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第一章
聖典が教えてくれたこと
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「えっ……」
ほんの一文を見て激しく動揺した。
“この物語を親愛なる桜兎さんへ捧ぐ”
桜兎それは私のハンドルネームだった。本名の咲良を桜に、そしてうさぎが大好きだったから桜兎。
どうして、私の名前がここに? 誰がこれを?
その答えはすぐにわかった。
“異世界転生先が聖女のミイラだった件~悪魔に騎士に溺愛されて干からびる暇がありませんっ!~”
“By 殿様ガエル”
タイトルの前半は正に今の私の状況を表してる気がする。後半には触れないとして……作者!
殿様ガエルさんだ……! 実際にカエルは大嫌いなのに、なぜかノリで付けちゃった殿様ガエルさんだ!
確かにドS悪魔とか、金髪碧眼の騎士とか殿様ガエルさんっぽい!
私が買った物の写真を投稿したり、ほしいなぁって物を呟くとすぐいいねをくれたから、私の好きな物だらけでも不思議じゃない。その上『桜兎さんが好きそうな物』を見つけてきてくれたりしてたくらい確実に好みを把握されてる。
最初は私が読者として殿様ガエルさんのことが好きすぎた。作品も本人のことも。
SNSをフォローして、感想を書き込む内に仲良くなって、殿とか殿様って呼ばせてもらうのが凄く楽しかった。
私が死んだあの日も殿が初めてイベントにサークル参加してたから、差し入れを持ってスペースに行って、同人誌を買ったのに読めなかった辛い。それだけは心残り。売り子したいなぁとか思ったのに。
こうして、今、大好きな殿が書いた小説の世界にヒロインとしているとしても、それとこれとは別。そう言えば、私のイメージでお話書きたいとか言われたなぁ。
“訪れたあまりにも突然すぎる死――目が覚めたら聖女の体に入っていた。ただし、百年前、神へ身を捧げるため毒を飲んだ……それって、要するにミイラじゃない? 眠ってたようにピチピチだけど。美しすぎる美少女ミイラに邪な思いを抱く輩もいれば、なぜか神殿に居着く悪魔に助けられたり、騎士に忠誠を誓われたり……エッチしたりするお話。”
「あ……」
ちょっとジーンとしたけど、最後の一文を見てハッとした。
殿様ガエルさんは十八禁しか書かない。これ、ちょっと見られたら恥ずかしいなって思った。顔を上げれば、アイトとラインがじっと私を見てたことに気付いたし、背後には相変わらずアヴィがいる。一番見られたくないやつ。
「安心しろ。それは、お前にしか読めない」
つまり、これは本当に日本語?
言葉は通じてるけど、この世界にはこの世界の言葉と字があるってこと。自動翻訳機能便利だなぁ。と思うけど、アヴィの言うことを鵜呑みにできるわけでもなかった。
「何も書かれていませんが……」
試しにアイトとラインに見せてみたけど、やっぱり読めないらしく、首を横に振られた。むしろ、見えてない?
セヴランを仲間外れにするのもどうかと思ったけど、全然興味なさそう。きっとアヴィと一緒だろうし。
これで安心して続きが読める……!
でも、その先には涙なしには読めない感じだった。
どうやら後で読めるらしく、スキップ機能があって、後でじっくり読ませてもらうことになった。
思いは凄く伝わってきたし、大体のことはわかった。
私は今、大好きな殿が私のために書いた小説の世界で生きているかと思ったら早速死にかけてる状況。
あらすじで薄々察していたけど、エッチをしなきゃいけないのは本当だった。
まずはアヴィが言った通り魂の定着させるためにしなきゃいけない。生きている者と交わることで死から離れるみたいな。
そこから先もラインが言ったみたいに魂を保持するために定期的にエッチしなきゃいけなくなるし、神聖力も自由に使えるようにならない。
元々は他人で、別世界を生きていた私の魂と聖女の肉体の結びつきは完璧じゃなくて。回路を正常に繋げるには誰かからエネルギーを分けてもらわないと足りない。
さっきはビックリしたけど、殿が書いた話なら納得。これはエロのためだけの設定。
厳密にはミイラじゃないけど、わかりやすいと思う。干からびる暇がないのは多分比喩的な?
“『ねぇ、聖典』と呼びかけて操作することもできます。なお、このウェイクアップワードは変更可能です。”
状況を理解したところで最後にそんなメッセージが出てきた。
便利すぎない? このタブレット……いや、聖典。
今ここにいる所謂攻略対象みたいな四人のプロフィールを確認する機能だってあったし。
「わかっただろ?」
パタンと聖典を閉じればアヴィがニヤリと笑う。腹立たしい。
本当は読めてるんじゃないかと疑いたくなるけど、アヴィとセブランがあの棺を作って守ってきたんだから知らないはずがないってところ。
どうやら、エッチをする覚悟を決めなきゃいけないらしい。この体は非処女でも私には経験ないのに……!
