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第二章

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 俺は思わず首をひねった。

「鍛冶屋がこの森になんの用がある?それに、戦闘経験が生涯なかった男だぞ。とてもじゃないが、ネメセス族の生息域にまでたどり着けるとは思えない」

「護衛をつければいいことさ。腕のいい鍛冶屋だったんだろう?ならそれなりに資金はあるだろう」

「かもしれないが、そうだとして、やはりこの森に鍛冶屋が何をしに来たと?」

 レノアがニヤリと口角を上げて笑った。

「この森は未開地だ。それは百年前も今も変わらない。君が譲り受けた黄金の地下宮殿もそう。この森には得体のしれないレアモンスターだけではなく、未知の鉱床もあるんじゃないかな?」

 なるほど。未知の鉱床か。

「つまり、誰も知らない金属がこの森に?」

 するとレノアが破顔一笑となった。

「そこまではわからないよ。でも、その可能性はあると思わないか?」

「まあ、確かに。だが可能性というだけなら、なんでもありだぞ?」

「まあね。でも、まったくないわけじゃない以上、考慮の余地はある。もちろん、他の転移者が昔にここを訪れたのかもしれないしね」

「そちらの方が可能性高いよ」

 するとレノアが肩をすくめた。

「それはどうかな?確定していない以上、可能性は五分五分さ。いや、そのどちらでもない可能性と合わせて三分の一ずつかな」

 今度は俺が肩をすくめる番となった。

「わかったよ。これ以上可能性の話をしても、生産性が全くないってことが」

 するとレノアがにんまりと笑った。

「その通り。どの可能性があるかだけわかっていれば、今のところは充分さ。どの可能性が一番高いかなんて、考えたって、そんなことは確定していない現時点では、どうでもいいことさ」

 するとそこで、それまで黙っていたゼロスが苦笑しながら言った。

「いやレノア、すまないがその転移者がわたしの村を訪れた可能性は限りなくゼロに近いと思う」

 レノアが眉を寄せて抗議する。

「なぜ?」

 ゼロスは苦笑いを浮かべながら答えた。

「わたしが百五十二歳だからだ」

「あっ!……忘れてた」

 レノアが残念そうな顔をする。

「そうか、ならゼロスがその鍛冶屋の転移者を知らない以上、別の転移者ってことになるね」

「そういうことになる」

 俺は少し気分が良くなるも、あまりレノアの気分を害さないように軽く笑みを浮かべるだけにする。

「よし、それならこの話は終わりにしよう。それよりも、生産性のありそうな話をしよう」

 レノアがすかさずうなずく。

「同感だね。それで、どんな話をするつもり?」

「決まっている。レアモンスターたちを連れて、どうやってミラベルトまで帰るかの話さ」

 するとレノアがこれまたニヤリと口角を上げる。

「ゆっくり帰るさ。この前みたいにね」

「パレードか?またアリアスが怒るぞ。『またわたしを除け者にして!』ってな」

「大丈夫。今度はちょっとだけスピードを上げよう。そうすれば言い訳は立つ」

「デュランドルがいるぞ?あいつは今までのレアモンとは桁違いにデカいぞ」

「まあね。でもまあそれ故に速くなると思うよ」

 俺は首をひねった。

「わからないな。どういう意味だ?」

「あまりにもデカすぎて街には入れないってことさ。自然、街には立ち寄らず一直線にミラベルトを目指すことになるのさ」
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