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アテナ乱心

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『なるほど。守りたい女が自分より強くて、ビアーとの予選で危険なスキルを使った事で揉めていると。しかも、本戦で当たる予言まで出されて、逃げたり負けたりすれば一生戦うなと言われているから神器を破壊する事で収拾をつけようとしているわけか。しかも相手はあの戦姫だと』


「はい…」


 昼食を取りながらアテナに事情を話した。戦姫と聞いてアテナの表情が変わった事から、いかにリーシュが有名か思い知らされた。




『戦姫の実力は私も見た事がないからはっきりとは言えないが、序列は上から数えた方が早いだろうな。神器を破壊するという事は戦闘不能にするに等しい。それをあの戦姫があっさり許すかどうか…そうか、だから先程は色々試していたのだな』


 ヘルメスは行けそうな事を言っていたが、アテナの意見はまた別なようだ。リーシュの名前はそれほど知られていなくとも戦姫の通り名は相当知れ渡っているようだ。実力も折り紙つきで。


『ふむ…昼からの作業も進みがよければ、少しだけ見てやろう。当たるかどうかはお前次第だが、神器を破壊するのに必要な威力くらいは大体分かる。確か戦姫は薙刀だったな?』


「いいんですか?」


『今言った通り、お前の頑張り次第だ』


 俺が今まで神器を破壊したのはジークフリートのバルムンクのみ。それも[エクストラリミット]を使った状態なのでどれだけの威力で破壊できたのか分からなかった。アテナの申し出は本当にありがたかった。


「頑張ります!あの1つ聞いていいですか?…何でアテナさん自ら採掘してるんですか?オリンポス十二神ってかなり偉い方達なんですよね?ヘルメスはそうは見えないですけど」


 これは始めからずっと疑問に思っていた。この採掘場にランカーしか入れない理由はわかる。ゴーレムは硬くて倒すのが面倒だし、オルトロスは速さだけなら相当だ。何故それほどまでに鉱物が必要なのか。他のランカー相当の実力者に依頼しないのか不思議だった。


『そんな事か。簡単だ。私が採掘した方が素材が安く手に入るからだ』


「素材?武器でも作るんですか?」


『そんなの出来るわけないだろう。私が戦う以外にできるのは服を作る事だけだ。私の作る服は戦闘を前提としている。勿論争いはない方がいいが、またいつテュポーンが化物を差し向けてくるかわからないからな。民には丈夫で多少の攻撃なら耐えられる服を作ってやりたい』


「それなら誰か強い人に採掘を依頼すればいいんじゃないですか?」


『それでは服の値段が上がってしまうではないか。民の買えない金額の服など作る意味がない。それに作るだけではない。破けた服を直す時に鉱物を少し混ぜてやるだけで頑丈にもなる。その量を依頼すれば修繕費も上がる』


 自腹で補填すればと言いかけたがやめた。普通の服と同じ金額で丈夫で攻撃にも耐えられる服が買えるならそれでいいのだ。無償の施しと言う名のただのばら蒔きにしかならない可能性もある。


 それにしても…


「アテナさん優しいんですね。ちょっと最初の印象が恐かったので勘違いしてたかもしれません」


 アテナは少しムスっとして答えた。


『優しくなどない。それにあれはお前が悪い。せっかく作った服を派手だとか、もっと地味なのがいいとか言うからだ』


 確かに。服の経 
『なるほど。守りたい女が自分より強くて、ビアーとの予選で危険なスキルを使った事で揉めていると。しかも、本戦で当たる予言まで出されて、逃げたり負けたりすれば一生戦うなと言われているから神器を破壊する事で収拾をつけようとしているわけか。しかも相手はあの戦姫だと』


「はい…」


 昼食を取りながらアテナに事情を話した。戦姫と聞いてアテナの表情が変わった事から、いかにリーシュが有名か思い知らされた。




『戦姫の実力は私も見た事がないからはっきりとは言えないが、序列は上から数えた方が早いだろうな。神器を破壊するという事は戦闘不能にするに等しい。それをあの戦姫があっさり許すかどうか…そうか、だから先程は色々試していたのだな』


 ヘルメスは行けそうな事を言っていたが、アテナの意見はまた別なようだ。リーシュの名前はそれほど知られていなくとも戦姫の通り名は相当知れ渡っているようだ。実力も折り紙つきで。


『ふむ…昼からの作業も進みがよければ、少しだけ見てやろう。当たるかどうかはお前次第だが、神器を破壊するのに必要な威力くらいは大体分かる。確か戦姫は槍だったな?』


「いいんですか?」


『今言った通り、お前の頑張り次第だ』


 俺が今まで神器を破壊したのはジークフリートのバルムンクのみ。それも[エクストラリミット]を使った状態なのでどれだけの威力で破壊できたのか分からなかった。アテナの申し出は本当にありがたかった。


「頑張ります!あの1つ聞いていいですか?…何でアテナさん自ら採掘してるんですか?オリンポス十二神ってかなり偉い方達なんですよね?ヘルメスはそうは見えないですけど」


 これは始めからずっと疑問に思っていた。この採掘場にランカーしか入れない理由はわかる。ゴーレムは硬くて倒すのが面倒だし、オルトロスは速さだけなら相当だ。何故それほどまでに鉱物が必要なのか。他のランカー相当の実力者に依頼しないのか不思議だった。


『そんな事か。簡単だ。私が採掘した方が素材が安く手に入るからだ』


「素材?武器でも作るんですか?」


『そんなの出来るわけないだろう。私が戦う以外にできるのは服を作る事だけだ。私の作る服は戦闘を前提としている。勿論争いはない方がいいが、またいつテュポーンが化物を差し向けてくるかわからないからな。民には丈夫で多少の攻撃なら耐えられる服を作ってやりたい』


「それなら誰か強い人に採掘を依頼すればいいんじゃないですか?」


『それでは服の値段が上がってしまうではないか。民の買えない金額の服など作る意味がない。それに作るだけではない。破けた服を直す時に鉱物を少し混ぜてやるだけで頑丈にもなる。その量を依頼すれば修繕費も上がる』


 自腹で補填すればと言いかけたがやめた。普通の服と同じ金額で丈夫で攻撃にも耐えられる服が買えるならそれでいいのだ。無償の施しと言う名のただのばら蒔きにしかならない可能性もある。


 それにしても…


「アテナさん優しいんですね。ちょっと最初の印象が恐かったので勘違いしてたかもしれません」


 アテナは少しムスっとして答えた。


『優しくなどない。それはあれはお前が悪い。せっかく作った服を派手だとか、もっと地味なのがいいとか言うからだ』


 確かに。服の経緯まで知っていればもっと言い方はあったかもしれない。まさか採掘までしているとは思わなかったからしょうがなくもあるが。これは何故派手なのが嫌だったのかわかってもらった方がいいだろうと思い、両腕を軽く上げた。


「…レーヴァテイン」


 キィーーン!


 俺の両腕に銀色のガントレットが装着されている。アテナは軽く目を見開くと納得した顔をした。


『それがお前の神器か?確かに戦い方が珍しいとは思っていたが、まさか武器ではなく装備とはな。なるほど…だから地味なのが欲しいと言っていたのか。確かに色味が私の服とは合わないな』


「誤解が解けてよかったです。よくわからないんですが、たまに金色になったりもします」


 アテナの誤解が解けて本当によかったと思う。別に服が気に入らないわけではないのだ。気になるのが色だけで、着ようと思えば着れる。


 そんな話をしているうちに昼食を取り終えた俺達は作業に戻る事にした。


 ドーーンッ!…ドーーンッ!


