床が使えるから、どこにいても転移床を使えば受付にひとっ飛びできるからね」
転移床、そうだ。さっき気になっていたソレが使えるようになったのか。
「転移床を体験したいけど……まずは外が見たいわね」
「なら……っと、電話だ。ちょっとごめんね」
そう言って、たかしちゃんはVRフォンを操作し、何も無い空間に話しかけ始めた。へぇ、さっきは全く気にしてなかったから気付かなかったけど、電話中、通話相手の発言が他の人には何を言ってるのかわからない工夫されてるのね、と感心。
するとたかしちゃんはわかりましたと電話を切り、こちらを向く。
「ごめんおばあちゃん!ちょっと仕事入ったから、一緒に行けないや!」
「んーん、仕方ないわよ、お休みなのにお仕事お疲れ様。おばあちゃん一人で楽しむから、後は大丈夫よー」
そう手首を前後に振りながら言う私。本音としては、一年ぶりにゲームとは言えど会う孫との会話を楽しみたかったけど、仕事ならば仕方ない。なにせここはたかしちゃんの職場と言っても過言では無いのだし、居るのならと声をかけられることなどあるだろう。
たかしちゃんはごめんね!と大きな声で手を顔の前で合わして言うと、扉を開け走って行ってしまった。さてと、
「美味しい物でも食べますか!」
扉を勢いよく開け、人混みを避けながら真っ直ぐ私は外へ向けて歩み始めた。まだ見ぬ世界と美味しい物への期待を胸に。
「あ、あのアイスクリーム美味そう!」
誘惑にもちょっぴり負けながら。
0
お気に入りに追加
218
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
Another Of Life Game~僕のもう一つの物語~
神城弥生
ファンタジー
なろう小説サイトにて「HJ文庫2018」一次審査突破しました!!
皆様のおかげでなろうサイトで120万pv達成しました!
ありがとうございます!
VRMMOを造った山下グループの最高傑作「Another Of Life Game」。
山下哲二が、死ぬ間際に完成させたこのゲームに込めた思いとは・・・?
それでは皆様、AOLの世界をお楽しみ下さい!
毎週土曜日更新(偶に休み)
ーOnly Life Onlineーで生産職中心に遊んでたらトッププレイヤーの仲間入り
星月 ライド
ファンタジー
親友の勧めで遊び、マイペースに進めていたら何故かトッププレイヤーになっていた!?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
注意事項
※主人公リアルチート
暴力・流血表現
VRMMO
一応ファンタジー
もふもふにご注意ください。
けもみみ幼女、始めました。
暁月りあ
ファンタジー
サービス終了となったVRMMOの中で目覚めたエテルネル。けもみみ幼女となった彼女はサービス終了から100年後の世界で生きることを決意する。カンストプレイヤーが自由気ままにかつての友人達と再開したり、悪人を倒したり、学園に通ったりなんかしちゃう。自由気ままな異世界物語。
*旧作「だってけもみみだもの!!」 内容は序盤から変わっております。
アルケミア・オンライン
メビウス
SF
※現在不定期更新中。多忙なため期間が大きく開く可能性あり。
『錬金術を携えて強敵に挑め!』
ゲーム好きの少年、芦名昴は、幸運にも最新VRMMORPGの「アルケミア・オンライン」事前登録の抽選に当選する。常識外れとも言えるキャラクタービルドでプレイする最中、彼は1人の刀使いと出会う。
宝石に秘められた謎、仮想世界を取り巻くヒトとAIの関係、そして密かに動き出す陰謀。メガヒットゲーム作品が映し出す『世界の真実』とは────?
これは、AIに愛され仮想世界に選ばれた1人の少年と、ヒトになろうとしたAIとの、運命の戦いを描いた物語。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
三男のVRMMO記
七草
ファンタジー
自由な世界が謳い文句のVRMMOがあった。
その名も、【Seek Freedom Online】
これは、武道家の三男でありながら武道および戦闘のセンスが欠けらも無い主人公が、テイムモンスターやプレイヤー、果てにはNPCにまで守られながら、なんとなく自由にゲームを楽しむ物語である。
※主人公は俺TUEEEEではありませんが、生産面で見ると比較的チートです。
※腐向けにはしませんが、主人公は基本愛されです。なお、作者がなんでもいける人間なので、それっぽい表現は混ざるかもしれません。
※基本はほのぼの系でのんびり系ですが、時々シリアス混じります。
※VRMMOの知識はほかの作品様やネットよりの物です。いつかやってみたい。
※お察しの通りご都合主義で進みます。
※世界チャット→SFO掲示板に名前を変えました。
この前コメントを下された方、返信内容と違うことしてすみません<(_ _)>
変えた理由は「スレ」のほかの言い方が見つからなかったからです。
内容に変更はないので、そのまま読んで頂いて大丈夫です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる