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番外編 公爵子息は副団長を愛したい (本編86話後推奨)
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俺が騎士団に書類整理の仕事なにきてから数日が経った。
トオルとも打ち解けていい友達になれていると思う。
俺自身元々、気を許せる友人が少なかったのもあり初めて同い年で仲のいい友人が出来た。
相変わらずアレンはトオルに甘々で見てるこっちが恥ずかしくなるくらいイチャイチャしている。
昨日はついにアレンの部屋で一夜を過ごしたらしいからな…。
トオルの料理の知識などには驚かされることが多く、ヴェインが好きな料理の作り方も快く教えてくれた。
アレンもトオルが作った料理なら問題無く野菜を食べることが出来ているようでいい変化だと思う。
それにトオルと出会ってから笑顔が多く部下にも優しく接している気がする。
昔のアレンからは考えられないいい変化だった。
引っ込み思案な性格だったカイルもトオルにはよく懐いていて、苦手意識が強かった魔法の訓練にも積極的に参加しているようだ。
あのカイルが正騎士1歩手前の剣の実力があるとヴェインに聞いた時には驚いた。
元々頑張り屋なカイルの事だ。
沢山訓練を積み重ねたのだとわかった。
それでも、魔法の実力が伴わなかった為に正騎士になれそうにないと聞いてどうにか出来ないかと考えていた。
カイルは俺にとっても大事な弟のように思っているから尚更だった。
結局、トオルの機転のおかげで魔法を傷つける為に使うのでは無く、護るために使うのだと思えるようになったらしい。
まぁ、カイルが笑顔で
「いっぱい魔法を覚えてトオルさんの料理の手伝いをします!」
と言っていたのを聞いたヴェインはなんとも言えない顔をしていたが……。
トオルが御伽噺の白魔法の力を持っていることがわかり更に驚かされた。
目の前でカイルの怪我を一瞬で治したのを見ているから疑いようはない。
それに、トオル自身も渡り人と言う御伽噺のような存在だから有り得ない話でもないか…。
ヴェインもトオルと出会ってから何か変化があったようだった。
前よりも俺との間に壁を作らなくなった気がする。
話すときも無意識に距離が近い。
チラと近くで書類仕事をしている彼を見た。
ヴェインも俺の視線に気づいたようで俺を見て優しく微笑んでくれる。
くっ……相変わらず可愛い……。
この前、ヴェインの部屋で抱きしめられながら
「もう少しだけ俺に時間をくれ。
次はちゃんと俺から伝えるから。」
と言われたのを思い出す。
それからお互いそれについて話はしてないがさっきみたいな反応が返ってくることが多くなった。
昨日、トオルなアレンの部屋で一夜を過ごしたと聞いて正直トオルとアレンが羨ましく思えた。
鈍感で無自覚だったトオルがやっとアレンへの恋心を認めたから一気に関係が進展したのだろう。
いつも通りの時間にトオルが起きてこないことを不審に思ったヴェインがアレンに問い詰めて、朝からヴェインの怒号が響いていたが……。
その後に1人で執務室で書類仕事をしていたら起きたトオルが訪ねて来て、根掘り葉掘り聞いた。
反応がいちいち面白くてついついからかってしまったのは許して欲しい。
その後、仕事から戻ってきたアレンとヴェインを交えてまたヴェインの説教が始まったが……。
「なぁ、ヴェイン……。
アレン幸せそうだったな。」
ヴェインに怒られながらも、にやけ顔を崩さなかったアレンを思い出して言う。
ヴェインは俺の言葉に反応して書類仕事を続けながら応えた。
「あぁ、腹立つくらいにニヤニヤしてたな。
でも、まぁ、アレンがやっとトオルと結ばれて嬉しくはある。」
彼もアレンの顔を思い出したのか一瞬イライラしていたがすぐに笑顔になる。
俺も、早くヴェインと結ばれたい……。
口に出したかったが、彼からの言葉を待つと決めたので飲み込んだ。
「あぁ、幸せそうで何よりだ。」
会話が途切れて沈黙が続いた。
ん?ヴェインどうしたんだ?
突然何も言わなくなったヴェインが気になり書類から目を上げて彼を見る。
ヴェインは、何故か俺を見つめてたようで目が合った。
彼の蒼い瞳がキラキラと輝いて居て惹き込まれそうになった。
しばらく見つめ合っていると
「なぁ、ラインハルトちょっと休憩しないか?
話したいことがあるんだ。」
意を決したように俺に言ってきた。
休憩?
まだ、1時間も仕事してないぞ?
