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国を奪われた夜に
国を奪われた夜に 2
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「ここは蜜を零している。そろそろ味わわせてもらうとしよう」
「ぁっ……! だめっ、そこは、だめです……!」
エド様の手が足の間に触れる。覆い隠す物がなくなってしまったせいで秘められた場所に簡単に触れられてしまう。足を閉じようとしてもクライヴに抑えられてできなかった。
クライヴが強引にはぎ取ったせいで繊細な生地は簡単に破けてしまって、それを咎める暇もなく今に至っている。
クライヴはエド様のことをあまりよく思っていない様子だったのに、まるで示し合わせたかのようにここでの連携は鮮やかで見事。
「ラナ、どうか私を拒まないでほしい」
エド様が懇願するように私を見詰めてくる。そんな目で見られては拒めない。
いつも余裕があるように見えるエド様が今はクライヴが言うように余裕がないのかもしれない。それが何故なのかはわからないけれど。
それでも理性はまだこれはいけないことだと訴えているのに、エド様の繊細な指はぴたりと閉じた合わせ目を辿る。婚約者とは言っても婚姻前に触れさせてはいけないとわかっているのに、クライヴにさえ見られているなんて信じられない。閨での作法もまだ知らない。教えてくれるはずの人間は石になってしまった。
どうかこれを夢だと言ってほしい。今日起きた全てが夢であってほしい。
「エド様っ……んっ!」
初めて触れられるそこは体の中に妙な疼きを生み出す。それは私がまだ知ってはならないはずの快楽なのだろう。
いけないのに、嫌ではない。ひどくもどかしい気持ちになる。
先程の言葉で魔法をかけられたように拒めなくなっているのに、素直に受け入れることも難しい。
「ラナ、我慢しないで」
「ふ、ぁ……んぅっ!」
じわじわと変な感じがして声が漏れてしまうのが嫌なのに、それは勝手に私の中から溢れてくる。
何度も何度もエド様の指はそこを行き来して、その刺激が私の理性の糸を焼き切ろうとするかのようで……
「ひ、あぁっ!」
「ここが貴女の気持ちいいところだ。我慢するのは良くない」
「やっ、あっ……!」
ここ、とエド様の指が触れる場所は下腹部に強い疼きを生み出す。やめてほしいと言おうとして、先程のエド様の言葉が脳裏を過ぎってできない。
それなのに、エド様の指は快楽を生み出し続ける。何かが自分の中から溢れ出して、頭がふわふわして、何も考えられなくなって、考えなくても良いような気がしてくるのが恐ろしい。
二人の真意がわからないまま流されてしまえば、どれほど楽だっただろうか。
「ふぁっ……えど、さま…………ぃ、っ……!」
どこか夢見心地のようにうっとりとした気持ちにすらなっていたのに、急に現実に引き戻された気がしたのは異物が中に入ってきたのがわかってしまったから。
「濡れているが、やはり狭いな……痛むか?」
「怖い……」
問いかけてくる声音も眼差しも優しいのに、恐ろしい。未知の物を恐れるのは当然のこと。せめて向き合う時間が欲しいのに、二人はその間を与えてくれない。
「姫様、大丈夫ですよ。俺がいますから」
ふわりと頭が浮いたかと思えば、こんな時でなければ頼もしかったはずのクライヴの声が上から降ってきて、そっと涙を拭われた。
何が楽しいのか足の指を舐めるのに夢中だった彼ははいつの間にか私の頭上に移動してきていた。
この不遜な騎士は訓練を頑張ったご褒美に膝枕を要求してくることがあったけれど、今は私がされている。私の膝で浅い眠りに就くクライヴはいい夢が見れるのだと言ったけれど、私は見られそうにない。
石になってしまった皆は夢も見ないのだろうか。元に戻す方法は他にはないのだろうか。
たとえば、私一人が身を差し出すことで全国民が元に戻り、その安全が保証されるのならば、それもまた姫の役目だと思える。
きっとエド様にはすぐに次の相手が決まるし、クライヴの新しい主君もすぐに決まるだろう。私がいなくなっても世界はすぐに正常に回り出す。何事もなかったかのように、私を忘れる。それを悲しいと感じる心があっても、一国の姫として生まれたからには国のために自分を捨てなければならないこともある。
「嬉々として主君に手を出す騎士とは思えない台詞だ」
「嬉々として婚前交渉に及ぶ王子様に言われたくありませんね」
また言い合いが始まってしまった。それがどこか遠い。
立場は違えども、あってはならないことをしているのは二人とも同じだ。特にクライヴは無礼極まりない。
やはり全て現実には思えない。いつになったら時は巻き戻るのだろうか。一番現実的でないことを考えているのは私なのかもしれない。
「緊急事態だから仕方ない」
「そうですね、貴方が婚姻前に姫様に触れるのは仕方ないことです」
「君がここにいるのを許すのも仕方ないからだ。残念なことに今のラナには君の力が必要だからな」
非常事態だと言うのにエド様は私にこの状況に至る理由を説明してくれない。
クライヴもわかっているくせに私には教えてくれない。
「素直に俺の力が必要だと言えば姫様の大事な婚約者殿のお命もついでに守って差し上げますよ」
「口が減らない男だ。私が必要なのは君の剣の力だ」
「優秀な使い手である俺がいてこそですよ。あのじゃじゃ馬は貴方でも貴方の騎士でも扱えない」
「荒馬同士気が合うらしい」
「口が減らないのはどっちだか。それは貴方の武器では? 必要なのはその魔力ですがね」
力を持つ者達は私には理解し難い会話に興じている。私は弄ばれながらそれを聞いているだけ。
クライヴには魔剣があり、エド様には国で一番の魔術師をも凌ぐとされる魔力がある。
けれど、私には? 私の武器は姫であるというだけ。
「ひぅっ!」
ぼんやりと話を聞いて、異物感を忘れかけていた頃、中でエド様の指がぐるりと動かされた。痛みではない感覚を呼び覚ますエド様の指が恐ろしい。
「騎士殿とばかり仲良くしていてはラナが嫉妬してしまうね」
嫉妬なんてしない。ただ置き去りにされるのが恨めしいだけ。
こんなことをしておいて、二人だけがわかっていることを私には教えてくれない。
「嫉妬なんてっ、あぁっ! 何をっ……!」
嫉妬ではなく、不満があるだけなのに、体を突き抜けた刺激は先程までとは違って、何をされたかに気付くのが遅れたのはきっと受け入れたくなかったから。
「やはり貴女の蜜は甘い」
「そんなことっ、なさらなっ、あぅっ!」
拒まないでと言われたことを忘れて信じ難い行為をやめてもらうつもりだった。
それなのに、クライヴが胸の先を摘まみ上げてきたせいで言葉にならなかった。
そこに顔を埋められるなんて考えたこともなかった。
「姫様、大丈夫です。受け入れてください。そうしないと姫様が辛くなります」
その手で私を責め立てるくせに宥めるような声が憎たらしい。
何もわからないのに、誰もこの状況を止めてはくれない。それが辛いのに、これ以上何が辛くなると言うのだろう?
「ぁっ……! だめっ、そこは、だめです……!」
エド様の手が足の間に触れる。覆い隠す物がなくなってしまったせいで秘められた場所に簡単に触れられてしまう。足を閉じようとしてもクライヴに抑えられてできなかった。
クライヴが強引にはぎ取ったせいで繊細な生地は簡単に破けてしまって、それを咎める暇もなく今に至っている。
クライヴはエド様のことをあまりよく思っていない様子だったのに、まるで示し合わせたかのようにここでの連携は鮮やかで見事。
「ラナ、どうか私を拒まないでほしい」
エド様が懇願するように私を見詰めてくる。そんな目で見られては拒めない。
いつも余裕があるように見えるエド様が今はクライヴが言うように余裕がないのかもしれない。それが何故なのかはわからないけれど。
それでも理性はまだこれはいけないことだと訴えているのに、エド様の繊細な指はぴたりと閉じた合わせ目を辿る。婚約者とは言っても婚姻前に触れさせてはいけないとわかっているのに、クライヴにさえ見られているなんて信じられない。閨での作法もまだ知らない。教えてくれるはずの人間は石になってしまった。
どうかこれを夢だと言ってほしい。今日起きた全てが夢であってほしい。
「エド様っ……んっ!」
初めて触れられるそこは体の中に妙な疼きを生み出す。それは私がまだ知ってはならないはずの快楽なのだろう。
いけないのに、嫌ではない。ひどくもどかしい気持ちになる。
先程の言葉で魔法をかけられたように拒めなくなっているのに、素直に受け入れることも難しい。
「ラナ、我慢しないで」
「ふ、ぁ……んぅっ!」
じわじわと変な感じがして声が漏れてしまうのが嫌なのに、それは勝手に私の中から溢れてくる。
何度も何度もエド様の指はそこを行き来して、その刺激が私の理性の糸を焼き切ろうとするかのようで……
「ひ、あぁっ!」
「ここが貴女の気持ちいいところだ。我慢するのは良くない」
「やっ、あっ……!」
ここ、とエド様の指が触れる場所は下腹部に強い疼きを生み出す。やめてほしいと言おうとして、先程のエド様の言葉が脳裏を過ぎってできない。
それなのに、エド様の指は快楽を生み出し続ける。何かが自分の中から溢れ出して、頭がふわふわして、何も考えられなくなって、考えなくても良いような気がしてくるのが恐ろしい。
二人の真意がわからないまま流されてしまえば、どれほど楽だっただろうか。
「ふぁっ……えど、さま…………ぃ、っ……!」
どこか夢見心地のようにうっとりとした気持ちにすらなっていたのに、急に現実に引き戻された気がしたのは異物が中に入ってきたのがわかってしまったから。
「濡れているが、やはり狭いな……痛むか?」
「怖い……」
問いかけてくる声音も眼差しも優しいのに、恐ろしい。未知の物を恐れるのは当然のこと。せめて向き合う時間が欲しいのに、二人はその間を与えてくれない。
「姫様、大丈夫ですよ。俺がいますから」
ふわりと頭が浮いたかと思えば、こんな時でなければ頼もしかったはずのクライヴの声が上から降ってきて、そっと涙を拭われた。
何が楽しいのか足の指を舐めるのに夢中だった彼ははいつの間にか私の頭上に移動してきていた。
この不遜な騎士は訓練を頑張ったご褒美に膝枕を要求してくることがあったけれど、今は私がされている。私の膝で浅い眠りに就くクライヴはいい夢が見れるのだと言ったけれど、私は見られそうにない。
石になってしまった皆は夢も見ないのだろうか。元に戻す方法は他にはないのだろうか。
たとえば、私一人が身を差し出すことで全国民が元に戻り、その安全が保証されるのならば、それもまた姫の役目だと思える。
きっとエド様にはすぐに次の相手が決まるし、クライヴの新しい主君もすぐに決まるだろう。私がいなくなっても世界はすぐに正常に回り出す。何事もなかったかのように、私を忘れる。それを悲しいと感じる心があっても、一国の姫として生まれたからには国のために自分を捨てなければならないこともある。
「嬉々として主君に手を出す騎士とは思えない台詞だ」
「嬉々として婚前交渉に及ぶ王子様に言われたくありませんね」
また言い合いが始まってしまった。それがどこか遠い。
立場は違えども、あってはならないことをしているのは二人とも同じだ。特にクライヴは無礼極まりない。
やはり全て現実には思えない。いつになったら時は巻き戻るのだろうか。一番現実的でないことを考えているのは私なのかもしれない。
「緊急事態だから仕方ない」
「そうですね、貴方が婚姻前に姫様に触れるのは仕方ないことです」
「君がここにいるのを許すのも仕方ないからだ。残念なことに今のラナには君の力が必要だからな」
非常事態だと言うのにエド様は私にこの状況に至る理由を説明してくれない。
クライヴもわかっているくせに私には教えてくれない。
「素直に俺の力が必要だと言えば姫様の大事な婚約者殿のお命もついでに守って差し上げますよ」
「口が減らない男だ。私が必要なのは君の剣の力だ」
「優秀な使い手である俺がいてこそですよ。あのじゃじゃ馬は貴方でも貴方の騎士でも扱えない」
「荒馬同士気が合うらしい」
「口が減らないのはどっちだか。それは貴方の武器では? 必要なのはその魔力ですがね」
力を持つ者達は私には理解し難い会話に興じている。私は弄ばれながらそれを聞いているだけ。
クライヴには魔剣があり、エド様には国で一番の魔術師をも凌ぐとされる魔力がある。
けれど、私には? 私の武器は姫であるというだけ。
「ひぅっ!」
ぼんやりと話を聞いて、異物感を忘れかけていた頃、中でエド様の指がぐるりと動かされた。痛みではない感覚を呼び覚ますエド様の指が恐ろしい。
「騎士殿とばかり仲良くしていてはラナが嫉妬してしまうね」
嫉妬なんてしない。ただ置き去りにされるのが恨めしいだけ。
こんなことをしておいて、二人だけがわかっていることを私には教えてくれない。
「嫉妬なんてっ、あぁっ! 何をっ……!」
嫉妬ではなく、不満があるだけなのに、体を突き抜けた刺激は先程までとは違って、何をされたかに気付くのが遅れたのはきっと受け入れたくなかったから。
「やはり貴女の蜜は甘い」
「そんなことっ、なさらなっ、あぅっ!」
拒まないでと言われたことを忘れて信じ難い行為をやめてもらうつもりだった。
それなのに、クライヴが胸の先を摘まみ上げてきたせいで言葉にならなかった。
そこに顔を埋められるなんて考えたこともなかった。
「姫様、大丈夫です。受け入れてください。そうしないと姫様が辛くなります」
その手で私を責め立てるくせに宥めるような声が憎たらしい。
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