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お見合いをした女と男
後編
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「私とビクトリアは、顔合わせをしたじゃないですか!」
「見合いはしたな」
「だからビクトリアは婚約者ですよね!」
訳が解らないことを言っている息子と、「ご子息は脳の病かなにかでは……」と思っているのが伝わってくる代官の表情に、額を押さえ苦悶の表情を浮かべる執事。
「ジョエル、お前がしたのは見合いだ。見合いをして相性が合えば、婚約して結婚する」
「だから私とビクトリアは!」
「見合いは不調に終わった。お前はビクトリア嬢に興味がなかったと聞いたが」
父親の言葉にジョエルは大きく目を見開き、代官は小さな声で退出の挨拶をし、出来るだけ音を消して去った。
「誰がそんなことを!」
「皆がだ」
「そんなことはありません!」
「だが、一度もデートをしなかったのだろう?聞けば、いつも直前にキャンセルしていたとか」
「それは、ビクトリアの気持ちが本物かどうかを試したかったからです!」
「試す?」
ジョエルの言い分は「婚約者」になったビクトリアが、本当に自分のことを愛してくれているかが知りたくて、友人達に相談したところ「待たせる」ことにした。
「私のことをいつまで待ってくれるか?何時間待ってくれるか?それで愛情が解ると言われ」
「実行に移したのか?」
「はい。ですがビクトリアは全く待ってくれず」
父親はジョエルから見えないところで首を振っている執事を見て、執事が大事にならないようすぐにビクトリアにジョエルが来ないと告げて、帰したことを察した。
「それはそうだろう。ビクトリアにとって、お前は恋人でもなければ婚約者でもない。ただの見合い相手だ」
「で、ですが!ビクトリアは私に惚れている筈です」
「なぜそう思ったのかについては聞かないが、今日ビクトリア嬢がお前ではない人物と結婚したのが、全ての答えだと思うが」
「で、でもビクトリアは、見合いの席で笑いかけてくれたし……」
「ビクトリア嬢を呼び捨てにするな、馬鹿者。ああ、今日からは夫人か。それと見合いの席で、見合いの相手に微笑むのは当然だ。なぜそんな勘違いをしたのか……初めての見合いだから勘違いした……で片付けるには、酷すぎる」
父親の深いため息を聞き、ジョエルはやっと自分がビクトリアに愛されておらず、婚約者でもなく、浮気されたわけでもなければ、裏切られたわけでもなかったことに気付き、険しい表情で自分を睨む父親から視線を外し執事のほうを見た。
執事に「助けてくれ」とアイコンタクトを送ったのだが、
「教育のし直しが必要かと」
執事はジョエルの味方はしてくれなかった。
しばらくして帰宅したジョエルの母親を交えて、ジョエルの勘違いと、しでかした行動、そして今後ジョエルをどうするかを話し合った。
ちなみにジョエルが、ビクトリアが結婚式を行っている所へ足を運んだのは、招待状が送られてきたのを確認していたため。
結婚式の招待状を、デートのお誘いの手紙だと勘違いしたのだ。
普段では考えられないほど豪華な手紙なのだが、ジョエルの中では「数ヶ月ぶりの誘いだから、豪華にしたんだろう」と、これも勝手な解釈をしていた。
更に執事に日付と日時を聞いただけで、目を通すことがなかった。
そして結婚式開始よりもかなり遅れて大聖堂へと出向き、新郎と腕を組んで出てきた新婦のビクトリアを目撃することになった。
こんな勘違いしきったジョエルの言動。
一晩で結果を出すことはできなかった……と、ジョエルは思ったが、その晩ジョエルは睡眠薬入りの酒を飲まされ、お湯を張ったバスタブに沈められ、当人すら知らぬまにこの世を去った。
両親は勘違いに思い込み、果ては人を試すような行動を繰り返す息子を見限り、礼節のあるビクトリアの実家と、政界に顔がきくビクトリアの夫の実家と、良好な関係を保つほうを取った。
「見合いはしたな」
「だからビクトリアは婚約者ですよね!」
訳が解らないことを言っている息子と、「ご子息は脳の病かなにかでは……」と思っているのが伝わってくる代官の表情に、額を押さえ苦悶の表情を浮かべる執事。
「ジョエル、お前がしたのは見合いだ。見合いをして相性が合えば、婚約して結婚する」
「だから私とビクトリアは!」
「見合いは不調に終わった。お前はビクトリア嬢に興味がなかったと聞いたが」
父親の言葉にジョエルは大きく目を見開き、代官は小さな声で退出の挨拶をし、出来るだけ音を消して去った。
「誰がそんなことを!」
「皆がだ」
「そんなことはありません!」
「だが、一度もデートをしなかったのだろう?聞けば、いつも直前にキャンセルしていたとか」
「それは、ビクトリアの気持ちが本物かどうかを試したかったからです!」
「試す?」
ジョエルの言い分は「婚約者」になったビクトリアが、本当に自分のことを愛してくれているかが知りたくて、友人達に相談したところ「待たせる」ことにした。
「私のことをいつまで待ってくれるか?何時間待ってくれるか?それで愛情が解ると言われ」
「実行に移したのか?」
「はい。ですがビクトリアは全く待ってくれず」
父親はジョエルから見えないところで首を振っている執事を見て、執事が大事にならないようすぐにビクトリアにジョエルが来ないと告げて、帰したことを察した。
「それはそうだろう。ビクトリアにとって、お前は恋人でもなければ婚約者でもない。ただの見合い相手だ」
「で、ですが!ビクトリアは私に惚れている筈です」
「なぜそう思ったのかについては聞かないが、今日ビクトリア嬢がお前ではない人物と結婚したのが、全ての答えだと思うが」
「で、でもビクトリアは、見合いの席で笑いかけてくれたし……」
「ビクトリア嬢を呼び捨てにするな、馬鹿者。ああ、今日からは夫人か。それと見合いの席で、見合いの相手に微笑むのは当然だ。なぜそんな勘違いをしたのか……初めての見合いだから勘違いした……で片付けるには、酷すぎる」
父親の深いため息を聞き、ジョエルはやっと自分がビクトリアに愛されておらず、婚約者でもなく、浮気されたわけでもなければ、裏切られたわけでもなかったことに気付き、険しい表情で自分を睨む父親から視線を外し執事のほうを見た。
執事に「助けてくれ」とアイコンタクトを送ったのだが、
「教育のし直しが必要かと」
執事はジョエルの味方はしてくれなかった。
しばらくして帰宅したジョエルの母親を交えて、ジョエルの勘違いと、しでかした行動、そして今後ジョエルをどうするかを話し合った。
ちなみにジョエルが、ビクトリアが結婚式を行っている所へ足を運んだのは、招待状が送られてきたのを確認していたため。
結婚式の招待状を、デートのお誘いの手紙だと勘違いしたのだ。
普段では考えられないほど豪華な手紙なのだが、ジョエルの中では「数ヶ月ぶりの誘いだから、豪華にしたんだろう」と、これも勝手な解釈をしていた。
更に執事に日付と日時を聞いただけで、目を通すことがなかった。
そして結婚式開始よりもかなり遅れて大聖堂へと出向き、新郎と腕を組んで出てきた新婦のビクトリアを目撃することになった。
こんな勘違いしきったジョエルの言動。
一晩で結果を出すことはできなかった……と、ジョエルは思ったが、その晩ジョエルは睡眠薬入りの酒を飲まされ、お湯を張ったバスタブに沈められ、当人すら知らぬまにこの世を去った。
両親は勘違いに思い込み、果ては人を試すような行動を繰り返す息子を見限り、礼節のあるビクトリアの実家と、政界に顔がきくビクトリアの夫の実家と、良好な関係を保つほうを取った。
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