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第二章

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 レノアの問いに、ゼロスがうつむき、しばしの間考え込んだ。

 ようやく考えがまとまったゼロスは、顔を上げて自らの推理を述べた。

「口や舌の形や動きが、人語を話すことに適しているのではないだろうか」

「なるほど……言われてみれば確かに、ゼロスの口は僕たちと同じくらいよく動く。それに言葉とは、声帯を震わせて発するものだ。ゼロスの口は、それに適しているってことか」

「うむ。他のモンスターたちは、まず細かな発声をすることが出来ないのではないか?口を微妙に動かし、形を作って声帯を震わす。そうしたことで言葉となるわけだからな」

「納得だ。なら他のモンスターたちも、もしかしたら訓練次第で発声が可能になるかもしれない」

 俺は、レノアの言葉に驚いた。

「本当か?だとしたら凄いぞ。連携がとりやすくなる」

 レノアが笑みを浮かべた。

「ああ。全員は無理かもしれないけど、ある程度の数が言葉を話せるようになったら、細やかな戦術も可能となる。そうなれば、大変な戦力アップになるだろう」

「全員は無理なのか?」

「ゼロスが言ったように、口や舌の形で物理的にしゃべることが出来ない種族も多いと思う。たとえばオロチなんて、絶対に無理だと思うよ」

 確かに、オロチはほとんど蛇だ。あの口や舌の形でしゃべることは、まず不可能だな。

「巨人族のノワールサイクロプスなんかは、比較的いけそうだな」

「ああ。彼は鍛えればなんとかなりそうだね。それ以外にも試したい個体はいるね」

「なら、早速帰って訓練しないとな」

「よし、では出発しよう」

 レノアが、喜び勇んで椅子から立ち上がった。

 俺も続いて立ち上がる。

 ゼロスもスラリとした四肢を伸ばして立ち上がった。

 俺たちが立ちあがったのを見て、村長がゆっくりとした足取りでこちらに来た。

「もう行かれるか」

 俺は軽く会釈をしつつ、言葉を返した。

「ありがとう。とても美味しかった」

 レノアも続く。

「うん!本当に美味しかった。またいつかこの村を訪れたら、あの肉の塊にかぶりつきたいくらいだよ」

 村長は満面の笑みを浮かべた。

「ぜひともいらしてくれ。歓迎するぞ」

 ゼロスが口を開く。

「世話になった。またいずれ会おう」

 村長がうなずく。

「うむ。またな」

 俺たちは挨拶を済ますと歩き出した。

 村長宅を出ると、村人たちが集まっていた。

 口々に「もう帰るのか」「もっとゆっくりしていったらどうだ」と言ってくれる。

 だが先は長い。

 俺たちは、村人たちとの別れの挨拶を済ますと、次なる目的地レボーナの町を目指した。
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