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本編

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「トオルさん、アレン様、お待たせしました!」

リリアンさんが息を切らしながら厨房に入ってくる。
後から、コルムくんとカベロくんも息を切らしながら続いて入ってくる。

3人とも手に籠を持っていて、中には沢山の果物を持っていた。

「家にあった果物をかき集めてきました!
桃以外にも使えるものがあったら、使ってください!」

彼女は、俺たちに籠の中身を見せながら言う。

中には、桃や杏、葡萄など沢山の種類の果物が入っていた。


「リリアンさん!こんなに沢山!
ありがとう……。」

お礼を言うと彼女は、少し顔を赤らめながら微笑んだ。

「いえ、そんな…。
ラインハルト様とトオルさんの為なら……。」

彼女の言葉を遮るようにアレンが俺と彼女の間に入り籠を受け取る。

「リリアン、助かる。」

あれ?なんか、アレン機嫌悪い?

彼の様子に、コルムくんとカベロくんが苦笑いをしながら見ていた。

「俺たちも手伝います。
何からすればいいですか?」

苦笑いをしていたカベロくんが俺に聞いてきた。

「えっと…とりあえず、2人は桃を剥いてくれる?」

2人は、俺の指示に従い直ぐに作業に取り掛かった。

「トオルさん!私も何か…。」

「いや、俺たちは邪魔になるといけないから向こうで待っていよう。」

リリアンさんの言葉を遮る様にアレンが声をかける。

「トオル、魔力を使うんだろ?」
アレンは、俺にそう言うと、突然俺を抱き寄せてキスをしてきた。

「う…うぅ……。」

彼に口を塞がれて舌を絡められる。

確かに魔力は必要だけど…。

リリアンさんが見てるから!
コルムくんとカベロくんだって!
抵抗も虚しく、彼から流れてくる魔力を受け取った。

恥ずかしさで顔が熱を持って行くのがわかった。

「ちょっ…。アレン!
皆が見てるから…。」

アレンが口を離してから文句を言うが、彼は何処吹く風の如く俺の文句を気にしていない。

そして、満足そうに笑みを浮かべると、唖然としているリリアンさんを連れて近くのテーブルに腰掛けた。

コルムくんとカベロくんは、「いつものことだから、もう慣れました。」と口々に苦笑いしながら俺を慰めてくれる。


「いや、そんなこと慣れないでよ……。」


俺、2人が慣れるほどアレンとのキス見られてるのか……。

2人の優しさがちょっとだけ辛い…。


「さぁ、トオルさん早くラインハルト様の為に料理を作りましょう?
何を作るんですか?」

落ち込んでいる俺にコルムくんが聞いてきた。

「……うん。わかってるよ…。
ラインハルト、何か物を食べられる状態じゃないから飲み物とかスープの方が食べさせやすいと思うんだ。」

「そんなに良くない状態なんですね……。」

カベロくんが暗い顔をしながら聞いていた。

「うん…。
意識はまだ戻ってない…。」

最後に見た彼を思い出しながら答える。

「そうですか……。
でも…きっと大丈夫ですよね!
早くラインハルト様に料理を持って行ってあげましょう!」
暗い顔の俺とカベロくんを励ますようにコルムが明るい顔で言ってくれた。

そうだ。
レオンくんとヒューガさん、ヴェインさんが頑張ってくれてるんだ。

だから、俺も俺のやるべき事に集中しよう…。


「うん!じゃあ、俺は、こっちでスープのベースを作るね。
コルムくんとカベロくんは、桃が剥けたら小さく切ってくれる?
色が変わりやすいから切ったらレモンの汁で和えて色止めをしておいて!」

「「はい!」」

2人が元気よく作業を再開した。

俺はこっちで桃のスープに使うシロップを作る。

水に蜂蜜とローズマリー、ミント、ラベンダーを加えて煮出してシロップにしていく。

砂糖よりも蜂蜜の方が抗菌作用とかあるから身体にいいかな?と思って蜂蜜にしてみた。

ハーブの香りが移ったら濾して冷やしたらシロップの完成だ。

ラインハルトの身体の穢れを少しでも浄化してくれますように…。


2人が切ってくれた桃を冷やしたシロップに加えて潰していく。


そこにバジルの葉を刻んで加えたら完成だ。

シンプルではあるが、桃とハーブの香りが爽やかな仕上がりのスープになった。


これにアイスを乗せたらそのまま暑い日のデザートにしてもいいかも知れない。

それは、ラインハルトが元気になったらまた皆で食べよう…。

早く、また皆で楽しく食卓を囲める様になりたいな……。


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