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第二章

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「なぜ貴様が知っている……いえ!殿下、騙されてはなりませんぞ!この者がカズマのはずがありません!」

 ギャレットは、強く首を横に振りつつ、アリアスに向かって言った。

 アリアスは眉根をキュッと寄せながら、俺をきつく睨む。

「貴方は誰からその話を聞いたのですか!」

 俺は面倒だなと思いつつも、ここを超えないと話にならないと思い直し、出来るだけ穏当な声で言った。

「聞いたも何もない。俺がカズマ本人だから知っているだけのことだ」

 するとアリアスが激烈な反応を見せた。

「嘘おっしゃい!カズマが、自らのことを俺なんて言うわけがありません!それになんですか、その物言い!カズマはもっと優しい言い方をします!早速、馬脚を現しましたね!」

 とりあえずは『僕』と言っておけばよかったか。しかし、もう遅い。なんとか説明するしかない。

「いろいろあったんだ。いろいろね」

 すると今度はギャレットが叫ぶように言った。

「やかましい!殿下に対して馴れ馴れしいわ!それに、その足元の黒ヒョウはなんだ!そいつに殿下を襲わせるつもりか!」

 俺は大きなため息を吐いた。

 すると、ずっとおとなしく俺の足元で控えていたゼロスが、突然口を開いた。

「すまぬが、わたしは貴方たちを襲うつもりなどない。それに、この者はまさしくカズマだ。無論、信じがたいことではあるだろうが、説明だけでも聞いてもらえないだろうか」
 
 突然ゼロスがしゃべり出したことに、アリアスやギャレットだけでなく、メルアとルイーズも驚愕した。

 特にルイーズは床にへたり込むほどであった。

 メルアはすかさず膝を折ってしゃがみ込みで、呆然としているルイーズを抱きかかえた。

「大丈夫よ。そうよね?カズマさん」

 俺はうなずく。

「ああ。大丈夫だ。ゼロスはネメセス族という特殊な種族で、人語をしゃべることが出来るんだ」

 俺に続いて、ゼロスが言う。

「驚かせてすまない。わたしはゼロスと申す者。以後お見知りおき願いたい」

 アリアスがごくりとつばを飲み込んだ。

「ギャレット……人語を話すモンスターを知っている?」

 問われたギャレットは、驚いた表情で首を横に振った。

「いえ……見たことも聞いたこともございません」

「そうよね……わたしもはじめてだわ。でも、これは手品の類ではなさそうね」

 アリアスはそう言うと、俺の顔を見た。

「ああ。手品なんかじゃない。見たままの事実だ」

「どうやって、知り合ったの?」

 アリアスの問いに、俺は答えた。

「ゼークル伯爵を捕らえた後、クランベル州の未踏の森で出会った」
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