だが、答える前にヴェインは既に仕事を切り上げ紅茶を淹れる準備を始めてしまう。
しかも、何故かわざわざソファーに移動したのだ。
突然の事に驚いて居ると、ヴェインは自分の隣をパンパンと叩いて「ここに座れ」と催促してきた。
2人しか居ないのに隣り合わせに座るのは少し不自然だったが言われた通りに隣に腰掛けた。
……隣に体温を感じるくらい近い。
俺だって男だ。
いろいろ我慢してるんだから勘弁してくれよ…。
「ヴェ、ヴェイン、ち、近くないか?」
「いやなのか?」
俺の言葉にヴェインが不安そうに返してくる。
「いやじゃなくて…その……いろいろ我慢出来ないから……。」
その言葉に何故かヴェインは嬉しそうに笑った。
「ラインハルト、ずっとずっと待たせてごめんな。
それに待っててくれて本当にありがとう。」
「え?」
「もう、我慢しなくていい。
だから、他の奴とデートに行くな!」
「は?」
突然の言葉に頭が回らなかった。
それってどう言う意味だ?
さっきアレンが冗談混じりに
「ラインハルトが幸せそうな俺たちを羨ましがってな。
明日の休みに想い人を誘ってデートにでもいくらしいぞ?」
と言っていたのを本気にしたのか?
確かに、ヴェインの反応はちょっと落ち込んでいる様にもみえたが……。
「ヴェ、ヴェインちょっと落ち着け!」
とりあえず、アレンの言葉を説明しよう。
デートするにしてもお前以外は有り得ないから!
「次は俺から伝えるって言っただろ?
ラインハルト、お前が好きだ。
こんな俺でも良ければ…その…付き合って欲しい……。」
ヴェインは、頬を赤く染めながら恥ずかしげに言ってきた。
「い、いいのか?」
突然の告白に視界が歪んでいく。
説明とかもう、どうでもいいか……。
俺は…俺はやっとヴェインと結ばれることが出来るのか?
何とか紡いだ言葉の返事は大胆にも彼の口付けだった。
俺の唇に彼の唇が重なる。
ふいに奪われた唇から彼の体温が伝わり俺の体温を上げたように全身が熱くなって行く。
顔まで熱くて頭が湯だりそうだった。
頭から湯気が出ていないか不安になるくらいだ。
嬉しいやら恥ずかしいやらでいっぱいいっぱいで言葉が出てこず涙を流しながらヴェインを抱きしめる。
彼もそれに答えて俺の背に手を回してくれた。
「ラインハルト、好きだ。」
もう一度耳元で愛の言葉を囁かれる。
「ヴェイン…俺も好きだ…愛してる…。」
もう一度、どちらからでもなく互いの唇を重ねた。
もっと深くヴェインと繋がりたくて彼の口の中に舌を入れて撫で回す。
ヴェインは驚きぎこちないながらも必死に俺を受け入れてくれた。
そのまま彼をソファーに押し倒す。
もう止まれそうになくて、夢中で彼の唇を貪った。
ヴェイン…好きだ。
世界一愛してる。
やっと…やっとヴェインに触れることが出来る。
彼も嬉しそうに頬を染めていた。
本当は、ヴェインの中にあった気持ちの変化をちゃんと聞きたかったが18年と言う長い長い時間抑えてきた衝動を止めることは出来なかった。
彼の服に手を掛けボタンを外そうとした時
コンコンコンッ!
扉からノックが響いた。
やばい、ここは部屋じゃなくて執務室だった……。
ヴェインも高揚した気分のせいで忘れていたようでノックで正気に戻ったみたいだった。
「ヴェイン、トオルだけど…。」
扉の外からトオルの声が響いた。
ヴェインが急いで俺を押しのけて服を整える。
トオル…。
ずるいぞ!
自分はアレンとイチャイチャした癖に俺のイチャイチャは邪魔するのか!
なんて、完全なる八つ当たりをしながら心の中で黒髪の友人に悪態づく。
「お、おう、トオルどうしたんだ?」
ヴェインが扉を開けてトオルを招き入れた。
「ヴェインもラインハルトもなんか顔赤いよ?息も切れてるし…。具合悪い?大丈夫?」
彼は本気で心配してるようだったが、俺たちはその言葉に凍りついた。
「い、いや、ちょっと、手合わせをしててな…。な、なぁ、ラインハルト?」
ヴェインが俺に同意を求めてくる、
いやいや、手合わせってなんだよ?
部屋の中で手合わせって無理があり過ぎるだろ!
「そ、そうだよ!したら突然トオルが来るから驚いただけだ。」
ヴェインがそう言ってしまったから合わせるしかない。
友人に嘘をつくのが心苦しくて目を逸らしながら答えた。
「そう?体調が悪くないなら、まぁいいんだけど……。」
俺達の言い訳に一応納得したらしい。
いや、トオルちょろすぎだろ?
ヴェインが安心したように彼から用件を聞く。
まぁ、アレンに買って貰った料理の時の服をしてるから間違いなく厨房に行きたいんだろうな?
やはりそうだったみたいでヴェインから許可を貰ったトオルはすぐに厨房へと向かって行った。
扉が閉まった瞬間にヴェインとバレなかった事を安堵する。
「続きは今度ゆっくり部屋でしような?」
ヴェインが恥ずかしげに言ってくる。
「なぁ…今すぐ部屋に行かないか?」
ついつい出た言葉を無視してヴェインが
「さぁ、仕事するか…」と席に着く。
ガックリしながら俺も席に着いた。
「で、明日の休暇は何処にも行かないよな?」
ヴェインが不安そうに聞いてくる。
あ、忘れてた。
まぁ、ちょうどいいか。
「それなんだけどな、ヴェイン、明日デートしないか?」
俺の言葉にヴェインがみるみる赤くなって行く。
どうやらアレンの言葉を今更理解したらしい。
「じゃあ…俺は…俺は勘違いして告白を急いだのか…。」
恥ずかしそうに机に突っ伏しているヴェインを愛しく思った。
つまり俺を他の誰かに取られたくなかったんだな。
はぁ、こいつ可愛すぎだろ?
「で、返答は?」
「昼は予定があるから夕方からなら……。」
1日じゃないのか…。
ちょっと残念に思ったがカイルの魔法特訓があると聞かされれば無理は言えない。
カイルのことは、応援してるからな。
「じゃあ、夕方からな。」
俺の言葉にヴェインも嬉しそうに頷いてくれた。
今から明日が楽しみで今日は仕事に集中出来なさそうだな……。
♦♦♦♦♦
次回はR18回になります。
苦手な方はご注意ください。
また、次回で番外編は完結となります。
完結後1日経ったらアレンの番外編の次に移動させますのでよろしくお願いいたします。
本編と番外編の更新が重なり分かりにくくなってしまい申し訳ありませんでしたm(_ _)m
今後ともよろしくお願いします!
トオルとも打ち解けていい友達になれていると思う。
俺自身元々、気を許せる友人が少なかったのもあり初めて同い年で仲のいい友人が出来た。
相変わらずアレンはトオルに甘々で見てるこっちが恥ずかしくなるくらいイチャイチャしている。
昨日はついにアレンの部屋で一夜を過ごしたらしいからな…。
トオルの料理の知識などには驚かされることが多く、ヴェインが好きな料理の作り方も快く教えてくれた。
アレンもトオルが作った料理なら問題無く野菜を食べることが出来ているようでいい変化だと思う。
それにトオルと出会ってから笑顔が多く部下にも優しく接している気がする。
昔のアレンからは考えられないいい変化だった。
引っ込み思案な性格だったカイルもトオルにはよく懐いていて、苦手意識が強かった魔法の訓練にも積極的に参加しているようだ。
あのカイルが正騎士1歩手前の剣の実力があるとヴェインに聞いた時には驚いた。
元々頑張り屋なカイルの事だ。
沢山訓練を積み重ねたのだとわかった。
それでも、魔法の実力が伴わなかった為に正騎士になれそうにないと聞いてどうにか出来ないかと考えていた。
カイルは俺にとっても大事な弟のように思っているから尚更だった。
結局、トオルの機転のおかげで魔法を傷つける為に使うのでは無く、護るために使うのだと思えるようになったらしい。
まぁ、カイルが笑顔で
「いっぱい魔法を覚えてトオルさんの料理の手伝いをします!」
と言っていたのを聞いたヴェインはなんとも言えない顔をしていたが……。
トオルが御伽噺の白魔法の力を持っていることがわかり更に驚かされた。
目の前でカイルの怪我を一瞬で治したのを見ているから疑いようはない。
それに、トオル自身も渡り人と言う御伽噺のような存在だから有り得ない話でもないか…。
ヴェインもトオルと出会ってから何か変化があったようだった。
前よりも俺との間に壁を作らなくなった気がする。
話すときも無意識に距離が近い。
チラと近くで書類仕事をしている彼を見た。
ヴェインも俺の視線に気づいたようで俺を見て優しく微笑んでくれる。
くっ……相変わらず可愛い……。
この前、ヴェインの部屋で抱きしめられながら
「もう少しだけ俺に時間をくれ。
次はちゃんと俺から伝えるから。」
と言われたのを思い出す。
それからお互いそれについて話はしてないがさっきみたいな反応が返ってくることが多くなった。
昨日、トオルなアレンの部屋で一夜を過ごしたと聞いて正直トオルとアレンが羨ましく思えた。
鈍感で無自覚だったトオルがやっとアレンへの恋心を認めたから一気に関係が進展したのだろう。
いつも通りの時間にトオルが起きてこないことを不審に思ったヴェインがアレンに問い詰めて、朝からヴェインの怒号が響いていたが……。
その後に1人で執務室で書類仕事をしていたら起きたトオルが訪ねて来て、根掘り葉掘り聞いた。
反応がいちいち面白くてついついからかってしまったのは許して欲しい。
その後、仕事から戻ってきたアレンとヴェインを交えてまたヴェインの説教が始まったが……。
「なぁ、ヴェイン……。
アレン幸せそうだったな。」
ヴェインに怒られながらも、にやけ顔を崩さなかったアレンを思い出して言う。
ヴェインは俺の言葉に反応して書類仕事を続けながら応えた。
「あぁ、腹立つくらいにニヤニヤしてたな。
でも、まぁ、アレンがやっとトオルと結ばれて嬉しくはある。」
彼もアレンの顔を思い出したのか一瞬イライラしていたがすぐに笑顔になる。
俺も、早くヴェインと結ばれたい……。
口に出したかったが、彼からの言葉を待つと決めたので飲み込んだ。
「あぁ、幸せそうで何よりだ。」
会話が途切れて沈黙が続いた。
ん?ヴェインどうしたんだ?
突然何も言わなくなったヴェインが気になり書類から目を上げて彼を見る。
ヴェインは、何故か俺を見つめてたようで目が合った。
彼の蒼い瞳がキラキラと輝いて居て惹き込まれそうになった。
しばらく見つめ合っていると
「なぁ、ラインハルトちょっと休憩しないか?
話したいことがあるんだ。」
意を決したように俺に言ってきた。
休憩?
まだ、1時間も仕事してないぞ?
だが、答える前にヴェインは既に仕事を切り上げ紅茶を淹れる準備を始めてしまう。
しかも、何故かわざわざソファーに移動したのだ。
突然の事に驚いて居ると、ヴェインは自分の隣をパンパンと叩いて「ここに座れ」と催促してきた。
2人しか居ないのに隣り合わせに座るのは少し不自然だったが言われた通りに隣に腰掛けた。
……隣に体温を感じるくらい近い。
俺だって男だ。
いろいろ我慢してるんだから勘弁してくれよ…。
「ヴェ、ヴェイン、ち、近くないか?」
「いやなのか?」
俺の言葉にヴェインが不安そうに返してくる。
「いやじゃなくて…その……いろいろ我慢出来ないから……。」
その言葉に何故かヴェインは嬉しそうに笑った。
「ラインハルト、ずっとずっと待たせてごめんな。
それに待っててくれて本当にありがとう。」
「え?」
「もう、我慢しなくていい。
だから、他の奴とデートに行くな!」
「は?」
突然の言葉に頭が回らなかった。
それってどう言う意味だ?
さっきアレンが冗談混じりに
「ラインハルトが幸せそうな俺たちを羨ましがってな。
明日の休みに想い人を誘ってデートにでもいくらしいぞ?」
と言っていたのを本気にしたのか?
確かに、ヴェインの反応はちょっと落ち込んでいる様にもみえたが……。
「ヴェ、ヴェインちょっと落ち着け!」
とりあえず、アレンの言葉を説明しよう。
デートするにしてもお前以外は有り得ないから!
「次は俺から伝えるって言っただろ?
ラインハルト、お前が好きだ。
こんな俺でも良ければ…その…付き合って欲しい……。」
ヴェインは、頬を赤く染めながら恥ずかしげに言ってきた。
「い、いいのか?」
突然の告白に視界が歪んでいく。
説明とかもう、どうでもいいか……。
俺は…俺はやっとヴェインと結ばれることが出来るのか?
何とか紡いだ言葉の返事は大胆にも彼の口付けだった。
俺の唇に彼の唇が重なる。
ふいに奪われた唇から彼の体温が伝わり俺の体温を上げたように全身が熱くなって行く。
顔まで熱くて頭が湯だりそうだった。
頭から湯気が出ていないか不安になるくらいだ。
嬉しいやら恥ずかしいやらでいっぱいいっぱいで言葉が出てこず涙を流しながらヴェインを抱きしめる。
彼もそれに答えて俺の背に手を回してくれた。
「ラインハルト、好きだ。」
もう一度耳元で愛の言葉を囁かれる。
「ヴェイン…俺も好きだ…愛してる…。」
もう一度、どちらからでもなく互いの唇を重ねた。
もっと深くヴェインと繋がりたくて彼の口の中に舌を入れて撫で回す。
ヴェインは驚きぎこちないながらも必死に俺を受け入れてくれた。
そのまま彼をソファーに押し倒す。
もう止まれそうになくて、夢中で彼の唇を貪った。
ヴェイン…好きだ。
世界一愛してる。
やっと…やっとヴェインに触れることが出来る。
彼も嬉しそうに頬を染めていた。
本当は、ヴェインの中にあった気持ちの変化をちゃんと聞きたかったが18年と言う長い長い時間抑えてきた衝動を止めることは出来なかった。
彼の服に手を掛けボタンを外そうとした時
コンコンコンッ!
扉からノックが響いた。
やばい、ここは部屋じゃなくて執務室だった……。
ヴェインも高揚した気分のせいで忘れていたようでノックで正気に戻ったみたいだった。
「ヴェイン、トオルだけど…。」
扉の外からトオルの声が響いた。
ヴェインが急いで俺を押しのけて服を整える。
トオル…。
ずるいぞ!
自分はアレンとイチャイチャした癖に俺のイチャイチャは邪魔するのか!
なんて、完全なる八つ当たりをしながら心の中で黒髪の友人に悪態づく。
「お、おう、トオルどうしたんだ?」
ヴェインが扉を開けてトオルを招き入れた。
「ヴェインもラインハルトもなんか顔赤いよ?息も切れてるし…。具合悪い?大丈夫?」
彼は本気で心配してるようだったが、俺たちはその言葉に凍りついた。
「い、いや、ちょっと、手合わせをしててな…。な、なぁ、ラインハルト?」
ヴェインが俺に同意を求めてくる、
いやいや、手合わせってなんだよ?
部屋の中で手合わせって無理があり過ぎるだろ!
「そ、そうだよ!したら突然トオルが来るから驚いただけだ。」
ヴェインがそう言ってしまったから合わせるしかない。
友人に嘘をつくのが心苦しくて目を逸らしながら答えた。
「そう?体調が悪くないなら、まぁいいんだけど……。」
俺達の言い訳に一応納得したらしい。
いや、トオルちょろすぎだろ?
ヴェインが安心したように彼から用件を聞く。
まぁ、アレンに買って貰った料理の時の服をしてるから間違いなく厨房に行きたいんだろうな?
やはりそうだったみたいでヴェインから許可を貰ったトオルはすぐに厨房へと向かって行った。
扉が閉まった瞬間にヴェインとバレなかった事を安堵する。
「続きは今度ゆっくり部屋でしような?」
ヴェインが恥ずかしげに言ってくる。
「なぁ…今すぐ部屋に行かないか?」
ついつい出た言葉を無視してヴェインが
「さぁ、仕事するか…」と席に着く。
ガックリしながら俺も席に着いた。
「で、明日の休暇は何処にも行かないよな?」
ヴェインが不安そうに聞いてくる。
あ、忘れてた。
まぁ、ちょうどいいか。
「それなんだけどな、ヴェイン、明日デートしないか?」
俺の言葉にヴェインがみるみる赤くなって行く。
どうやらアレンの言葉を今更理解したらしい。
「じゃあ…俺は…俺は勘違いして告白を急いだのか…。」
恥ずかしそうに机に突っ伏しているヴェインを愛しく思った。
つまり俺を他の誰かに取られたくなかったんだな。
はぁ、こいつ可愛すぎだろ?
「で、返答は?」
「昼は予定があるから夕方からなら……。」
1日じゃないのか…。
ちょっと残念に思ったがカイルの魔法特訓があると聞かされれば無理は言えない。
カイルのことは、応援してるからな。
「じゃあ、夕方からな。」
俺の言葉にヴェインも嬉しそうに頷いてくれた。
今から明日が楽しみで今日は仕事に集中出来なさそうだな……。
♦♦♦♦♦
次回はR18回になります。
苦手な方はご注意ください。
また、次回で番外編は完結となります。
完結後1日経ったらアレンの番外編の次に移動させますのでよろしくお願いいたします。
本編と番外編の更新が重なり分かりにくくなってしまい申し訳ありませんでしたm(_ _)m
今後ともよろしくお願いします!
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