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第二章
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レノアの言った通り、すぐに痛みは和らいでいった。そして一時間ほども経った頃、ようやく傷口が塞がった。
「でもまだ安静にしてないとダメだね。動いたら、すぐに傷口が開いてしまうよ」
レノアが傷口を覗き込みながら言った。
「そうだな。かなり深く斬られたし」
「内臓が無事だったのは、奇跡だね。これくらい大きな傷だと、内臓まで斬られているのが普通だよ。もしもそうだった場合、かなりやばかったね」
「あの治療薬では間に合わなかった?」
「そうだね。治療薬で内臓まで治せるかといったら……状態にもよるから絶対に無理とは言わないけど、その可能性は低いだろうね。かといって僕の治癒魔法レベルでは到底無理だし」
「そうか。今後は気をつけないといけないな」
「僕もちょっと油断していたよ。君ならどんな敵でも問題ないと思い込んでいた。だがよく考えれば、相手はレアモンスターだ。想像もつかないような隠し玉を持っている可能性があるってことだ。だから、このまま旅を続けていたら、また君が怪我をする可能性は充分にある」
「いや、今後は油断しないから大丈夫だ」
「いやいや、君はそう言うが、客観的に見てかなり危険だ。旅には腕のいい治癒魔法士が必要だと思う」
「そんな奴、どうやって手配するんだ?」
「すぐには無理さ。一旦戻ろう。レアモンスター探しは中断だ」
「大丈夫だって」
「大丈夫じゃない。危険は冒せない。君は我が軍の最高戦力なんだ。万が一にも失うわけにはいかない。これは僕の参謀としての戦略的判断だ。従ってもらうよ」
レノアはそう言うと、俺をキッと睨みつけた。
俺は仕方なく従うことにした。
「わかったよ。なら今回の旅はここで終わりだ。一応レアモンスターのテイムは出来たしね」
すると、レノアが大蛇のレアモンスターを見つめながら言った。
「しかし、こんなレアモンスターは聞いたことがない。もしかしたら新発見のレアモンかもしれないな」
「なら、名前はないのかな」
「たぶん……」
するとそこで、ゼロスがぼそりとつぶやくように言った。
「そうなのか……我らはオロチと呼んでいるが……」
するとレノアがすかさず食いついた。
「ゼロスの村ではオロチって言うの?」
「うむ。滅多に出会わぬが、そういう名前で呼び習わしている」
そうなのか。しかし――
「そのオロチって名前なんだけど、何か由来でもあるの?」
だがゼロスは首をゆっくりと横に振った。
「さあ。わたしは特に由来を聞いてはいないが」
「そうか……」
「何故由来を聞く?」
ゼロスの問いに、俺は眉根を寄せながら答えた。
「俺の国でも、大蛇のことをオロチっていうんだよ」
「でもまだ安静にしてないとダメだね。動いたら、すぐに傷口が開いてしまうよ」
レノアが傷口を覗き込みながら言った。
「そうだな。かなり深く斬られたし」
「内臓が無事だったのは、奇跡だね。これくらい大きな傷だと、内臓まで斬られているのが普通だよ。もしもそうだった場合、かなりやばかったね」
「あの治療薬では間に合わなかった?」
「そうだね。治療薬で内臓まで治せるかといったら……状態にもよるから絶対に無理とは言わないけど、その可能性は低いだろうね。かといって僕の治癒魔法レベルでは到底無理だし」
「そうか。今後は気をつけないといけないな」
「僕もちょっと油断していたよ。君ならどんな敵でも問題ないと思い込んでいた。だがよく考えれば、相手はレアモンスターだ。想像もつかないような隠し玉を持っている可能性があるってことだ。だから、このまま旅を続けていたら、また君が怪我をする可能性は充分にある」
「いや、今後は油断しないから大丈夫だ」
「いやいや、君はそう言うが、客観的に見てかなり危険だ。旅には腕のいい治癒魔法士が必要だと思う」
「そんな奴、どうやって手配するんだ?」
「すぐには無理さ。一旦戻ろう。レアモンスター探しは中断だ」
「大丈夫だって」
「大丈夫じゃない。危険は冒せない。君は我が軍の最高戦力なんだ。万が一にも失うわけにはいかない。これは僕の参謀としての戦略的判断だ。従ってもらうよ」
レノアはそう言うと、俺をキッと睨みつけた。
俺は仕方なく従うことにした。
「わかったよ。なら今回の旅はここで終わりだ。一応レアモンスターのテイムは出来たしね」
すると、レノアが大蛇のレアモンスターを見つめながら言った。
「しかし、こんなレアモンスターは聞いたことがない。もしかしたら新発見のレアモンかもしれないな」
「なら、名前はないのかな」
「たぶん……」
するとそこで、ゼロスがぼそりとつぶやくように言った。
「そうなのか……我らはオロチと呼んでいるが……」
するとレノアがすかさず食いついた。
「ゼロスの村ではオロチって言うの?」
「うむ。滅多に出会わぬが、そういう名前で呼び習わしている」
そうなのか。しかし――
「そのオロチって名前なんだけど、何か由来でもあるの?」
だがゼロスは首をゆっくりと横に振った。
「さあ。わたしは特に由来を聞いてはいないが」
「そうか……」
「何故由来を聞く?」
ゼロスの問いに、俺は眉根を寄せながら答えた。
「俺の国でも、大蛇のことをオロチっていうんだよ」
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