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第二章
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僕の問いに、エニグマが大きくかぶりを振った。
「さあね。奴の考えなどわからないよ。ただ、君の話はとても興味深かったよ」
「僕の話?」
「ああ。『いずれ我がもとへ』と奴は言ったのだろう?」
「言った。それが何か?」
「君は奴の希望通りに英雄への道を歩んでいる。ならば、いずれどこかで奴と出会うはずだ。ほかならぬ奴自身がそう言っているんだからね」
「その神が姿を現すと?」
「そのはずだ。君の言葉が正しければね」
「嘘は言っていないし、嘘はつけない状況だろ?」
「そうだね。なら、いずれそうなるということだ。楽しみだね」
「そのとき、君も同席するって魂胆か」
「もちろんさ。それが僕の望みだからね」
「会ってどうするんだ?」
「さあ、どうなるかな。会ってみないとわからないね」
本当だろうか。あの神の話となるとあれほどの殺気を放つというのに、会ってみないとわからないなんてことがあるか?
いや、これは巧妙に嘘にならないことを言っているのではないか?
たとえ殺意を持っていたとして、会ってすぐに殺そうとするわけではないだろう。
まずは話をするのじゃないだろうか。いや、いきなり急襲することもあり得るか。
つまり、まだそのときどんな行動をするかはわからないと言える。
だとするなら、会ってみないとわからないという言葉は現時点では嘘とは言い切れない。
エニグマはこういう巧妙な手口を使っているのじゃないだろうか。
ならばもっと直接的な質問をしてみたら――
いや、あの殺気をこちらに向けられても困る。というか、殺される。
とてもではないが、今はまだエニグマは敵に出来ない。
「君の話を聞いていると、神にもヒエラルキーがあるみたいだけど?」
僕は少し話を変えてみた。
エニグマは気にせず答える。
「その通り。悪魔界と変わらないよ。いくつかの階層に分かれているが、その数はわからない。それも悪魔界と一緒だね」
「やっぱり異次元に神の世界はあるの?」
「そう。ただし、悪魔界とは別の次元だけどね」
「そこには行ける?」
エニグマがゆっくりと首を横に振った。
「無理だ。それは逆もまた然りでね」
「双方ともに行き来はできないってことか」
「そうだね。ゆえにおおむね平和だ」
ちょっと意外かもしれない。
「神と悪魔の争いはないの?」
「あるよ」
「ちょっと待ってくれ。どういうことだ?」
僕の問いに、エニグマが得意げに笑みを浮かべている。
「わからないかい?僕は今、君と会って話しているよ」
うん?だからなんだ?
僕と会って……ああ、そういうことか。
「つまり、悪魔も神も、この世界になら来られるってことか」
「さあね。奴の考えなどわからないよ。ただ、君の話はとても興味深かったよ」
「僕の話?」
「ああ。『いずれ我がもとへ』と奴は言ったのだろう?」
「言った。それが何か?」
「君は奴の希望通りに英雄への道を歩んでいる。ならば、いずれどこかで奴と出会うはずだ。ほかならぬ奴自身がそう言っているんだからね」
「その神が姿を現すと?」
「そのはずだ。君の言葉が正しければね」
「嘘は言っていないし、嘘はつけない状況だろ?」
「そうだね。なら、いずれそうなるということだ。楽しみだね」
「そのとき、君も同席するって魂胆か」
「もちろんさ。それが僕の望みだからね」
「会ってどうするんだ?」
「さあ、どうなるかな。会ってみないとわからないね」
本当だろうか。あの神の話となるとあれほどの殺気を放つというのに、会ってみないとわからないなんてことがあるか?
いや、これは巧妙に嘘にならないことを言っているのではないか?
たとえ殺意を持っていたとして、会ってすぐに殺そうとするわけではないだろう。
まずは話をするのじゃないだろうか。いや、いきなり急襲することもあり得るか。
つまり、まだそのときどんな行動をするかはわからないと言える。
だとするなら、会ってみないとわからないという言葉は現時点では嘘とは言い切れない。
エニグマはこういう巧妙な手口を使っているのじゃないだろうか。
ならばもっと直接的な質問をしてみたら――
いや、あの殺気をこちらに向けられても困る。というか、殺される。
とてもではないが、今はまだエニグマは敵に出来ない。
「君の話を聞いていると、神にもヒエラルキーがあるみたいだけど?」
僕は少し話を変えてみた。
エニグマは気にせず答える。
「その通り。悪魔界と変わらないよ。いくつかの階層に分かれているが、その数はわからない。それも悪魔界と一緒だね」
「やっぱり異次元に神の世界はあるの?」
「そう。ただし、悪魔界とは別の次元だけどね」
「そこには行ける?」
エニグマがゆっくりと首を横に振った。
「無理だ。それは逆もまた然りでね」
「双方ともに行き来はできないってことか」
「そうだね。ゆえにおおむね平和だ」
ちょっと意外かもしれない。
「神と悪魔の争いはないの?」
「あるよ」
「ちょっと待ってくれ。どういうことだ?」
僕の問いに、エニグマが得意げに笑みを浮かべている。
「わからないかい?僕は今、君と会って話しているよ」
うん?だからなんだ?
僕と会って……ああ、そういうことか。
「つまり、悪魔も神も、この世界になら来られるってことか」
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