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本編

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部屋戻ってアレンに正装へ着替えるのを手伝って貰った。

途中、アレンがわざとらしく、いやらしい手つきで身体を触ってくるのをチョップしながらやり過ごす。

ラインハルトに手伝って貰えば良かった……。
やっぱり俺も自衛用の魔法を覚えないと朝のラインハルト状態になりそう……。

団長も副団長も絶倫すぎだろ……。
この騎士団大丈夫かよ?

カイルくんが最後の砦だね。

カイルくんは俺が健全に育ててみせる!
そう決意する。

ラインハルトと合流して3人で王宮へと向かう。

歩いて30分くらいの距離だが、王様が迎えの馬車を遣わせてくれたらしく、煌びやかな馬車に乗って向かった。

豪華な馬車は、庶民の俺としては逆に居心地が悪くて王様に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

王宮に着くと、中年の優しそうな男性と白い鎧を付けた騎士さんが迎えてくれた。

あれ?ラインハルトに似てる?


「父上、兄上、まさか、お2人が直々にお出迎えとは……?」
ラインハルトが少し驚いたように言った。

あ、やっぱりラインハルトのお父さんとお兄さんか!

アレンよりも体格が良くて筋骨隆々としたお兄さんがラインハルトを見るやいなや掴みかかってくる。

「ラインハルト、お前が来るって言うから顔を見たくて陛下に申し出たんだ!
お前、俺の頼みは断って近衛に入らなかった癖に王国騎士団には入るのか!」

ラインハルトは彼の手をするりと避けて言う。

「父上からの命令を断れるわけないじゃないですか!
それに、父上は好きなようにしなさいと言ってくださったんだからもう近衛の話はお終いだった筈ですよ?」

「そんなの知らん!
お前程の実力がありながら書類整理なんてもったいないにも程がある!
ならせめて、俺の書類仕事を手伝え!」

ラインハルトは、ジークムントさんの言葉に呆れながらお父さんを見る。

「ラインハルト…こうなりそうだから私も来たんだ。
こら、ジークムント、いい歳をしてお客人の前で恥ずかしい……。
トオル殿、お恥ずかしい所をお見せしました。
私、この国の宰相を務めていおります。
アルバ・ソランジールと申します。
よろしくお願いします。」

兄弟喧嘩?を諌めながら唖然としている俺に挨拶をしてくれた。

「初めまして。オガワ・トオルです。
あ、トオル・オガワのほうがいいのかな?
ラインハルトのお父上ですよね?
いつも息子さんにはお世話になっています。
よろしくお願いします。」

ラインハルトのお父上と言う言葉が気に入ったようで嬉しそうに笑っていた。

「これはご丁寧に…。
ラインハルトと仲良くしてくださっているようで父としても嬉しい限りです。
ラインハルトをこれからもよろしくお願いします。」



「トオル?オガワって家名なのか?」
アレンが突然聞いてくる。

「あれ?言って無かったっけ?」
アレンとラインハルトが俺の言葉に頷いてくる。

あ、そうだっけ?
確かに自己紹介の時に、皆、基本的に下の名前しか言わないから下の名前しか答えてなかった気がする。

「あ、でも、コアが言ってたかもな?
あの時は驚きばっかりだったから聴き逃してたが…。」

あ、確かに言ってた気もする。

「なんだ?俺は親友のフルネームすら知らなかったのか?」
ラインハルトがちょっと悔しそうに言ってくる。

「ごめん…。ついつい言い忘れてたよ……。
正直ラインハルトはラインハルトだから家名も朧気だった…。」

そもそも横文字苦手だから1発で覚えれないんだよ……。

俺のその言葉に皆が苦笑いしていた。

「トオル殿、俺はラインハルトの兄のジークムントだ。これからも弟をよろしく頼む。」
ジークムントさんが自己紹介をしてくれてる。

「ジークムント、言葉遣い!」
アルバさんがジークムントさんを窘める。

「アルバ様、気にしないでください!」

「いえ、トオル殿、この子は昔からちょっと頭が弱いのでその度にちゃんと注意しないとダメなんです……。
気にしないでください。」

アルバさん、ジークムントさんに容赦ないな…。

あ、でも、ラインハルトが言っていた「アレンの数倍脳筋」の意味がちょっとだけわかった気がする……。

「父上、私はもう、28です。流石に酷いですよ……。
おい、アレン、ラインハルト、何を笑っている!」

ジークムントさんは笑いを堪えている2人を睨みつける。
ラインハルトはやばいと言う顔をするが
アレンはむしろ吹き出した。

「クスクス……。
ジークムント、お前は相変わらずだな…。」

「お前は久しぶりに見たらだいぶ腑抜けて丸くなったじゃないか?
今ならアレンに楽に勝てそうだな?」


「ほぅ?試してみるか?」
ジークムントさんの言葉にアレンの雰囲気が変わり辺りに緊張感が走る。


「はぁ……。2人共いい加減にしなさい。
ラインハルト、2人を止めなさい。」
アルバさんが呆れながらラインハルトにいう。

「はぁ……。わかりました。」

ラインハルトは、魔法を唱えて2人に滝を振らせた。

あれ?これってヴェインさんの魔法?

俺やアルバさん、ラインハルトはシャボン玉みたい膜に包まれて全く濡れなかった。

「「おい、ラインハルト、何をする!」」

アレンとジークムントさんは声を揃えてラインハルトを睨みつける。

「お前達、そのままずぶ濡れの状態で陛下に会いたいか?」
アルバさんの声が響く。

「「す、すみませんでした……。」」

「ラインハルト、2人を乾かしてあげなさい。」
アルバさんは、ラインハルトに言う。

「えぇ…。アレンだけで良くないですか?
兄上にはこのまま退席して貰いましょうよ?」

「ラインハルト貴様!」
ジークムントさんはラインハルトの言葉に食ってかかるがアルバさんの睨みで黙り込んだ。

「はぁ……。そうしたいのはやまやまなんだがな。
一応、仮にも、本当に一応、本当に認めがたいがあれでも陛下の護衛筆頭だ。
居ないと困るんだよ…。」


アルバさん、一応って言葉が多いよ……。


「ち、父上、酷いです……。」
アルバさんの言葉にショックを受けたようでジークムントさんは大人しくなった。


「ラインハルト、あれ大丈夫?
ジークムントさん、かなり落ち込んでない?」
ラインハルトに小声で聞いてみると

「あぁ、大丈夫、大丈夫。
いつもの事だから3分くらいしたら復活するよ。」
と言っていた。

3分!?流石にそれは早過ぎない?
メンタル超合金なのあの人?


とりあえず、ラインハルトが2人を魔法で乾かしてからアルバさんの案内のもと、王様の所に向った。
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