 リズムよく壁を殴りつけるアテナだが、やはり効率が悪く見える。ゴーレムやオルトロスは今のところ出てこないので袋詰めの作業をしているが、一撃で岩1つと砂なので俺の方が手持ち無沙汰になってしまう。


(もっと崩せれば効率上がるんだけどな。硬そうだもんな…ん?)


 アテナが殴りつけているのを見ていた俺は思い付いた。


(硬いなら土魔法で柔らかくすればいいんじゃないか?)


 俺は思い付いた方法を試すためにアテナを呼び止め説明した。


『そんな上手く行くのか?壁に土魔法を流して崩れやすくするなど』


「やってみないとわからないじゃないですか」


 俺は岩壁に両手を付いた。


(大丈夫だ。やれる。願え。俺の魔力が壁に染み込んで柔らかくなるように…なんならちょっと振動でもして崩れやすくなってくれればいい)


 そう願いながら魔力を細かく、イメージ的には分子レベルまで細かくするつもりで細切れにして壁に流し込んでいった。


 ブブ…ブヴヴ…



 壁から少しずつ振動音が聞こえ始めた。


「アテナさん!今です!」


 ドゴーーンッ!…ガラガラ…


 アテナの一撃で壁が吹き飛び、先程よりも原石の塊が5つと大量の砂が崩れた。


『これは…いいな』


(でしょう??)


 口には出さなかったが顔には出ていたようだ。


『なんかそのドヤ顔、腹が立つな』


 素直に謝り、作業を再開した。ここからは本当に大忙しだった。土魔法(始)のせいか俺が柔らかくできる範囲はそれほど広くなく、精々2回も殴りつければ範囲から外れてしまう。なので俺は2回目が終わった時点で[疾風迅雷]でアテナを先回りし、端まで行ったら[疾風迅雷]を駆使して岩を高速で回収する。砂はもう後回しにするしかなかった。壁へ土魔法を流し込む作業は何回かやっているうちに慣れてきたのか、どんどん速度は上がっていった。そして30回目が終わった頃だろうか。


『うむ。もうこれだけあれば今日は充分だ。あとは砂を袋に詰めて今日は終わりにしよう』 


 かなり高効率で進めたのだろう。終わりにしようと言うアテナの表情はどこか柔らかく見えた。
 砂の袋詰めはアテナも手伝ってくれたおかげでそれほど時間はかからなかった。最後の一袋を詰め終えた俺にアテナが声を掛ける。


『予定より早く終わったから約束通り威力を見てやろう。…アイギス』


 フォンッ!…ガシャ! 


 一瞬強い光を放ったアテナは次の瞬間には金色の鎧と髪飾り、背丈ほどありそうな大きな盾を持っていた。その盾の装飾は美しかったが、中心にハマっている女性の顔があまりにリアルで思わず凝視してしまう。


『今はいいが、本来はそれほど凝視すれば石化するから気を付けた方がいい。これが私の神器だ。奇しくもお前と近いものがあるな』


 石化…。聞いたことがあるような気がした。確かメドューサの首を付けた盾。何か英雄が持っていたような。さすがに石化するのは嫌なのであまり見ない事にした。しかし驚いた。盾を持ってはいるが、俺と同じ防具系の神器だとは。まぁ、レーヴァテインは元々剣だったはずなので、神器というのは使用者によって変わるものなのだろう。


『製錬にも時間がかかるからな。始めよう。全力の一撃を打ってみろ』


 そう言い、アテナは盾を構えた。迷ってしまう。本当に全力で良いのかと。俺の顔からそれを察したのかアテナは語気を強めた。


『私の心配などするな!舐めているのか?この盾はお前の攻撃で壊れるような物ではない!』


 そうは言われてもレーヴァテインの威力は計り知れない。レーヴァテインを着けているだけで倍以上の威力が出る。だが、自分で求めたのだ。ここでできませんとは言えない。俺は拳に魔力を込めていった。リーシュの属性は風。神器も風のはずだ。風の弱点は火である。ならば込めるのは火属性以外にない。


 多少の不安は拭いきれないが、俺はアテナの持つ盾へ火属性の魔力を込めた一撃を全力で放った。


 ゴィーンッ!!ドゴーーンッ!


