【短編集】ざまぁ

彼岸花

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下らないことをする二人に鉄槌を下した話

後編

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その後、裁判が行われ、ヨーゼフとリサは、裁判長やヘンリエッタ側の弁護士から何を聞かれても「あれは冗談だった。不貞などしていない」としか答えなかった。

「二人で夫婦の寝室のベッドに腰を掛けて、話をしていたという証言が複数ある」

二人の行動は、証言とは正反対。

「リサと仲良くすると、ヘンリエッタが嫉妬してくれるのが嬉しくて!どんな会話をしていいのか解らなかったから!ただそれだけなんだ!」

裁判は弁護士に丸投げしたので、ヨーゼフの気持ちの悪い証言を、ヘンリエッタは聞かずに済んだ。
あとで報告され、

「嫉妬……ねえ」

した覚えのない嫉妬に快感を感じていたと言われたことに、身震いした。
不貞による離婚は無事に成立し、ヘンリエッタは別の男性の所へと嫁いだ。

ヨーゼフはヘンリエッタを紹介してくれた、元婚約者の実家とその縁者の顔を潰したことで、縁を切られた。

ヘンリエッタの実家だが、ヨーゼフの元婚約者の実家が寄親と共に必死に謝罪したので、今までと変わらない交流を約束した。

ヘンリエッタはヨーゼフよりずっと身分が高く、家柄も良かった。

更に裕福で、両親は子ども達にしたいことを、やらせてくれた。ヘンリエッタは画家を目指しており、両親も応援していた。

そこに持ち込まれたヨーゼフとの結婚。身分が低いが、領地に問題もなかったので、夫人としての社交もそこそこに絵を描けるだろう……と、見合いを持ち込んできた一族の当主が言ったので、結婚することを承諾した。

その結果、夫の昔馴染みが毎日のようにやってきてはマウントし、夫もそれを受け入れ、嫉妬が気持ち良かったなどとほざく。二人で遊んでくれていればいいものの、ヘンリエッタに見せつけたいという目的だけは一致している二人。
アトリエに篭もっていても、押し入ってきそうだった。ヘンリエッタにとって大事な場所を、あんな馬鹿たちに踏み荒らされたくないので、渋々二人の見苦しい劇をみることになった。

そんな新婚生活だったので、全く絵を描くどころではなく、一族の当主に証拠を突きつけた。
ヘンリエッタは離婚できれば、それで良かったのだが、当主が自分の顔を潰されたと怒り、リサとヨーゼフには多額の慰謝料を請求した。

リサの実家はヘンリエッタの他に、リサの婚約者にも慰謝料の支払いが生じ……リサは金持ちの家に売られた。

跡取りだった筈のヨーゼフは、慰謝料を支払うために爵位まで売り飛ばすこととなり、ヨーゼフとその両親は平民になった。
ヨーゼフの失態で家を失った両親、特に父親は酒に溺れ、ヨーゼフに暴力をふるうようになった。

「止めてくれ、父さん!」

ヨーゼフの父親は騎士だったが、その称号も剥奪されていた。だが称号は剥奪されても、腕っ節はまだ健在で、文官だったヨーゼフは父親の暴力に、ほとんど抵抗出来ず、いつも顔に青痣をつくって、日雇いの仕事をしていた。

「お前が!お前が!」
「止めてくれ!助けてくれ、母さん!」
「…………」

かつては結婚したヘンリエッタに対して嫉妬するほど、ヨーゼフを可愛がっていた母親。
だが、今ではヨーゼフが夫に酒瓶で殴られていても、何も思いはしないし、助ける気など湧きもしなかった。

「貴方、食事よ」

母親は夫であるヨーゼフの父親だけを呼び、父親は酒瓶を投げ捨てて、妻が用意したパンとスープの食事を口へと運ぶ。

鼻血を流しながら、床に倒れているヨーゼフには目もくれずに。

ヨーゼフはこの生活に耐えられず、両親を捨てて新天地へと向かったが、その先でも気性が荒い日雇いの労働者たちに殴られた生活を送ることになった。


離婚後、ヘンリエッタは当主から「詫びとして」と芸術の都への留学をプレゼントしてもらい、そこで学び画家としてデビューを果たし、またそこで男性と出会って再婚し、幸せな人生を送った。

ヨーゼフが、ヘンリエッタのその後を知ることはなかったが。

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