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第2章 魔術学園編
8.5話 タームの心情(1)【タームの視点】
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ご主人様の元へやってきてから一か月──。
ご主人様はローレン魔術学園の入学式へと出かけた。
翼を持たないのに空を飛べるようだ。
私はご主人様の姿が見えなくなるまで見送るつもりだったけど、それは一瞬のことで、あっという間なことで、ご主人様の姿は豆粒となった。
「よしっ、これで一人になれた!」
上機嫌な太陽の光を浴びて、ぐーんと背中を延ばす。
この日のために計画していた作戦を実行する時がきた。私は鼻息を荒くする。
だけど、その前にやっておかなければいけない事がある──畑の水やりだ。
「あっ、帽子を被らなきゃ」
家からすぐ近くにある畑へ向かう途中、帽子を被っていないことに気付いた。
玄関先へ回り込むのが面倒なので、庭先のウッドデッキからお家に入る。与えられている自分の部屋に行き、衣装ケースから麦わら帽を手に取った。
ご主人様がリアンの街中を駆け回ってようやく見つけてくれたラビット族専用の帽子。私のお気に入りだ。
陽射しから頭を守るため、深々と麦わら帽をかぶってから畑へでた。
まだ種を植えてから間もないので芽がちょこんとあるぐらい。私にできる事は水をたっぷりとあげるぐらいだ。
買ってもらったばかりの水玉模様のワンピースが汚れないように注意して、私は小さな畑で芽吹いたばかりの子供たちへ均等に水をやる。
「これで終わりっと」
汗をぬぐう。
収穫まではまだまだ時間がかかりそう。私は緑色の新芽たちに『早く大きくなってね』と呟いた。
水やりを終えた私は、庭先のウッドデッキに仰向けで寝転んだ。
誰の視線もないのだからと、大の字に両手両足を開く。お日様の陽がぽかぽかとしていて、自然とまぶたが重たくなってくる。
ご主人様は、私に対して命令することを絶対にしない。
鞭で打つことも、叩く事も、恐怖で縛り付ける事も……。
衣食住に不自由もなく、勉強も教えてくれる優しいご主人様だ。自由な時間もたっぷりある。
「こうやってひなたぼっこする時間も……」
閉じたまぶたの先に、太陽の光が柑橘色に温かく滲んでいる。雲が太陽の下を横切るたびに、オレンジ色は弱まる。
オレンジ色の濃淡を繰り返していると、自分の寝息の音がはっきりと聴こえてくる。
私は自分が眠りに落ちてしまう瞬間を、自覚できたのだ────。
ご主人様はローレン魔術学園の入学式へと出かけた。
翼を持たないのに空を飛べるようだ。
私はご主人様の姿が見えなくなるまで見送るつもりだったけど、それは一瞬のことで、あっという間なことで、ご主人様の姿は豆粒となった。
「よしっ、これで一人になれた!」
上機嫌な太陽の光を浴びて、ぐーんと背中を延ばす。
この日のために計画していた作戦を実行する時がきた。私は鼻息を荒くする。
だけど、その前にやっておかなければいけない事がある──畑の水やりだ。
「あっ、帽子を被らなきゃ」
家からすぐ近くにある畑へ向かう途中、帽子を被っていないことに気付いた。
玄関先へ回り込むのが面倒なので、庭先のウッドデッキからお家に入る。与えられている自分の部屋に行き、衣装ケースから麦わら帽を手に取った。
ご主人様がリアンの街中を駆け回ってようやく見つけてくれたラビット族専用の帽子。私のお気に入りだ。
陽射しから頭を守るため、深々と麦わら帽をかぶってから畑へでた。
まだ種を植えてから間もないので芽がちょこんとあるぐらい。私にできる事は水をたっぷりとあげるぐらいだ。
買ってもらったばかりの水玉模様のワンピースが汚れないように注意して、私は小さな畑で芽吹いたばかりの子供たちへ均等に水をやる。
「これで終わりっと」
汗をぬぐう。
収穫まではまだまだ時間がかかりそう。私は緑色の新芽たちに『早く大きくなってね』と呟いた。
水やりを終えた私は、庭先のウッドデッキに仰向けで寝転んだ。
誰の視線もないのだからと、大の字に両手両足を開く。お日様の陽がぽかぽかとしていて、自然とまぶたが重たくなってくる。
ご主人様は、私に対して命令することを絶対にしない。
鞭で打つことも、叩く事も、恐怖で縛り付ける事も……。
衣食住に不自由もなく、勉強も教えてくれる優しいご主人様だ。自由な時間もたっぷりある。
「こうやってひなたぼっこする時間も……」
閉じたまぶたの先に、太陽の光が柑橘色に温かく滲んでいる。雲が太陽の下を横切るたびに、オレンジ色は弱まる。
オレンジ色の濃淡を繰り返していると、自分の寝息の音がはっきりと聴こえてくる。
私は自分が眠りに落ちてしまう瞬間を、自覚できたのだ────。
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