 重い金属を殴る音と洞窟内を埋め尽くすような炎。やり過ぎたかとアテナを心配したがそれは杞憂だった。


 ブォンッ!という音と共に炎が掻き消えた。残ったのは一歩も下がった様子もなく盾を振った態勢のアテナだけだった。

 アテナは何ともないような顔で告げる。


『ダメだな。この程度では神器は壊せん。というか周りに被害を出しすぎだ。もっと一点集中させないと厳しいぞ?』


 全力だったはずなのにダメと言われてしまった。やはり必中+初撃クリティカルの[暗夜之礫]に頼るしかないのだろうか。勿論[暗夜之礫]は作戦の1つではあるが、リーシュと初戦で当たるとは限らない。


「やっぱり無理なんでしょうか…色々やってるつもりだけど、俺なんかにリーシュを止める事なんて…」


諦めたらそこで試合終了だぞ?限界は有るものでなく、自分で決めるものでござっ…ゲホッ!…だ』


「…はい?」


 何か急に懐かしいフレーズを言われた気がして俺は顔を上げた。確か某バスケ漫画の安〇先生と緋村〇心だったか。アテナは俺を見ることなく斜め上を見ながら続ける。


できるかできないかじゃない。男ならやるかやらないかだろ!』


 まただ。某野球漫画の名言じゃなかったか?さっきから励ましてくれているのはわかる。だが励まし方が斬新で次第に俺は堪えきれなくなってしまった。


「…フ…フフ…ハハハ。あ、すいません。つい」


『人が励ましているのに何故笑うのだ!』


「えっ、だってアテナさん、さっきから下界のアニメの名言ばかり言うから」


 アテナは一瞬ビクッとした後、俺に背中を向けてこちらの様子を伺っているようだ。


『そ、そんな訳がないだろう。偶然だ。私がアニタだとでも言うのか?』


「その前にアテナさんがオをヲ読むのを知ってる方が驚きです」


 俺に指摘されたアテナの顔がどんどん赤くなっていき、ゆでダコほどになった瞬間叫んだ。


お前の血は何色だぁ!!』


「赤だよ!それだよっ!…てか、アテナさん堅いキャラなのかと思ったら可愛いところもあるんですね」 


 思わずタメ口でツッコんでしまった。フラッとたたらを踏んだ後、垂らした綺麗な白い髪の間からブツブツと呟きが聞こえる。


『知られてしまった…。ヘルメスしか知らなかったのに。今これはもう消すしかないか?今なら誰もいないし、ここならわからないな。ヘルメスには出ていったとでも言っておけばいいか?』


 あまりに物騒な呟きに思わず反応してしまう。


「いや、消すとか恐いよっ!大丈夫です!誰にも言いません!墓場まで持っていきますから!アテナさん、落ち着いて!」


 俺の叫びが響き渡り、一瞬の静寂が訪れた。


『本当?』

「はい。俺もまだ死にたくないんで」

『誰かに言ったら、どこにいても消しに行くよ?』

「必ず墓場まで持っていきます」

『名言言いたくなったら言っていい?』

「は?あぁ、多分俺にしか分からないと思うんで俺に向けて言う分にはいいんじゃないですか?」


 アテナは大きく深呼吸を始めた。何度か深呼吸した後、姿勢を正して乱れた髪をかき上げた。


『ふぅ…。すまん。取り乱した』


 キリッとした目に戻ったので正気を取り戻してくれたようだ。


「命の危険を感じましたよ」


 それから少しだけ話を聞いた。アテナがアニメにハマったのは、ヘルメスに休憩中暇だろうからとDVDプレーヤーとアニメのDVDを渡された事がきっかけらしい。ヘルメスはどこから調達しているのか、様々なジャンルのアニメを大量に保有していて、アテナへ有料で貸し出していたらしい。アニメを見ていく中で次第にアニメのセリフを言いたい欲望が募り、一人で採掘に来た時などはストレスを発散するように決め台詞を叫んでいたらしい。今回は俺がいた訳だが。


(ヘルメスが言ってた中二病ってそうゆう事だったのか)


『やっぱりあのゴーレムの集団を前にすれば『月に代わってお仕置きよ!』と叫びたくなるだろう?これが街の中で言おうものなら、まるで私がアルテミスに隷属しているように取られてしまう。服を作るような細かい仕事をしていると案外ストレスは溜まるのだ。だからこそ、お前には私のストレスの捌け口になってもらうぞ?さっきいいって言ったな?な?』


 カツアゲでもされているかのような感覚があるが、俺もアニメは好きだったし、特にデメリットもなかったので了承した。


『ユシルと言ったか。お前がいい奴で良かった。よろしく頼む』

「……あっ、よろしくお願いします」


 冷やかな目を少し緩ませ軽く微笑むアテナの表情に思わず見とれてしまい変な間が開いてしまったが、差し伸べられた手を握った瞬間だった。


 ポーーン!


 〈オリンポス十二神アテナとの友情値が30%を越えました。スキル[剛力(始)]を借用登録しました。〉


(剛力…名前からして今の俺にはうってつけじゃないか)


 手を差し伸べられた時に何となく思った。おそらくスキルを借用できるのだろうと。

 スキルを得られたのも嬉しいが、それよりも初対面であれほど印象が悪かったアテナが俺に少なからず友情を感じてくれている事の方が嬉しかった。


『話し込んでしまったな。もう少し受けてやろう。そうだ、先程思い付いたのだが…』


 アテナのアドバイスを受けた後、俺はまたアテナと対峙した。


(試してみよう。[剛力]も発動するように…願え!)


 俺は[疾風迅雷]で最速の助走を付けた。そして拳を振りかぶり火属性を纏わせた拳をアテナの盾へ突き立てる瞬間に[迅速果断]を発動させた。

 途端にスローになる世界。余裕のできた俺はアテナの思い付きを実行する。

 盾に拳が当たる直前で俺の腕の後方。場所で言えば振りかぶった肘の真後ろに風魔法を多めに込めたを設置し、破裂させた。


 ギュンッ!


 肘の後ろで魔丸を破裂させた衝撃で振りかぶった拳がまるで弾丸のように弾き出された。 


 ドゴーーン!!! 


 視界を埋め尽くす炎。すぐにアテナに掻き消された。


 姿の見えたアテナの盾にはキズひとつなく見えるが、位置は殴り付ける前よりも5メートルほど移動していた。その5メートル分、威力が上がったのは明らかだった。


『うむ、これならイケるかもしれん。絶対とは言えんが、神器を破壊できる威力には届いていると思うぞ』


「ありがとうございます!アテナさんのアドバイスのお陰です」


 俺の魔丸を見ていたアテナがこの応用を思い付いたのだ。話を聞いているうちにこれはイケるかもと思ったので試してみたのだが、[剛力]の効果もあってか想像よりも遥かに威力が上がったので俺も驚いている。


『そ、そうか?私は大したことはしてないのだが』


「そんな事ないです!アテナさんがいなかったらここまで威力は上がらなかったと思います」


 これはお礼の気持ちを伝えなければとアテナの手を取った。アテナは少し俺の目を見つめた後、視線を逸らして呟く。


『お前が女を侍らせている理由が少しだけわかった気がする』


「えっ?何です?」


撃っていいのは撃たれる覚悟がある奴だけだと言ったのだっ!』


 バッと手を振り払われ何故か怒られた。


「えっ?俺なんかしました!?」


『もういいだろう。製錬に行くぞ!|ユシル、ついてこい!』


 そう言い残し、出口へ歩いて行ってしまうアテナを俺は慌てて袋と荷物を回収して追い掛けるのだった。

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