生きるべきか死ぬべきか。それがエッチにかかってる。何てこった。
ほんの一文を見て激しく動揺した。
“この物語を親愛なる桜兎さんへ捧ぐ”
桜兎それは私のハンドルネームだった。本名の咲良を桜に、そしてうさぎが大好きだったから桜兎。
どうして、私の名前がここに? 誰がこれを?
その答えはすぐにわかった。
“異世界転生先が聖女のミイラだった件~悪魔に騎士に溺愛されて干からびる暇がありませんっ!~”
“By 殿様ガエル”
タイトルの前半は正に今の私の状況を表してる気がする。後半には触れないとして……作者!
殿様ガエルさんだ……! 実際にカエルは大嫌いなのに、なぜかノリで付けちゃった殿様ガエルさんだ!
確かにドS悪魔とか、金髪碧眼の騎士とか殿様ガエルさんっぽい!
私が買った物の写真を投稿したり、ほしいなぁって物を呟くとすぐいいねをくれたから、私の好きな物だらけでも不思議じゃない。その上『桜兎さんが好きそうな物』を見つけてきてくれたりしてたくらい確実に好みを把握されてる。
最初は私が読者として殿様ガエルさんのことが好きすぎた。作品も本人のことも。
SNSをフォローして、感想を書き込む内に仲良くなって、殿とか殿様って呼ばせてもらうのが凄く楽しかった。
私が死んだあの日も殿が初めてイベントにサークル参加してたから、差し入れを持ってスペースに行って、同人誌を買ったのに読めなかった辛い。それだけは心残り。売り子したいなぁとか思ったのに。
こうして、今、大好きな殿が書いた小説の世界にヒロインとしているとしても、それとこれとは別。そう言えば、私のイメージでお話書きたいとか言われたなぁ。
“訪れたあまりにも突然すぎる死――目が覚めたら聖女の体に入っていた。ただし、百年前、神へ身を捧げるため毒を飲んだ……それって、要するにミイラじゃない? 眠ってたようにピチピチだけど。美しすぎる美少女ミイラに邪な思いを抱く輩もいれば、なぜか神殿に居着く悪魔に助けられたり、騎士に忠誠を誓われたり……エッチしたりするお話。”
「あ……」
ちょっとジーンとしたけど、最後の一文を見てハッとした。
殿様ガエルさんは十八禁しか書かない。これ、ちょっと見られたら恥ずかしいなって思った。顔を上げれば、アイトとラインがじっと私を見てたことに気付いたし、背後には相変わらずアヴィがいる。一番見られたくないやつ。
「安心しろ。それは、お前にしか読めない」
つまり、これは本当に日本語?
言葉は通じてるけど、この世界にはこの世界の言葉と字があるってこと。自動翻訳機能便利だなぁ。と思うけど、アヴィの言うことを鵜呑みにできるわけでもなかった。
「何も書かれていませんが……」
試しにアイトとラインに見せてみたけど、やっぱり読めないらしく、首を横に振られた。むしろ、見えてない?
セヴランを仲間外れにするのもどうかと思ったけど、全然興味なさそう。きっとアヴィと一緒だろうし。
これで安心して続きが読める……!
でも、その先には涙なしには読めない感じだった。
どうやら後で読めるらしく、スキップ機能があって、後でじっくり読ませてもらうことになった。
思いは凄く伝わってきたし、大体のことはわかった。
私は今、大好きな殿が私のために書いた小説の世界で生きているかと思ったら早速死にかけてる状況。
あらすじで薄々察していたけど、エッチをしなきゃいけないのは本当だった。
まずはアヴィが言った通り魂の定着させるためにしなきゃいけない。生きている者と交わることで死から離れるみたいな。
そこから先もラインが言ったみたいに魂を保持するために定期的にエッチしなきゃいけなくなるし、神聖力も自由に使えるようにならない。
元々は他人で、別世界を生きていた私の魂と聖女の肉体の結びつきは完璧じゃなくて。回路を正常に繋げるには誰かからエネルギーを分けてもらわないと足りない。
さっきはビックリしたけど、殿が書いた話なら納得。これはエロのためだけの設定。
厳密にはミイラじゃないけど、わかりやすいと思う。干からびる暇がないのは多分比喩的な?
“『ねぇ、聖典』と呼びかけて操作することもできます。なお、このウェイクアップワードは変更可能です。”
状況を理解したところで最後にそんなメッセージが出てきた。
便利すぎない? このタブレット……いや、聖典。
今ここにいる所謂攻略対象みたいな四人のプロフィールを確認する機能だってあったし。
「わかっただろ?」
パタンと聖典を閉じればアヴィがニヤリと笑う。腹立たしい。
本当は読めてるんじゃないかと疑いたくなるけど、アヴィとセブランがあの棺を作って守ってきたんだから知らないはずがないってところ。
どうやら、エッチをする覚悟を決めなきゃいけないらしい。この体は非処女でも私には経験ないのに……!
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