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手甲の力

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 羅刹を殴り飛ばした俺は、地面に膝をつきながら両腕の手甲を見る。



(…何なんだ、この腕輪…いや、手甲か?俺の最大威力でも破れなかった羅刹の本来の障壁を、まるで紙みたいに突き抜けたぞ)





 ゆっくりと羅刹が立ち上がり怒りの表情を浮かべる。



≪貴様ぁ!!許さんぞ!殺す!我がゲイボルグで肉片すら残さず殺してやる!≫



「ゲイボルグ…?何であんたがその神器をもってるんすか!それは確かクーフーリンの」



≪クーを我が喰らったからに決まっているだろう!貴様を喰って、その神器も我が使ってやろう≫



 羅刹が槍を持ち構えた瞬間、目の前から消えた。





 ガキィンッ!




 横から俺の首目掛けて振るわれた槍を受け止めた。


 先程は思いきり弾き飛ばされたのに、今回は受け止められた。


(せっかく手にいれたチャンスなんだ。この好機…必ず手繰り寄せてみせる!)


「らぁぁぁあぁぁ…!」


 ガキンッ!ガキンッ!ドスッ!



 ゲイボルグと数度打ち合い、左腕で軌道を逸らした瞬間に空いた顔面を右拳で殴り付ける。



 吹き飛ぶ羅刹



 長物の槍と体術、手数の差は明らかだった。



 更に障壁を簡単に突き抜ける手甲



 完全にこちらが有利だった。






≪図に乗るなよ…小僧ぉ!≫




 ゴゴゴゴ…




 羅刹が立ち上がり、俺が瞬きした瞬間だった。



 すでに目の前で刀を振り下ろす羅刹が見えた。



 ガキンッ!ザクッ…



 手甲で受け止めたのだが、刀の当たった部分が手甲の強度を越えていたようで俺の腕に深く刀傷ができる。


「ぐっ」


≪やはり神器は自分のが1番合うものだな。久々に握るとしっくり来るぞ[七星剣]≫



 羅刹の空気が変わる




(くっ…マズい、手甲を過信し過ぎたか)



 俺は障壁を突き抜ける手甲を過信し、魔力を纏うのを忘れていたのだ。



 その間も俺の腕からはダラダラと血が流れる。目の前が霞む。




≪よくわからない神器だったが、多少は楽しめたぞ。我に[七星剣]を使わせたのだ。誇ってよい。誇って、そして死ね≫



 羅刹が直刀を振り下ろした。







 キンッ! 




≪ぬっ!?≫



「間に合ったか。鬼神と会ったら逃げろと言っただろうに」



「タケさんっ!!」


「ここから先は俺が相手をしよう。鬼神よ、俺の霊刀[布都御魂ふつのみたま]の錆となれ…」



 俺の目の前で羅刹の直刀を受け止めたのは刀を持ったタケミカヅチだった。



≪ほぅ、高天原最強か。退けと言っても無理な話か?≫



「無理な話だな。今日は講習担当者なんでな。しかも、鬼神なら尚更だ」



≪殺れなくはないが、被害は避けられんか。大きな戦の前だ、今日は退くとしよう≫



 そう言い羅刹は刀を納める。



「俺が逃がすと思うのか?それにその大きな戦ってのは何だ?」



≪逃げる?退いてやるだけだ。まぁ、楽しみにしておけ≫



 ヒュンッ!



 羅刹は突如ニニギの方へ手を向け魔力弾を放った。




「何っ!?」



 ピシャァン!!ザンッ!



 タケミカヅチの姿が稲妻になり、一瞬でニニギの前に移動して魔力弾を切った。



 しかし、その一瞬ですでにそこに羅刹の姿はなかった。




「逃がしたか。お前ら、大丈夫か?」



「はい…死ぬかと思ったっす…それよりユシルが!!」



「…俺も、なんとか」







 血を流し過ぎたせいで、俺はそこで意識を失った。














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