27 / 41
第2章 魔術学園編
8.5話 タームの心情(1)【タームの視点】
しおりを挟む
ご主人様の元へやってきてから一か月──。
ご主人様はローレン魔術学園の入学式へと出かけた。
翼を持たないのに空を飛べるようだ。
私はご主人様の姿が見えなくなるまで見送るつもりだったけど、それは一瞬のことで、あっという間なことで、ご主人様の姿は豆粒となった。
「よしっ、これで一人になれた!」
上機嫌な太陽の光を浴びて、ぐーんと背中を延ばす。
この日のために計画していた作戦を実行する時がきた。私は鼻息を荒くする。
だけど、その前にやっておかなければいけない事がある──畑の水やりだ。
「あっ、帽子を被らなきゃ」
家からすぐ近くにある畑へ向かう途中、帽子を被っていないことに気付いた。
玄関先へ回り込むのが面倒なので、庭先のウッドデッキからお家に入る。与えられている自分の部屋に行き、衣装ケースから麦わら帽を手に取った。
ご主人様がリアンの街中を駆け回ってようやく見つけてくれたラビット族専用の帽子。私のお気に入りだ。
陽射しから頭を守るため、深々と麦わら帽をかぶってから畑へでた。
まだ種を植えてから間もないので芽がちょこんとあるぐらい。私にできる事は水をたっぷりとあげるぐらいだ。
買ってもらったばかりの水玉模様のワンピースが汚れないように注意して、私は小さな畑で芽吹いたばかりの子供たちへ均等に水をやる。
「これで終わりっと」
汗をぬぐう。
収穫まではまだまだ時間がかかりそう。私は緑色の新芽たちに『早く大きくなってね』と呟いた。
水やりを終えた私は、庭先のウッドデッキに仰向けで寝転んだ。
誰の視線もないのだからと、大の字に両手両足を開く。お日様の陽がぽかぽかとしていて、自然とまぶたが重たくなってくる。
ご主人様は、私に対して命令することを絶対にしない。
鞭で打つことも、叩く事も、恐怖で縛り付ける事も……。
衣食住に不自由もなく、勉強も教えてくれる優しいご主人様だ。自由な時間もたっぷりある。
「こうやってひなたぼっこする時間も……」
閉じたまぶたの先に、太陽の光が柑橘色に温かく滲んでいる。雲が太陽の下を横切るたびに、オレンジ色は弱まる。
オレンジ色の濃淡を繰り返していると、自分の寝息の音がはっきりと聴こえてくる。
私は自分が眠りに落ちてしまう瞬間を、自覚できたのだ────。
ご主人様はローレン魔術学園の入学式へと出かけた。
翼を持たないのに空を飛べるようだ。
私はご主人様の姿が見えなくなるまで見送るつもりだったけど、それは一瞬のことで、あっという間なことで、ご主人様の姿は豆粒となった。
「よしっ、これで一人になれた!」
上機嫌な太陽の光を浴びて、ぐーんと背中を延ばす。
この日のために計画していた作戦を実行する時がきた。私は鼻息を荒くする。
だけど、その前にやっておかなければいけない事がある──畑の水やりだ。
「あっ、帽子を被らなきゃ」
家からすぐ近くにある畑へ向かう途中、帽子を被っていないことに気付いた。
玄関先へ回り込むのが面倒なので、庭先のウッドデッキからお家に入る。与えられている自分の部屋に行き、衣装ケースから麦わら帽を手に取った。
ご主人様がリアンの街中を駆け回ってようやく見つけてくれたラビット族専用の帽子。私のお気に入りだ。
陽射しから頭を守るため、深々と麦わら帽をかぶってから畑へでた。
まだ種を植えてから間もないので芽がちょこんとあるぐらい。私にできる事は水をたっぷりとあげるぐらいだ。
買ってもらったばかりの水玉模様のワンピースが汚れないように注意して、私は小さな畑で芽吹いたばかりの子供たちへ均等に水をやる。
「これで終わりっと」
汗をぬぐう。
収穫まではまだまだ時間がかかりそう。私は緑色の新芽たちに『早く大きくなってね』と呟いた。
水やりを終えた私は、庭先のウッドデッキに仰向けで寝転んだ。
誰の視線もないのだからと、大の字に両手両足を開く。お日様の陽がぽかぽかとしていて、自然とまぶたが重たくなってくる。
ご主人様は、私に対して命令することを絶対にしない。
鞭で打つことも、叩く事も、恐怖で縛り付ける事も……。
衣食住に不自由もなく、勉強も教えてくれる優しいご主人様だ。自由な時間もたっぷりある。
「こうやってひなたぼっこする時間も……」
閉じたまぶたの先に、太陽の光が柑橘色に温かく滲んでいる。雲が太陽の下を横切るたびに、オレンジ色は弱まる。
オレンジ色の濃淡を繰り返していると、自分の寝息の音がはっきりと聴こえてくる。
私は自分が眠りに落ちてしまう瞬間を、自覚できたのだ────。
0
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない
AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。
かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。
俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。
*書籍化に際してタイトルを変更いたしました!
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
修行マニアの高校生 異世界で最強になったのでスローライフを志す
佐原
ファンタジー
毎日修行を勤しむ高校生西郷努は柔道、ボクシング、レスリング、剣道、など日本の武術以外にも海外の武術を極め、世界王者を陰ながらぶっ倒した。その後、しばらくの間目標がなくなるが、努は「次は神でも倒すか」と志すが、どうやって神に会うか考えた末に死ねば良いと考え、自殺し見事転生するこができた。その世界ではステータスや魔法などが存在するゲームのような世界で、努は次に魔法を極めた末に最高神をぶっ倒し、やることがなくなったので「だらだらしながら定住先を見つけよう」ついでに伴侶も見つかるといいなとか思いながらスローライフを目指す。
誤字脱字や話のおかしな点について何か有れば教えて下さい。また感想待ってます。返信できるかわかりませんが、極力返します。
また今まで感想を却下してしまった皆さんすいません。
僕は豆腐メンタルなのでマイナスのことの感想は控えて頂きたいです。
不定期投稿になります、週に一回は投稿したいと思います。お待たせして申し訳ございません。
他作品はストックもかなり有りますので、そちらで回したいと思います
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる