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第二章

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 レノアは再び語気を強めて言った。

 俺は片眉をピンと跳ね上げる。

「レノアの中では、もうすでに決まっているみたいだな」

 レノアは大きくうなずいた。

「当然、後者だ!ゴート公爵は一筋縄ではいかない相手。いずれ我が軍が強大な戦力を保有すれば、味方になってくれるかもしれないが、現状ではいまだ敵対勢力!しかも、貴族たちの尊敬を集める最大の政敵だ!引き渡せと言ったところで、上手くいくはずがない!」

 レノアは拳を握り込み、テーブルをバンと叩いた。

 テーブルの上の皿が、ガチャリと大きな音を立てる。

 俺は、周りのひと達の「どうしたんだ?」という視線を、片手を上げて制した。

 次いで右肩を前に出して肘をテーブルにつけ、上半身をゆっくりと沈み込ませるようにしてレノアに顔を近づけた。

「落ち着けよ。方針はわかった。だが方法はどうする?ゼークル伯爵邸を襲った時のように行くか?」

 俺の提案に、レノアも顔を近づけてから、首を横に振った。

「いや、その方法は警戒されているだろう。なにせ当のゼークル伯爵相手のことだからね。しかも、ワイズマンもいる。同じ方法は取れない」

「じゃあどうするつもりだ?」

 テーブル上でぎりぎりまで顔を近づけてきたレノアが、ニヤリと笑った。

「僕に考えがある。任せてよ」



 レノアはその後、再びアリアスの部屋を訪れた。

 そしてゼークル、ワイズマンの奪取計画の詳細を説明し、実行の許可を得て戻ってきた。

「よく許可が下りたな?」

 俺の問いに、レノアが得意げな表情となる。

「まあ、僕の計画が素晴らしかったからじゃないかな?」

 俺は鼻を鳴らし、肩をすくめた。

「そうかい。それで、実行はいつだ?」

「奇襲は、早いに越したことはない」

「それなら、今夜か」

 すると、今度はレノアが肩をすくめた。

「早いに越したことはないって、今言ったばかりだろ」

 俺は眉根を寄せた。

「まだ朝だぞ?」

「そうだね」

 レノアの返答に、俺は驚いた。

「ちょっと待て。まさか、日が高いうちに襲うつもりか?」

「それが一番効果的だと思うよ」

「しかし、ゼークルの館に侵入した時も、夜になってからだったぞ」

「そうだね」

「ゴート公爵は、ゼークルより大物なんだろう?」

「全然上だね」

「だったら、より慎重になった方がいいんじゃないか?」

 すると、レノアが皮肉な笑みを口元に浮かべた。

「へえ、君ともあろう者が、怖気づくのかい?」

 俺は苛立ちのため息をひとつ吐き、眉尻をピンと跳ね上げた。

「そんなんじゃない」

 レノアは快活に笑い、言った。

「だから、僕に任せてよ。悪いようにはしないからさ」
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